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命を繋ぐ者。  作者: 夢迷四季
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幼き日の記憶

私が今まで見てきた夢とは全く逆の真っ白な世界、なのに全く何もない夢。私自身信じられないのは、今目の前にいるのがいつも夢に出てきた双子の天使と悪魔でなく、名前もわからない一人の男子だった。

「黒羽ちゃん、こんにちは」

その人はにっこりと笑ってそう言った。まるで年下の女の子に声をかけるみたいに、にっこりと。

「えっと…?」

「あーそっか、君はもう子供じゃないね。覚えてないかな、君が死にかけたあの日」

そう言った彼の声、懐かしいんだけど……。


ずっと前。私が小学校二年の時の記憶を思い出す。学校から帰るときに声をかけてきた同じクラスの男子三人組と、一緒に帰ったあの日。話しながら歩いていたら、突然男子三人組の一人に押されて道路に飛び出してしまったのだが、運良く通りかかった誰かに助けられたと言う思い出のあるあの日。


「あっ!もしかして、晴輝(はるき)兄さん?」

そう、あの日から一度も名前を聞かなかった従兄弟の晴輝兄さんだった。晴輝兄さんは笑った。

「うん、正解」

でも、あれ?なんで名前を一度も聞かなかったんだろう。

「一度も名前を聞かなかったのはどうしてって、今思ったでしょ?」

私は目を見開く。なんで……。

「ここは君の世界だけど、同時に僕の世界でもあるんだ。だから思っていることは知ろうと思えば知ることができる」

そう言った晴輝兄さんはまたにっこりと笑って言った。

「まぁそう焦らないで。ちゃんと話していくからさ」


まず、あの日。率直に言ってしまうと本当は僕が君を守って死んだんだ。だけど、死んだってことは君にそのあとそれを伝える両親や、僕の兄さんや両親は辛いだろって思ってさ。僕、君をかばって引かれたあと、意識がとぶ前に願っちゃったんだ。『僕が死んだってことをなかったことにしてくれ』ってね。どうやらそれが叶っちゃって、元々僕が存在していなかったことになってしまった。けど、君を守ったってことは消せないから、どうにか記憶を封印したらしいけどねー。僕の存在を消したあと、それを伝えにきた天使が『封印はすぐに溶けてしまうから、あなたが封印そのものになってください』って言ってたんだ。だから僕はここにいる。


「でも君はさっき死んでしまったから、封印の意味もなくなってしまったということなんだ」

意外とチャラチャラしてるなって思ったのは気のせい?なのだろうか。

「まだ話は続くから、よく聞いていてね」


闇の世界があって、天使と悪魔がいるのも本当。君がさっきまで一緒にいたミルクとシルクも本物の天使と悪魔。だけど、君の知ってる双子の天使と悪魔は僕が造り出した存在、というか僕自身を白と黒にわけたものなんだ。ごめんね、騙しちゃって。君が初めて夢の中で天使と悪魔に会う前に、僕の所に天使がきて君の友達が闇の世界に飛ばされたって聞いて、あと君がもうすぐ死ぬってことも聞いたんだけど。それでちょっとした物語にしたら君も納得するかなって思ってさ、天使とミルク達に手伝ってもらった。だから『シナリオ』は僕が作ったもので、ミルク達もそれを知ってて嘘をついた。


「ほんとにごめんね」

なる、ほど……。だからあの時シルクは悲しそうに笑ったのか。確かに不可思議なことばかりでびっくりしてるけど、納得している。死んだってことも……。


「だけど、ここからは君が決めなきゃいけない」

突然そう言った晴輝兄さんは真顔で私を見詰めた。

「君はまだ死んでないんだ。だからここにいる」

よく、わからないんだけど。晴輝兄さんはまたにっこりと笑った。

「天使がね、僕に最後のチャンスをくれた。だから君に選んでもらいたいんだ」

そしてまた真顔で言った。

「あの藤原くんって人の命を守るか、君自身の命を守るか」

ドクン、と心臓が脈打つのが聴こえた。藤原を守るか私を守るか?そんなの決まって―――。

「自分を守るって決めることは、僕もまだ消えずにすむってことなんだ」

そう言った晴輝兄さんは悲しそうに笑って言った。……晴輝兄さんは私を守りたいのがわかった。でも、でもね、私はやっぱり自分よりあいつを選びたい。

「ごめん、晴輝兄さん。私はあいつの……藤原の命を選ぶ」

しばらく黙って見つめていた晴輝兄さんも、頷いて言った。

「うん、そう言うと思ってた」

その瞬間、途端に眠気が押し寄せてきた。

「……また会えるといいね。おやすみなさい、黒羽ちゃん」

また意識が……飛んだ。


闇の世界にいた皆の記憶から、闇の世界での出来事は消されていた。だけど同時に私が交通事故でなくなったと言う記憶が書き加えられていたし、ちゃんと私のネト友の稜も無事に戻ってきていた。……なんでこんなに後のこと知ってるかって?そりゃあミルクとシルクに教えてもらったり実際に見に行ったりしたからね。まぁちょっと寂しいけど、そろそろ私も生まれ変わんないとね。次はもう少し長生きしたいな。……じゃあさようなら。またいつかどこかで!

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