彼女の仕事
朝食を終えた私達は服を着替えて家を出る
家を出る前に忘れずにペットの猫であるプチちゃんのお皿にご飯を入れておく
プチちゃんは圭くんが結婚前から飼っていた猫だ
年齢は11歳くらい、もう結構な歳になってしまった
出来ればプチちゃんに長生きしてほしい
圭くんだけじゃなくて私もこの子には思い入れがあるのだから
私は家を出る
「行こうか」
「………(コク」
スーツに着替えた圭くんに私は頷く
そして駐車場に移動して、圭くんの車の助手席に座る
車が発進する
私は電車での通勤だから駅まで圭くんが車で送ってくれる
私はこの時間が好きだ
短い時間だけど圭くんの横顔を見ていられるから
車の窓に反射してうっすらと見える圭くん
たまに振り返って実際の圭くんを見る
左を見ても右を見ても圭くん
なんだか圭くんに挟まれてる様に感じれて幸せな気分になる
あ、信号で車が止まった
「……………」
「優衣香さん?」
圭くんが私を見る
目が合う
圭くん……出会ってから10年以上経つけど、彼の顔を見ると胸が今でも高鳴る
ドキドキする、ずっとこうしていたい
私を見ている圭くんにキスしたい
「…………」
ダメだダメだ、今は圭くんは運転中、駐車してるならともかく今はダメだ
驚いた圭くんが事故を起こしたりしたら私は悲しむ
取り敢えず左を見て窓に映る圭くんを見て我慢我慢
「あ、信号変わった」
車が発進する
・・・・・・
駅に着いた
圭くんと離ればなれの時間だ
「優衣香さん、いってらっしゃい」
「……………」
私は荷物を持って車を降りようとする
「…………」
……うーん、でもやっぱり寂しいなぁ
そうだ!
私は圭くんを見る
今は駐車してるからいいよね?
チュッ
「……………」
「あ、えっ……」
圭くんがビックリしてる
やり過ぎたかな?
でも軽いキスだよ?本当はもっと深くしたいけど
流石にそれは駄目だからね……だからこの程度ですませたの!
私は車を降りる
そして駅に入った
振り返ると圭くんの車が発進するところだった
……帰ったらお返しにキスしてくれるかな?
それとももっと激しいことかな?
……お預けはないよね?
・・・・・・・
電車に揺られて40分
私は電車を降りて駅を出る
「…………」
株式会社タートルビート
駅から歩いて2分の所にあるデザイン会社
営業の人間以外は服装は自由で、色々と融通の聞く会社
産休や育休もしっかりあるし
休みも完全週休2日制
まあ、ピークの時は休日出勤とかあるけど
場合によっては在宅での勤務も許される
圭くん曰く
「今時これだけ充実してる会社は珍しいよ!?」
って驚いてたなぁ
そんな会社だから結婚した後も続けられてる
私は会社に入る
社員証にもなっているカードキーをカードリーダーに通して中に入る
「あ、優衣香っちおっは~☆」
入るとケバい……んん、特徴的な女性が声を掛けてきた
彼女は高藤さん、私の先輩だ
「…………」
私は手をあげてる彼女の手にハイタッチする
これが彼女への挨拶だ
他の人には会釈したりして挨拶するのだけど彼女はこれの方がいいらしい
「今日も頑張ろうね~☆」
そう言って彼女はデスクに座った
私も自分のデスクに座る
今日の私の仕事は……あ、Webサイトのデザインだ
私は要望書に目を通す
明るいけど黒をメインにしたデザイン
「…………」
明るいけど黒をメイン……少し首をかしげるけどまあなんとか出来るだろう
・・・・・・・・
「…………」
二回ほど没になった
うん、大丈夫、まだ余裕はある
取り敢えずお昼だし、お弁当を食べよう
今日は私が作ったお弁当だ
圭くんは喜んでくれるだろうか?
ちょっと圭くんにライフ送っとこ
ーーーー圭くんーーーー
今日のお弁当は自信があります
ーーーーーーーーーーー
お弁当の写真と一緒に送信
ピコン!
すると直ぐに返信が返ってきた
ーーーー圭くんーーーー
楽しみにしてます
ーーーーーーーーーーー
楽しみにしていてください!
・・・・・・・
お弁当を食べ終えた私はデザインを考える
昼休みの最中だけど暇だから考える
うーん、明るいけど黒をメインにしたデザイン
普通明るいっていったら暖色系とかをベースやメインにするんだけど
…………どうしよう
ピコン!
悩んでいたらスマホがなる
スマホを開くと圭くんからの返信だった
ーーーー圭くんーーーー
ごちそうさま
凄く美味しかったです
ーーーーーーーーーーー
圭くんは喜んでくれたみたいだ
よかった、ハートや星のハンバーグとか作ったからね
ふふ、帰ったら感想聞こう
……んっ?星?……………あっ!!
私の頭にデザインが浮かぶ
私はそのデザインをパソコンに打ち込み印刷する
・・・・・・・・
私はデザインをチーフに見せる
「へぇ、星空をイメージしたんだ、確かに黒がメインだけど明るいね、よし!先方にはこれで校正をとってみよう!」
「…………(コク」
やったよ!圭くん!デザイン出来たよ!
時間は17時24分
もうすぐ終業の時間だ
私はデスクに戻って片付けをする
今日は圭くんと同じくらいになりそうかな?
一緒に帰れるかな?
ピコン!
ライフが来る
「…………?」
私はライフを開く
ーーーー圭くんーーーー
鈴本君がミスをしたので残って処理します
ーーーーーーーーーーー
鈴本君?確か圭くんの後輩だったはず
あの人がミスをしちゃったんだ……
圭くんは優しいから手伝ってあげるんだね
ーーーー圭くんーーーー
わかりました、先に帰っておきます
無理はしないでください
ーーーーーーーーーーー
送信っと
うーん、残念
・・・・・・・・
会社を出た私は電車に揺られて駅を出る
「…………」
今日の晩御飯はどうしよう
圭くんが遅くなるからなぁ
あ、そうだシチューにしよう
そうすれば冷めても温めればいいし
圭くんを待つこともできる!
よし!そうしよう!
私はスーパーで材料を買う
そして帰宅する
「ニャー」
プチちゃんがやって来る
ただいまの気持ちを込めて頭を撫でる
さてと、シチューを作らないと!
私はキッチンに材料を持っていって料理を始める
・・・・・・・・
シチューは問題なく完成した
私は鍋に蓋をする
次はお風呂を沸かして
あ、プチちゃんのお皿にご飯を入れて
プチちゃんのトイレの掃除もしとかないと
私は全部を終わらせる
全部終わった時の時間は20時だった
「…………」
圭くんはまだ帰ってこない
うーん、どうしよう……テレビでも観てみるかな
・・・・・・・
21時38分
車の音が駐車場の方から聞こえた
窓から覗いてみると家の駐車場スペースに車が止まる
圭くんだ!
私はシチューを温める
圭くんが帰ってきたからね!
ガチャ
少ししてから玄関の鍵が開けられてドアが開く音がした
圭くんが帰って来た!
「ただいま」
圭くんの声だ!
おかえり圭くん!
「あれ?明かりがついてる?」
圭くんがリビングに入ってくる気配がした
「………………」
「優衣香さん?待っててくれたの?」
「…………」
私は圭くんを見る
くたびれた感じで立っている圭くん
お疲れなんだね?
「…………(コク」
私は頷いてシチューを見る
「ありがとう優衣香さん」
圭くん!!今すぐ駆け寄って抱きつきたいけど我慢!
シチューが焦げちゃうからね!
「…………」
よし、温まった!
私は火を止める
そしてお皿にシチューを入れる
圭くんも運ぶのを手伝ってくれた
「いただきます」
「…………」
私と圭くんはシチューを食べる
うん、味見もしてたからちゃんと出来てる
あ、そういえばお風呂沸かしてるのを言わないと
「…………お風呂」
私は呟く
喋るのは苦手なんだよね……
「あ、沸いてますか?わかりました、食事を終えたら入ります」
「…………」
うん、そうしよう
…………あ、でも圭くん疲れてるよね?
私が一緒に入って身体とか洗ってあげようかな?
というか一緒に入りたい!甘えたい!
私から言うべきかな?
「あの、優衣香さん」
「…………」
圭くん?どうしたの?
「一緒に入りませんか?」
「(コク」
入ります!
・・・・・・・
食事を終えて、片付けてから風呂場に行く
私は服を脱いでかごに入れる
後ろから圭くんの視線を感じる……遠慮しなくていいんだよ?
「…………」
私は浴室に入る
「…………」
圭くん早く早く!
圭くんは苦笑しながら浴室に入ってスライドドアを閉めた
いっぱい甘えるからね!
圭くんも遠慮しないでね!