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 9月20日


 やっぱり、あれは夢じゃなかったんだ。


 たい焼きの試食を勧めていると、夕方、あの美形さんと、ニット帽の男がやってきた。

 後ろにはピンクの物体が浮かんでいる!

 なんだろうあれ、ゲーム機……なのかな。


 美形さんとニット帽の男との会話がまた面白かった。

「イヌイ、これはなんて書いてある?き、……い、た」

「タイヤキですよ。あれは焼くという字で、字は右から左に向かって縦書き、つまり普通とは逆に読むんです」

「……なぜだ」

「……すみません、知りません」

「タイヤキとはなんだ」

「タイを焼いたものじゃないですか?」

「タイとはなんだ」

「食材になるタイといえば、魚の名前だと思いますけど。魚……これは、魚ではないよな」

 と、私の手元を覗いて二人でマジメに話してるんだもの。

 凝った冗談かとも思ったけど、本当に彼らが外国人だとしたら納得。


「魚のタイのカタチに作った、甘いお菓子ですよ」

 私が言うと、彼らはいっしょに目を丸くして、口をそろえて、

「なぜ?」

 ……ごめんなさい、よくわかんないです。


 彼らは、試食、という概念がよくわからなかったらしい。どうぞ食べてくださいというと、今待ち合わせ中で、こんなときに食事をとるのは私に失礼だからと返された。意味が解らない。


 やがて、制服姿のあの美少年がやってきて、彼らと合流した。

 短い会話だけして、みんなで商店街を出て行ってしまった。


 彼らはみんな仲間? だとしたら、あの栗色の髪の子もバンド仲間なのかな。


 ああ、行きたい。

 どんな歌をうたうのだろうか。



 10月1日


 あれから、彼らを全く見かけない。

 どうしているのだろうか。


 私は今月いっぱいで、このバイトを辞めることにした。伯父さんにも話した。

 世間の夏休みをピークに、商店街は閑古鳥。ヘルプの仕事がなくなってきたみたいで、まあちょうどいいかなと言われてしまった。


 もう一度、彼らに会えたらいいのにな。



 10月14日


 今日から花屋さんでお手伝い。

 店主が仕入れや配達に行っている間の店番、の、アシスタント。

 水仕事が多くてつらい。

 でも、あと二週間の辛抱だ。それでこの商店街のバイトもおしまい。

ミニブーケを少しだけ任せてもらった。難しいこともあるけど、花は好きだし、 

 あの着物屋の地獄を思えばたのしいものだ。

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