彼の仕事
朝食を終えた僕達は着替えを終えて家を出る
家と言ってもマンションの一室だ
そこに彼女と一匹の猫と暮らしている
「行こうか」
「………(コク」
スーツに着替えた僕と私服の優衣香さんは一緒に家を出る
そして駐車場に移動して、僕の車に乗る
僕は車での通勤だ
車を運転する僕、助手席には優衣香さんが座って外を見ている
たまに僕の方をチラッと見てはまた外を見る
信号で止まったときに僕も優衣香さんを見てみると目が合う
「……………」
「優衣香さん?」
優衣香さんは僕を暫く見つめてから
「…………」
また外を見る
いつもそうしてるけど何なんだろう?
何か可笑しいところがあるのかな?
僕は鏡を開いて顔や襟元を見てみる……
変なところはない
「あ、信号変わった」
僕は鏡を閉じて車を発進させる
・・・・・・
駅に着いた
「優衣香さん、いってらっしゃい」
「……………」
優衣香さんは電車での通勤だ
だから僕は会社までの途中にある駅まで彼女を送る
「…………」
優衣香さんが降りようとして止まった
「優衣香さん?」
僕がどうかしたのか聞こうとすると
チュッ
「……………」
「あ、えっ……」
不意打ちでキスされた
触れるだけの軽いキス
それをして満足したのか優衣香さんは降りていった
「……や、やられたかな?」
僕は顔を赤くしながら車を発進させた
・・・・・・・
僕は会社の駐車場に車を止める
「よし、今日も頑張ろう!」
僕は荷物を持って会社に入る
「お早うございます!」
僕は挨拶しながら受付を通る
「お早うございます、桜木さん」
受付嬢が返事をしてくれる
挨拶は大事だよね
僕はエレベーターに乗って、自分の課がある階に行く
株式会社ノーコース
最初は小さな会社だったけど、僕が入社する三年前から業績を伸ばして、今では世界数ヵ国で玩具を販売している会社だ
チン
エレベーターが目的の四階に到着する
僕はエレベーターを降りて進む
そして到着、営業二課
ここが僕が配属されてる部署だ
「お早うございます!!」
僕が挨拶する
「あ、桜木先輩お早うございます!」
1番に返事をしたのは二年後輩の鈴本君だ
「よっ、早いな」
次に返事をしてくれたのは同期の風川だ
「うん、少し早く着いたかな」
僕は自分の席に座る
そして書類の整理をする
いや、整理は昨日も帰る前にやったけどね?
念のためもう一回しておくんだよ?不安だからね
「桜木は今日は何するんだっけ?」
「五件程営業だよ、新商品のね」
僕の主な仕事は営業での外回りだ
取引先との契約を取ったり
新しい玩具をお披露目して紹介したり
使えそうな部品を見つけたり
取り敢えず色々やっている
「先輩!今日は俺もお供します!学ばせてください!」
「あまり教えることはないと思うけど……いいよ!」
二人と始業まで雑談しながら僕は書類をまとめた
・・・・・・・
「よし、お宅と契約しましょう!」
『ありがとうございます!!』
僕と鈴本君は外に出る
「これで四件も契約取れましたね!!」
「うん、一件も取れなかったらどうしようって不安だったよ……」
「なんで先輩そんなに弱気なんですか!?」
これは性分だね……
「あ、先輩!そろそろ昼ですけど飯はどうします?」
鈴本君は道路の向こう側に見える定食屋を指差す
「今日はお弁当があるんでね、会社に戻るよ」
「じゃあ俺だけ行ってきます!」
「うん」
鈴本君は横断歩道に行き、信号が変わったのを確認してから渡っていった
「さて、僕も戻らないと!」
時計を見る、12時07分
ここから会社まで30分
なんとか間に合いそうだね
ピコン!
スマホがなる
「あ、優衣香さんからだ」
スマホはライフのアイコンが光っていた
ーーーー優衣香さんーーーー
今日のお弁当は自信があります
ーーーーーーーーーーーーー
アプリを開いたら優衣香さんからの連絡とお弁当の写真が添付されていた
「ふふ、楽しみだな」
ーーーーーーーーーーー
楽しみにしてます
ーーーーーーーーーーー
僕は返信してから会社に向かった
・・・・・・・
会社に戻って自分の席に座る
時間は12時40分
20分あれば充分食べれる
僕はお弁当を拡げる
「あ、美味しそうだ♪」
お弁当の左半分はご飯が入っている
上にはふりかけがかかっていてカラフルだ
右半分は
ハンバーグ二個(ハートと星)
ミニトマトとブロッコリーを爪楊枝に刺したの二個
一口サイズに切られた鮭のムニエル三個
チーズをハムで包んで揚げた物二個
ピーマンとベーコンの炒め物
が入っていた
色とりどりで食べるのが勿体無いと思えるくらいだ
「……写真撮っとこ」
僕はスマホのカメラでお弁当を撮る
そしてお弁当を箸をつける
先ずはハンバーグだ
星の形とハートの形、この形に綺麗に仕上げるにはかなりの手間がかかる
それをやってくれたんだと思うと優衣香さんの愛情が感じれる
うん、美味しい!
ミニトマトとブロッコリー、茹でた後に胡椒で味付けしてくれている
僕好みの味付けだ
ご飯を食べて
炒め物をパクリ!
ピーマンが甘くて、ベーコンの脂が絡んで堪らない
鮭も骨を取ってあるからそのままパクリ!
揚げ物もチーズの甘味がハムとマッチしている
冷めても美味しい
僕はお弁当を堪能した
・・・・・・・
「ごちそうさま」
僕はお弁当を食べ終える
ふと、時計を見ると
12時56分を指していた
「おっと!」
僕はスマホを取り出し、ライフを開く
ーーーー優衣香さんーーーー
ごちそうさまでした
凄く美味しかったです
ーーーーーーーーーーーーー
送信っと
・・・・・・・
夕方
もうすぐ定時だ
「さて、一段落ついたかな」
僕は仕事を終えて、書類の整理をしていた
「今日は僕の方が早く帰れるかな?」
家では早く帰った方が晩御飯を作ったりする
一緒に帰れそうなら一緒に作ったりする
「せんぱ~い!!」
「鈴本君?どうしたの?」
鈴本が駆け寄ってきた
「すいません!書類にミスがありましたぁ!!」
「えっ?どこだい?」
僕は彼の書類を見る
「ここです!」
「あ~計算を……」
あれ?この書類がミスってるってことは……
「鈴本君……ひょっとして?」
「後の全部やり直しです……」
…………うそぉ
「ど、どうしましょう……」
「このままじゃ駄目だから残業だね」
「で、ですよね……」
あ、落ち込んでる
まあこんなミスしちゃったらね……
はぁ、仕方ない、後輩の失敗は先輩が何とかしないと
「僕も手伝うからさっさと終わらせよ」
「ほ、本当ですか!」
「その代わり次から気を付けること!いいね?」
「はい!!」
取り敢えず優衣香さんに残業になった連絡しておくか
ーーーー優衣香さんーーーー
鈴本君がミスをしたので残って処理します
ーーーーーーーーーーーーー
ピコン!
すぐに返信が返ってきた
ーーーー優衣香さんーーーー
わかりました、先に帰っておきます
無理はしないでください
ーーーーーーーーーーーーー
ごめんね優衣香さん
「さあやるよ!」
「はい!!」
・・・・・・・・
「………………よし!」
「お、終わった!」
「時間は……21時か……」
「すいません先輩……俺のせいで」
「誰だって失敗するさ、引きずらない!」
終ったんだからさっさと帰ろう!
僕と鈴本君は会社を出る
「先輩!ありがとうございましたぁぁぁ!!」
挨拶して鈴本君はバイクに乗って行った
「僕も帰らないと……」
・・・・・・・・
家に帰る
ガチャ!
鍵を開けて中に入る
「ただいま」
時刻は21時42分
優衣香さんは流石にもう休んでるかな?
僕はリビングに行く
「あれ?明かりがついてる?」
リビングの扉のガラス越しに光ってるのが見える
僕はリビングに入ると
「………………」
優衣香さんがキッチンで料理を温めていた
「優衣香さん?待っててくれたの?」
「…………」
優衣香さんが鍋をかき混ぜながら僕を見る
「…………(コク」
そして頷いてまた鍋を見る
「ありがとう優衣香さん」
僕は抱き締めたい衝動を抑える、今抱き締めたら危ないからね
「…………」
優衣香さんが鍋の火を止めた
そしてお皿に盛る……クリームシチューだ
僕と優衣香さんの二人分をリビングのテーブルに運ぶ
「いただきます」
「………」
僕と優衣香さんは手を合わせる
そして温かいシチューを一口
あぁ、美味しい……
「…………お風呂」
優衣香さんが呟いた
「あ、沸いてますか?わかりました、食事を終えたら入ります」
「…………」
僕がそういうと優衣香さんは食事を再開した
………………
なんか、寂しそうに見えるなぁ
今日は遅くなっちゃったし…………
「あの、優衣香さん」
「…………」
優衣香さんが僕を見る
「一緒に入りませんか?」
「(コク」
速効で頷いた
あっ、優衣香さんも一緒に入りたかったんだね
食事を終えた僕達は食器を片付けてから風呂場に行く
「…………」
脱いだ服を脱衣かごに入れる優衣香さん
……魅力的な後ろ姿だ
「…………」
かごにいれた後は優衣香さんは早足で浴室のスライドドアを開く
そして
「…………」
中に入って僕を見る
早く入ってこいって感じだね
うん、今すぐ行くよ
今日は優衣香さんに甘えるし
優衣香さんも思いっきり甘えてもらおう
そして僕は浴室に入ってスライドドアを閉めた
二人の住むマンションは3LDKです