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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一歩前へ~after story~

青い空にいくつかの白い雲。

教室の窓から眺める外の景色は、窓を一枚隔てているだけにもかかわらず、どうしても本当の色を眺めている気になれない。

それと同じように、僕の前にも常にモノクロのフィルターが邪魔をして、僕の瞳にはモノクロの景色が映っているように思える。


こう言うと、何か悩みを抱えていると思われガチだがそんなことはない。自分でいうのもなんだが、友達は普通にいるし、彼女だっている。

ほら、今僕の目の前で必死に今日の授業のノートを写してる彼女がそうだ。

じゃあ、勉強面ではどうだろう?

勉強面でも特に悩んでいる点はないと言えるだろう。テストの順位はいつも上位の方だし、授業だって、、、彼女にノートを見せれるくらいにはしっかりと受けれている。


窓の外の木の枝や植物が揺れている。外は風が吹いているようだ。もうそろそろ夏も終わりのはずなので、あのじめっとした生ぬるい夏の風から涼しい秋の風が外では吹いているのだろう。しかし、ちょっと前まで雨が降っていたことを考えると、もしかしたらまだじめっとした風のままかもしれない。どっちにしろ、窓を挟んで教室のなかにいる僕に、それはわからない。


変わらない景色と変化のない生活。このモノクロの原因がどこにあるのかはわからない。僕の他にこの景色を見て共感してくれる人はいるのだろうか。いるならばきっといい話し相手になってくれるだろう。少なくとも、僕の目の前でノートと向き合って作業をしている彼女には無理だろう。


二人だけの静かな教室。さっきまで賑やかだった教室が嘘のようだ。聞こえる音というと彼女が走らせているペンの音と、外から聞こえる微かな風の音。

外の風がさっきよりも強くなったようだ。木の枝がさっきよりも上下に大きく揺れている。そして、何かが窓の上から下へと通りすぎ、なんともいえない鈍いどこか不快に感じる音が聞こえる。その瞬間、僕の目の前の景色に一色の色が現れた。モノクロではない。しっかりとした色。


外の音を聞き反応して、その窓に拡がる色をみた目の前の彼女から甲高い金切り声が上がる。鼓動が早まり僕の足は立ち上がろうとする。そしてそのまま、僕は窓の下に落ちてきた何かを確認しようとする。止まらない。

見てはいけない。

先生を呼んでこい。

頭は正しい判断を下しているのに、止まらない。体が勝手に動く。隣で彼女が何かを言っているが聞こえない。そのうち、隣にいたはずの彼女は消えていた。先生を呼びにいったのだろうか?

そんなことより、僕は落ちてきた何かに目を向ける。窓に付いている色でよく見えない。

窓を開けてみる。すると、外で吹いていた風が教室に勢いよく入ってきた。涼しい。やはり、秋の風だったか。だが、その涼しさのなかにひそかに生暖かさと生臭さを感じたのは気のせいだろうか?

そして、改めて落ちてきた何かを見てみる。そこには、窓を開ける前と変わらず赤色が拡がっている。真っ赤ともいえるし、赤黒いともいえる。ただひとつ違うのは真ん中にその落ちてきた何かがある。それを理解するのにそう時間はかからない。人だ。うちの生徒。誰かはわからないし、学年もわからない。四肢はあらぬ方向に曲がり、頭から落ちたのだろう。首は見たこともない形に変形している。おそらく顔は潰れているだろう。全てが滅茶苦茶だ。そして、それから間もなくして先生が来て大声でなんやら叫ぶ。それから先は覚えていない。目が覚めると保健室にいて、親が迎えに来て家に帰った。


詳しい話を聞いたのは次の日のホームルーム。どうやら、自殺だったらしい。生徒は行っては行けないと言われている屋上にのぼりそこから飛び降りたらしい。屋上には遺書のような紙が置いてあったので自殺で間違いないだろう、とのことだ。そして、ホームルームのあとに一応関係者(発見者として)だということで、より詳しく話を聞かされたし、そのとき起こったことを僕は話した。


そのあとに聞いた話だが、どうやら遺書のような紙には一言、こう書かれていたらしい。


『今日こそは、一歩前に踏み出します。』

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