1話『プリントと煙草と女』
予告無しでの連載です
来週には、予告しているほうも投稿します
「あ、おはようございますっ!」
「琥牙さん、おはようございます!」
朝、登校していると大勢の奴等が俺に挨拶してくる。
俺は近嵐琥牙。
いわゆる不良校の番長とか言うやつだ。
なりたかった訳ではないが、気付けば周りがそうなっていた。
ま、自分が一番強いという自負もあったし、こいつらの上に立つのも悪くなかった。
そのまま他の奴らの声を聞き流しながら教室まで行く。
ガラララッ
扉を開け教室に入っても挨拶の声は続いたが気にしない。真っ直ぐ自分の席へ行く。
「おはよう琥牙。今日もモテるねぇ」
朝からこんな皮肉を言うのは、と言うか学校で俺を呼び捨てにするのは蒼月ぐらいだ。
俺のツレで右腕的存在、小学校の頃からの友達でもある曽我部蒼月。
喧嘩も強い、勉強もできる、
イケメンで性格も良い。
ちっさい頃からよぉーくモテてる奴だ。
一方俺は、喧嘩は強いが、勉強はダメ。性格も……
って不良の鏡だな。当然モテない。
「うるせぇ。男にモテても嬉しくねぇよ」
「ふっっっ だよねぇ 」
「笑うな。それにお前の方がモテるだろ」
「…………」
「…なんか言ったか?」
「いや? それより先生が白紙でいいから出してくれって」
あーなんかあったな? 何のプリントだっけ?出さなくても良くね?
「白紙でも出してくれなきゃ進級させれないってさ」
「進級? 気ぃはやくね?まだ夏だぞ 」
「詳しくは知らない。もうすぐ冬だけどね」
朝からだるい。
とりあえずプリントのことは忘れよう。
鞄だけ置いて、教室を出る。
当然蒼月もついて来る。
「上、行くんだろ?」
ほんとコイツよく俺の考えてる事がよく分かるな。
蒼月の言う通り屋上に出る。
全く、最近退屈だなぁとフェンス越しに下を見下ろしながら一服。
俺の名前は最近では、結構有名らしい。別段喧嘩が大好きという訳では無いから、俺から喧嘩を売ることは無い。
勿論、売られたら全部買うけどな。
買い続けた結果が今なんだが。
「近嵐琥牙は危険だ」という噂が有るらしく、初めは生意気だとかいって喧嘩売ってくる奴が大勢居たが、そいつ等をぶっ倒していく内に誰も来なくなった。
バイトなんてして無い。
特に趣味もない。
熱を上げる彼女もいない。
よって退屈だ。
まぁ強いて言うなら
「女が欲しい………」
「…琥牙、女に興味あったんだ?」
失礼なこと言うやつだ。
「俺も男だからな」
「でも琥牙っていつもさ、好きな子できても告らずに終わるじゃん?
それに最近そんな素振り全然なかったし」
「っ!!! 何でお前知ってんだ!?」
こいつと色恋話はした事ないぞ!?
「ふっ 舐めんなよ。見てたらわかるって。琥牙分かりやすいし」
いや、分かりやすいなんて言われた事ないし親でさえ「あんた分かりにくすぎ」とか言うぞ?
無表情ではないのに俺は分かりにくいらしいぞ?
「普通、分からねえだろ」
「分かるよ。ずっと一緒に居るし」
「……てかお前彼女居たよな?中学のときその類の噂多かったぞ。今居ないのか?」
「………ん?彼女?そう言えばいたね。最近はいないよ?」
「ふーん お前なら選びたい放題なんだろうなぁ」
「なに?皮肉?まぁ作れなくは無いけど…彼女は要らないかな…」
「はあ?!要らねえって、 喧嘩売ってんのか?」
信じられねえ。
彼女欲しくないとか、こいつ本当に男か?
「ははっ 売ってない。琥牙は彼女欲しいんだ?」
当たり前だろ。彼女要らねえなんて男お前ぐらいだろ。
「そりゃな。でも今は彼女じゃなくてもいいから女が欲しい」
「………それってセフレが欲しいって事?」
「まぁ そーゆーコト」
今度は「ふーん」とだけ返ってきて、蒼月は吸殻を踏み消した。
なんか機嫌が悪いのか?
心当たりは無い。
まぁその内直るだろう。
そのまま降りようとする蒼月に向かって声を掛ける。
「1限目から出るのか?」
「…うーん いや保健室行くよ。琥牙は授業出ろよ」
蒼月はそれだけ言って降りて行った。
体調が悪かったのか?
いやサボりかな。
1限目出るかどうしようかと色々考えながら俺もタバコを消す。
何処にあるか解らない白紙のプリントと女の事も考え呟く。
「……………ヤリたいなぁ……………」
「……………溜まってんのかな、俺」
読んでくださってありがとうございます!
予告していた方も途中まで書いていて、気分転換に書いたものです。
この話は多分5、6話で終わると思います。
これからも蒼月と琥牙をよろしくお願いします。
2話は12/2(月)になるかもです。