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人形 go home  作者: 森平
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第05話「人形の道連れ」

第05話「人形の道連れ」




「はふぅ……くー……」


 アスレイアちゃんの寝顔も可愛いなぁ。これで胸さえあれば完璧なのに。

 触っていないからわからないけど、多分アリッサちゃんよりも……。

 う、うん、これ以上はこのことを考えてはいけない気がする。だって、そんな現実は可哀想なだけだし。


 てなわけで、夜が明けて朝になりました。

 ちなみにテントの中はカップル2人に占領されたままで、見張りの交代もなかったよ。

 しかたないからアスレイアちゃんには火の傍で休んでもらいつつ、俺がかわりに不寝番をやっているという状況なのです。

 人形だから寝る必要もないしね。


 ともあれ、そろそろ起こした方が良いかな。

 おーい、アスレイアちゃん。朝だよー。


「んぅぅ……もうちょっと……」


 昨夜は遅くまで話をしていたからねぇ。もう少し寝かせてあげたいけど……でもダメだよね。

 野宿なんだから、何があるかわからないし。


 ってことで、えいっ、えいっ!

 俺はアスレイアちゃんのほっぺたを、ツンツン何度も突っつく。


「んくぅっ、んにゅ……もう、なぁに……?」


 あ、目が覚めた? おはよー。


「…………」


 ぽやーっとした表情で身体を起こして、ボーッと俺を見つめてくる。

 もしかして寝惚けているのかな?


 と思ったら、地面に置いてあった杖を掴むなり、いきなり俺に突きつけて来た。


「ファイア──」


 ちょ、ま、待った! なんでいきなり至近距離から火の玉を撃とうしているの!?

 起きて! アスレイアちゃん、ウェイクアップ!!


「……あ、レイオンか。ごめん、モンスターかと思った」


 慌てて叫びつつ、杖の先端を自分から逸らそうとペチペチ叩いていると、ようやく目が覚めたみたいだ。

 あー、朝からビックリした。肝が冷えたよ……。


「……ミュイとロックは?」


 そっちはまだ起きていないんじゃないかな。


「ん、じゃあ起こすわ。レイオンは隠れていて」


 はーい。アスレイアちゃんのローブの中に入っているね。


「ひゃっ、んっ……」


 裾からローブにもぐり込むと、くすぐったかったのかアスレイアちゃんが変な声を出す。

 別に変なところは触っていないよ? そもそも触れるほど膨らんでもいないし。


「……何か失礼なこと考えてない?」


 い、いいえ、なにも!


「なら良いけど。はぁ……気が重いわ。変な匂いとかこもっているかもしれないから……微風(ブリーズ)


 換気のためなのかな? 風の魔法を発動させて、テントの中に顔を突っ込む。

 俺はもちろん、こっそりとローブの隙間から覗いているよ。


 で、テントの中では若い男女がもつれあったまま寝ていた。


「ミュイ、ロック、いい加減に起きなさい。起きないと魔法でぶっ飛ばすわよ」


「ふぁぁぁ、もう朝なのか……?」


「ん……おはよー、アスレイアちゃん~」


 最初にロックと呼ばれたパンツしか穿いていない男の子が、次にミュイと呼ばれた全裸の女の子が起きて……。


 …………。


 な、なんじゃこりゃぁあぁぁぁぁっ!?

 ちょ、えっ、えぇえぇぇぇっ!? ミュイちゃんが腕を上げて伸びをした瞬間、柔らかそうな巨大スイカがたゆんたゆんって揺れて……。


 こ、これで14歳……だと……? マジで? 何これ、俺こんなの知らない!

 アリッサちゃんのママさん──レイラさんもかなりでかいと思ったけど、それ以上だよ!

 あぁあぁああぁぁあ、これはしかたないよ、どうしようもないよアスレイアちゃん。

 この14歳とは思えない圧倒的なボリュームに並ばれたら、いくら美少女なアスレイアちゃんでも見劣りしちゃうよ。

 だって、男はおっぱいばかりに視線が向いちゃうバカなんだから!


「はぁ……まだそんな格好をして。ちゃんと服を着なさい。それ以前に野宿中に盛るな、バカ」


「うぐっ……わ、悪い、アスレイア。ミュイといるとつい……」


「ごめんね~。えへへ、何だか昨夜は身体が火照っちゃって~。あと見張りもかわれなくてごめんね? ロック君が激しかったから腰が抜けちゃってて……」


「言い訳はいらないからすぐに出発の準備をして。街に帰って、さっさと依頼の達成の報告をするわよ」


「はーい」


 アスレイアちゃんに怒られて、少し慌てた様子で服を着始めるロック君とミュイちゃん。

 こりゃあ、アスレイアちゃんも大変だ。まるっきり保護者じゃないか。

 あと、やっぱりミュイちゃんのおっぱいすごい。たゆんたゆん。


 アスレイアちゃんは盛大に溜息をつきながらテントを出て、まだくすぶっていた焚き火を消し始める。

 朝ご飯は食べないのかな?


「朝は歩きながら干し肉を囓るから。そして、お昼までに街に帰って、昼食でちゃんとしたご飯を食べる予定」


 へー、なるほどね。


「よっと。じゃあ、テントを畳むぞ~」


「お願いね、ロック君♪」


 荷物をまとめてテントから這い出して来ると、早速ロック君はテントを畳み始めた。

 こうやって見ると結構身体付きが良いよね。力持ちっぽいし、装備を見る限りは剣士って感じなのかな?


 かわってミュイちゃん。細身の剣を持っているけど、どうにも頼りない。

 身体の一部が凶悪だけど、あとは年齢なりに可愛い印象が強くてあまり腕が立つようには見えないね。


「あれ~、アスレイアちゃん、ローブの中に何を入れてるの?」


 ギクッ!? 気付かれた!


「これのこと? 昨夜ビッグバードを打ち落としたときに、一緒になって落ちてきたのよ」


「お、おいおい、アスレイア。ビックバードってなんだよ! そんなの聞いてないぞ!?」


「昨夜、何か来たってテントに声を掛けたけど?」


「うっ……そ、そうだっけ」


 ロック君、アスレイアちゃんに冷たい眼差しを向けられて気まずそうに目をそらしたよ。

 しかもアスレイアちゃんはナチュラルに嘘を吐いている! だって、あの鳥を落としたのは俺だし!

 いや、この2人の前では普通の人形の真似をするんだから、本当のことは話せないんだけどね。


 そんな中、ミュイちゃんは俺を見て目を輝かせ始めた。


「可愛い~! ねぇアスレイアちゃん、私にも抱かせて、抱かせて~」


 おっ、ミュイちゃんはわかっているね! そっかそっか、素直な子は良いね!

 ふふふ、アリッサちゃんの裁縫の才能が怖いよ!


「あまり乱暴に扱わないでよ」


「うん、もちろん。人形さん、ぎゅーっ!」


 ふぉぉぉおおおっ!

 アスレイアちゃんから俺を受け取るなり、その豊満なおっぱいに埋めるように、抱きしめてくるだと!?

 身体が埋まっちゃう! あぁ、でもなんだろ、このアスレイアちゃんでは味わえない幸せな感じは……!


「…………後で焼く」


 はっ!? アスレイアちゃんが俺を睨みながら物騒なことを言っている……!


 いかんいかん、これは魔性の武器だ。少しだけロック君の気持ちがわかっちゃったよ。

 でもこのおっぱいを自由にできるロック君は許せないね。股間が破裂すれば良いのに。


「はぁ……ともあれ、早く街に帰りましょう」


「おう、テントも片づけたしこっちは問題なしだ」


「はーい、私も大丈夫だよ~。森を歩くのは大変だけど、頑張る!」


 ロック君もミュイちゃんも準備は万端なようだ。

 早速歩きだそうとして、思い出したようにアスレイアちゃんが声を上げる。


「あ、ロック。そっちで転がっているビックバードの死骸もお願いね。素材が売れるから」


「げっ、なんで俺が!?」


「声かけたのに、出て、来なかった」


「……街まで持って帰ります」


 まぁ昨夜は役に立たなかったんだから、そう言われちゃうのも当然だよね。

 しぶしぶアスレイアちゃんに示された場所へ行き、いきなり素っ頓狂な声を上げるロック君。


「なっ……木が焦げてる!?」


 あ……。


「お、おいアスレイア、お前は何をやったんだ!?」


「……別に」


「ねぇアスレイアちゃん~。ここでは火の魔法は使わないようにするって、森に入る前に言ってなかったっけ~?」


「……知らない」


 あー、やっぱりそこを突っ込まれるよね。

 ちょっとほっぺたが赤くなっている辺り、アスレイアちゃんも可愛いなぁ。




 そんなこんなで無事にカタロッサの街に到着。

 依頼の報告をしたあと、ビックバードの素材も無事に売れたっぽい。ロック君、お疲れさま。


 その後は3人で昼食に行って、アスレイアちゃんは例の件を打ち明けた。

 どうやらロック君もミュイちゃんも自分たちがアスレイアちゃんに頼りすぎている上に、足も引っ張っていたことは自覚していたそうな。

 なのでアスレイアちゃんが大魔師になるのを応援するため、あっさりとパーティは解散。


 これも幼馴染ならではの呼吸って奴なのかな?

 ちなみに2人はこの街で冒険者やりながらお金を貯めつつ、ロック君は騎士になるための試験を受けるために自分を鍛えるんだってさ。

 ついでに愛の巣を作るとも言っていたね。

 一応アスレイアちゃんは祝福していたみたいで、依頼料とかで手に入ったお金を多めに2人に渡していた。



 その夜のこと。

 3人で泊まっていた宿を引き払って、アスレイアちゃんは1人だけで安宿に移動。

 そして俺と明日からの予定を相談中だ。


「レイオン、明朝に冒険者協会でわたしとパーティ登録をして、一緒にパテローネの街に向かうってことで問題ないわよね」


 うん、俺の方はそれで良いよ。


 本当ならこうしている間も早くアリッサちゃんのところに帰りたいくらいだけど……。

 でも1人で夜通し移動するよりは、アスレイアちゃんに連れて行ってもった方が確実だろうから、ここは我慢だ。


 あ、でも、人形でもパーティとか組める?


「ちゃんとレイオンも冒険者として登録されているから大丈夫だと思うけど……実際に行ってみないとわからないわ」


 だよねー。まぁそこは出たと勝負しかないか。


 ちなみに、パーティを組むのはパテローネの街までの連絡馬車の護衛依頼を受けるためだったりする。

 連絡馬車って言うのは、国が各街や村の交通を良くするために用意したもので、定期的に運行されている乗合馬車のこと。

 国が運営していることから連絡馬車を襲うような人は少なく、モンスターが来ても大丈夫なように冒険者の護衛もちゃんと付くことになる。

 一応この国でもっとも安全に他の街へ行く交通手段ってことだね。


 ただこの護衛依頼、1パーティ2人以上の人数制限があるのだ。

 中堅どころの冒険者で、1番人気のある美味しい依頼ってことで競争率も高いんだよね。

 だってさ、依頼者が国だからか報酬の額がすごいんだ、これが!

 それに街道ってただでさえモンスターはあまり出ないから、仕事もかなり楽らしい。

 アリッサちゃんの待つ街まで帰れて、ついでに楽してお金ももらえる。良いことづくしだよね。

 それに俺にはパパさんの借金を返すために稼ぐって目標もあるから、まさに一石二鳥!


 まぁ、この依頼を受けられるかはまだわからないんだけど。

 俺とアスレイアちゃんでパーティを組めるかもまだわからないし、競争率が高いし……。

 それにアスレイアちゃんも俺もまだ掛け出し冒険者もいいところ。中堅に人気な依頼をそもそも受けさせてもらえるかもわからない。


「ダメでも、普通に馬車に乗るから移動には支障はないけどね」


 でも、客として馬車に乗るとお金かかるよね。そこは大丈夫?


「かかるって言ってもわたし1人の分だし、あのビックバードが思いのほか高く売れたからそれでまかなえるわ」


 実はあの鳥、結構レアなモンスターらしい。

 というか、素早くて空を飛んでいるから、なかなか仕留められないそうなんだよね。

 なのでアスレイアちゃん、ロック君、ミュイちゃんの3人で分けても結構な金額になったとか。


 それなら問題はなさそうかな? アスレイアちゃん、お世話になります。


「別に気にしないで良い。そもそも人形なんだから、人の世界のことは知らないでしょ?」


 人形だからというか、まだこの世界で産まれてそれほど経っていないしね。

 あっそうだ、アスレイアちゃんに、俺は異世界から転生した人間だって言った方が良いかな?


 うーん……別に言わなくても良いか。だって今の俺は、人形のレイオンだしね!


 じゃあ、そう言うことで今日はそろそろ寝た方が良いんじゃないかな?


「その前にお風呂。さすがに野宿の後に身体を洗わないで寝るとか無理……」


 あ、そっか。でもこの宿ってお風呂付いてなかったような……。


「あ……」


 どうやら、いまさらのようにお風呂がないことに気が付いたらしい。

 元々泊まっていた宿にはついていたみたいだから、この安宿にもあると思っちゃったんだね。


「……うかつだったわ。でも街中の公衆浴場とか男女共用だから論外だし」


 ちなみに、公衆浴場は銭湯みたいな感じで、お湯に浸かることができるらしい。

 俺は行ったことないけど、日本的なお風呂って感じだよね。


 でも、やっぱりアスレイアちゃんもそういうことは気にするんだ?

 この国じゃ公衆浴場と言えば混浴だから、あまり気にしないのかなーって思ったんだけど。


「だって、他の人と胸の大きさとか比べられるじゃない」


 ……うん、わかってた。多分そうじゃないかなって思っていたよ。


「それ以前に、好きでもない人に肌を見せるとか、わたしには無理」


 あっ、アスレイアちゃんの顔が赤くなってる!

 なんかこういうところを見ると、年頃の女の子だなーって感じがして可愛いね。


 でも、それならどうするつもり?


「はぁ……しかたない。水で身体を拭くだけで我慢するわ。ちょっとタライを借りてくる」


 そう言って宿の人からタライを借りて来て、あのシャワーみたいな魔法を使って水を溜めるアスレイアちゃん。

 かと思えば、いきなり服を脱ぎ始める。


「んっしょ」


 ちょ、アスレイアちゃん!?


 突然現れた可愛らしい2つのさくらんぼを見て、思わず焦った声を上げてしまう。

 い、いやだって、全然膨らんでいないにしてもこれは普通驚くよね!?


「ん? 変な声を出してどうかしたの?」


 い、いや、急に目の前で脱がれても困るんだけど……。


「人形にクセに何を言っているのよ。っていうか、あなたもそこそこ汚れているわね」


 え、そう? 確かに、あの鳥に鷲掴みにされたり、地面に落っこちたりしたからなぁ。

 あっ、こんなところにススまで付いてる。木の消火したときについちゃったのかな?


「ちょうど良いし、レイオンも洗ってあげる。ほら、こっちに来て」


 むむむ、確かに身体を綺麗にはしたいけど……何だか男扱いされていなくて、複雑だよ。

 いや、人形なのはわかっているんだけどね?


 それにアスレイアちゃんみたいな美少女と半裸で身体の洗いっことか……御馳走様です!

 こうして見ると、おっぱい以外はすごいヤバイくらい綺麗で整った体型だよね。

 14歳なりのまだ幼い身体付きではあるんだけど、うはぁ……俺が人間の男だったら前屈みだよ、これ!


「……何よ、さっきからじろじろ見て」


 何でもありません!


「はあ? まぁ良いけど……ほら、洗うからさっさとこっちに来る」


 はーい。

 ちょっと恥ずかしいけど、人形の俺は自分で自分を洗えないので、大人しくお世話になるしかないのだ。

 ちなみにアスレイアちゃんの手つきも、アリッサちゃんに負けず劣らず最高でした!




 そして2日後。

 ガタンゴトンと揺れるのに任せて、俺とアスレイアちゃんは馬車に乗っていた。


 うん、パーティは登録できたんだよ。受付の人は俺を見てすごい怖がっていたけど。

 だけど護衛依頼はやっぱり無理でした!

 なにあれ、人気ありすぎじゃない? 依頼が張り出されて3分後にはすでに満員とか、埋まるの早すぎ。

 念のため朝一で冒険者協会に行ったのに、パーティ登録している間に定員になっちゃったよ。


 ということで、俺達はお客として連絡馬車に乗っているのだ。

 ちなみに4泊5日の日程ではあるけど、毎晩ちゃんとした野営場所や村で夜を明かすので結構快適。

 振動はキツいけど、人形の俺はずっとアスレイアちゃんに抱かれてるので、こっちも快適。

 だけどこれだけの振動があってもアスレイアちゃんの胸は揺れない。南無。


「……っ」


 痛いっ、ちょ、アスレイアちゃん、首をひねらないで! もげちゃう!


 っていうかさ、アスレイアちゃんには俺の思考はどこまで筒抜けなんだろ?

 語りかけようと思って考えた言葉はほぼ全て通じているけど、それ以外の俺が心の中で考えていることまでは伝わってないはずなんだけどなぁ。

 でも胸部装甲のことを考えていると、なぜか大体アスレイアちゃんは反応する。

 やだ、その妄執が怖い。


 そんな俺とアスレイアちゃんのじゃれ合いを見て、女の子が興味津々に話掛けてきた。


「ねぇねぇお姉ちゃん、1人でどこへ行くのー? そのお人形さんはなぁに?」


 この子は確か、昨夜泊まった村から乗り合わせたカシスさんって人の娘さんだったかな。

 名前は確か……レモンちゃん。

 無邪気な女の子の質問に、アスレイアちゃんはにっこりと微笑む。


「この人形は旅の道連れよ。今は隣の街まで、この子を届けに行くところなの」


「へぇ、そうなんだ。お人形さん、かわいいね!」


 ふふ、なかなか見る目があるね、レモンちゃん。

 アリッサちゃんが作った俺ってば、やっぱり誰が見ても可愛いんだね!

 でもお願いだからアスレイアちゃんの真似して首をひねらないで! 無理矢理されたら破れちゃうの!


「こら、そんなに引っ張ったらお人形さんが可哀想でしょ? ごめんなさい、お嬢さん」


「いえ、おかまいなく。元気なお子さんですね」


「ふふっ、もう元気なばかりで聞き分けがなくて」


 今度は少女のお母さん──カシスさんも加わって、アスレイアちゃんと談笑し始める。

 ちなみにこの親子、パテローネの街を越えてさらに行ったところにあるユークリッドの街に向かうところらしい。

 単身で出稼ぎしている旦那さんに会いに行くんだってさ。


 会いに行く、かぁ……。

 俺はレモンちゃんに弄られながら、ついアリッサちゃんのことを思い出す。


 アリッサちゃんは元気にしているかなぁ。寂しがって泣いていたらどうしよう……。

 ビックバードにさらわれてから、今日でもう4日も経過している。

 考えてみれば、俺が産まれ変わってからこれだけ長い時間離れていたのは初めてだもんな。

 あと2日で街に到着とはいえ、早く帰りたい……。


 しんみりと、そんなことを考えていたときだった。


「みんな、伏せて!!」


「えっ?」


「あ、あの、急に何を……」


「いいから早く!!」


 アスレイアちゃんが焦ったように、連絡馬車の中にいる人達に呼びかけた。

 近くにいたレモンちゃんを押し倒すように床に伏せさせ、同じく近くにいたカシスさんの腕を掴んで引っ張る。


 急にどうしたんだろ、アスレイアちゃん。


 真似をして身体を伏せさせる他の乗客達。わけが分からず、こっちを見るだけの人もいる。

 だけどそれが、ここから先の明暗を明確に分けた。


 馬車の幌を突き破るようにして飛んできた、大量の矢によって……!


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