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第一章:芽吹き(1ー3)

艶雲達の元へ戻ったのが酉の刻少し前頃、狐が火に怯えてはいけないと、少しばかり距離を取り木を背にして、万が一に備え弓と矢を脇に置き火打石で懐紙に火種を起こし、枯れ枝に移したのだが、件の毛の玉は火を恐れる事も無くぽんっと胡坐を掻いて座るその足の間に収り、満足げに欠伸なぞをし始めた。

「おいおい、寝るのはいいが、私が摘んできた実を食べてからにしてくれ」

右脇に置いていた葉を広げ、その口元に差し出すと、男の顔を見上げ果実を旨そうに頬張り八割方平らげると、腹が朽ちたのか眠気に負けたのか、消炭色けしずみいろの鼻をその尾先で隠し、すーすーと寝息を立てて眠り始めてしまった。

その眠りを妨げないよう小声で愛馬を呼ぶと、「残りは、お前が食べるといい」とその脚元に葉を置いたが、本人は口にしないのか、と問いかける様な目を向ける艶雲に、「私には、これがある」と兵粮米ひょうろうまいが入った袋を掲げて見せ、「お前がそれを口にしないなら、私も米を口にしないぞ~」とおどけて見せ、愛馬がそれらを気兼ねなく食べられるように仕向け艶雲が果実を咀嚼し始めるのを見届けると、己も米を齧りながら月を見上げた。

(今夜は十六夜か。という事は、今日は葉月二十七の日。私の臣達は、無事で居てくれるだろうか)

ふと、何者かの気配を感じ、それを辿ると萌葱の邸からの様だ。そして、その気配の主は昼間のおなごのものであり、どこかへ消えてしまったのではないと安心すると、男は火の番をすべく、ごく浅い仮眠の中へと落ちていった。


治承四年、西暦にすると1180年。大陸中国では、北を女真族の金が支配し、北宋が北を奪われ南下し、南に都を置き南宋を称し支配する、という混乱の最中であった。


次回更新は、 2019月2月27日18時 です。

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