カーネーション
翌日の表通りは、一夜明けただけで様変わりしていた。
「変わるもんだねぇ〜」
ゆったりとした声に混じる驚きに耳を擽られて、身動ぎする。空気の流れからして、昨日とは違う気がする。何というか……空気が濃い。酸素とか湿度じゃなさそうなのだが、そう表現するより他にない。
「うん。星もいい位置だね」
星……?祭りに関する何かだろうか。空に浮かぶものは、夜を通り過ぎた今、もう見えない筈だが……。
「じゃあ、折角だし色々回ろうか。今日は……」
頤に指を当てて、今日の予定を語り出す彼女。知らない言葉ばかりだったけれど、彼女が楽しそうにしていることが嬉しい。
(えっ……)
ふと、そんな自分の感情に驚く。
昨日までは気づかなかった。まさかこの世界で、嬉しいなんて思うなんて。あんな死に方をした、あんな死を選んだ私が……。
(まだ諦めてないのか)
生きることに意味を見出す。そんな彼女とのうわべだけの約束が、果たされてしまうかもしれない。
(いや、それを拒むのもおかしいよな……)
だって、前向きに生を謳歌するなんて、とてもいい事の筈なんだから。だからこの感情を素直に受け入れて、そして流されていくのが正解なんだろう。
でも。
(でも、気づいてしまった……)
メタ的な視点で自分を見てしまうと、どうも陳腐に思えて、素直に心のまま、なんて出来なくなってくる。
「さて。着替えるからちょっと待っててね」
窓枠から椅子に座らされ、彼女の着替えを待つ間、私の心は揺れに揺れ、気持ち悪さでゲップが漏れた。
「あはははっ!どうしたの食べ過ぎたぁ?朝ご飯まだだよ」
笑顔で振り返る彼女は下着姿だった。それに狼狽えることはなかったが、何故か心臓がトクン……と鳴った気がした。今まではない変化が、自分に来ている。それが魔女の仕業だというのなら、果たしてどんな魔法を使ったのか。そう内心で茶化すぐらいしか、私に出来るやり過ごし方はなかった。




