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3話『何でもないよ』








「………………いい加減戻らないとなー……」





 保健室から出てきて20分近く経った。

 流石に戻らないと琥牙が起きるだろうし、あと数分もすれば予鈴も鳴る。

 いざ帰ろうと思って立ち上がると手に何か持っていることに気付いた。




 「忘れてた…………ごみ、捨てないと」




 すっかり忘れてたなぁ

 なんて苦笑しながらゴミ箱を探す。

 ごみ捨てという大義名分で出てきたのにごみを持って帰ったらおかしいだろう。

 そんなことも忘れるほど何してたんだよ……


 あぁ、そんなことも忘れる程馬鹿みたいに盛ってたのか…………


 もはや呆れて乾いた笑みすら出てこない。


 本当何でこうなったんだろ……


 いや、俺が不甲斐ないからなのは解ってる。


 でも、納得出来ない……



 自分で決めてた一線を超えそうになった



 それを認めたくない自分がいる。


 だって今までは大丈夫だったのに


 ずっと琥牙が好きで


 親友って形だったけど


 望んでた形とは違うかったけど


 もっと近づきたかったし


 親友じゃ出来ないこともしたかったけど


 でも今までずっと傍にいて


 これからもずっと傍にいるんだって


 だから絶対に手は出さない


 琥牙に求められたら応えるけど


 俺からは親友としてしか求めない


 絶対に傷つけない


 嫌われる事もしない


 なるべく自然に傍に居られるように


 『親友』でいるんだって


 心のどこかで決めてて


 俺が自分で引いてた一線


 これは絶対に超えないってことは決めてて


 これからも望まない形(このまま)でずっといるのか


 なんて深く考えなかった


 ただ、どんな形でも琥牙の傍にさえ居れたら良い


 とにかく傍に居たい


 離れるのだけは嫌だから


 その一心で今日まで過ごしてたし


 ちゃんと守れてた


 なのに


 守れなかった


 今まで守れてたものが


 もはや日常となっていたことが


 癖になってたことが


 守れなかった


 なんで?


 何で守れなかった?




 さっき散々考えて答えの出なかった問いが再び頭をぐるぐる回り始める




 これ以上考えても仕方ない


 解ってるけど、でも、


 問わずにはいられない


 どうしても考えてしまう…………









 「っ、くっそ……やめだやめ!戻ろ!」





 ごみを八つ当たり気味にゴミ箱に投げつける。


 これ以上考えても仕方ない。

 やっと踏ん切りを付けて来た道を戻る。

 心無しか足が重い。

 それでも小走りで歩く。

 もう予鈴も鳴ってしまったから琥牙は起きてるかもしれない。


 琥牙は寝てたから俺がキスしそうになった事は知らない。

 だから、なるべく悟られないように。

 違和感を持たれないように振る舞うんだ。

 ポーカーフェイスは得意だろ?


 つい先程までポーカーフェイスが崩れてた事を棚に上げて自分にそう言い聞かせた。


 殆ど走りながらも保健室に着く。


 琥牙がまだ寝てる事を願って、目の前のドアに手を掛ける。


 懲りもせずに、まだ寝てたらサボって琥牙の寝顔鑑賞をしよう。と決意して。









 □ □ □ □ □


 (琥牙視点)








 ん……



 誰かいる……?



 あ、頭あったかいなぁ……



 なんでだろ……落ち着く……



 誰か分かんないけど



 手の重みが気持ちいい……






 誰だろ……俺の頭に手を乗せてる奴……





 ………………あれ?俺寝てた……?





 ……頭に、手?…………?






 え、もしかして俺、撫でられてる……??











 ガバッ




「うわっ!お、おはよー琥牙。どうした?」




 ゾッとして飛び起きたら蒼月が声を掛けてきた。

 蒼月の行き場の無くなった手を見るに俺の頭を撫でていたのはコイツだろう。




「あ、あぁ。おはよ……おまえさ、今、何してた??」



「え、あぁバレたか。琥牙が寝てるとことか久しぶりに見たからイタズラしたくなってー」




 …………



「……頭を撫でるのはイタズラなのか?」



「ん?いやそれは琥牙の頭見てたら猫みたいにふわふわそうだなーと思ってつい」



「……………………あっそ……そんな気持ちいいものかよ?男の髪なんて」



「…………今ちょっと引いた?琥牙だからだよ。他の男の頭なんて触りたくない」




 男なのに男に撫でられても嬉しいもんじゃない。こんな年なら余計に。


 俺だったらなんで良いのかよく分からないがまぁ、コイツならいいか。


 他の男だったら一発ぐらい殴ってたところだ。

 気持ち悪いことこの上ないからな。





 しかし寝たらスッキリしたなぁ

 てか、なんか食べたくなってきた……

 寝る前に食ったけどな……






 ……あれ?俺、昼飯食べてから寝たよな?


 結構ぐっすり寝てた気が……



 廊下からも声が聞こえてこないなー……




 もしかしなくても、これは授業始まってる……




「蒼月おまえ、授業は?始まってるよな?」



「うん。でも琥牙を置いてくのもなあと思って。どうせサボろうと思ってたし」



「ずっと何してたんだ?俺が寝てる間」



「……ごみ捨てとかに行ってたよ?」



「でもその他はずっとここで?……お前、俺ばっか見てて楽しいか……?」






(蒼月視点)






『……お前、俺ばっか見てて楽しいか?』





 ええ、そりゃもう最高に楽しいですよ。

 昇天しそうなほど幸せですよ。



 なんて言えるわけないじゃん?

 本当は即答したいところだけどそんな事いきなり言ってもただの変態だよ?


 なんで琥牙今日はこんなに冴えてるんだよ……

 これ以上痛いところつつかないでくれ……







「楽しいよ?琥牙の寝顔面白いもん」



「なっ!お、俺変な顔して寝てた……??」



「ふふふっ 秘密ー」



「えっおい!教えろよー!!」



「ははっ」




 琥牙はまだ何か文句を言ってるけど気にしない。

 うん

 やっぱり怒ってる顔も可愛い。

 琥牙なら変顔してても可愛いからそんなに気にしなくていいのにね





「………お前、なんかあった?」



「…え?何で?……何も無いけど…」



 やべっ

 今ちょっとドキッとしたよ

 何もバレるような事なんてして無いはずだけど……




「本当か?……なんか辛気臭い顔してっから」



「そう?そんな顔してる自覚なかったんだけど……」



 まぁ、罪悪感はあるけど顔に出さないようにしてるんだけど?

 そんなに暗い顔なんてしてたかな…?

 笑って誤魔化しておこう





「………はぁーその顔だよ!それ!胡散臭い!ヘラヘラしやがってよー」



「え、いやそんな……胡散臭い?初めて言われたよ?酷くない?ちょっと傷付いたんですけど……」



「やっぱ何かあったんだろ?……それとも俺じゃ頼りにならないか……?」




 頼りないから言えないんじゃなくて

 琥牙には言えないんだよ

 悪いのは琥牙じゃなくて内容なんだよ

 だからそんな顔しないでよ……


 そう言えたら良いのにね

 でもそう言えばきっと

 やっぱ悩んでるんじゃねぇか!

 って心配するんだろうな……




「だから何でもないって言ってるじゃん。琥牙が頼りにならないとかじゃないって」



「………」



「本当になんでもないって」




「………………あっそ   苛つく………」








 最後舌打ち混じりに何か聞こえた気がするのは気のせいかな………?








あげ忘れてた……:( ;´꒳`;)

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