旅立ち その2
小春日和って言葉が似合う今日、私はコーリン村を出発しようとしてる。準備はディー達がほとんどしてくれて私は私物を幾つか持っていくぐらいだ。
「うん。こんなもんかな。」
使わせてもらってた部屋を見渡し忘れ物がないか確認する。一ヶ月しか使ってない部屋だけどいろんな事があってとても思い出深い。
助けてもらって看病してもらったのが随分前のような気がする。そういえばドルトさんに下着姿を見られたんだよなぁ。記憶には無いけどディーには脱がされてるし。一人で寂しくて泣いてた夜もあった。そんなときはドルトさんがいつも話し相手になってくれて・・
(ダメだ。しんみりしてきた。)
暗い顔してちゃダメ!昨日、ドルトさんと約束したんだもんね。今日は笑顔で、だよ!
首から下げたロケットを握りしめて深呼吸する。これは昨日ドルトさんからもらったのもだ。
そう。昨日ー
「王都にはゆきの荷物は全部持っていけよ?もしかしたら急にチキュウに帰れるかもしれないんだからな。」
出発前だからとローザさん家で皆でご飯を食べてたときにテオがそう言ってきた。
「え?」
「え?じゃねーよ。突発的に帰れるって時に要るものが無かったら困るだろ?何せどんなタイミングで帰れるのかわからないんだからさ。」
「・・・・」
そんなこと考えてもいなかった。てっきり王都で調べて、また此処に帰ったくるものだと思ってた。テオの言ってることは正しい。帰りたいと言ったのは私だ。その為に王都にも行くんだし。
「そうだよね。荷物纏めとかなきゃだね。」
思いもしてなかった言葉に動揺しつつもそう答える。皆は楽しそうに食事をしてるけどその会話もだんだん聞こえなくなってきた。
「ゆき、どうしたんだ?何か元気ないぞ?」
ドルトさんが心配そうにこっちを見てくる。
「そ、そうかな?きっといよいよ出発するから緊張してきたのかも。」
アハハっと笑いながら答えるけどうまく笑えてる自信はない。
「何だよ。俺が守るから安心しろって言っただろ?こう見えても俺、腕には自信があるんだぜ?」
肉の串焼きを片手に持ったテオが口をもぐもぐ動かしながら答える。んー。なんとも説得力のない、締まりのない光景だ。
「今はこんなんだか、ゆきを守るぐらいのことは出来る。そんなに不安になることはない。」
ディーも呆れ顔でテオを見ながらそう言ってくれた。
「そっか。なら安心だね。テオ。よろしくね。それじゃ私は明日の用意しなきゃだから先に戻ってるよ。」
あわただしく手荷物をもって部屋から出る。
「おい!ゆき!ちょっと待て!」
そんな声が聞こえたけど振り返らずにローザさん家を出た。
一人でディーの家までの道をとぼとぼ歩く。夜だけど月明かりのお陰で辺りはそこまで暗くない。
「私、どうしたいんだろ・・」
足を止め、月を見上げて一人呟く。私が日本に帰る為に皆はいろいろしてくれてる。私だって早く帰りたい、そう思ってる。だからこんなに気分が落ち込むなんて・・・
この世界を離れることがこんなに寂しく思うなんて思ってもいなかった。
いつの間にかここでの生活を、この環境を受け入れてしまっていた事に戸惑ってしまう。居心地が良くて不安に思うことが少なかったからかもしれない。しばらく月を見ていたら
「一体どうしたんだ?いくら村の中だとはいっても独り歩きはよくないぞ?」
振り返ればドルトさんが笑顔でこっちに歩いてくるところだった。
「ドルトさん・・」
何だか泣きそうになる。いつもの笑顔が心に染みてくる。
「なーんて顔してんだ?」
ニカッと笑い私の頭をクシャっと撫でる。いつもこうして優しく接してくれて、慰めてくれるんだよね。
「ゆき。少し寄り道するか。」
そう言って私の手を引き歩きだした。どこに行くんだろ?そう思うけど何だかまだ一緒に歩きたい気分だ。大人しく着いていく。しばらくして着いた場所は
「うわーっ、凄い!」
村の端、少し小高い所で辺りが一望出来る場所だった。村の灯りがぽつぽつと見える。反対側を見れば木々が生い茂る森。その向こうにはまだ雪が残る山々が見えた。空には大きな月とキラキラ光る星が見えてとても美しい。
「綺麗だろ?俺は考え事をするときはいつも此処に来るんだ。小さな悩みは大抵どうでもよくなる。」
地面に寝転がり空を見上げながらドルトさんはそう言った。確かに、この光景を見たら小さな事はどうでも良いと思えそうだ。
「少し、昔話をしていいか?」
こちらを見ないで、独り言のようにドルトさんは語りだした。
「俺は医者の家の子でな。よく父親に医療について教えてもらってたんだよ。将来は親父のような医者になるのが夢だった。小さな町医者だったが親父は皆から信頼されてて、俺の自慢だったよ。」
そうだったんだ。ドルトさんがこの村で医者をしてる理由がわかったような気がする。お父さんの影響だったんだ。
「だが、こっちに来る半年程前。両親が事故で他界してな、俺達兄妹は身寄りがなくなってしまったんだよ。親戚のところに世話になってたんだが妹は馴じめなくて、よくグズって周りを困らせてたよ。まぁ、まだ5歳だったんだ。仕方のないことなのかも知れないがな。」
苦笑しながら話すドルトさんはちょっと寂しそうに見えた。
「だからあの日もグズる妹を遊ばせるのに公園に行ったんだ。まさかこんなことになるとは思ってもいなかったよ。」
隣に腰掛けていた私と同じように、身体を起し座り直しながら遠くを見る。いろいろ思い出すことがあったみたいでしばらく黙ったままだった。
「こっちに来たばかりの時はあっちの世界に帰りたいと思ってたよ。ここの空気のせいなのか、妹は体が弱くて寝込みがちだった。チキュウで治療すれば治る筈だってそう思ってたんだ。でも、あいつがこう言ったんだ。」
ここは温かいね。お父さんとお母さんがいなくても寂しくないよ。
「ってな。そりゃ、もう驚いたよ。思えば妹はこっちに来てからグズる事はなくなってた。環境が激しく変わったから戸惑ってるんだろうと思ってたんだが、違ったんだ。
あっちで俺達は腫れ物みたいに扱われてた。両親をなくした可哀相な子だと思われてたんだろう。まぁ、確かにその通りだけどよ。妹はそんな空気が嫌だったんだ。いつまでも両親がいないことを思い知らされて、思い出してしまって悲しくなる。そんな風に思ってたらしい。」
ここまで言うとドルトさんが私に向き直しこう言った。
「だからな。俺達は自分達の意思で此処にいるんだ。向こうの世界に全く未練がないと言えば嘘になるかもしれないが、妹の話を聞いてからは向こうに帰ろうとは思わなかった。
まぁ、俺達は両親が他界してるし、親戚と上手くやっていけるとは思えなかったしな。ただ、雪は違うだろ?」
涙が溢れてくる。ドルトさんは私自身が気付いていなかった不安や悩みの答えを導きだしてくれた。
「ゆきには心配してくれる両親も健在で、16年も生きてきたんだから大切な友人もいるだろう。帰りたいと思うのは当然の事だ。」
優しい笑顔で溢れる涙をそっと拭ってくれる。
「ここでの生活をゆきの人生の一部に、その糧にしてくれたらこんなに嬉しい事はないぞ?たまに思い出して笑ってくれりゃそれでいい。」
そう言って優しく抱き締めてくれる。
「ついでに、ドルトさん!大好きよ!って言ってくれたらもっと抱き締めてやるぞ?」
「うわーん!ドルトざ~ん、だ、だいずぎぃ~」
子供みたいに泣きじゃくってドルトさんにしがみつく。こんなに温かい心に響く言葉を聞いたのは初めてだ。
「アハハ。そんなに俺の事が好きか!
いいか。ゆき。迷わずに進め。んで進んでダメだったらまた戻ってこい。そしたら、またここから進めばいい。」
ニッコリ笑うその顔は私に勇気をくれるものだった。
「は、はぃ。わだし、がんばりまずぅ。」
涙は止まらないけど何とか言葉を発する。
「そんなに泣くなよ。可愛い顔が台無しだ。
それとな。これはお願いなんだが。」
そう言って私の手に何かを握らせてくる。
「これをチキュウに持って帰ってほしいんだ。これは妹のロケットなんだが・・あいつの生きた証をチキュウで残してやりたい。」
シルバーのシンプルなロケットペンダント。ロケット部分が随分と大きくてペンダントにしては不自然な感じだ。開くとそこには古びた写真。小さな女の子を真ん中に少し大きな男の子、その子達の両親だろう人物が写っていた
。
「これって・・・」
「ああ。俺達家族の写真だ。まだ向こうにいるときに妹が余りにもグズるもんだから、写真を持たせるのに用意したんだ。蓋の裏に名前が掘ってあるだろ?」
そこにはZu Emiliaと書いてあった。
「エミーリア。俺の妹だ。8年前に亡くなったがな。」
「え、亡くなった・・」
そういえば。妹さんの話をするドルトさんは少し悲しそうな顔をすることが多かった。
「そんな大事なもの!私が預かってー」
「いや。ゆきが持っていってくれ。俺のは俺のであるんだ。」
そう言って自分の首からロケットを手繰り寄せ見せてくれる。
「俺はな。こっちの世界に来れたことを感謝してたんだ。俺の拙い治療でも助けれた命が沢山あった。こっちじゃ医師免許なんてものは無いが、助けたいと思い、努力すれば誰でも医師になれる、こんな俺でも人の役にたててるんだ。だから俺はこの世界で医師を続けたい。だがな。
妹は望んで此処に残ったけど、俺は妹の命を救ってやることは出来なかった。この世界では出来る治療が限られてくる。仕方がないと言えばそれまでだ。この世界では治せなかった、それだけなんだろうがな・・
だが、俺、いや。ゆきも知ってるだろ?あっちだったら治せる筈の病気が沢山あるってこと。俺は知っているだけに辛いんだ・・
俺が死なせたのかもって。
俺が無理にでも向こうに帰る方法を見つけようとしてたら、エミーリアは死ななかったんじゃないかってね。」
いつもの明るい表情はなく、自分のロケットを握りしめて辛そうに話すドルトさん。そんな風に思い詰めた顔を見るのはホントに初めてで・・
「あいつはこっちに来てからいつも笑顔で幸せそうにしてた。ディーの親父と結婚したときなんて、そりゃ綺麗だったよ。だから、短かった人生をあいつは幸せに生きたんだと思うよ。
そう思ったらさ。それをあっちの両親にも知ってほしくなってな。でもほら、両親は既に他界してるだろ?たから、日本からでもいいから祈って欲しいんだ。こっちより日本のが近いだろ?より祈りも届くってもんだ。」
何だかめちゃめちゃな理論だとは思うけど、確かに何処なのかわからない所から祈るよりも、日本から祈った方が亡くなったご両親に届きそうで・・
「んで、このロケットはゆきが持っててくれよ。妹が幸せに生きた証拠だ。ついでに俺がチキュウに生まれ、此処で生きているって証だ。ホントなら俺がチキュウに帰るべきなんだろうが・・
俺はこっちの世界に長く居すぎた。大切な物が増えすぎちまってな。もう手離すことが出来そうにないんだよ。」
苦笑いしながら自分のロケットを服のなかにしまって、私の手をロケットごと握ってくる。
「ゆきの負担になるならそのロケットは返してくれて構わない。でもこれだけはわかってほしい。いつ、どんなときもゆきの幸せを願ってる。俺って言う、チキュウ人がこの世界にいたことを覚えておいてほしい。日本に帰ってからもな。」
いつもの笑顔でそう言うドルトさんの胸に思わず抱きつく。
見ず知らずの日本人の私に良くしてくれてたのは、妹さんへの後悔があったからなんだ。どんな思いで私と接してくれてたんだろう。どれだけ私の事を心配してくれてたんだろう。そう思うとまた涙が溢れてくる。
「フッ。ゆきは泣き虫だな。エミーリアもよく笑いよく泣く子だった。表情豊かで思ってることが顔にすぐ出る、そういうところもゆきと同じだな。」
抱き締め返しながら頭を撫でてくれる。
「いいか、ゆき。俺達は大きな枠組みで家族みたいなもんだ。何故ならば同じチキュウ人だからだ。そのチキュウ人の血が半分流れてる、俺の大切な家族、ディーが側にいるんだ。あいつも・・物凄い大きな枠組みで家族みたいなもんだ!何か困ったことがあればディーを頼れ。ちょっと気難しい性格だが根はいいやつなんだぜ。なにせエミーリアの血を引いてるんだ。」
「プッ 何ですか?その大雑把な家族構成?」
泣いてたはずなのに思わず笑ってしまった。
「そうだ。笑ってろ。ゆきは笑顔でいるのが一番だ!」
頭をグシャグシャに撫でられる。ちょっとぉ!髪の毛がボサボサになるじゃん!
でもすっかり気分が落ち着いてきた。ドルトさんもスッカリ元の陽気なおじさんだ。手の中のロケットペンダントを見る。私には荷が重いような気もするけど、嫌ではない。こんな想いが詰まった物を貰えるなんて恐縮するんだけど・・ うん!心は決まった!
「ドルトさん!私、向こうに帰ったらドイツ語勉強してドイツに行きますよ!そしてご両親の墓前でキッチリ報告してきます!」
「お、おう。そうか・・そうか。ありがとうな。」
そう言ったドルトさんはやっぱりディーの叔父さんなだけあって、月明かりと相まってとても綺麗な顔だった。
そう!昨日決心したんだから。いつも笑顔で私を支えてくれたドルトさん。そんなドルトさんとも今日でお別れなのかもしれない。でも、私は日本に帰る為にここを出ていくんだ。前に進まなきゃ!
ロケットペンダントを服のなかにしまってもう一度部屋を見渡す。
沢山の思い出が頭を過る。その思い出たちに挨拶するように頭を下げる。
「今日までお世話になりました。ありがとうございました!」
誰もいない部屋に別れを告げてディー達が待つ玄関へと急ぐ。きっと随分待たせてしまってるだろう。テオ辺りが文句を言ってそうだ。
「おーい!ゆき!まだかぁ?」
ほら。やっぱり。
「は~い!もう出るよ。遅くなってごめんなさい!」
笑顔で家の外に出る。そこには待ちくたびれた様子のテオにスッカリ準備の整ったディー、その隣にはドルトさん、ローザさん、双子のリンクとレヒトの姿があった。
「ローザさん!来てくれたんですか?リンク君もレヒト君も。ありがとうございます!」
嬉しくて3人に駆け寄る。いやぁ。この双子は可愛くてホントに癒されるんだよねぇ。
「何かゆきちゃん、昨日様子が変だったから気になってね。でも大丈夫そうね。リンクとレヒトがゆきちゃんに渡すんだって聞かなくて、連れてきたのよ。」
ローザさんは昨日の私の態度を気にしてたみたいで、ホント申し訳ない。そして双子の顔を見れば
「「ゆきにこれあげる!」」
声を揃えてニコッと笑う。全くもう、ホントに可愛い。
二人がくれたのは一つの石が二つに分離しようとしてる途中、みたいな変わった形の石だった。ひょうたんみたいな形と言えばいいのかな?
「これは珍しいな。双子石か。」
横からディーが覗き混んでそんなことを言う。何だ?その双子石って?
「うん!双子石は俺達と一緒なんだ。だから、ゆきにこれあげる!」
「これでゆきも寂しくないよね!」
なんてこと!こんな小さい子にも心配かけてただなんて!何が立派な16歳だ。情けない。
「これって貴重なものなんじゃ?」
ディーが珍しい何て言うもんだから気になって聞いてみる。
「いいのよ。気にしなくて。どうしてもこの子達があげたいって言ってるんだもの。受け取ってあげて?」
ローザさんがニッコリ笑って、双子もニッコリ笑って手に双子石を渡してきた。
うぅ~・・また涙が滲んでくる。もう泣かないって決めたのに。
「ホント、ゆきは泣き虫だな。そんなことじゃこの先が思いやられるな。」
ドルトさんが呆れた顔で私の肩に手を置いた。ああ~ダメだ。今ドルトさんの顔を見たら我慢出来ない。ついにぽろぽろ溢れだした涙を隠すように手で顔を覆う。
「ゆき。笑って出発だろ?さあ、泣き止めよ。でないと、ずっと抱き締めたままだそ?」
ドルトさんがいつもの調子で茶化しながら抱き締めてくれた。腕のなかは心地良くて気分がだんだん落ち着いてくる。
うん。もう大丈夫。そう思い顔をあげる。そこには優しく笑うドルトさん。私からも抱き締め返す。
「ドルトさん。今までホントにありがとう。私、絶対忘れないよ。此処での生活やローザさん達村の人の事を。
何より、ドルトさんの事は絶対、絶対に忘れないんだから!!」
涙混じりの顔で無理やり笑顔を作る。今の私にはこれが精一杯だ。その涙を指で拭って優しく微笑んだドルトさんは一瞬力強く私を抱き締めた。
「あぁ。絶対忘れるなよ。ありがとうな。ゆき。」
そう言うとポンっと私の頭に手を置いておでこにチュッとキスをする。
「ディーみたいに加護は付けれないが、おまじないだ。」
ニカッと笑い私の頭をポンポンしてる。
驚きで涙はスッカリ止まってしまった。むしろドルトさんの笑顔につられ私も笑う。
「何ですか?それ?もしかして、デコチューをしたくなる血でも流れてます?」
「アハハ。そうかもしれんな!」
約束通り笑顔でお別れが出来て良かったよ。
「そろそろ行くぞ。」
村の出口まで見送りに来てくれた四人とは此処でお別れだ。私はディーが乗ってる馬に似た動物に一緒に乗せてもらってる。チキュウにはいない生物で若干の抵抗はあるものの、大人しく害はない、とのことなので何とか大丈夫。それよりも一緒に乗ってるもんだから、ディーに抱えられてるみたいになってる方が心臓に良くない。
「じゃぁ、行ってくる。知らせは随時送るから安心してくれ。」
「行ってくるぞぉ~。帰ったらまたうまい飯くわせてくれよな!」
テオたちもドルトさんたちと挨拶を交わしてる。いよいよ出発だ。
「いってきまーす!みんな元気でねぇ!」
大きく手を降って最後の挨拶をする。ディーにしがみつきながら見えなくなるまで手を振った。やがてそのままギュッと抱き締められる。
「ったく。また泣いてるのか?泣き止むまでしがみついてろ。」
うー。ディーにバレてた。
「ドルトと約束したんだろ?前を向く手助けはいくらでもしてやるよ。どんどん頼ってくれ。だから、笑顔で前を向くんだ。いいな。ゆき。」
顔を上げればニコッと笑う綺麗な人。泣いていたことも忘れてしまいそうな笑顔だ。
ー大きく見れば家族みたいなもんだ!ー
そんなことを言ってた人、間違ってます。こんな綺麗な人、とても家族とは思えません。
そんなこんなで私はコーリン村を出発したのだった。