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命を繋ぐ者。  作者: 夢迷四季
6/8

闇と私と友達と

全員揃ってから一時間程、お喋りしたりそれぞれ個人トークしたりと自由に過ごした。ミルクが皆に捕まっていたので、私はシルクを連れてこの家の中を案内して貰った。

「黒羽様の住む世界の家と大きさとかあんまり変わんないけど、部屋の数は少しこっちの家の方が多いです。…あ、ここが一応この家の図書室的な場所です」

私達はシルクが言う図書室の中に足を踏み入れた。

「うわぁ…意外と図書室っぽい、けど凄く本の量が多くて足の踏み場が少ないね」

確かに図書室のような所だ、が本の量が割りに合わずそこらじゅうに山積みにされているし、異世界というのが実感できる場所だ。なんだかキラキラしていると言うかなんと言うか、埃っぽくないんだよねーここ。

「本の量が多くてすみません!…けどここ、もうすぐ必要なくなるから」

シルクが意味深な一言を口にした瞬間、私は少し前に聞いたある言葉を思い出した。

「ねぇ、シルク」

本を退かしていたシルクがすぐにこちらを向いた。

「はい、なんですか……」

「ミルクが言っていた『永い眠りから目覚めさせてくれて』って、どういう意味だったの?」


シルクは黙って本を退かすと、そこに座って私の方を向く。

「ずっと前に天使と悪魔の戦争がありました。その時はまだ天使と悪魔は犬猿の仲で、殺し合いが耐えない時代だったんです…」

そしてそれは人間界にも影響したという。だがある天使と悪魔が手を取り合って戦争を止めようとした。実際に戦争は終わったのだ、が、戦争中に巻き込まれた双子の天使と悪魔が永久(とわ)の眠りについてしまった。そう、双子の天使と悪魔は自分達の命と引き換えに戦争を止めたからである。それが……。

「あの夢で会った双子の天使と悪魔だったってこと?」

シルクは静かに頷き、先を話す。

「僕らは夢の中を彷徨(さまよ)い続ける英雄を、救い出すために送り込まれた天からの使者というわけです。僕らは呼び出されるまで何千年と眠っていました」

私はじっとシルクを見詰める。しばらくそうしたあと言った。

「シルク、あのね……私、初めて彼らと夢で会った時に、悪魔が何か言ったの」

少し間をおいてから口にする。

「よく聞き取れなかったけど多分…『闇の中に僕らが縛られていることを思い出してほしい』って言ってたんだと思うんだ」

シルクはビクッと身体を震わせる。私はもう1つ言った。

「シルク、シナリオってどういうことなの?何度か言ってたよね。天使と悪魔も」

シルクは首を振る。

「僕らにもわからない。ただ今回のような闇の世界が出来ると、必ずシナリオが僕らの頭に記憶されているんです」

そっか、と私は返す。シルク達にもわからないならこれは迷宮入りかな。ふぅ…と溜め息をつくとシルクに言った。

「ごめん、答えてくれてありがと。そろそろ皆の所に戻ろ」

シルクは少し悲しげな笑みを見せてから、はいと返事をした。


自由時間の終わりを知らせるかのように、リビングに置かれている大時計が鳴り響く。私とシルクが戻ってきた時は、すでに大きなテーブルを囲んで座っていた。皆、ミルクとシルクが進むべき道について話してくれることを待っている。もちろん私も。

「皆様、リラックス出来ましたか?」

ミルクが笑顔で皆の顔を見渡すと、頷いた。

「それではお話します。…シルク」

話はシルクがするようだ。

「面倒な説明をすると混乱してしまうので、簡単に言います。1つ目の目的は自分の作り出した闇の自分を倒すことです」

ミルクが口を挟む。

「もちろん完全に闇を倒すことは出来ません」

「しかし、小さくすることができる。とにかく闇を倒す。それが今回あなた方にしてもらうことです」

そこでシルクは一度切ると、ミルクが先を話す。

「目的は闇を倒すことですが、その闇のあなた方が守っている(りょう)様を取り戻すのがもう1つの目的です。そして取り戻すのが私達の役目となります」


一度図書室に行ったシルクは私以外の皆に手のひらサイズの本を持って戻ってきた。

「このパルスから北に少し行くと、ガラスに包まれた稜様がいます。その周りに魔方陣があなた方の人数分描かれています。どこに入っても変わらないので、深く考えずにその魔方陣の上に足を踏み入れてください。そこで闇と戦うことになります」

ミルクがいつの間にか持ってきた短剣を、私達に渡す。

「この短剣を使ってください」

エメラルドの宝石が埋め込まれているだけのシンプルな短剣は手のひらにそのままのせているのに痛くないし、傷がつかない。ミルクが口を挟んだ。

「その短剣は闇を倒すために造られたものなので、人を傷付けることはありません」

シルクが言った。

「そろそろ出発するために準備しましょう」

そしてミルクとシルクは奥の部屋へ消えた。私は少し震えている。だってさ、やっぱり怖いもの。闇と戦うってことは、勝ち負けあるわけでしょ。負けたらどうなっちゃうんだろって考えちゃうんだもん。でもそれは私だけじゃなくて皆思ってることだろう。だってほら、ちょっと見渡すだけで皆が震えているのが、怖いって思っているのがすぐわかる。私はそっとその場を離れて外へ出た。


パルスの中でも闇の世界の影響なのか、それとも元々そうなのか、時の流れと言うものがないらしい。私達が来たときと同じ景色が広がっているのに少し寂しさを覚える。近くに少し大きな木が生えているのを見つけてそこに腰を下ろす。生物の存在しない世界、か。虫とか嫌いな人にとっては良いのかも知れないけど、私は少し嫌だな。しばらくぼんやりとそこから見える景色を眺めては溜め息をつく。

「もうすぐだね」

突如聞こえてきた声にビクッと身体を震わせた私は、すぐに周りを見渡すが誰もいない。またあれか。

「『誰か』さん、久し振りかな。もうわかってるよ」

少し間をあけて、乾いた笑い声が直接頭に響いてきた。

「遅いよ、もう時間切れだ。最後に『私』として話せて良かった」

そう言った声はもう、聞こえない。私は1つだけ呟いた。

「サヨウナラ……『私の影』」

立ち上がってもとそこに『私の影』はない。きっと今は闇に潜んで倒されることを待っているのではないかな。さて、そろそろ皆の所に戻ろうか。


あれから多分、大時計を見る限りでは30分と言うところだろうか。皆はもう戦う覚悟が出来たようだ。なんだかなー、まるで映画みたいだね。苦笑しては真顔になる。やっぱり今までこんな不可思議なことってなかったから、怖いものは怖い。

「出発しましょう」

シルクを先頭に私達はパルスを出た。暗くて不気味な道無き道をしばらく歩けば、シルク達の話通り一人の人間を包むガラスの柱が見えてきた。ミルクとシルク自身が光を帯びているのと、私達の持つ短剣の宝石が光を放っているから暗くても見えるんだけど……私のネト友である稜はなんだか、そこから出たくないように見えた。

「皆様は魔方陣の方へ」

そこからは二人で手分けして皆を案内する。あれ?この魔方陣、私達がここに来るとき描いた魔方陣と同じ……。質問する前にミルクは次の人の案内に行ってしまったので聞けなかったけど、どうして同じなんだろう。……全員魔方陣の上に立ったところでその魔方陣が青白い光を放ち始め、皆の居場所がわかった。すぐに形造られていく黒い自分。私は不器用ながらも短剣を握り締めた。ふっと笑った闇の私が言った。

『別に緊張しなくてもどうせ倒せるんだよ?』

その言葉に戸惑いを感じたその瞬間私の体は吹っ飛ばされた。

「!?」

同時に左腕を血が流れる。どうやら私の闇はか、な、り、イヤーなやつみたい……(怒)

「うっざ、消してやる!!」

すぐに立って私は闇の私に短剣を刺す。でもあれ?なんで全く攻撃しないわけ!?

『だってシナリオじゃ、私が殺すんじゃないんだもの』

私にそう言った闇は笑みを見せてからエメラルドの宝石の光によって消えた。というか黒い靄みたいになって私に吸い込まれたって言う方があってるかも。意味深な一言で混乱しないように私は周りを見渡した。まだ……皆戦ってる。なんか、短剣使ってない人いるけど、大丈夫なのかな。ふと、ミルク達と稜の姿が見えない事に気付いた。パルスに先に戻ったのかな。また、周りを見渡した。


「あ!危ない!!」

誰かの声が聞こえてきた時にはもう遅かったなぁ。闇の持っていた黒い短剣が私に刺さっていた。

「黒羽!!」

そのまま私の体はズルリとその場に崩れ落ちていく。そう、数秒前見渡した時、隣の魔方陣にいた藤原が刺されそうになっててね。思わず飛び込んでしまったわけで……。痛いな、意識が遠退いてく。多分藤原の闇は藤原自身が倒せたと思うけど。……誰かの腕が私を抱き起こしたあと、意識が飛んだ。

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