二人の異空間と謎の塔
外の世界、人間たちが住む世界とここは別の世界。
異空間とも言えるこの世界は遠くから見れば果てしない空の真ん中の浮遊大陸だった。
そのあまり大きくはない大陸がセルミネとリシュアの拠点だ。
まるで空のように見える空間の上段は普通の空だ。
太陽と月が登り、沈む。時には曇ったり雨や雪も降る。
でもその大陸の下段は光と闇がうずまく、この“はな”の根源でもある深淵だった。
そこに落ちたらセルミネやリシュアでも無事だとは絶対限れない。
そんなわけで、彼らの生活のほとんどは大陸の上にそびえ立つ黄金と白の城だ。
もちろんその周りの庭底はリシュアの大好きな場所だった。
大陸の周りには大きな木に見守られる丘を中心にルドベキアの花畑がけっこう広い。
でもここのルドベキアは、白黒の色であり、それはこの”はな”の常識だ。
遥か昔からあったその花畑からもっと内陸へ来るとリシュアの自慢の庭がある。
”ガーデナー”というのは“はな”を守護するものを称する言葉だったが、
リシュアはその意味通りに庭を育てるのが趣味で、得意だった。
彼の手で育てた城の周りの庭は雑草ひとつもない。
色とりどりの花や草がきれいに咲いてる庭だったから、ルドベキアのモノクロの色だけではない。
その庭の真ん中にある、よく畳んでいる土道を通れば城の入り口だ。
黄金の大きな門にはドラゴンの姿が刻まれている。
階段を上って門を開けば大きなホール。
カーペットもシャンデリアも飾り物もない、ただ窓から差す光だけが埋めている。
その寂しいホールの左右には廊下が、正面には2階への階段がある。
2階の部屋は食堂以外はほとんど使われてない、空いた部屋だ。
最上階の3階は倉庫だった。セルミネが世界各地で集めた宝や、ギャンブルで取ったお金と宝石などがある。
そんなわけで、この広いお城で実際に使われてるのは1階のセルミネも部屋だけだ。
リシュアの部屋ももちろんあるけど、何故か二人はもっと大きいセルミネの部屋をいっしょに使っている。
リシュアは部屋を出て廊下をまっすぐ歩いた。ちょっと遅い目の朝焼けが廊下を照らす。
意味不明の絵がたくさん飾られている壁をのぞきながら廊下を出た。
ホールにたどり着いて門を開いたら強い日差しがまぶしい。
そして目の前に晴れた空と青い庭が広がった。
階段を降りて土道を走って行くと思ったら途中で寄り道が現る。
大きな木の影で少し暗いその寄り道に入ったリシュアはもう慣れた道を迷わず進む。
だんだん影が薄くなり、光が差すとこまで来ると、そこには塔があった。