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4話『ご機嫌うかがい』



 結局、昨日琥牙は機嫌の悪いまま帰った。


 全く何が気に入らなかったのか知らないが琥牙があそこまで機嫌が悪いのは初めて見たかもしれない。

 琥牙は基本的に忘れっぽいからね。

 怒りも長続きしない。


 喧嘩という訳でもないけど今日は機嫌を直してもらおう。

 ずっと琥牙の機嫌が悪いのは嫌だからね。


 コンビニで何か甘いものでも奢ってやるかな。





 ○ ○ ○ ○ ○





 ガラッ



 ガサガサとビニール袋の音をたてながら自席に向かう。

 コンビニに寄ってから登校したから琥牙はもう来てるかと思ったがまだらしい。

 ああ見えても真面目な琥牙にしては珍しい。


 欠席だろうか。

 馬鹿は風邪をひかない……いや琥牙は体が丈夫だから風邪ではないはず。

 ならば怪我だろうか。

 琥牙が怪我……

 喧嘩でも怪我をすることなんてないから想像出来ないな。

 それなら事故の方が有り得そうだが。

 事故なら事故で心配だ


 スマホを見てもLINEも何も連絡は来ていない。

 一応、今日学校に来るのか聞いておく。


 俺も予鈴が鳴ったあとに学校に来たので朝礼まで時間がない。


 担任が来たので仕方なく席に戻って朝礼に参加した。







 朝礼で欠席の連絡はなかった。

 暢気に授業を受けながら待つ事なんて出来るはずもなく直ぐに教室を出た。

 スマホを見ても返信はおろか既読さえつかない。

 分かる事は靴箱に靴もないのでまだ学校には来ていない事だけ。



 今までこんな事なかった。



 琥牙は遅刻を嫌って小中と高の10年半ずっと無遅刻だ。

 俺がLINEすればしょうもない事でも返事してくれた。

 既読スルー、ましてや未読スルーなんて論外だ。

 勿論、気づかなかっただけかもしれないが。

 そうでなければ避けられている?

 わざと無視されているのでは?



 ……嫌われた?



 いや、琥牙に限ってそれはない。 ないと思いたい。

 琥牙は嫌いだからといって人を無視することは無い。


 無いはずだが……それ以外の理由が分からない。


 嫌われる理由ならば幾つか思い当たる。

 昨日、機嫌が悪かったのがいい例だ。


 俺には何が気に障ったのか分からないがきっと俺の言動が原因なんだろう。

 話を聞くにしろ謝るにしろ無視されていたら敵わない。



 どうする?

 探しに行くか?

 探すとしても何処にいるか分からないから虱潰(しらみつぶ)しになるけど……



 本当に避けられていたらどうしよう?

 俺の早とちりなら良いけど。

 まぁ確証も何も心当たりすら曖昧だけど。

 現に今、LINEの既読すら付けてくれないからなぁ

 友達としてすら傍に居られなかったら、

 どうしよう



 駄目だ

 混乱して悪い方にばかり考えてしまう。

 風にでも当たって落ち着こう。





 毎日使っている屋上もとい俺たちの喫煙所。

 本当は立ち入り禁止だから先生も来ないし休憩する(サボる)には持ってこいだ。

 教室に居る時間と同じくらいの時間をここで過ごしている気がする。ひょっとしたらここで過ごす方が長いかもしれない。

 朝も昼もたまに授業中もここに居るからなぁ。あくまで、たまに、ね。


 ここで良く吸ってるけど、実は俺はそんなに煙草は好きじゃない。

 煙草なんて煙たいし噎せるし美味くない。

 体にも悪いしな。

 発明したやつの気が知れない。

 琥牙が吸ってみたいって言うから付き合って吸い始めただけ。

 辞めようとは思っているけどこれを口実にここで2人きりになれると思うとつい辞められない。

 今もほら癖で煙草を出してる……



 って誰に何を語ってんだよ。



 とまぁ一人心の中で禁煙出来ないことに言い訳しながら現実逃避をしてみたけどツッコミの言う通りなのでやめる。


 飴でも持ってくりゃ良かったなぁ。

 誰も見てないし火は付けないで煙草だけくわえる。

 これはこれで嫁に言われて禁煙してるおっさんみたいだな。



 いやそうじゃなくて。

 琥牙の事だよ。そう琥牙の事で悩んでたんだよ!煙草の話は関係ない。

 何度見ても既読も返信もない。

 どーすんだよ!

 LINE見てないのにメール見る訳ないし探しに行くにもにも探せない。

 打つ手なし。


 頭痛がしそうだ……


 LINEもメールも駄目とか連絡手段ないじゃん!




 ……あれ?LINEと、メール……ん?



 違和感に気付いて指折りながら数えてみる。





 「……え、電、話、は?」




 俺、電話してなくね?



 連絡手段と言えば電話じゃん!

 何で忘れてんだよ!




「 っあ!煙草!熱っ?!? ……くねぇ…」



 煙草の存在を忘れて口を開いたから煙草を落としてしまった。火を付けてなかったから良かったものの火を付けてない事も忘れていた。



 滅茶苦茶焦ってんな俺……





 「あーあ。情けないなぁ……」




 独りごちるも落とした煙草はきちんと拾って携帯灰皿に突っ込んだ。


 あ、火を付けてないから灰皿の意味無いのか。




 ちょっと赤くなってしまった。

 一人で百面相してた所を誰も見てませんように……






(琥牙視点)





 ゔぅ……頭痛てぇ……

 怠い……

 やっぱこの時期に学ランの下タンクトップ1枚じゃ無理か。屋上って結構風が吹いてるしな。

 まぁそれだけじゃないんだろうけどさ。

 昨日、蒼月がヤったとか言うからなんか色々考えちまって……あああああ止めよ止めよ。キリがねぇ。嫉妬とかそんなんじゃねぇよ。

 そもそも嫉妬って誰に妬いてんだよ。

 蒼月か?まさか女の方──?




「いや、何で俺が女に嫉妬すんだよ……」




 てゆーか何でこんな事考えてんだよ。

 疲れた。寝よう……




 そう言えば蒼月に休むって言ってねぇ……




 意識が落ちる直前にふと思ったがそのまま微睡みの中に沈んで───いかなかった。



 携帯の着信で強制的に起こされる。


 居留守は良くないよな……出るか……





「……蒼月、か?」


『──あ、琥牙!おはよう!今日どうしたの?』



 何故かテンションが高い。

 いい事あったのか?

 俺は休みなのに。


「あー風邪ひいたっぽいから休むわ……」


『あぁ風邪かぁ珍しいね琥牙が風邪なんて』



 だから何でほっとしてんだよ。

 俺が風邪だったら心配しろよ……

 ムカつく。無性に苛々する。

 あぁ熱のせいだ。

 そうきっと熱のせいだから落ち着け……


「そうだな。何年振り、だろう、なあ……」


『あ、ごめん寝るところだった?寝たら?もう切るから』


「何で」


『─え?寝なくていいの?』


「切らなくて、いい、だろ……」


『……琥牙?』



「──……すー……すー……」



『……あははっ寝ちゃった?今日の琥牙なんか変だね。何かあったのかな?』




 微かに寝息が響く中、携帯が──正確には蒼月が──囁く。




『……おやすみ。また後でね琥牙』





 尤も、それを拾う者は居らず寝息と共に滲んで消えてしまったが。









 ○ ◇ ○ ◇ ○





 ──あ、そう言えば風邪で学校休んだのか



 うん。結構熱下がったっぽいな。

 怠さが大分なくなった。

 腹減ったし目覚めたついでに起きるかな……





「あ、おはよう琥牙。気分どう?」





 ………は?

 ここ、俺ん家だよな?

 何でこいつが俺の部屋に居るんだよ?

 あー夢?





「えっ?!ちょ、何でまた寝んの!?なんか言えよ!無視やめて!たーいーがー!」



 被った布団を引き剥がされるので諦めて起きた。



「───っ何でここに居るんだよ……」



「琥牙が居ないのに学校行くとか面白くないじゃん。それに琥牙も寂しいかなーって」



「いやそうだけどそうじゃなくて、どうやって入って来たんだよ?あと別に寂しくねぇ」



「ああ、丁度めぐみちゃんとすれ違いでさ、看病頼まれちゃった!」



 めぐみちゃん……母さん何してんだよ

 どうしてイケメンは友達の母親をすぐちゃん呼びするんだろうな?

 あんなババ──いやこの先はやめとこう。ちゃん呼びするような年齢じゃないのにな?



「看病とか要らねぇよ。もう熱下がったし。……何かお前今日テンション高くね?」



「そう?久しぶりに琥牙の部屋来たからかな?」



 そう言えば夏休み以降は蒼月の部屋でばっか遊んでたか。久しぶりと言えば久しぶり、か?


「そんな事でテンション変わんのかよ……」



「まあね?」



 何故地味にドヤ顔なのか。



「ところでお腹空いてない?もう昼だしご飯作ったけど」



「え?作った?蒼月が?」




「うん。冷凍チャーハン」




「……冷凍?チャーハン?……」









 ……作ったとは?

 ……そして何故チャーハン?









 「「………………」」








 暫く部屋が静寂で包まれたのは言うまでもあるまい。









「あー美味かった!ご馳走様!」


「デザートのおやつもあるけど食べる?」


「今飯食い終わったとこ……」


「雪見だ○ふくとかショコラなんとか、なんちゃらアラモードとか有る「食うから寄越せ」……食い気味…」




 デザートは別腹ってな。

 風邪?知らん。

 ある物は食わなきゃ勿体ないだろ?

 雪見だい○くなんていつ食べても美味いからな。このモチモチがたまらん。


 やっぱうめぇー!

 何個でも食えるわ。

 誰かが物欲しそうに見てる?

 知らん。これ俺のためだろ?渡すものか。



 食べたら次。食べたら次、を繰り返して蒼月が買ったデザートは全部俺が頬張った。


 流石蒼月だな。俺の好みを分かってる。

 全部美味かった。



 食うものは食ったし寝るのもなぁ。

 次は何するかな……




「……機嫌は直りました?琥牙くん」



「は?機嫌?何の話だ?」



「あれ?昨日、怒ってたじゃん?機嫌悪かったのかなーと思って」



「怒った……?そんな記憶はないけど」


「……嘘?」


「機嫌も別に悪くない」



「……」


「どうしたんだ?震えてるぞ?」



 心配したつもりだったんだがいきなり襟を掴まれた。





「……っ俺のおやつ返せよ!!!」




 ………え、そこ?

 おやつって機嫌とるために買ってきたのかよ!お見舞いとかじゃなくて?!

 酷くないか?!




 その後蒼月はしばらく喚き散らしてましたとさ。










「俺のおやつ……俺も食べたかったのに……琥牙の馬鹿……」



「また買えばいいだろ?な?」



「そういう問題じゃねぇ!何で全部一人で食うんだよ!おかしいだろ!」



「えぇー……」













なかなか進展しないですねこいつら

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