番外編02「アスレイアの旅立ち・中編」
番外編02「アスレイアの旅立ち・中編」
「アスレイアちゃん、昔っていつのことを思い出したのかな~?」
「ほら、わたしの師匠がこの村に滞在していた」
当時のことを懐かしみながら、ミュイに簡単に説明する。
ミュイ自身は魔法に興味もなかったようで師匠との交流はあまりなかったはずだ。
わたしが師匠にべったりになっていたので、ロックといつも2人きりで遊んでいた記憶がある。
「そういえば、あの頃からアスレイアちゃんはあまり一緒に遊んでくれなくなったんだよね~」
「魔法の練習で忙しかったから。でもそのおかげで、あの頃の師匠はすでに越えた自信があるわ」
もっとも、師匠が得意としていた水魔法の上位版の氷魔法はわたしには使えないんだけどね。
師匠から聞いた知識でしかないんだけど……魔力というのは、人によって波長が異なっていて、同じ波長の人は誰1人としていないらしい。
そしてその波長によって、火魔法が得意になるか水魔法が得意になるか変わるとかなんとか。
ちなみにわたしと師匠の波長は、驚くくらいにずれているらしい。
つまり師匠が得意としていた系統の魔法はわたしが苦手とし、わたしの得意な魔法は師匠が苦手にしている……という具合だ。
ただ、わたしはちょっと特殊な体質らしいと、師匠は言っていた。
というのもあの石ころを割ったときのこと。
わたしは師匠が割ったのをそっくり真似をしたわけだけど、魔力の波長が異なるのにまったく同じようにやるのは本当なら不可能らしい。
でも、わたしはできてしまった。
あのあと魔法のことを教えてもらいながら検証してみたんだけど、どうやらわたしは他人の魔力に同調するのがずば抜けて上手いとか。
要は、自分自身の魔力の波長をずらし、他人の魔力と重ねられるくらいに似せられる。
それによって、わたしは自分自身が苦手とする系統の魔法でも、他人の魔力の波長に似せることで十二分にあつかえるらしい。
もっとも、その同調させる相手が近くにいないといけないらしいので、あまり意味のない才能らしいけど……。
あ、場合によっては他人と合体魔法とか使えるようになるかも、なんて言っていたっけ。自分の才能が怖いわ……。
もっとも、いまだに大魔師にもなれていないわたしには、まだ必要のないことなんだけど。
「そういえば、ミュイの方はどうなの?」
「どうって……なにがかなー?」
「剣の稽古、ロックと一緒に受けているんでしょ?」
「あー……えへへ、うん、ロック君と一緒にいたくてぇ」
ほんのり頬を染めて、照れたようにそんなことを言うミュイ。
好きな人と一緒にいるために剣を習うなんて、ミュイも結構行動的なところがあるのね。
ちなみに、ロックは将来騎士になりたいという夢を持っている。
まぁずっとこの村にいても面白くもなんともない毎日が続くだけだろうしね。
そしてミュイは、そんないつか村を出ていくロックに付いていくのが目標なのだそうだ。
「で、少しは使えるようになったの?」
「うん、とりあえず少しは自衛くらいできるんじゃないかって言われたかな~」
「そう……悪くないと思うわ。あなたはちょっと無防備なきらいがあるから、自衛手段を持ち合わせていないとろくなことにならなさそうだし」
というか、この村の男達はみんなすぐにミュイの胸を見るのよね。バカじゃないの?
しかもその中にわたしのお父さんも入っているんだから話にならない。
それを知ったとき、わたしは迷わずお父さんに土投槍を撃ったくらいだし。
家庭内暴力だとか泣いていたけど、娘の幼馴染に色目を使う父親なんて持った覚えはないので、当然黙殺した。
むしろ火弾を使わなかっただけありがたく思って欲しいくらい。
……思い出したら、また腹が立ってきたわ。
今度は苦手な水系統の魔法の実験台になってもらおうかな。アレなら殺傷力の低い……というかほとんどない魔法しか使えないし。
そんな話をしていると、いつの間にか自分の家の前にまで到着していた。
「はぁ……なんか気分が重いけど」
だからと言って、お母さんの呼びつけを無視してもしかたない。
家にいればどうしても顔を合わせるんだし、ご飯を作ってもらえなくなっちゃう。
食べる物くらいなら、自分でどうとでもできるんだけどね。
「ミュイはどうするの?」
「これから、ロック君とデートするんだ~。丘の方に行ってお弁当食べるの」
「ふぅん……ま、屋外であんまり変なことしないようにね。誰かに覗かれるかもしれないし」
「う、うん~。でもそれは、ロック君しだいかな~えへへへ」
「この色ボケカップルが……はぁ、まぁ好きにして」
「うん。それじゃあね、アスレイアちゃん~。おばさんにもよろしく言っといて~」
鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌な様子で、ミュイはロックが待っているだろう場所へ駆けていく。
これが恋する乙女ってやつなのかしらね?
よくわかんない。というか、あまりわかりたくない。
「はぁ……とにかく、お母さんの用事でも聞くとするかな」
面倒なことはさっさと終わらせるに限る。
わたしは小さく溜息をついて、家の中に入ることにした。
で、家にはお母さんと、なぜかこの時間は仕事をしているはずのお父さんまで揃っていた。
「お帰り、アスレイア。ミュイちゃんはどうしたんだい?」
「ロックとデートだって。それでお母さん、わたしに何か用? 魔法の練習で忙しいんだけど」
「ああ、あんたに大事な話があってね」
大事な話? なんだろ、それ。
そう言われては話し合いを拒否できないため、わたしは大人しく近くにあったイスに腰を下ろす。
「で?」
「あんた、嫁に行きなさい」
「……は?」
今、なんて……?
お母さんの言葉を聞いて、思わずぽかんと口を開けてしまう。
「なんて顔をしているのよ、はしたない」
「え、だ、だって」
今、わたしに嫁に行けって聞こえた気がするんだけど……何かの間違いだよね?
うん、きっとそうに決まっている。そんなはずないし。
「それでお母さん、大事な話ってなに? 変な与太話とか冗談はいらないから、さっさと言って」
「だから、嫁に行きなさい」
「はぁ!? 何言ってるの、お母さん!?」
「さっきから何度も言っているでしょ? 耳でも悪くなった?」
「そうじゃなくてっ! どうして急にそんな話になってるのかって聞いているの!」
全然意味がわからない。
あまりに突拍子もない話に、理解が追いつかない。
「それはお父さんから説明しよう」
「あ、お父さんは黙ってて。口も聞きたくないし」
「あ、アスレイア!?」
お父さんが悲しい顔をしているけど、正直自業自得だと思う。
わたしは見逃してはいなかった。
さっきミュイがロックとデートに行ったと伝えたときに、あからさまにがっかりした顔をしたことを。
そしてわたしの胸元を見て、さらにがっかりしていたことを……!
「こら、アスレイア、お父さんにそんな生意気なことを言うもんじゃありません!」
「正直、最近は本当に父親と認めて良いのか迷っているくらいなんだけど」
「さっきから酷いよ、アスレイア!?」
まぁ14歳の娘にここまで言われる父親というのもかわいそうな気もする。
だからせめてもの情けとして、これ以上弄るのは止めておこう。
「で、お母さん。ちゃんと説明してくれるんでしょうね」
「もちろん。と言っても、あんたに縁談の話があったというだけのことなんだけどね」
「……どこからよ」
「北の方にある開拓村。モンスターに襲われても自衛できる娘が良いって話でね」
それは……確かにわたしなら、モンスターに襲われても自衛どころか返り討ちにできるけど。
「血が濃くなりすぎる前に、他の村から新しい血を取り入れたいのよ。あんたと入れ替わりに、あっちからも娘さんを出してくれることになっていてね」
「ちょ、ちょっと待って、それ以前にわたし、まだ14歳なんだけど!?」
「確かに国の法では15歳が成人だけど辺境にある開拓村のことだもの、問題ないわ。それに若い方がたくさん子供も産めて良いでしょう?」
「なっ……年頃の娘に向かって何言っているの!?」
信じられない!
確かに辺境に行けば行くほど王国法はあいまいになってくるし、未成年だからって子供を産んでいる人はたくさんいる。
でも、それをよりによって自分の娘に勧めてくるだなんて……!
「安心しろ、アスレイア。確かにお前の成長では子供を産めるかは心配だが、同い年のミュイちゃんはあんなに立派に育って──」
「空気弾!」
「へぶぅっ!!」
「わたしは嫌よ、そんな辺境へ行くのも、嫁に行くのも、全部!」
雑音を空気の弾丸で黙らせて、わたしはお母さんへ抗議をする。
だけど、お母さんは笑顔を浮かべたまま一歩も譲らない。
「しかたないでしょ? この村で1番条件に合うのがあんたなんだから。どうせこの村で仕事らしい仕事もしていないんだし」
「女ってことならミュイだっているし、キャシーだってクラリスだってヘリンだっているじゃない!」
「ミュイちゃんはロック君っていう恋人がいるでしょう? それに辺境のモンスター相手に自衛できるほどの力もないじゃない」
「ぐっ……それは……」
ミュイは最近剣の練習はしているけれども、さすがに辺境のモンスターには到底敵わない。
というのも、モンスターは人里を離れて辺境に向かえば向かうほど強力になるから。
この付近に出るモンスター相手に身を守ることはできても、辺境のモンスターが相手では一瞬で殺されてしまうかもしれない。
って言っても、ミュイよりも弱い女の子だって普通に辺境の村で暮らしているわけだから、心配しすぎだと思うけど。
ロックと別れろと言うつもりも毛頭ないんだけどね。ただ同い年ってことで例に挙げただけで。
「それにキャシーちゃんやクラリスちゃんやヘリンちゃんは、そろいもそろってまだ10歳にもなっていないじゃない。14歳だからって文句を言っておいてそれはどうなのよ」
「お母さんが、若ければそれだけ子供を産めるから良いとも言ったじゃない」
「さすがに限度というモノがあるでしょう!?」
「まったく、ああ言えばこう言うんだから」
「あのね、アスレイア。その言葉はそっくりあんたに返すわ。まったく、何でこんな小賢しい口をきくようになったのかしら……」
それは多分、お母さんの血筋のせい。
思っていてもそれは言わないけど。
「それにお母さん、昔っからわたしは将来大魔師になるって言っているでしょ? それなのに結婚とか冗談じゃない」
「あんた、まだそんな夢物語を言っているのかい。いい加減現実を見なさい。おおかた、あのときの魔法使いの人に影響を受けたんでしょうけど……」
「影響を受けたのは否定しないけど、夢物語じゃない! わたしは、絶対に大魔師になるんだから!!」
師匠も言っていたし、わたし自身、自分は天才だと思っている。
でもそんなことは関係なく、わたしは大魔師になりたい理由がある。
「良いから、聞き分けなさい!」
「絶対に、嫌!」
言うが早いか、わたしはさっさと席を立つ。
これ以上こんな意味のない議論をしていてもしかたない。それならば、魔法の1つでも練習した方がましだ。
「こら、アスレイア!」
後からお母さんが呼びかけてくる声が聞こえてくるけど、一切を無視する。
そのままわたしは家を飛び出した。
「ったく、いきなり嫁に行けとか何を言っているのよっ」
村の事情もわからないことはない。
あまり人口の多くない村の中で婚姻が進むと、どうしても血が濃くなって来てしまう。そうなればあまり良くないことだって、わたしも承知していた。
だからこそ交流のある村同士で年頃の娘を交換するように嫁に出したり、新しい移住者を募って常に新しい血を取り入れようと考えていることも知っている。
だからといって、当の娘の事情も少しも考慮せずに押しつけてくることが腹が立つ。
「あれ、アスレイアじゃないか。どうしたんだ?」
「もうおばさんの用事は終わったの~?」
肩を怒らせて歩いていると、不意に幼馴染達に声を掛けられた。
「ロックにミュイ……こんなところで何をしているのよ」
「これから、ロック君と丘に向かうところだよ~?」
「ああ、そう言えばそんなこと言っていたっけ」
さっきの話があまりに衝撃的で、すっかりと忘れていた。
「ずいぶんご機嫌が斜めみたいだが、何かあったのか?」
「別に。いきなりお母さんに嫁に行けとか言われて腹が立っていただけ」
「えっ、お嫁さん!? アスレイアちゃん、結婚するの!?」
「しないわよ! したくないからこんなに腹を立てているのっ!」
あーもう、本当にむしゃくしゃするわ。
そこら辺、手当たり次第に火の雨でも降らしてやろうかしら……。
「あー、なんだ、物騒なことはやめとけ。お前が何かやらかしたら洒落にならん」
「そ、そうだよ、アスレイアちゃん~。少し落ちつこ? あっ、なんだったら一緒に丘でお昼ご飯食べる~?」
わたしを見て、なんだか焦った様子の幼馴染2人。
……いったいわたしを何だと思っているんだろう。失礼な。
「一緒にって、あなた達はデートでしょ? さすがに邪魔するほど野暮なつもりはないんだけど」
「大丈夫だよ~、ロック君とはいつでもデートできるもん」
「そうだな。それより、俺もお前がおばさんに言われたって話が気になるし」
ふむ……まぁ確かにロックやミュイにとっても他人事じゃないか。
わたしが素直に嫁に行くとしても幼馴染が1人いなくなるわけだし、断ると別の人間に白羽の矢が立つだけ。
それがミュイでない保証はない。
「わかったわ。それじゃ、まずは丘に行きましょ」
そして丘でミュイが用意したというお昼ご飯を食べながら、お母さんに言われたことを2人に説明する。
「あー、なるほどなぁ。外の血を村に入れるために、向こうの女性と交換ってことか」
「うちの村って、未婚で適齢期に近い女の子って私とアスレイアちゃんだけだもんね~。下になるとまだ10歳にも満たないし」
「だからっていきなり嫁に行けってなによ、馬鹿にするにも程があるわ! そもそもわたしは結婚とかする気はまったくないしっ」
「大魔師になる、だったか?」
「ええ、そうよ。そのためにも、恋愛だの子育てだのにうつつを抜かす暇はないわ」
とはいえ、お母さんのあの様子だと簡単には諦めないだろう。
村全体の方針だと思うので、わたしに話をした時点ですでに逃げ場は潰してあるに違いない。
「せめて成人する来年まで待とうと思っていたけど、さっさと村を出て行ってやろうかしら……」
元々、師匠にならって大魔師になるために世界を旅する予定だった。
いろいろな物を見て、いろいろなことを知る。それが大魔師になるために必要だと言っていたから。
そのために貯金もしていたし、旅をするのに都合の良い冒険者になるにはどうしたら良いかも調べていた。
予定よりも1年近く早くなってしまうのは気にくわないけど、大魔師になるという目標が潰えるよりはよっぽど良い。
「なぁアスレイア。お前がそんなに大魔師とやらにこだわる理由はなんなんだ?」
「あれ、ロックには言ったことなかったっけ?」
「ないな」
「アスレイアちゃん、私も聞いたことないかも~」
「そうだっけ? まぁ別に吹聴して回ることでもないし」
2人の言葉に小さく息をつき、わたしはその場にごろんと寝転がる。
「元々は師匠に天才だ、大魔師にもなれる、なんて言われてその気になったのが始めなんだけどね。……2人は4年前のこと、覚えてる?」
「4年前というと、この村が盗賊に襲われたときのことか。忘れるわけがないだろ」
苦虫を噛みつぶしたような表情になるロック。同時にミュイも悲しげに顔をうつむかせる。
あれはこの村の人達にとっていまだに忘れられない悲劇だ。
ある日突然、10数人からなる盗賊達に村を襲われた。
何人もの人が傷つけられ、少なくない数の人が殺され、年頃の……当時14歳くらいから20歳くらいまでの女性が複数人さらわれた。
しかも村に蓄えられていた食糧や財貨を根こそぎ奪われ、この村が立ちゆかなくなってしまったのだ。
不幸中の幸いというのか、盗賊を警戒した騎士団が近くに来ていて、程なくして盗賊達は壊滅させられたんだけどね。
そのときに奪われた食糧や財貨のほとんどを取り返すことができ、さらわれた女性達もその7割ほどが村に帰ってきた。
でも……その傷痕は大きかった。
帰ってこられた女性達は全員、盗賊達に陵辱の限りを受けていた。中にはイタズラに身体を傷つけられ、指や、腕を、そして生殖機能を失っている人もいたくらいだ。
当時まだ10歳だったわたしにもわかるくらい、それは女にとって死ぬよりも辛いことで……。
多くの人が自ら死を選び、そしてこの村の男達の目に耐えられなくなった数人は、今件のことを何も知らない遠方の村へと移住していった。
これがこの村にわたしとミュイ以外に年頃の未婚の女がいない理由。
そして、わたしが絶対に大魔師になると決心した、理由。
「盗賊共に慰み者にされて自殺した、5つ歳上のサレナお姉さん……いたでしょ?」
「うん……アスレイアちゃんのいとこのお姉さんだよね」
ちなみにわたしにとってミュイは母方の親戚で、このサレナお姉さんは父方の親戚になる。
そのため、ミュイとサレナお姉さんに直接の血のつながりはない。
といっても、小さい村だからどこかで繋がっているとは思うけども。
「ああ、確かにいたな。で、そのお姉さんがどうしたんだ?」
「サレナお姉さんが自殺する前に、わたし、少しだけ話す機会があったの」
それは、盗賊達に対する恨み言だった。
そして自分に降りかかった不幸を呪う言葉だった。
でも、無事だったわたしのことを心底喜んでくれて……もしわたしが大魔師だったら、こんなことにならなかったのか、なんて泣いて……。
その翌朝、サレナお姉さんは冷たくなって発見された。
「わたしね、冷たく青ざめたサレナお姉さんを見て、初めて強く想ったの。名誉称号とかじゃない、真の意味での大魔師になりたいって」
もしわたしが大魔師だったなら、盗賊の被害なんて最小限で食い止めれたはず。
死んだりケガをした人も、さらわれて酷い目にあったサレナお姉さんのような人も出さなくてすんだはず。
いとこで好きだったサレナお姉さんを助けてあげたかった。
これから、サレナお姉さんと同じような人を少しでも減らせるならと考え、わたしは力を求めた。それこそ大魔師になれるくらいの力を。
「……アスレイアちゃん、サレナお姉さんと仲が良かったもんね」
「そっか……お前も俺と同じなんだな」
「ロックと?」
「ああ。俺もあのときに騎士団の人達が助けてくれたのを見て、騎士になりたいって思ったんだ」
「……そう」
ロックと同じというは何だか嫌だけど、同じように考えている人がいるという事実に、心のどこかで安堵してしまう。
……うん、決めた。ためらう理由なんて、どこにもないから。
予定なんていうのは、しょせんは予定。1年早くなったということは、1年大魔師になれるのが早くなったということ。
「ミュイ、ロック、わたしは今晩にでも村を出るわ」
大魔師になるため。
とりあえずは、この村から1番近い場所にある大きめな街──カタロッサの街に行って冒険者にでもなってみようかな。
ちょっとした補足を。
アスレイアがレイオンと会話できるのは、今回説明された魔力波長への同調が原因です。
レイオンの体内にはアリッサの魔力があるわけですが、会話をする際にこれが体外へ発散されています。
本人は気付いていませんが、アスレイアは無意識にそれに波長を合わせることで言葉を読み取っているわけです。
要はラジオを想像していただければわかるかと。
自動でチューニングして音を拾っている、的な。