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2話 『保健室』

ちょっと長くなりました。。。

(蒼月視点)





 ガラララッ



 お、誰か来た──



 「蒼月ぃー飯は?食わねぇの?」



 誰かと思えば琥牙である。

 迎えに来てくれるとか優しいな。

 でも俺以外のやつにはだめだよ?



 「あ、もうそんな時間か。食べるよ?」



 頭では馬鹿なこと考えながらも言葉を返す。



 「何でずっと保健室にいたんだ?もしかして本当に体調悪かったのか?」



 違うよ。

 ちょっと妬いちゃってイライラしてただけ。

 心配してる顔も可愛いな。

 琥牙は。



 「ん?違う違う。大丈夫だから心配しないで」



 「本当か?お前、無理すんじゃねえぞ?」




 優しい。

 あぁ、ちょっと背低いから覗き込んでくる時の上目遣い。

 顔は紛れも無く男だけど、可愛い。

 可愛い過ぎて俺、死ぬかもしれない。

 無理しなくていいの?

 じゃあ襲ってもいい?




 「大丈夫だって。購買行く?」


 「あ、先に買ってきたぞ。お前のも。これで良かったか?」




 そう言ってビニール袋を渡してくる。

 ツナパンにウインナーヘルンといちごミルク。

 いつも俺が食べてるものだ。

 覚えてくれてるなんて嬉しすぎ。

 本当死ぬ。

 襲いたい。




 「ありがと。俺の好きなのばっかり」




 いつも通り脳内で悶絶しまくる。

 俺、ポーカーフェイスは自分でも凄いと思う。

 頭の中がいくらヤバくても顔は何時でも親友の顔を保てる。

 嫌われて傍に居れないとか死んだも同然。

 その為ならポーカーフェイスとか楽なものだ。

 琥牙、

 何をしてでも絶対に離さないから俺。




 「お前、何時もそれだろ?流石に覚えてる」



 「そう?ま、いいや。誰も居ないしここで食べよ?」



 「そうだな。移動するのも面倒だしな」




 俺が座ってるベッドの向かいに椅子を置いて琥牙が座る。

 いつもみたいに横に並んで座るのも良いけど向かい合って座るのも良いな。

 琥牙の顔とか体とかを見やすい。

 今日はメロンパンに焼きそばパンにあんぱんとコーヒー牛乳。

 琥牙は必ず昼にメロンパンを食べる。メロンパンが好きらしい。

 


 「いただきマース」



 棒読みでも毎日欠かさず頂きますを言う。

 律儀だなぁと毎回思う。

 琥牙にならって俺も食べ始める。

 琥牙を眺めながら食べる飯は最高に美味い。学校に行けば毎日見れる。

 なんて幸せなんだろう。

 もぅ明日死んでもいい。

 嘘。付き合えるまで、いや琥牙が死ぬまで死ねない。

 あ、看取りたいけど看取られるのも良いかもしれないな。




「そう言やお前、保健室(ここ)で何してたんだ?

まさかずっと寝てた訳じゃないよな?」




 痛い所を突いてくる。

 なんて言い訳しよう。

 言えないもんな。

 ──────してたなんて。





  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ガラッ



 「おはよーみのりちゃん。ベッド借りる」


 ボフッ



 「朝から何やってんのよ。授業は?可愛い可愛い彼氏くんは?」



 「……琥牙は彼氏じゃない。疲れたから寝る」



 「何?喧嘩でもしたの?」



 「何でちょっと嬉しそうなの」


 「喧嘩はしてない」



 「いや当たり前でしょ?毎日の様に惚気けられる私の身にもなってくれない?あと授業は?」



 「みのりちゃんも彼女の惚気け話するじゃん?センセーなのに良いの?」



 「私は先生は先生でも養護教諭だから。それと授業は?無視するんじゃないの」



 「理由になって無くない?授業はいい。それより聞いて」



 「私も暇じゃない」



 「生徒のココロを癒すのも養護教諭サマのオシゴトだと思いマス」



 「思っても無いこと言ってんじゃないわよ。まぁ聞いてあげるわよ」



 「わぁーい」



 「棒読み止めて」



 「それでさぁ朝から琥牙が可愛いんだよ。そこまでは良かったんだけど、琥牙がさぁ?……って言うんだよ。ホントやめて欲しい」



 「ん?彼氏くんが何て?」



 「彼氏じゃないけど、セフレが欲しいってさ」



 「へぇ?良かったんじゃない?セフレになってあげなよ。君の大好きな彼氏くんとセックスできるよ?」



 「あ゛?」



 「あー怖い怖い。そんなに睨まないで?でもそうでしょ?君もヤリたいんだからwin-winじゃない?」



 「ヤリたいけどそうじゃなくて、どうせ琥牙は『女』とヤリたいんだよ」



 「がんばれ」



 「ちょっと。適当なこといわないで」



 「頑張る以外に君に選択肢ある?ないよね?」



 「……」



 「不貞腐れてないでさっさと戻りな。私には惚気けも言い訳も要らないからね」



 「…せめて惚気けさせてよ。こんな事言える人みのりちゃん以外にいない」



 「そんな言い方されても嬉しくない」



 「まぁともかく。毎日朝から死にそうだよ。本当。今日もさー」



 「ちょっと!あー!今日も午前潰されるぅ〜」



 「どうせみのりちゃんやる事ないでしょ」



 「あるわよ! 「琥牙、朝から駅でさー」 って聞いてないし……」






 「はぁぁぁ〜〜〜今日も一日疲れるわ……」










  ◇ ◇ ◇ ◇




 保健室で朝から、いや毎日のように養護教諭のみのりちゃんとこんな遣り取りをしてるとは口が裂けても言えない。


 言い訳言い訳……



 「あー何してたと思う?」



 俺はバカか。

 白々し過ぎだろ。

 つか直球すぎ。

 幾ら琥牙でも怪しむって…



 「え?休んでたんじゃないのか?」



 ほらぁ。

 怪しまれるに決まってるだろ。

 みのりちゃんが朝から変な事言うから。

 うあぁぁ…



 「あ!!まさかお前…」



 あれ?なんか勘違いしてくれそう?

 よし、乗っかろう。



 「ん?なに?」




 「まさかお前、誰もいないからってここで、…シてたんじゃないだろうな?」




 「え?」



 え?ええ?

 琥牙?君、俺のことなんだと思ってるんだ?

 は?ヤリチン?おいおいおいおいおいおい

 これ乗っかれないだろ。

 どーすんだよ。



 「隠すなよ。正直に言えって。別に俺を放ったらかして女とヤってたからって怒らねぇって」



 「いや。ヤってないから!!」



 琥牙イラついてる?

 なんか目が据わってるよ?



 「じゃあ何してたんだよ。密室で2人何もしてなかったなんて言うなよ?」



 「って2人?俺と誰?」



 「は?しらばっくれんな保健室の先生が居ただろ」



 「あー……」



 ごめん琥牙。

 正直君がそこまで頭回ると思ってなかったよ…

 要らないとこで頭使わなくていいから…



 「ほら、やっぱそうなんだろ?」



 もう、そういう事にしとこうかな…

 誤解解くの面倒臭そう…



 「あーはいはい。そうだよ」



 「………」




 あれ?もしかして怒った?

 幾ら自分が溜まってたからってそんな事で怒らないでよ。

 怒ってる顔も愛おしいけど。



 「ぼーっとしてるならメロンパン頂戴♪」



 「俺のだ!やらねえよ!!」



 相変わらずメロンパンにはムキになる。

 いいなメロンパン。

 俺も妬かれたい。琥牙に。

 俺のだからやらねえよ!とか言われたい。

 くそ。メロンパンずるい。

 メロンパンと代わりたい。




 「蒼月?お前もぼーっとしてんじゃねえか。もーらいっと」



 「あっ」



 琥牙が俺の手からいちごミルクを奪う。

 琥牙甘い物好きだからなぁ。

 いいよあげる。

 その代わり返してね?

 

 躊躇いなく同じストローで飲んでる琥牙に心の中で言う。


 関節キスだよ?それ。

 そんな事も気にならないんだ。

 ちょっと悲しい。




 「何だよ。張り合いがねえな。ぷぁっ、いちごミルクやっぱ美味いな」



 「返してよ?」



 「俺を放ったらかして女とヤってた奴のなんか全部飲み干してやろっかなー」



 「…根に持ちすぎ……」



 ヤってないんだけど。


 それに、琥牙絶対に気付いてないよね。

 俺が毎日いちごミルク飲んでる理由。

 確かに美味しいけど

 それだけじゃないんだよ?

 君が甘い物好きだから

 俺が毎日それを飲んでたら毎日頂戴って言うでしょ?

 そしたら毎日関節キスできるよね?

 本当のキスはできないけど関節キスでもやっぱり嬉しい


 あぁ俺ってほんと下心あり過ぎだね……




 「飯食ったら眠くなるなぁ」



 ふあぁと欠伸しながら言う。

 うーん欠伸してる顔も可愛い。

 写真撮って部屋に飾りたい。

 スマホのロック画面にするのもいいかもしれない。


 あ、いいこと思い付いてしまった。



 「眠いの?じゃあここで寝たら?誰も居ないし」



 琥牙の可愛い寝顔をたっぷり堪能できる。



 「お、そうだな。丁度ベッドもあるし」



 乗った!

 いやー今日はツいてるな。

 琥牙の寝顔を想像しただけでニヤケてくる。

 危ない危ない。

 ポーカーフェイスポーカーフェイス。



 「どうぞ?」



 「んーおやすみぃ」



 っっ!!可愛いぃ!

 あーもう何でそんなに無防備なの?

 そんな簡単に男の横で寝たら襲われるよ?

 多分襲う奴は俺ぐらいだけど。


 直ぐにスヤスヤと眠り始めた琥牙をじっと見つめながら思う。


 困るな、横でこんな可愛い顔をしながら寝られると。

 あーキスしたい。

 襲いたい。

 琥牙の中を俺で一杯にしてあげたい。

 めちゃくちゃにしたい。


 欲望が限りなく溢れてくる。

 仕方無いから写真を撮るだけに止めておこう。

 当然、無音カメラだ。

 起きる心配はない。


 写真もいいがやはり生をしっかり目に焼き付けておかなくては。

 写真は十数枚だけにしておこう。


 あとはひたすら眺め続ける。


 昼休み中はほぼ確実に起きないだろう。

 つまり昼休み中はずっと愛でていられる訳で。

 この上なく幸せ。これ以上の至福などあるだろうか。

 いや無い。

 この至福の時を1秒も無駄にはしたくない。

 瞬きも惜しい程だ。



 しかし眺めるだけもつまらない。

 琥牙のことだ。

 少しぐらい触っても起きない……よね?

 魔が差す事なんて誰にでもある。

 だから少しだけなら……





 躊躇いつつも琥牙の髪を撫でる。




 思ったより柔らかいな。




 ちょっといい匂いがする。




 人の頭って暖かかったんだ。









 ───もっと、





     もっと触れたい───














 そっと自分の顔を琥牙の顔へ近づけ








  琥牙の髪に優しくキスを落とす


  耳朶に


  額に


  瞼に


  頬に


  やがて口へと───















 「─────んぅー………」







 「────── っ!!!」








 慌てて顔を離す。






 「…………すぅー…………」




 「………ほっ……」




 吃驚した。


 起きたかと思ったが寝言だったのか。


 『んぅー』って何?


 可愛い過ぎる。


 俺を殺したいの?


 琥牙に殺されるなら本望だけどね。


 でも琥牙を抱くまでは、


 死にたくないなー……………







 「………はあぁ━━━」






 ………危なかったな。


 もう少しで口にキスするところだった。


 幾ら何でも口には駄目だ。


 起きなくて良かった。



 起こさないようにゆっくりベッドから重い腰をあげる。





 椅子に座って改めて琥牙の顔を見ていると、どこか夢心地だった頭が冷えてきて。



 さっきまでこの顔に手で触って、


 口でも触れてたと思うと、


 熱が


 興奮が


 高まってきて。



 今度は


 頭では、なくて…………


 





 ─────っ、う─────













 「…………ご、ごみ捨てに行ってくるね」




 寝ているから意味が無いと分かっているが声を掛け、足早に保健室を出る。






 「───っ、」



 耐えきれず、直ぐに廊下を駆け出す。



 走りながらも考える余裕はあった。





 馬鹿だ。




 俺は馬鹿だ。





 馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。





   なんて



   なんて馬鹿な事を─────!!!



   なんで─────……!!!!!

















■ □ ■ □ ■ □ ■
















 「っ、────── はっ、はぁ、はっ」




 走り続けるのも疲れるし目立つので目に付いた近くの階段下に蹲り冷静になろうとする。












────やばい…………勃ちそう……───











 好きな人の顔に顔を近づけるなんて馬鹿な事を。



 何でキスなんかしようとしたんだ。



 触るだけのはずだったのに。



 調子に乗るな。



 キス、とか馬鹿かよ。



 口じゃなかったら良い



 なんて筈ないだろ?







 いやそもそも、




 触ろうなんて思わなかったら




 寝顔を撮ろうなんて思わなかったら




 ここで寝たらなんて言わなかったら




 やましい事なんて考えなかったら




 下心なんて捨ててあったら





 だったら、







 こんな事はしなかったんじゃないか?



 こんな事には



 ならなかったんじゃないか────?













今回は長かったですかねー

次話はもう少し短いかと!

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