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2  作者: 師走
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2

ガサッ

息を張り詰めながら走っていると、突然、そんな音がすぐ近くから聞こえてきて、ゾッとした。

やはり、動物もいる。当たり前だ。


鳥なら良い。猿でもまだ許せる。だが、もし野犬や猪なら。もしくは、いや、こんなことはないと願いたいが、熊、だとしたら。


「……」

だからと言って立ち止まれるだろうか?

こんな中途半端な所で引き返すのか?

それは、とてもじゃないが、…ない。あり得ない。


「」

ただもうひたすらに、一言も発さずに突き進むのみだった。

たとえあの動物が何であれ、このスピードにはついてこれまい。そもそも、ついて来ようとは思うまい。

何の得にもならないはずだ。

ただ山を下っているだけなんだ、それだけだから、なんの咎めも受ける必要はない。


いよいよ暗い。

もう真下さえもよく分からない状態だ。

時間が遅くなればなるほど、前進が難しくなる。

高低差が掴めない。

だから、膝が伸びきった状態で、変に着地してしまったりする。

ただでさえ疲れているのに。痛い。


休み休み進むのとも訳が違う。

もうちょっとで家に帰れる、と思って帰路を行っていたのと、心理状況もまるっきり違う。

怖い。


だから止まれない。止まったら絶対に、もう進めない。

ただ、こんな時だから、眠気だけは一切感じなかった。これは良かった。それだけがメリットである。

ここを下り終えれば、また上りが待っている。

またてっぺんまで進まなければならない。

全く非効率な限りだが、向こうの岩山へ向かうのだから、仕方がない。


……今日はやめておこうか。

ふと、そんな考えがよぎった。

そうだ。今日は麓で一夜を明かそう。

危険を冒してまで、あそこへいく必要はない。

体力は使い果たしちゃお終いだ。不測の事態に対応できない。


よし、下り終えたら、山と反対の方向へ進もう。

ずっと遠くに行かないと家は一軒もなかったはずだけど、少なくとも山中よりはずっと安全だろう。

どこか寒さをしのぐ場所でも見つけて……。


空気が冷え込んでいる。

降りきった頃には、少し気温も上がっているだろうか。

これほど動いているのだし、汗だってにじみ出ている。

大丈夫。何とかなる。

まだ指がかじかむ前に、どこかへ潜り込めば。。


そうだ。そうしよう。

私はぼんやり、しかしながら驚くくらい高速でそんなことを考えながら、右足と左足を同じように突き出し続けていた。

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