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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

vsうざ男

作者: ムー・TY

こんにちは。マー・TYと申します。この作品を見に来てくれた方の中には、僕のことをワールドうごメモギャラリー(WUG)が運営されていた頃から知っているという人もいることでしょう。

実は最近になってWUGで多く投稿されていた、『vsあなた』とシリーズを思い出しまして、この作品を製作しました。

主人公は読んでくれるあなたではないのですが、あなただったらどう発言するか。そういうのを考えながら読んでみてください。

 やっほー!私の名前はムー。可愛い女の子が大好きな女の子だよ☆つまりレズ!

 実は最近になって、中2の頃の思い出が夢に出たんだよね。知り合いにマーっていう男がいて、そいつにそのことで愚痴ったんだよね。

 そしたらそいつ、「なんか懐かしいから全部書いて」って、意味わかんないこと言うのよ!

 ………まぁでも、こういうの面白いっていう変わった性癖の人もいるかもだから、とりあえず書いてみるわ。

 これは私が、中学2年生だった頃の話────────

 

 


 あいつはいつも取り巻きに囲まれていた。

 男子女子隔たり無く。

 金をたくさん持っている。

 ただそれだけで、あいつは多くの生徒の人気を勝ち取った。

 私はそんなあいつが嫌いだった。

 ある日の放課後、取り巻きに囲まれたあいつが、帰ろうとしている私に言ってきた。


 「おい、今から僕ちゃん家にあるカラオケでパーティーをするんだ。お前も招待してやろう」


 「いい。行かない」


 私は本当にコイツが嫌いなんだ。

 私は軽く遇ってその場を去ろうとした。

 しかし、あいつは私の腕を掴んだ。

 そしてあいつは私の体を、教室のドアに押しつけ、逃げられないようにした。


 「僕ちゃんの誘いを断るとは何事だ?……そうだ!お前僕ちゃんと付き合え!そうすれば夢のような暮らしが待ってるぞ?」


 「触んなボケ」


 私は右足であいつの股間を蹴り上げた。

 あいつは剣で斬られた時のゴブリンみたいな悲鳴を上げ、その場で股間を抑えて蹲った。


 「私、金とか興味ないから」


 私はそう言って、そのまま帰宅した。

 この出来事が気に入らなかったのだろう。

 翌日から、私はあいつとその取り巻き達から嫌がらせを受けるようになった。



 目覚まし時計のアラームが鳴った。

 私はそれを手探りで探し、アラームを止める。

 眠い目を濾すって、被っていた毛布をどけた。


 「………学校だるっ」


 いっそのこと仮病で休もうかと思ったけど、そういう訳にもいかない。

 私は朝食を食べ、支度をすると、家を出た。



 「おはようございます、ムーさん」


 「あっ!おっはよ~マヨ!今日も可愛い!」


 「なっ!?や、やめてくださいよ~!」


 この娘はマヨ。

 私の唯一の味方。

 私より背が低くて、何より可愛い。

 私が休まずに登校できるのは、この娘の存在があるからだ。

 マヨ自身は私のことを友達としか思ってないようだけど、私はマヨのことを愛している。

 もちろん恋愛的な意味で!


 「あの、ムーさん」


 「ん?な~に?」


 「その……。ごめんなさい」


 「え?」


 なんで謝るのマヨ?


 「辛いはずです。彼らから、あんなに、……嫌がらせを受けて。……私、助けられなくて……ごめんなさい……」


 マヨ………。

 ………何なの?

 良い子過ぎない!?

 私の心配してくれてる!

 嬉しい!嬉しすぎて死ぬ!マヨのためなら死ねる!


 「ありがとうマヨ!心配してくれるだけで私満足だから!むしろ毎朝こうやってマヨにパワー貰ってるんだよ!」


 「ムーさん………」


 「ちょっとそんな暗い顔やめてよ!ムーは笑ってるときと照れてるときが一番可愛いから!だからさ、……パワー吸収!」


 「なっ!?ムーさん!?」


 私は思いっきりマヨを抱き締めた。

 マヨは顔を赤くしてる。可愛い!

 私が休んだら、あいつがマヨに何するかわからない。

 私は、絶対にあいつに負けられない。



 教室の入り口で私達は止まった。

 上を見ると、ドアに黒板消しが挟まっているのが見えた。

 馬鹿すぎる。

 こんな仕掛けに引っかかる奴いる?

 私は勢いよくドアを開け、黒板消しが床に落ちるのを確認してから入った。


 「おい!なんで引っかからねぇんだよ!」


 そいつ………もう名前出そう。

 カネミツは自分が仕掛けた天才的な罠に、私が引っかからなったことに怒っているようだった。


 「僕ちゃんの罠を無視するとは良い度胸だなぁ!」


 「私アンタと違って馬鹿じゃないんで」


 「チッ……ブスで貧乏人のクセに生意気な!」


 「そのブスで貧乏人の私に出し抜かれた気分はどうですか~?」


 私はカネミツを煽る。

 こういうのはやられっぱなしじゃダメなんだ。

 こうやって煽って余裕を見せてやる。

 もともとコイツらが攻撃してきたんだからね。


 「マヨ、また後でね」


 私のことを心配そうに見つめるマヨに100点の笑顔を見せて、私は自分の席に着いた。


 「………」


 私の机は落書きだらけだった。

 『死ね』『消えろ』『学校来んなブス女』

 ありきたりな悪口ばっかで正直つまらなかった。

 こんなくだらない落書きだらけの机は嫌だ。

 私はそれらを消すための道具、雑巾とバケツを取りに、廊下に出ようとした。

 すると────


 “ガン!”“バシャ~~~!”


 私の後頭部に何かが当たり、水が私の体を濡らした。

 どっかの馬鹿が、水が入ったバケツを私に投げつけたらしい。

 バランスを崩して転んでしまった。


 「「「「「ブハハハハハハハハハハハハハハ!!!」」」」」」


 教室中が笑い声に包まれた。

 カネミツを含め、取り巻き達も一緒になって笑っているようだ。


 「いい気味だw貧乏ブスが僕ちゃんに盾突くからいけないんだぞ!」


 カネミツはそう言いながら近づいてくる。

 こっち来んな。ブスはお前だ。


 「なぁ今どんな気持ちだ?お?どんな気持ち?どんな気持ち~?」


 正直どんな気持ちかというと、カネミツへの怒りよりも、マヨに見られていることへの快感が勝っている。

 私は現在全身ずぶ濡れで、制服が透け、ブラが見えている状態になっている。

 そんなところを愛しのマヨに見られて………あぁ!なんという快感なの!?


 「おいwどんな気持ちか訊いてんだよw」


 「すっごく気持ちいい♡」


 「はぁ!?」


 おっといけない声に出てしまった。

 快感をありがとうカネミツ。お礼をしなくちゃ………ね?

 私はバケツを拾うと水道に行き、蛇口を捻った。

 しばらく水を出してから止めると、バケツを持って教室に戻る。


 「カネミツとその取り巻きのみんな~、お礼に私からも掛けてあげるよ!水を」


 「なっ!?何すんだお前!」


 カネミツとその取り巻き達は、怯えて後退る。


 「マヨは当たらないように気をつけてね~♪それじゃあ!」


 「や、やめ!」


 「レッツ、ウォーター!!」


 「やめろーーーーーー!!!」


 カネミツ達は両手で受け身の体勢に出る。

 しかし、そんな行動は無意味だった。

 だって入ってないもん。水。


 「は………?」


 カネミツ達はポカーンとして立ち尽くす。

 それが最高におもしろかった。


 「アハハハハハハハハハハハ!えっ!?本気で掛けると思った!?アハハハ!引っかかってやんの!ねぇ今どんな気持ち!?どんな気持ち!?」


 私は腹を抱えて笑い転げた。

 お前らみたいな群れないと何もできない奴らとは違うんだ!

 これからも抗うよ!私は!



 その後、ショートホームルームは普通に行われた。

 この担任、私がジャージに着替えていることに一切触れない。

 そうだコイツ面倒事嫌いだったな。

 そして1時間目の授業は数学。

 単項式という単元を進めている。

 前の授業の復習として、黒板に問題が書かれた。


 3(4x+y)-2(3x+2y)=


 「それではカネミツ君、前に出てこの問題を解いてください」


 「はっ!余裕だなぁ」


 当てられたよあの馬鹿。

 カネミツって遊んでばかりのイメージだ。

 あの黒板消しの罠といい、頭がいい要素が見当たらない。

 カネミツは答を書いた。


 34232xy


 はぁ?


 「カネミツ君、違いますよ」


 「何だと!?僕ちゃんが間違ってると言いたいのか!?」


 そう言ってるだろ馬鹿。

 ていうかマジかカネミツ。足し算すらできてないじゃん。

 小学校からやり直した方がいいよマジで。


 「それでは代わりに……ムーさん、お願いします」


 「あ、はい」


 私は問題が書かれた黒板の前に来た。


 「僕ちゃんは世界の王だぞ!?そんな僕ちゃんが、間違っているはずないんだ!……っておい貧乏ブス!僕ちゃんが全てだ!お前が答を書いたところで無駄なんだよ!」


 お前いい加減席に戻れよ。

 お前が間違ってるから私がここに呼ばれたんだろうが。

 カネミツの力も、流石に先生には届かないらしい。

 私は途中の式と一緒に、答を書いた。


 =12x+3y-6x-4y

 =6x-y


 「はい、正解です。よく復習ができてますね」


 「はぁ!?なんで正解なんだ!?」


 言っておくが、私は勉強が得意な方ではない。

 学校がある日、私は毎日図書室でマヨと勉強をしてから帰る。

 わからないところは、マヨが教えてくれる。


 「おい貧乏ブス!お前さては不正したな!?そうでなきゃ正解になんてなるはずねぇだろ!」


 「不正って何?アンタが勉強してないだけじゃん」


 私はそう言って席に戻る。

 笑顔のマヨが、指でOKの形を作って私に見せた。

 私はピースで応えた。


 「おいクソ教師!あの貧乏ブスの不正を認めろ!」


 その後、カネミツがごねたせいで、授業の半分が潰れた。

 コイツ高校受験どうするつもりなんだろう?



 2時間目は体育。

 私はジャージ姿なので、そのまま校庭に向かった。

 マヨの着替え……ゴホッゴホッ!

 校庭で4チームに分かれ、ドッジボールをすることになった。

 私はマヨと一緒のチームになり、カネミツのチームと戦うことになった。

 しかし、私達のチームは大半がカネミツの取り巻きで、本気で投げなかったり、カネミツの球にわざと当たりにいったりしている。

 完全に接待じゃんこれ。


 「フフフ。やはり僕ちゃんは最強だ!」


 なんか言ってる。

 気づけば内野には、私とマヨしか残っていなかった。


 「おいブス貧乏wお前ごときがよくここまで生き残ったなぁw」


 ウチのチームメイト達が進んで当たりにいくからだよ。


 「食らえ僕ちゃんの必殺“カネミツシュート”ーーー!!!!」


 カネミツが投げたボールは目の前でバウンドし、丁度私の手の中に収まった。

 ”カネミツシュート”弱っw


 「はぁ!?おい!何取ってんだよクソが!」


 「こういうゲームだバ~カ!」


 私は怯えるカネミツに向かって、ボールを投げつけた。

 しかし、取り巻きの一人がカネミツの前に飛び出し、身代わりとなって当たった。


 「ハ~ハッハッハ!無敵の僕ちゃんに勝てると思ったか?馬鹿貧乏共!」


 怯えてたくせに。

 取り巻きに礼くらい言えよ。


 「フフフ。こうなったら秘密兵器を出してやろう。来い!野球部!ブス貧乏を当てろ!」


 「かしこまりました!」


 要は人任せね。


 「ウラァ!」


 野球部の剛速球が、私の足に当たる。

 悔しいけど私はここまでだ。


 「ムーさん……」


 「まぁ、しょうがないよ。ごめん、頑張って。マヨ」


 「ブハハハ!無様だなぁブス貧乏!弱ぇ奴は大人しく当たってればいいんだよww」


 言っとくけどお前何もしてないからな?

 多分一番弱いのお前だぞ?


 「ムーさん!」


 マヨは外野の私に向けて、思いっきりボールを投げた。

 両手で投げるんだ!可愛い!

 しかし惜しくも届かず、私を当てた野球部に取られてしまった。

 おい何やってんだ野球部。


 「おい、そのボールを僕ちゃんに寄越せ」


 カネミツが野球部が取ったボールを要求する。

 野球部はそれに従った。

 カネミツは気持ち悪く笑いながら、マヨに狙いを定めた。


 「クククッw最後は主役が決めなきゃだろ?」


 主役雑魚すぎでしょw


 「覚悟しろ?僕ちゃんの剛速球で貴様を沈めてやろう」


  ワンバウンドする剛速球って………。


 「死ねぇ!!!必殺“カネミツサンダーシュート”!!!」


 なんかパワーアップしている。

 しかし威力は“カネミツシュート”のまま(むしろ下がってる)のようで、ワンバウンドしてマヨの両手に収まった。


 「はぁ!?なんで取るんだよ!」


 「え、えいっ!」


 マヨは取ったボールを投げる。

 それがカネミツの肩にヒットした。


 「あ、当たった………」


 そうだよ。マヨが当てたんだよ。

 マヨは私の仇を取ってくれたんだ。

 あーーーもう!好き!結婚したい!ウエディングドレスのマヨを見たい!


 「ふっざけんなぁ!!!!」


 主役(笑)はご乱心だ。


 「こんなの認めてたまるかぁ!不正だ不正!おいチビ貧乏!貴様!不正を認めろ!」


 「ふ……不正って………」


 「カネミツ!」

 

 「あァ!?」


 マヨがカネミツに責められるのは納得いかない。

 私はカネミツに近づき、文句を言ってやることにした。


 「あのさぁ!アンタドッジボールのルール知らんわけ!?ボールに当たったらアウトなんだよ!アンタはマヨが投げたボールに当たったからアウトなんだよ!不正ってなんだよ不正って!言えよ!何が不正だよ!」


 「ひぃ!」


 カネミツは私の剣幕に圧されて後退る。

 そして何故か怒鳴った。


 「うるさいうるさい!僕ちゃんが不正って言えば不正なんだよ!」


 怒りを通り越して呆れる。

 頭脳だけでなく、精神まで幼稚園のままらしい。

 いや、幼児の方がまだ偉いぞ。

 結局カネミツのせいで、この日の体育は終わった。



 3、4時間目は連続で行われる。

 楽しみにしていた家庭科の調理実習だ。

 作る料理はイチゴ大福。

 これなら給食もギリ入るだろう。

 グループの関係でマヨとは離ればなれになってしまったが、マヨのイチゴ大福がより楽しみになった。

 私達はこの時間の前に、お互いの作ったイチゴ大福を、交換して食べる約束していた。

 先生の説明を受け、各々取りかかる。


 「フフフ。僕ちゃんはその辺の奴らとは違うんだよ」


 馬鹿がまた何か言ってる。


 「僕ちゃんは隠し味を持ってきた。これでおフランスなイチゴ大福が出来上がるぞ」


 「おぉ!」


 「流石はカネミツ様!」


 「考え方が違う!」


 マジで何言ってんの?

 取り巻きって慕ってる人に似るのか?

 カネミツ達の話を無視し、私は作業に集中する。

 そして数十分後、イチゴ大福が完成した。

 始めて作るが、我ながら良いできだ。

 少し不格好だけど。


 「フフフ!できたぞ!イチゴ大福キャビア味!」


 あっちもできたらしい。

 ていうか学校に何持ってきてんのよ。

 そうだ、マヨに私のイチゴ大福を食べてもらわないと!


 「マヨ、できた?」


 私は自分のイチゴ大福が乗ったお皿を持って、マヨの元に向かった。

 その時だった。

 誰かに足を掛けられ、私は転んでしまった。


 「あっ………!」


 イチゴ大福が床に落ちてしまった。


 「あぁ悪い悪いw僕ちゃん、気づかなかった☆」


 カネミツが私を見下ろして嗤っている。

 やられた。油断した!

 しかしカネミツの横暴は止まらず、私がマヨのために作ったイチゴ大福を踏み潰した。


 「あぁ…………」


 「おっと済まないwwwゴミかと思って気づかなかったwwwゴミはちゃんと落とさないとなぁwww」


 カネミツはぺしゃんこになった私のイチゴ大福を、さらに何度も踏みつけた。

 カネミツが足を退けたとき、私は変わり果てたイチゴ大福を見てしまった。

 白い生地には砂が混じり、こしあんと潰れたイチゴには埃が目立った。


 「なぁ、その、一往聞かせてくれ。ブス貧乏、お前今どんな気持ちだ?ブハハハハハハハハハハハハハハハハハハwwwwww」


 この時の私は、カネミツへの怒りよりも、イチゴ大福が台無しにされた悲しみに支配されていた。

 せっかくマヨのために作ったのに。

 マヨに美味しいって言ってほしかったのに。

 気づけば私は泣きじゃくっていた。


 「おいおい泣いてんのか!?ブハハハハハハハハハ!泣いてやがるよコイツ!」


 カネミツとその取り巻きの笑い声が聞こえてくる。

 ここまでの屈辱はなかった。

 私は潰れたイチゴ大福を見て、ただ泣いていた。


 「あの、ムーさん。こちらに」


 「マヨ………?」


 私はマヨに起こされ、一緒に家庭科室を出た。

 近くの階段まで来て、私達は座った。

 

 「イチゴ大福……残念でしたね……」


 「うん。……マヨのために作ったのに。マヨに食べてほしかったのに………」


 「私も食べたかったです。………あの、これを食べてください」


 マヨはお皿に乗った、二つに切り分けられたイチゴ大福を出した。

 私が作ったものよりも、とても綺麗だった。


 「慰めにならないかもしれません。でもせめて、私のイチゴ大福をムーさんに食べてほしいんです」


 「マヨ……。でもそれじゃあ、マヨは食べられないよ?」


 「ですので、半分こです。一緒に食べた方が美味しいですよ」


 「マヨ………」


 「私のために一生懸命になってくれて、ありがとうございます。ムーさん」


 私たちは、マヨが作ったイチゴ大福を大事に味わった。

 それは今まで食べたものの中で、一番美味しかった。



 給食を食べ終わって昼休み。

 私はカネミツ一派に囲まれた。


 「おいブス貧乏、ちょっと来い」


 「は?嫌ですけど?」


 「拒否なんてできねぇぞ!お前には人権なんて無いんだ!おい、連れて来い!」


 「ハッ!」


 私はカネミツの取り巻きに両腕を掴まれ、無理矢理歩かされた。

 それにしてもコイツ、どんだけ自分が凄いと思ってんのよ。

 私は校舎裏に連れて来られた。


 「おいブス貧乏、お前最近調子乗ってんだろ!」

 

 お前よりは乗ってねーわ。

 つーか乗っちゃダメなの?


 「今日だって算数の授業で不正を働いたよなぁ!?」


 お前が馬鹿なだけだろ。

 一応だけど“算数“と言うより”数学”な?


 「ドッジボールだって僕ちゃんの必殺シュートを止めやがって!」


 ドッジボールのルール理解してこいよ。

 あと必殺シュートってもはや別のスポーツだろ。


 「そして!僕ちゃんが作ったイチゴ大福が!死ぬほど不味かった!」


 失敗してたのかよ。

 ていうかこれに関しては私関係なくない?


 「調子に乗るのもいい加減にしろよ?僕ちゃんのことも振りやがって。何様だお前?」


 「そのまま返すわ」


 「はぁ!?」


 カネミツは私の胸倉を掴んできた。

 だけど正直怖くもなんともない。


 「何?アンタが私に嫌がらせするのって、私に振られた腹いせ?誰がアンタみたいなの好きになんのよ?」


 「なにぃ!?」


 「そもそもさぁ。私男にも金にも興味ないんだよね。なんかごめんね」


 「こんにゃろぉ!!」


 カネミツは私を思いっきり地面に倒した。

 地味に痛い。


 「自分の立場がわかってねぇみてぇだなぁ。お前らぁ!このブス貧乏をやっちまえぇ!!」


 「「「「「ハハァ!カネミツ様の仰せのままに!」」」」」


 それから私は、カネミツの取り巻き達にリンチされた。

 殴られたり蹴られたりするのはまだマシだった。

 土を口の中に捻じ込まれたり、石で撲られたりしたときは死ぬかと思った。

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る頃には、私は自力で動けなくなっていた。


 「ブハハハハハハハハハハハハハハハ!無様な姿だなぁブス貧乏!」


 うるせぇクズ。

 この世の雑音を集めたような笑い声しやがって。

 女の子に暴力振るうとか普通に最低なんだけど。


 「これに懲りたら調子に乗るんじゃねぇぞ!わかったな!?」


 カネミツは捨てゼリフを吐くと、取り巻き達を連れて去って行った。

 校舎裏にボロボロの私だけが残された。

 5時間目が始まる時間になっても、私はただ、校舎裏でぶっ倒れていた。

 でも、笑うくらいの元気は戻ってきていた。


 「ハハッ。馬っ鹿じゃないの?私を調子に乗らせたくないんだったら殺さないとダメじゃんw」


 私は体中が痛む中、なんとか起き上がる。

 しかし維持できなくて、壁に寄り掛かった。

 あんな奴ら相手に負けなんて認めない。

 私は何をされても、抗う覚悟をした。



 数日が過ぎた。

 私は変わらずカネミツ達から酷い仕打ちを受けている。

 この日の朝も、カネミツに足を取られて転ばされた。


 「わりぃわりぃ。ボールかと思って蹴っちまったwww」


 あぁそう。

 眼科行けや。


 「おいおい寄るんじゃねぇぞ!僕ちゃんにお前の貧乏とブスのオーラが移る!」


 だったら蹴るなっての。

 あと顔で言ったら絶対お前の方がブスだぞ。

 まぁ、こんな感じで口には出さず、心の中で文句を言いながら私は立ち上がる。

 そのままカネミツには目もくれず、自分の席に着いた。


 「あの女……無視か!?僕ちゃんを無視するな!なんとか言いやがれ!」


 カマチョかよ。

 まぁいい。ここはお言葉に甘えることにした。


 「アンタってホントに暇だよね。そんなくだらないことしかやってないから“shake”を“しゃけ”って読むんだよ。勉強しろ」


 「なんだとぉ!?黙りやがれぇ!!!」


 どないやねん。

 この日もまた、私は昼休みにボコボコにされるのだった。



 「じゃあ行こうか、マヨ」


 放課後、カネミツ達から解放された私は、いつものようにマヨと図書室に行こうとしていた。

 マヨは浮かない顔をしている。


 「ん?どうかした?」


 「………もう、嫌です」


 マヨは泣きそうになっていた。


 「マヨ、どうしたの!?」


 「ムーさん、毎日ボロボロじゃないですか。ムーさんは、私に何もするなって言うけれど、……もう、限界です。ムーさんがいじめられるの、もう見たくありません!」


 マヨは泣き出してしまった。

 そうだ、マヨは辛かったんだ。

 私だったら自分がいじめられるより、親友がいじめられているのを見る方が辛い。

 私はどんなに酷いことをされても、放課後にマヨに慰められ、抱き締められるだけで満足していた。

 でもマヨは、ずっと苦しんでいたんだ。

 私を助けられない非力な自分を、ずっと呪っていたんだ。

 私はマヨが巻き込まれるのを恐れ、ずっと関わらないように言ってきた。

 マヨの気持ちを知らずに。


 「ごめん。ごめんね、マヨ」


 私はマヨの小さな体を抱き締めた。

 私はなんて最低な人間なのだろう。

 自分の愛する存在を、自分自身で傷つけてしまうなんて。

 マヨは私が思っているより、ずっと強い娘だった。

 …………。

 私はマヨに、提案をした。


 「マヨ、私に考えがあるの。これはマヨにとっては辛いことだと思うんだ。だけど、協力してくれない?これはマヨにしかできないことだから」


 マヨは真剣な顔をして、力強く頷いた。

 今まで我慢してた分、全部返してやる。



 翌日の昼休みに、私はまたカネミツ達に校舎裏に連れて来られた。

 そしていつものように、サンドバッグにされる。

 何回やられても慣れないなこれ。

 私が立ってられなくなったところで、カネミツが前に出てきた。


 「ブハハハハハハハハハハハハ!いやぁいつ見てもいい眺めだなぁ!」


 いつ聞いても気持ち悪い笑い声だなぁ。

 カネミツは私の頭を踏んづけた。


 「お前やっぱ調子に乗ってるよなぁ?ここまでされてもまだ僕ちゃんを馬鹿にした目で見てやがる」


 憐れんでんだよ馬~鹿。

 一人称から直して出直して来いや。


 「そうだ。ひとつ提案がある」


 なんだ?

 どうせロクでもないんだろ?


 「お前、僕ちゃんの女になれ。そしたら今までのことを水に流してやるよwww」


 ほらロクでもない。

 ていうか「水に流す」って言葉知ってたんだな。見直した。

 まぁ、私の答えは決まってるんだけどね


 「やだ。アンタの女になる程屈辱的なことはないよ」


 「な、なんだとぉ!?」


 カネミツは私の顔を蹴り上げた。

 一瞬意識が遠退く。


 「生意気だ生意気だ生意気だぁ!!!お前らぁ!!!やっちまええええ!!!!!」


 カネミツの取り巻き達に今まで以上にボコボコにされ、私の意識は途切れた。



 気がつくと私は保健室にいた。


 「あ、目が覚めたんですね。よかった!」


 マヨが傍に座っていた。

 笑顔だけど、涙ぐんでいる。


 「マヨ、あいつらに何かされてない?」


 「はい」


 「そうだ、ちゃんと撮れてた?」


 「…………はい」


 マヨはスマホを私に差し出した。

 そこには私がカネミツ達にリンチされている映像が流れていた。

 実はマヨに、私がいじめられている様子を撮るようにと、事前にお願いしていたのだ。

 マヨはあのとき、校舎裏の隅で隠し撮りをしていたのだ。

 映像自体はよく撮れている。

 そんな中、映像の後半に、マヨの涙を押し殺すような声が聞こえてきた。

 映像が終わったあと、私はまた、マヨを抱き締めた。


 「よく頑張ったね。きっとこれで、全部終わるよ。ありがとうマヨ!」


 マヨもまた泣き出した。

 ホントによく頑張ったね、マヨ。

 今すぐにでも、私の妻として招き入れたいよ。

 ………さてと、この映像、どうしてやろうか♪



 「おはよう諸君!この世の王・カネミツが登校してきたぞ!」


 カネミツの登校に沸く取り巻き達。

 どんなあいさつだよ……。


 「おいブス貧乏!ちゃんとあいさつしろぉ!!」


 「おはようございます、カネミツ王」


 「お?少しは従順になったか?」


 従順……ね。

 そんな難しい言葉、よく覚えられたね。

 パチパチパチ。


 「フフフ。良い気分だ。そうだブス貧乏、特別に僕ちゃんの靴を舐めさせてやろう」


 全く、呑気なものだ。

 今現在の自分の状況が把握できていないのだろう。

 今お前、すごいことになってるぞ?

 耳を澄ますと、たくさんの足音が聞こえてきた。


 「いたぞ!」


 マイク、カメラ、ボイスレコーダーを持った大勢のスーツ姿の大人達が、私たちの教室に入ってくる。

 ここまでだ。この世の王よ。


 「な、なんだお前たち!」


 彼らは記者だ。

 記者の皆さんは、一気にカネミツを囲い込んだ。


 「あの儲家財閥の御曹司のカネミツさんですね!?」


 「あなたは同級生を従え、女生徒をいじめていますよね!?」


 「何故あんなことを!?」


 「自身が行っていたいじめについて、どうお考えですか!?」


 記者達は次々と質問をカネミツに投げかけていく。

 昨日夜、私はあの映像をネットに挙げた。

 投稿後、ありえない早さで拡散されていった。

 その映像を記者の皆さんが観て、今に至るのだろう。


 「ふざけんな!僕ちゃんは!僕ちゃんは何も悪くないぞーーーーーーーー!!!!」


 ざまぁ見ろ。

 一生後悔だけしとくがいい。



 あの後、カネミツは学校に来なくなった。

 噂によると、別の学校に移されたらしい。

 あの映像が出回った以上、もう悪さはできないだろう。

 カネミツの元取り巻き達は、片道の狭い日常を送っている。

 そして私はというと、


 「おはようございます、ムーさん」


 「おっはよう!いつも可愛いマヨちゃん!」


 「もう!やめてくださいよ!」


 マヨとの楽しい日常を取り戻した。

 私はもう、誰にも負ける気がしなかった。



 お終い!

 さてと、どうだったかなぁ?

 誤字とかある?マーの馬鹿、そんなに確認することなく投稿するもんなぁ。

 ちなみに私、マヨに告白したんだ。結婚前提にお付き合いしてくださいって。でも、振られちゃったんだよね。

 それでも私たちは今でも友達だよ!ぶっちゃけマヨが幸せだったら私はOKなんだよね!ちなみに私は彼女募集中!

 おっとっと、長くなりすぎても困るよね。またこういう話があったら聞かせるよ。

 そうそう、マーの馬鹿が連載してる『八百万』もよろしくね!

 それじゃあね!


 (^^)/

 

どうでしたか?うごメモと違い、あまり満足できなかったように思えます。

また気が向けば、このような作品を投稿したいと思っていますので、そのときは是非見に来てください。

僕はTwitterやpixivでも活動しています。こちらにも遊びに来て頂ければ幸いです。

それでは皆さん、またの機会に!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ムーとカネミツ君の絡みがとても面白かったです。特にムーさんのドmにドン引きするカネミツ君がとてもかわいかったです。カネミツ君も所々ドジだったりかまちょだったりと人間味があってもうほんとにか…
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