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始まり 1

初投稿です。


(何でこんなことに・・・)


何度目かのため息をハァーっと吐き出して。

私は周りを見渡し大きな木の側で身を潜めた。

鬱蒼と生い茂る木々。道らしい道は見えないし、遠くからは何かしらの鳴き声が聞こえてくる。不気味ったらありゃしない。


ふと空を見上げた。

雲ひとつない空に星がキラキラ輝いていて、とてもキレイ。

少し視線をずらせば大きな月が。

いや。あれは月なのか?と思えるほど大きすぎる月が見える。月明かりのおかげで視界はほどよい。

何度見渡してもここは -森の中なんだろう- と思い知らされる。

ハァ~。

またため息が出る。ついさっきまで家の最寄り駅から歩いて帰る途中だったはずなのに。

何でこんなところにいるのよぉぉぉ!!



私は高科ゆき。

この春に高校生になったばかりの16歳。

少し色素が薄い黒目に肩まで延びた髪の毛。成績は学年で真ん中くらい。運動神経はあんまり良くない。らしい。(自覚症状無しだけど)。でも体を動かすのは嫌いじゃない。むしろ好きなんだよね。

これからの高校生活を恋に、勉強に、と胸ときめかせている、まぁ、どこにでもいる普通の女子高生だ。




「涼太。どうしてるんだろ」

呟いた言葉は沈んでる気持ちを更に沈ませた。

幼なじみの杉浦涼太。

小さい頃からずっと一緒にいた男の子。いつも明るくて、少しお調子者だけど面倒見が良くて、皆から好かれていて。私はいつの頃からか淡い恋心を抱いてた。高校も同じところに行きたくて一生懸命勉強したんだよ。クラスが同じってわかったときなんて勝手に運命感じちゃったもん!

今日だって明日の文化祭の準備を終えて一緒に帰ってたんだよね。



「文化祭楽しみだな!執事&メイドカフェとかめっちゃ盛り上がりそうじゃん。」

「涼太、張り切りすぎだよ。でも衣装とか凄く凝っててヤバいよねー。涼太もそこそこ似合ってたんじゃない?」

(なーんて。涼太の執事姿。かっこよすぎだし)

執事姿を想像したら少し頬が赤くなったような気がして涼太から顔をそらしながら返事をする。

「俺、部活忙しかったからゆきのメイド姿まだ見てないんだよなぁ。どんな感じ?やっぱ着せられてる感半端ないわけ?」

涼太はニヤッと笑いながら意地悪な言葉をかけてくる。

「どーゆー意味よ!!」

その顔にドキッとしたのを誤魔化すように食って掛かる。いつもこんな感じでふざけあってるんだけど、ドキドキしてるのは私だけなのかなぁ?なんて思ってたりする。

そうやって歩いていたら空模様が怪しくなってきた。今にも雨が降ってきそう。

「あぁー。家までまだ距離あるのに降るのかなぁ?さっきまで晴れてたのにぃ。」

そう言ってる間にポツポツと降り始め、それはあっという間にどしゃ降りに変わった。

「ヤッバ!あそこまで走るぞ!」

涼太はそう言うと私の手を引いて公園の屋根付きベンチまで走り出した。こんな状況にもときめいてしまうなんて、私の恋の病は重症だ。


ベンチにたどり着く頃には空がゴロゴロ鳴り出し、風まで強くなってきた。おっかしいなぁ。今日の天気予報は晴れ。降水確率ゼロパーセントだったはずなのに。

何となしに空を見上げた時、強い光が一面を覆った。

「きゃっ!」思わずその場にしゃがみこむ。そして

ズドーン!!!

大きな音と共に空気が震える。

《ギャー!雷、落ちたぁ!?》




そこまでの記憶を残して私は気を失ったようで・・気が付いたときは森の中。一緒に居たハズの涼太もいないし。

って、あれ?


もしかして。もしかして。。

私。死んじゃった??

うそ。まだ16歳だよ。私。今からだよ?文化祭、涼太と一緒に回って楽しむはずだったのに!!!



と。

木の陰で身もだえていたら、またポツポツと降ってきた。

「うわ。またなの?さっきまで晴れてたじゃん。死んでまで雨に濡れるとかあり得ないし!」

とりあえず、雨宿り出来るところに移動しないと。死んでるかも知れないけど、雨に濡れて少し肌寒い事に違いはない。寒いのはイヤだ。


木の間を走り抜けるも雨は強くなる一方で。そして、またしても雷がゴロゴロ。

いっそのこと、もう一度雷に打たれたら元通りになるとか?なんてバカな事を考えてたら雷が一際強く光った。一気に周りを見渡せるほど明るくなった視線の先。距離にして30メートルくらいだろうか。

(なんだろ?あれ?)

強い雨のせいで視界は悪いし、音も良く聞こえない。光からなるその影は人のように見えた。

(もしかして涼太??)

走りよろうとしたときにもう一度強く光る。その光はその影の正体を一瞬照らし出した。

それは全身が深い緑色をしていて粗末なボロボロの服をかろうじて着ていた。手には大きな金属の棒を持ち明らかにデカイ。体長2~3メートルはあるんじゃないのぉ!!

「ヒィッ!」

口を押さえて何とか声を押し殺し、木の影に隠れた。

アレハナニ??

間違いなく人外だ。鬼?悪魔?化け物?

てゆーか。私。気付かれてない?!!?

雨に濡れてると言うのに嫌な汗が流れ出す。そろぉっと木の影から顔を出してみると、どうやら気付いてない様子。謎の人外は何かを食べているらしい。

グチャリ、バリバリッ

と嫌な音をたてながら。明らかにそのまま骨ごと食べている。

(!いやーっ!!いやーっ!!)


ここから逃げないと。

そう思うのに体が動かない。今まで味わったことのない未知への恐怖。死への恐怖。もう頭の中はパニック寸前。ガタガタ震えて歯は噛み合わないし、こんなんじゃ見つかっちゃう。

頭では解ってても体は言うことを聞かない。

ドスン、ドスン、

足音らしきものがこちらに近づいてきてる!

木の影に居るのでこちらからは影しか見えない。だか確実にこちらに近づいてきてる。

(もうダメ!助からない!)

体を丸めて目をぎゅっと瞑ったその時。

人外の後ろから獣の嘶きが聞こえてきた。すると人外はそちらに興味を持ったみたいで方向を変えて歩き出す。足音は遠ざかり辺りは雨の音だけになっていた。



どのくらいそうしていたんだろうか。雨はあがったけどすっかり体は冷えてしまった。だが、ひとまず人外の恐怖が去った事にホッと息を吐く。でも人外があいつ一人?一匹?だとは限らない。だからこの場にはもう居たくない。

どこか身を隠せる場所を探さないと。そう思うのに冷えきった体は少しも動こうとしない。

そのまま木にもたれ掛かり、何だか意識も朦朧してこのまま眠りについてしまいそうだ。

「今度こそ 、本当 に死んじゃうの 、かなぁ。あ 、れ。もう死 んでるんだっ け ?。」

呟いた言葉は誰にも届くことはなく、私はそのまま意識を手放した。





「£¢%#&*#」

「£¢&#%&**&」

何かが聞こえる

なんだろ。よくわかんない。てゆーか。体がふわふわする。

私。どうしたんだろぅ。

何とか頑張って目を開けてみる。

大きな月。そこにはさっき見た大きな月に照らされたとてもキレイな人が私を覗き込んでいた。月明かりに照らされた金に近い長い茶髪はキラキラ輝いて、切れ長の碧瞳は心の奥まで見透かされそうで。

「あなたは・・天使?・・・・そっかぁ。私、天国に行けるんだね。」

「¢*#%&£*&」

「最後に涼太に会いたかったなぁ ・・・」

薄れ行く意識のなかでそんなことを思って私は瞳を閉じた。









(喉が乾いた)

目を開けるのも億劫なのに何か飲みたい。どうしようかと思っていたら、口の中に冷たい水が入ってくる。

上手く飲み込めるように少しずつ少しずつ。ゴクリと飲み込めば喉の乾きはなくなった。

そして、また眠りにつく。




また喉が乾いた。でも今回は目が開けれそう。てゆーか。良く寝た。普通に目が覚めた。

ボーッとする頭で寝たまま周りを観察してみる。部屋はペンションの寝室を伺わせる作りになっている。暖炉があるからだろうか、とても暖かい。薪がパチパチ弾ける音はとても心地好くて、また瞼が落ちそうになる。窓の外を見れば月が出ていて夜なんだとわかった。


「気が付いたか?」

ふいに声をかけられた。声のする方に顔を向けるとそこにはニカッと笑うおじさん。

「あの・・」

声を出そうとしたが上手く声が出てこない。

「あー。無理に喋らなくていい。熱だってまだ少しあるんだ。ちょっとは水分取れそうかい?」

そう言って水の入ったコップを渡してくれる。喉はカラカラだ。体を起こしてコップを手に取ると一気に水を飲み干す。あぁ~生き返る。

「それだけ飲めたらもう大丈夫だな。お前さん随分と危なかったんだぜ?もう少し手当てが遅れてたら助からなかった。ホントに良かったよ。あっ、腹減ってないか?3日も寝たきりだったから軽めのやつ用意するぜ!」

立て続けに話すおじさんに頭が付いていかない。おじさんはそのまま食事の用意をするために部屋を出ていってしまった。

堀の深い顔に赤茶の髪の毛のおじさん。見た目は完全なる外国人なんだけど・・日本語なんだ。そして、私は3日も寝てたのか、、、何で    !!!


思い出した!

そうだ。私は気付いたら知らない場所にいて、謎の人外に襲われそうになって。

涼太ともはぐれちゃって・・


思い出したら恐怖心から震えが止まらない。もう何が何だかわからない。どうしてこんなことになったの??私何かした?

涙がポロポロ溢れだし両腕を抱えてベッドの上でうずくまる。月明かりが眩しいくらいに私を照らしているけどカーテンを引くきにもなれない。しばらく泣いていると部屋のドアが開く音がした。

(おじさん帰ってきたんだ。泣いてたら驚くよね。せっかく看病してくれたのに。。。でも。)

そう思うと尚更泣けてくる。

「ごめんなさい。泣いててごめんなさい。ヒック、助けてもらったのに。でも恐くて、、ヒック。」

下を向いたまま言葉を紡ぐ。

コツ、コツ、

ゆっくりと側に近寄ってきた人物が私の頭を優しくなでてくる。

「我慢しなくていい。恐かったんだろ?」

それはとても優しい声。


ん?

あれ?

おじさんの声じゃない。

ゆっくりと顔を上げてその姿を見てみる。

!!!

月明かりの下。私を心配そうにその碧色の瞳で見つめているとても綺麗な人。長い金に近い茶髪を横流しにし、微笑みながら私の涙をぬぐってくれる。

「天使、、さま?」

思わずそう呟いてた。

「? 何だそれは?」

碧色の瞳を少し大きく開いて天使が愉快そうに微笑む。それは正に神々しく、この世のものとは思えない微笑みだった。

「だ、だって、私、死んじゃったんでしょ?貴方は私を天国に連れていってくれる-」

そこまで言ったところで天使はクククッと笑いだした。

「お前は死んだのか?ならさっきの男も天使だと言うのか?アレが天使とはなかなか面白い。」

そう言って楽しそうに笑っている。

(え?え?

あー。そうだよね。変だよね?私が死んでたら看病なんかしてないよね?なら、一体・・・)

頭をフル回転するも答えは出てこない。

「まだ混乱してるようだが安心するといい。ここは安全だ。不自由がないようさっきのやつに言っておく。」

カチャッ

「おいおい。俺は召し使いじゃねーぞ。ディー。」

さっきのおじさんがあきれた顔で部屋に入ってきた。手には湯気のたつお皿を持っている。とっても良い匂いだ。

グゥー

(やだ!恥ずかしい!)

3日も食べてない体は正直なもので、お腹の虫が鳴り出した。思わずお腹を押さえてうずくまる。

「アハハ!腹が空いてるならもう大丈夫だな。大したもんじゃないが食え。弱ってるときは食べて寝るのが一番だ。」

そう言ってスープの入ったお皿を渡してくれる。

「うぅっ。すみません、ありがとうございます。」

恥ずかしくて仕方なかったけど、おじさんの笑顔を見たら少し元気が出たような気がする。すっかりスープは完食だ。

「食べたなら少し休んだ方がいい。まだ熱があるんだ。ディーも少し休め。お前、ほとんど休んでないだろ?」

おじさんはそう言いながらお皿を下げていく。

「あ、あの、貴方たちは?」

この状況を理解したくて言葉を発したけど、すぐに遮られる。

「詳しい話は休んだ後だ。今はしっかり体を治すことに専念するんだ。いいな。」

笑顔なんだけど有無を言わせない言い方のおじさんに少し驚きつつもコクリと頷く。

「いい子だ。ゆっくり休めよ。ほら、ディーも行くぞ。」

「また様子を見に来る。安心てして眠るといい。」

そう言って二人は部屋から出ていってしまった。



一人部屋のなかに残された私。いろいろ考えたいのにお腹が膨れたら睡魔がやって来た。

(あの綺麗な人はディーってゆーのかぁ。二人とも日本人では無いよね。一体ここどこなんだろ?

あぁ~、、お礼言うの忘れちゃったなぁ・・・)


そう思うも迫り来る睡魔には勝てず、私はベッドに横になり眠りについた。


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