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02.クソ女神様

「案……内人?………お前が?」


 とても不安である。不安の一言しか出てこない。


「ちょっと、女神ベル様と呼び讃え敬ってよ!そこな哀れな面白い死に方をしたアオバ」

「そこ、ほじくり返すなよ!はっ、お前なんかベルって呼び捨てで十分だろ‼敬われたかったら、それ相応の態度でしめしてみろってんだ」


 俺が思いの丈をぶちまけ終えると、ベルは器用に方眉を上げて。


「ふーん、そんなこと言うんだ、言っちゃうんだ。いいわ、見せてあげるわよ!私のスゴさを思い知りなさい‼」


 言いながら、ベルは両手を前に突き出し、それを左右に開いた。

 すると、そこに半透明のディスプレイが姿を現した。


「そ、そんなもので何をしようってんだ……」

「さー、どうなっちゃうでしょう?どうなるでしょう?」


 ベルは、ディスプレイに心もとない手つきで触れていく。


「えーと…ここはこうで、ここは……これ、よね?あ、間違えた。これは、ダメなんだ。んー…」


 不穏な言葉と共に、ビーっと何かしらのエラー音が聞こえた。

 俺には今ベルが何をしているのか分からない。

 分からないが、俺にとって良いことでないのは分かる。


「おいベル、これ大丈夫なのか?変な音がなりまくってるけど!」

「うるさい、うるさいっ!ちょっと黙ってて!いま大事な所なんだから!」


 そう言うベルだが、先程から一向にビービー音は鳴り止まない。

 その真剣な表情で、ベルはいったい何をしているのか。

 と、突然ベルが拳を振り上げ…………。


「あーもー!これだから旧式は!途中までうまくいってたのにぃ!!」


 その拳を苛立たしげにディスプレイへ叩きつけた。


「ちょっ!?お前、それ!」

「な、なによ、こうゆーのは叩いて直すものって知らないの?」


 …………それはいつの時代のテレビの話ですか?

 俺が遠い目で、少し不安そうなベルを見つめていたのだが。

 意外にも、本当にエラー音が止まってしまった。

 それを得て、ベルの顔がみるみる内に得意気に変わる。


「ほら、ほらほら、みなさい!私はやれば出来る子なのよ!やれないんじゃないの、やらないだけなのよ!」

「はいはい、分かった分かったから。で、結局さっきから何をしてたんだ?」

「ふふん、それは────」


 自信満々に語りだそうとした直後、大音量のエラー音がいくつも鳴り響く。

 そのあまりのうるささに、俺は慌てて耳を塞いだ。

 肝心のベルは、ディスプレイの前で目を白黒させ右往左往している。


「おい、ベル!早く、早く止めてくれ!」


 声を張り上げ訴えかけるが。


「わーわーわー!?」


 とてもではないが、俺の声に耳を傾ける余裕は無さそうだった。

 ベルは必死にディスプレイと格闘しているが、鳴りやむ気配はない。

 この状況をどうにかしたいが、俺はベルを手伝うことも出来ない。

 ベルの奮闘に期待するしかないのだ。


 ───あれから5分ほど経った。

 まだエラー音は止まっていない。

 ベルも頑張ってはいる。

 その表情を頼り気ない顔から、奮起する顔に、次いで泣きそうな顔から、諦めそうな顔へ。

 多彩な表情からも、それは伝わってくる。

 あぁ、確かにお前の頑張りは俺が見ているぞ。

 だから、早く止めてくれ!


「わー!止まって、止まって!止まって下さい!!」


 一向に止まらぬエラー音へ、ついにベルが癇癪を起こした。

 両手の手で、何度も何度もディスプレイを叩く。

 叩く、叩く、叩く…………。


「おい、いくらなんでもそれはやり過ぎ──」

「わーー!止まって、止まって………よっ!」


 俺の制止も聞かず、今までで一番のベル渾身の一撃が、ディスプレイへと放たれ……………。


 ───────ポーン


「……え?」

「……は?」


 あれだけ騒がしかったエラー音が鳴り止み、かわりに小気味良い音が一度だけ鳴った。


「と、とと、止まったぁ………」


 ベルは安堵ともに、ペタりとその場に腰を下ろすが。


「ベル、今の音………なんだ」


 俺にはそれが、不吉な音に聞こえてならなかった。


「もう、何よ。まったく、本当にアオバはしょーがないわね。私は今勝利の余韻に浸……って…………」


 思い腰を上げ、ベルがディスプレイを覗いたまま固まった。


「そう言うのは今は良いって。なぁ、不安になるからそう言うのはやめろって。おい、ベル……」

「あ、あは、あはははは…………」


 ベルは乾いた笑い声をあげ、顔をひきつらせる。


「おいおい、冗談はやめてくれよ」


 いや待て、頼むから待ってくれ。

 そんな俺の願い虚しく。


「……………や、やっちゃった、てへ」

「ノオオオオオオオオオオオオ!」


 ベルは舌を出し、おどけて誤魔化そうとする。

 俺はとにかく焦っていた。


「てへぺろ、じゃねえええ!おい、何をやった!何をやらかした!吐け、全部吐け!」


 なぜなら、俺の足下が…………何やら輝きだしていたのだから。

 青白いその光は、少しずつだが光を増してる気がするし。

 ベルへと迫り、凄む俺に観念したのか。


「え、えっとー……ぱ、ぱんぱかぱーん!おめでとうございます!アオバは私のスゴさにより、類希な転生が決まりましたー!」


 ………いや、むしろ何か開き直ってやがった。


「おい、どう言うことだ!説明しろ!!」

「あー、時間もなさそうだし簡単に説明するとー…。えーと、地球ともう1つの異世界があって、兄弟?姉妹?関係で…地球が年下で…異世界はいろいろ大変で、そのための地球で」

「分からない!何を言ってるのか分からない!もっとちゃんと説明して!」

「もうっ、アオバはわがままね!」


 今の説明で何を分かれと。


「だからね、地球で徳を積んで、その経験をもとに力を授けて異世界に送り出すの。その逆で異世界でまっとうした魂は、また地球で頑張るんだけど………地球は育成編で……異世界が本番みたいな?そう、そんな感じよ!」

「チートか!俺にも異世界チートが!?いや待て…それが規定路線なら、お前は何をやらかしたんだ」


 異世界といえば大冒険や、胸熱な敵やライバルとの戦闘が期待される。

 が、なぜお前は目を逸らす!


「えー……とね……。あのねアオバ、怒らないで聞いてほしいの」

「……事と、次第によるな」

「本来なら送られる魂は記憶とかは浄化されて、新たな命とし生まれかわるの。でもね、アオバは今のまま送られちゃうの」


 ……………と、言うと。


「本来、消されるはずだった俺という存在がそのまま異世界に行けることになったのか!やるじゃねーか、ベル様!」


 なんと言うことだ。

 俺は死んでから九死に一生を得た。

 誉められたベルは、途端に態度を急変させ。


「で、でしょ!やっぱり私はスゴいのよ!あ、でもね、間違ってこんなのも付いちゃってるんだけど、そんなの些細なことよね!」


 言うと、ベルがディスプレイを俺にも見えるように移動させた。


「………おい、なんだこれ。詳しく聞こうじゃないか」

「私のスゴさと恐ろしさを教えるために、さっきこれつけちゃうぞーって言おうとしてて、そのまま承認しちゃったみたい」


 ベルの言うこれ、とは……………。


【女神の呪い】

 効果:幸運値が100~-200へ女神の気まぐれで変動。


「呪ってんじゃねえええよ!」

「い、痛い、痛い!私、怒らないでって言ったじゃない!」

「俺も、事と次第によるっていたよな!」


 掴み掛かる俺を振りほどき、ベルはその場に頭を抱えてしゃがみこむと。


「大丈夫、大丈夫よ。大丈夫だから。………ばれなければ、私はまだ大丈夫」

「自分の心配かよ!?」

「だって、だってだって!私、あとがないんですけど!ヤバイんですけど!」


 半泣きでそんなことを言いだすベル。

 だが、俺には知ったことではない。

 ばれなければ、と言うことは他にも神や女神がいるということで。


「だれかー!だれかいませんかー!助けてー、助けてくださーい!」

「わーわー!やめて、やめなさいよ!?」

「うるさい、クソ女神!このっ、離せ!」

「いや!絶対にいや!」


 と、俺達がわちゃわちゃ取っ組み合っていると。


 ───足下の光が一際輝きだした。


「おいおい、まさか……」

「あーはははは!時間切れで私の勝ちね!アオバが消えたら、私はすぐにこの事を証拠隠滅するわ!完全犯罪よ!」


 いつから勝ち負けの話になったのか。

 …………と、言うか!


「女神が犯罪犯してんじゃねぇ!これは職権乱用だ!訴えてやる、告訴する!異議あり!異議あり!」

「残念でした!無念でした!異議を却下しますっ!」


 そんな無駄で、バカなやり取りを交わしている最中に。


 ─────俺の視界を光が覆った……………。

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