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策士のチカゲ
それから千影さんは何度か家に来るようになった。本当は様を付けようとしたんだけど呼び捨てで呼んでって言われて流石に呼び捨てはハードルが高かったのでさんを付けた。
「雪香、口開けて」そう言ってフォークに乗ったケーキを口の前に出された。恥ずかしかったが前に出されたので口を開けた。
「どう?美味しい?」
「はい...。美味しいです」
顔が真っ赤になったのが自分でも分かった。だって!!今まで男の子に全く面識なく彼氏もいた事がない私がもの凄い美少年にアーンとかときめくに決まってる!!千影さんと目が合った。「フフ...。雪香は可愛いね。特注で用意したかいがあったよ」そう言って微笑んだ。
本当に十三歳なのかと疑う。
兄様から聞くと千影さんは女の子に人気で毎日告白されていると聞いた。
でも、そんな人がどうして私にこんなにも構うのだろう。しかも、兄様がいない時に。謎だ。私が兄の妹だからだろうか?だったら何故兄様がいない時なのか。
そう悩んでいる雪香を見て千影は少し毒のある笑顔を浮かべていた。




