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2  作者: 師走
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3

切り立った崖のそばも駆け抜けた。

この道は、誰かが大昔に当然切り開いたのだろうが、相当な労力が要ったと思う。

固い地盤やこう要った崖を避け、グニャグニャとくねった道を造ったのだそうだ。それはご苦労様なこと。


だが、こういう一人ぼっちの夜にはそれもかなりの恐怖に感じられてしまうから厄介な話だ。

まさかそんなこともあるわけがないのに、例えば岩が雨などで柔らかくなっていて、たまたま今落ちてくるとか……。


ああ、考えうる危険なら何とでも出てくる。それでも私は足を止めない。絶対に。

ずっと勢いを殺さないまま、運良く一回も転ばずにかなりの距離を下りきったようなのだが……。


「!!!」

私は、カッと目を見開いた。

これはどうしたことだろう!

あそこに見えるのは、あれは光ではないか?!


光、光??!

どうして?!!

太陽はすっかり沈みきっているらしい。

いや、もしギリギリの位置を保っていたとしても、最早私には関係ないくらいに辺りは真っ暗である。

じゃあ、誰かが火を焚いている?


そうでもない。

あの明かりは火にしては強すぎる。

また、火よりもずっと安定した光だ。

これは、これは……。


「町?…………」


どうしてだ?

なぜ、あんな所にまで町ができたんだ?

そして、私はあそこへ行っていいものだろうか?

頭のおかしな連中が、気温が低い夜にもかかわらず宴会でも開いて騒いではいまいか。


「」

賭けるしかないのだろうか。

ううん、そんなに命を投げ打ってまでサイコロを振る必要はない。

まずあそこの近くへ出たら、身を潜めて様子を伺おう。

それで安心できたら、そこでようやく出ていけばいいのだ。よし、それがいい。


気がつけば、グン、と歩幅が広くなり、さっきより少し高く跳ねるように走っていた。

もしかしたら、一夜を明かす場所を探すのに苦労しなくても良いのかもしれない。

それはありがたい。

しかし、あの町ができたのは、やはりごく最近なのだろうか。

そうだとすれば、あそこに私の知り合いが移り住んでいることも、あるのかもしれない。


きっとそうであってほしい。

私はそんな風なことをツラツラ祈りながら、これでもかという猛スピードで坂を飛ばして行った。

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