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今日から学校と仕事、始まります。①莞

ちゃんと渡せない人

作者: 孤独

「のん」


電車の中。旅路に疲れて、一眠りしていた子を揺すって起こしてあげる。


「着いたぞ、起きろ」

「ふぇっ?」


寝起きの辛い時に急かせるよう、降りる仕度をさせる。

カバンを持って、開く自動ドアを潜る。


「のん。俺、忘れ物した」

「えぇっ?」

「お前が寝すぎなのが悪い。棚の上に置いてあるから、とってこい」

「広嶋さん!のんちゃん、届かないですよ!」

「いいから!椅子にでも、足を乗せろ。お前のカバンは持ってやる」


そうやって、また座席のところへ、嫌がっても行かせる。ぷんぷんっと怒る子。待ってあげる人は、周囲の迷惑も気にせず、自動ドアを閉めさせず、優しく立って待つ。


「あれかな?」


背伸びをしても届かない。靴を脱いで、椅子の上に立って、そこからまた背伸びをして忘れ物をとった。

思ったほど重くなくて、大きいだけのもの。

紙袋で、上に乗っていた荷物の中身が見えた。ちょっと、ビックリして床に転げそうになった。目を丸くして、靴を履きなおして、


「あ、あの」

「電車、発車するぞ」


駅員に怒られながらも、2人は足早にここから離れていく。

少女は紙袋の中が見えて、不思議にも嬉しい気持ちが沸く。


「これ、この……」

「お前にやるよ。お前が今、もってるしな」


返品はダメだと、ちょっと満足気な顔。してやったりの顔で。

顔を赤くなっても、文句が出る。


「ズルイです。もっと、ちゃんと渡せないんですか?」

「そっか」


反省のない声の後、


「じゃ、ちゃんと、今、渡すから許してくれな」


そうやって、彼はまたもう一つ。カバンの中から、またプレゼントを手渡した。

両手が塞がった2つのプレゼントにやっぱり


「もう、ズルイですよ」


今度のは文句になれなかった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 ほっこりさせていただきました。 ちょっと意地悪なところにときめきますね。 真似してみたいような、けれども恥ずかしいような、そんな話でした。
2016/05/10 15:08 退会済み
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