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童話集*vol.1*

黒蜜の王女と木彫りの竜

作者: 雪月桜‐*‐



 


 *



 それは森の森、そのまた奥の森の奥。

 緑の皇国おうこくが繁栄をしていた頃のこと。

 かつて、よりも(いにしえ)と称されるべき――――竜の調べが空を震わせる黄金の空の下。


 すくすくと根を張り、葉を伸ばし、紺碧こんぺきの花を抱く若芽が一つ。

 当時は“青樹”と呼ばれていたそれは、時を経て“聖樹”と呼び名を変えてゆきました。


 芽吹くこと、六十万と七十七の陽光と月明かりを浴びて。

 古の皇国が滅びた後も“聖樹”は、変わらずに木漏れ日を作り続けているのです。



 ***



 柔らかな風が吹く、バド歴七つの月の十日。

 空は青く澄み渡り、薄緑の日差しが燦々と差し込んでくる窓辺より。


 さらさらと白藍の髪をなびかせて、寝起きの猫の如き伸びをするのは一人の少年。


 彼は、エヴィ・ルル・エレマス。

 実名かどうかは、今もって謎。

 周囲からそう周知される、そんな少年である。


 そして今。

 七つの月の穏やかな気候の下、ぼんやりと虚空を仰いでいた。

 その周囲には、無数の木屑きくず木彫きぼかたなが無造作に散らばっている。


 少年は、一昨日の夕暮れから今日の明け方までずっと彫っていた。

 何を彫っていたかと言えば、木を彫っていた。


 そう。彼は木彫きぼだ。

 木彫り師とは―――から始まる五つの文言もんごんはこの国独自のもの。


 一つ。

 木彫り師とは、聖樹せいじゅより認められた者である。


「ルル? 起きているなら、いい加減に扉を開けてくれないかい。……両手が塞がっているんだ」


 二つ。

 木彫り師とは、木彫り刀を継承けいしょうすることで技を継ぐ。


「……聞こえているのかい? 」


 三つ。

 木彫り師は、彩色師さいしょくしと共に聖樹像せいじゅぞうを創り上げることを赦された存在である。


「………おい、いい加減にしないと………」


 四つ。

 木彫り師とは、竜に愛された唯一である。


「時間切れだ、ルル」



 低められた声の一瞬の後。

 思わず耳を覆いたくなるような、凄さまじい音と共に倒れ込んで来たドア―――だったもの。


 衝撃で舞い上がった木屑の中。

 その威力からは想像もつかないほど、小柄なシルエットが浮かび上がる。


 黒蜜くろみつの如く、艶やかに波打つ髪。

 その長い髪の間から、こちらを睥睨へいげいする椿色(カメリア)の双眸。


 それはそれは、可憐な少女である。


 その少女の手には、軽食の乗った盆が二つ。

 まさに両手がふさがった状態で、不機嫌さを体現する様なその姿。


 彼女は、カレン・シトラ―ル・ロウ。

 黒蜜の王女。

 その名の通り、この国の正式な三番目の王女である。


「私も君が思うほど暇では無いんだよ、ルル……ほら、食料」

「……助かるよ」


 溜息を零しながらも、何故か給仕をする王女の図。

 倒れたドアをまたぎ、木屑を払って歩み寄る様子は慣れたものだった。


「ルル、私はいつ君が餓死寸前になっていても、きっとこの先驚くことはないよ」


 ぽつり、とそう零した王女を見ながら。

 言われた当人は、りなんと頷いた。


「うん、僕もそう思う」

「………頭が痛くなる言葉だな」


 五つ。

 木彫り師とは、国の至宝である。


 “半端者”と悪し様に言われこそすれ、少年は紛れもない木彫り師。

 国内でも、両手の指に納まる程。

 希少にして、代えが利かない存在。


 それが彼、エヴィ・ルル・エルマスだ。






「半月後の豊穣祭ほうじょうさいには、間に合いそうか?」

「うーん、未定かな。これもどうやら……色を乗せる前には屋根に上がってしまいそうだもの」

「……毎回のことながら、ルルの木彫りは短気だな」

「……製作者(そだてのおや)の性格が出る、っていう言葉があるらしいね」

「ルルに関しては、全くもって当てはまらないな」

「うん、僕もそう思う」


 むずむずと、会話をしている合間にも翼の先が震えている。

 それはまさに―――今にも飛び立ちそうな、(つがい)の小鳥たち。

 可愛らしいモチーフに、見ている者が微笑ましさを覚えるような。そんな、優しい木彫り。


 ルルが彫りあげるモノは、大凡(おおよそ)が素朴だ。

 一概に、そういった印象が強いのである。

 そしてそれは、流行の間逆と言っていい。

 柔らかで、一見しただけでは殆ど技巧ぎこうは凝らされていない。

 都の木彫り師達の名前を上げる時に、彼の名前が挙がることは少ない。

 しかし、少なくとも彼女にとって―――それは殊更、意味の無いことなのだ。


 近づいて、触れれば分かる。


 その滑らかさ、その柔らかな曲線にどれだけの技巧が込められているか。

 彼が彫りあげる際の、指先の繊細な動きを見ても明らかだ。

 作業中は籠り切りになる彼は、その姿を見られるのをあまり好まないが。

 それでも、ここ数年で見る機会はあった。


 その上で、思うのは。

 その目で見たものしか、信頼したものしか手に触れない王女が願うのは。



「ルル、今年こそ彩色師(さいしょくし)として君の作品に色を付けさせて貰えないか?」

「……うーん、君は一向に諦めないんだね。その諦めの悪さは父王譲りかい?」



 彼の言葉に、頬杖を付きながら首を傾げた彼女。

 暫し、その視線を彷徨さまよわせた後に――――困った様子で笑う。



「さてな、父上については……正直あまり人となりを知らないからな」

「ふふ、親子なのにねぇ……皇国も随分と変わったものだなぁ」

「ルルは時折、まるで(いにしえ)(りゅう)の様な事を云う」



 そう。普段は欠伸あくびを常備し、窓枠でも寝入りかけるような抜けた印象の彼ではある。

 しかし、こうして二人になる時に限って、彼は時折達観したような言葉を放つ。

 その時の彼の目は、やや青み掛かっているように見えなくもないのである。

 これは長らく、彼女にとっての謎でもあるのだ。



「カシミールからの申し込みを、毎年断り続けているんじゃないのかい?」

「君……うとそうに見えて、実はそういった情報収集はしているんだな。意外な一面だ」

「その発言は心外だよ。僕もこう見えて、一応木彫り師の端くれだからね……」



 言われてみれば、その通り。

 はた、と我に返った彼女はそこで柱時計を振り仰いで――――ぎょっとした。



「あ、あ、あ……まずい。今日はあと数刻で抜けられない講義が始まるんだ。ではね、ルル。くれぐれも身体は大事にして木彫り業に勤しんでくれ」



 そう言い置いて、慌ただしく立ち上がった彼女は猫の如き俊敏さで作業場アトリエを後にした。

 彼が、微笑ましそうにその後ろ背を見送った後。

 やはり、と言うべきか。羽ばたき始めた番の小鳥。

 それに苦笑して―――――――小声で告げる。



「何処へなりとも、飛びけ。もし、再びこの地に戻るその時は―――南の果実を土産に帰郷すれば尚喜ばしい」


「「――――古の竜に連なる方、そのお言葉通りに――――」」



 さえずりで返した小鳥たちは、そのまま空へと舞い上がっていく。

 残った木屑を掃いて片づけながら、二つの飛影が遠ざかっていくのを彼は眩しそうに見送った。



 ***



「あぁ――――今日も、お伝えしなかったのですね? カレン様」

「……そうだね。今日も伝えられなかった」



 夕刻。

 慌ただしく講義を終えて、私室へ戻る。

 扉を開けたところで、柔らかな声に迎えられた彼女。

 ようやく俯けていた顔をゆるゆると上げた。

 艶やかな暗幕(あんまく)の如き黒蜜から、どこか諦めた様な苦笑が覗く。



「どうにもあれを前にすると、途端に話す気が失せるんだよ。やれやれ、この性格にも困ったものだ…」

「ご自分の性格を、他人事のように仰る――――……それで、良いのですか?」



 第三王女付きの、侍女頭 レージュはまるでいたむ様な顔をして静かに問う。

 問い掛けの先で、王女はその背を微かに震わせたようにも見えた。

 沈黙すること、暫し。



「さてね……人と言うものは、総じて後悔を(まぬが)れない生き物だろう? 本当に望んだものは、けしてその掌に落ちてくることはない――――……それが、王家に生まれ落ちた因果さ」



 ようやく言葉として紡がれたそれに、レージュは内心で溜息を零す。

 しかし、王女の言うそれに対して言い諭すことが出来る程に……彼女は何も知らぬ立場では無い。

 そう。諦観ていかんする王女の、その心境を正しく汲み取れるのは。

 現時点、この王城で彼女くらいなものだろう。



「カレン様、私は何時いかなる時も―――貴女様の幸福を望めればそれで良いのです」

「ありがとう、レージュ。……君が共に来てくれるのなら、きっとこの先に(あかり)はいらない」



 レージュは嘗て、誓った。

 この先のすべてを、唯一主と認めた“彼女”に捧ぐと。

 その誓いは今も尚、変わることはない。

 嘗ても今も変わらぬ文言を紡ぐレージュに、王女はいだ水面のように穏やかに応えた。

 この主従は、非常に深い絆で繋がっているのである。



 ***



「本年の、豊穣祭の題目は“飛翔”に決まった。励めよ、若き木彫り師たち」



 半月後に迫った、国の豊穣祭。

 木彫り師たちにとっては対外的に己の作品を示すことが叶う、数少ない行事の一つであり。

 この豊穣祭における“誉”を得ることこそ、最高の栄誉えいよとされている。

 従って、当然のこと彼らの空気は緊張を孕んで静まり返っており―――……。


 だからこその、異質。

 常日頃は、黙認されているそれ。


 くぅ、くぅと規則的なそれに対し、普段以上に青筋を立てるのも無理はない話だ。



「おい―――エヴィ・ルル・エルマス。おい、起きろ」

「放っておけ、カシミール。それの寝汚さは、今に始まったものでもないだろう?」

「しかし―――……(ほり)(おさ)様……」



 言い淀み、いかにも納得がいかないという姿勢を隠さない若さ。

 眩しそうに目を細め、彫長 リグラディーは苦笑する。

 次世代の木彫り師として、対象的な二人。

 それを交互に眺め、満足げに笑う彼のことを周囲は理解できないと言った風情で見ている事も知っている。

 しかし、そんなことは正直な話どうでもいいのだ。

 彼にとって―――否、正確には彫長として―――“彼ら”の成長を見守ることが今は何よりの希望なのだから。

 時は、そう遠くない内に迫っている。

 気付かないものに、それを察しろと言う方が無理だということも知っている。

 しかし、兆候ちょうこうを一から説いている暇すら無いのだ。

 それが現状の全てである。



 ここ数年における“聖樹”の異変。

 それに気付いている者は、国の中でも恐らく……ごく僅か。



 王は、言っていた。

 古代史に造詣ぞうけいが深く、争いごとを忌避きひする我らが王。

 その人が、薄緑の木漏れ日を見上げながら静かに言った言葉が過る。


 “嘗て、皇国が滅びた時も――――“聖樹”に纏わる異変が、兆候として確認されたと記されていたよ“


 間に合わせなければ、ならない。


 密かに胸の内にくすぶり続けるそれも、彼らの成長に目をみはる度に和らぐというもの。

 そう。

 豊穣祭における“聖樹像”の本来の意味を、問われる時がやって来た。

 永きに渡り、国の守護を永続し続けた現在の像が―――形を保てなくなる刻限が迫っている。

 新たな作り手が必要なのだ。

 木彫り師の中でも限られたものにしか、資格が与えられない。

 その希少が次代に二人存在し得る奇跡を前にすればこそ、半分は心も落ち着く。


 もう半分は、未だ可能性の段階としか言えなくとも。

 それでも救いがあるだけ、随分ずいぶんマシな話だと。

 彫長―――リグラディーはそう思うのだ。



「カシミール、それが起きたら君が代わりに伝えておいてくれ。くれぐれも、悪戯心いたずらごころは犯さずに正確なところを伝えてくれよ」

「……彫長様は、エヴィ・ルル・エルマスに甘過ぎます。他への示しがつきませんよ」

「ふ、カシミールは聡いな。だからこそ、言わずとも君にはこの措置そちの意味が伝わっていると私は考えているが?」



 金魚のように、口を開いたり閉じたりを繰り返した後は。

 なかば諦めた様子で、若き木彫り師カシミール・クレイ・ロウは小さく頷く。



「分かっています……でも、やはり気持ちの面ではままなりません」

「真面目だなぁ……君は少し、あの奔放ほんぽうな姉君を見習った方がいいのではないかな?」

「……奔放。と言うのは少し、違う様な気もします。姉はああ見えて、馬鹿が付くぐらいに繊細な部分を持ち合わせていますから」



 ここで言う姉君というのが、巷では黒蜜の姫君と称される第三王女であるのは周知の事実だ。

 それでもやや、声を抑えて言葉を交わすのには。

 周囲の反応をおもんぱかって、という一点が大きい。

 王族が私生活を詳らかにすることについて倦厭けんえんされるきらいは、やはり皇国があった頃の名残と呼べるものなのか。

 今となっては、仔細しさいの分からないこととはいえ律儀りちぎにそれを守る第二王子。

 それが琥珀こはくの王子こと、木彫り師 カシミール・クレイ・ロウである。



「繊細……ねぇ。確かに造りだけなら……外貌(そとみ)だけなら」

「僕が言っているのは、そういうことではありません。心の有様ありさまです」

「………カシミール、君は………本当にあのフィルの息子?」

「彫長様、それは僕も日頃から思わないことでは無いですが……大っぴらにする発言としてはギリギリですよ。一応忠告しておきますね」



 現王、フィルバート・リディアス・ロウ。

 その幼少からの友人として、国内では広く顔を知られる彫長その人ではあるものの。

 それでも王族にまつわる発言には、気を遣っておくに越したことは無い。

 それを暗に含ませた、十三歳の王子からの忠告であった。



「気を揉ませてすまないな、カシミール。では、後のことは任せた」

「……前年と同じで、各自必要な分は東塔から持っていく形でいいですか? 保管場所は?」

「必要なものは全て東塔に集めてあるよ。それ以外の要望は各自、直接私の処へ持ってきてもらえればいい。保管は各自のアトリエで行う様に。以上、何か他にあるかい?」



 周囲に席を連ねる、他の木彫り師たちを見渡しながらの問い掛けに一同は首を振る。

 それを見届けたリグラディーは今一度、すこやかな睡眠に沈んだままの“彼”に視線を遣ってから講堂を後にした。


 残された木彫り師たちは、それぞれに戸惑いと緊張のこもる表情で見交わしながら各自のアトリエへと戻ってゆく。

 ―――講堂に残されたのは、未だ眠りのふちから浮上してこないエヴィ・ルル・エルマスと“彼”を任されたカシミール・クレイ・ロウの二人だ。



 暫しの沈黙と、それは長い溜息の後。

 琥珀色の双眸をすがめて、おもむろに問いかける。



「……総て聞こえていたね、エヴィ・ルル・エルマス? 毎回ながら、こうして“お節介役”を買って出なければならない僕の心境もおもんぱかってもらいたいものだよ」

「……君も大概物好きだ。……加えて、とても優しい」



 ゆるゆると開かれる、薄水色うすみずいろの双眸には先程まで眠り続けていた名残は見いだせない。

 瞬きを二つ、三つ。

 仮初かりそめの眠りから起き出した彼は、やはり猫のように伸びをした。

 それを呆れた様子で見遣る琥珀色。



「物好きは、貴方の方じゃないのかい? まぁ、いい。いずれにせよ、こうして残る予定ではいたからね……エヴィ・ルル・エルマス、貴方宛ての伝言を預かっている」

「伝言?」

「そう。貴方が苦手としている国王に生き写しとまで言われている―――瑠璃の王太子殿下から」

「………君たち、国の子は総じて妙な言い回しを好むのだねぇ。家族だろう? 肩書きは必要なのかい?」



 瑠璃の王子こと、王太子殿下 ミハイル・アルドワ―ズ・ロウ。

 彼はこの国の次代の王となる、紺瑠璃(こんるり)の双眸を持つ絶世の美男だ。

 多くの画家がこの王太子の肖像画に挑んでは、尽くその能力の限界を嘆いて職を辞すという―――またの名を“画家殺し”。

 そんな彼の弟妹たちは、何故か揃った様に一定の距離を置いているようだ。

 以前から気になってはいたものの、数年前に一度黒蜜ことカレン王女に確認してみた時に浮かべていた表情から追求を諦めていた事案である。



「それを包み隠さずに聞いてくる君の愚かさと無謀な勇気に免じて……ヒントをあげるよ。僕らは、基本的に無駄なことを嫌う。只でさえ、多忙な身だからね。つまり、それが必要だと思うことしか選択しない習性が幼い頃から身に着いているんだ。それは、僕も姉も…その他も同じだよ」

「君は幼少から、殊更姉君を……いや、黒蜜だけを一個人として数えるきらいがあるね」

「当然のことを今更蒸し返さないでくれない? 言ったろう。僕は無駄なことが嫌いなんだよ」



 それだけ言い置くと、徐に席を立つ。

 琥珀色の双眸を瞬かせ、一息に“伝言”を伝えた後は振り返る様子も無く去って行った。

 それを見送った後、再び背筋を伸ばした彼は。

 誰もいなくなった講堂で、ポツリと零した。



「さて――――……これが本当の嵐の前の静けさというやつかな……」



 豊穣祭まで、あと半月。

 時が迫っている事を、彼もまた知るモノの一人だった。



 ***



 覚えている限り、父王と最後に顔を合わせたのは半年ほど前になるだろうか。

 まして二人だけで向き合う機会など、数年ぶりではなかろうかと思索に(ふけ)る合間も。

 ゆるゆると立ち上る、二つの湯気。

 かちゃ、かちゃと慣れた様子で茶器を用意するその人の背に問い掛けた。



「父上様、本日はどのようなお話で私を呼ばれたのですか?」

「カレン……出来るならば、この部屋の中だけでも(くつろ)いで話して貰っていいのだ。久方ぶりに愛娘と相まみえた父の心境たるや、まるで楽園にいるかのよう。つまりお前は私にとっての楽園(オアシス)で……」

「父上様、話を割愛(かつあい)して頂きたく存じます」

「……過去のリ―リアを見る様だよ。その射るような眼差しといい、波打つような艶やかな髪もまるで瓜二つだ。カレンは年を経るごとに美しさを増していくようで父は嬉しい半面―――」



 こうなると、長い。

 それをごく僅かな記憶の底から引っ張り上げて来た時には、手遅れであり。

 同時に掻き混ぜられて、ふわりと浮かび上がった記憶の断片が情け容赦なくその感慨(かんがい)を肯定する。



 “父にはあまり甘くしてくれるなよ。……ミハイルにもだ。あれらは非常に厄介かつ言葉の通じないモノたちだからな”



 久方ぶりに、あの美しい声を思い出して頬を緩める一方で。

 はた、と気が付いた時にはもう遅い。

 父王の何とも称し難いきらめく双眸に、ひたすらに眩暈めまいを覚える娘がいる。



「父上様、これ以上話を引き伸ばされるのなら出直して参ります」

「……カレン、歴国への輿入こしいれなど。父は認めないよ」



 かちり、とカップをソーサに戻した音と同時に告げられた声はまるで別人かと思うほどに低く。

 見上げた先で、ようやく本題を切り出した父王へ向けて娘は微笑む。



「父上様、私が何もせずに国が滅ぶ様を諦観していられるほど、強く見えますか?」

「カレン、君は幼少から聡い子ではあった……だが、“聖樹“に関する文献は五年前に閲覧(えつらん)を制限した筈だ。どのようにしてその兆候を知るに至ったか、父に説明してもらえるね?」



 微笑みながらも、互いの目はまるで笑っていない。

 そんな父子は互いにどこまでを伝えるべきか、この時点で計っていたと言っても間違いでは無く。

 既に父から王へ、娘から王女へと精神的な立ち位置を入れ替えた彼らは改めて向かい合った。

 その視線の先には――――薄緑色の葉を揺らす、大樹がある。



「父上様は、私が誰の娘であるかお忘れになったご様子……彩色師である母と、多くの色彩を傍らに幼少から過ごして来た私に―――聖樹の葉の色調変化が分からない筈がありません」

「………大したものだ。カレン、君のその目は彩色師として必要な才を総て備えている。重ねて言うよ。君を隣国に嫁がせることは同時に国の損失にもつながる。王として、それを認めることは出来ない」



 何処か痛ましいものが、過った紺碧色こんぺきいろの双眸。

 父王のそれを認めながらも、王女はけして変わらぬ決意を根底に見据える。

 それは伸ばした姿勢、逸らさぬ視線の他に続いて告げられる声にも表れていた。



「国、有ればこそ――――そうでしょう? 父上様。このまま“聖樹像”の代替わりが行われなければ、遠からずこの国は竜の守護を失う。竜の守護を失った皇国が“聖樹”の存続を果たす代わりに血筋を絶やした経緯についても、今の王国では殆ど知る者はおりません。もし万が一、竜の守護だけでなく聖樹の守護を失うことがあれば王家だけの被害には終わらない」

「国が滅ぶ―――カレン、まさか君がそこまで見据えた後だとはね。参ったな……つまり君は、歴の膨大な史書庫ししょこと呪術力に目を付けて嫁ごうと思い至った訳だね?」

「ご名答です、父上様。そうでなければこの無精ぶしょうがどうして他国へ嫁ぐなど言いだすと思いますか?」

「カレン……仮にも王女の君が公に言う自己評価としてはあまりにも……」

「ここが公の場で無いと言ったのは、父上様の方です。もう、お忘れになったのですか?」



 これは一本取られたな、と呟きながら二人分のカップに茶を注ぎ足す様は到底国の長とは見えぬ和やかな横顔。

 ああ、母がやられたと言っていたのはこういう面だったな……と。

 ぼんやりと回想しかけた意識を引き戻すのは、久々に耳にした父その人の笑い声。



「ふふ、全く君は。可愛げがない分余計に愛おしいな。やはり手元に残しておきたいものだよ……」

「父上様、仰っている事が矛盾だらけです。そして現状において、歴国へ輿入れ兼史書探索(ししょたんさく)へ行く意思は揺らぎません。どうか、国を―――……大切な人たちを守る為に何が必要か今一度考えた上でお返事下さい。これは、この国の王女の一人として。私の変らぬ意志でもあります」



 飲み終えたカップを、かつりと蔦模様のソーサーに戻して。

 精一杯保つ平静を、どうか見抜かないで欲しいものだと胸の内で呟きながら席を立つ。



「美味しいお茶を、ありがとうございました父上様」

「……カレン、君の意思は良く分かった。君が望むように、最終的にはこの国の王として君の処遇については判断を下そう。―――愛しい娘、君にあらん限りの幸福を願っている」

「父上にも」



 ふわり、と優雅に礼をして王の執務室を出ていく背を見送ったその後に。

 その部屋の主は、深く長く溜息を零す。

 まるでそれは“もう一人”に対して、察しろと言わんばかりに。



「――――白藍の。このままお前があの子を見捨てるその時は、王としてお前の(うろこ)を存分に剥がすくらいは覚悟しておくことだ……」



 この国で“かの竜”の所在を知る者は、その国の主のみ。

 少なくとも今、この現状においては。

 その変化が訪れない場合――――それは即ち、亡国の未来を招いた後を示す。

 誓約に縛られていなければ、明かせる真実も。

 当人が縛られている以上、どうしようもないことであり。

 事実、動けぬ王はひたすらに“その時”が訪れぬ日を願うばかりだ。



 ***



 豊穣祭まで、あと一週に迫った週末の夕刻。

 夕陽に照らし出された窓枠に、寄りかかる様にして立つ姿さえまるで絵画のように様になる。

 王太子 ミハイル・アルドワ―ズ・ロウ。

 伝言で伝えてきた通り、指定した日時にアトリエに姿を現した彼は―――まず初めにこう言った。



「やぁ、エヴィ・ルル・エルマス。琥珀から伝言は受け取っているね?」



 父王譲りの柔らかなアイスグリーンの髪は肩を掠める程の長さで、初夏の風がそれを揺らしていた。

 柔らかな口調ながら、その奥に潜む色は狡猾こうかつ

 瑠璃色の双眸を見上げながら、こうして二人だけで対面するのは初めてだと。

 寝起きの思考で、ぼんやりとそんなことを考えている合間にも颯爽とアトリエに踏み入る所作に躊躇ためらいは窺えない。

 やはりこういう部分は……兄妹だな、と思う。



「面倒な言い回しは、君には通用しないと私は知っている。だから、端的に言おう。私は君が嫌いだ」

「………そんなにずばりと言われたのは、多分初めてですよ」



 一国の王太子に、面と向かって嫌い表明を受ける事態と言うのもなかなか無いのでは、とも思う。

 更に言うなら。

 それにどう返答したらよいかも分からず、多少濁した部分は否めない。

 しかし、その繊細な匙加減(さじかげん)が通用するような相手では元より無いらしかった。



「寝起きでまだ頭が回っていないのか? 多分、初めてとは……やれやれ、どうしてカレンはこんなのを見初めたんだろうね……」

「その言い方だと語弊がありますよ、王太子殿下」

「その呼び方は好きじゃないんだよ、エヴィ・ルル・エルマス。もし、万一今後君が私を呼ぶことがあれば……そうだな、とりあえずミルと。特別にそう呼ぶことを赦そうかな?」

「もし、万一……ですか」

「ああ。もし、万一だよ。――――君がこのまま何も創らずに終わったその暁には、妹の輿入れに君のその首を密かに混ぜようかな、と……」

「ホラー過ぎると思いますが。普通に嫌われますよ」

「ふむ、そうなれば考え直さねばなるまい?」



 眼が全く笑っていない辺り、たとえ想像の範囲であろうとも幾度自分は殺された事だろうと。

 それに思い至った時点で、半ば遠い目をしていた位は見逃して貰いたい。

 思わず口が緩んだのも、その影響があると思われる。



「決まって最後に疑問符を持ってくる辺りに、微妙な腹黒さを覚えるのは自分だけでしょうか…?」

「さて、どう思う?」

「言わせようとしている事が、見え見えですよ――ミル」

「……そう、か。君のことを若干、見縊みくびっていた己の不始末がこういう形で帰って来るとはね……」



 ここに来てようやくの、沈黙。

 あからさまな殺気の片鱗へんりんが僅かに収まり、ようやく詰めていた息も吐き出せるというものだ。

 手元の木彫り刀に目を落とし、取り敢えず一旦仕舞うことにする。

 どうやら想定していたよりか、長丁場ながちょうばになる予感がひしひしと伝わって来るからである。

 窓枠を背に、佇む甚だ美しい王太子から向けられる視線が痛い。



「それで、今回はどのような用向きでいらしたのですか?」

「伝言でも伝えた筈だよ、エヴィ・ルル・エルマス。私は無駄な問答がこの上なく嫌いだ」

「……察しろと、そういう訳ですか」

「その問い掛けもマイナスだ。エヴィ・ルル・エルマス―――君は、カレンのことをどう思っている?」



 その問い掛けに一息分の沈黙を選択したのは。

 これ以上無いほどに、賢明な判断であったと思われる。

 肯定じみた返答も、まして否定する様な返答も。

 何れをも、求めてはいなかったであろうそれを。

 ―――もし、曖昧あいまいに答えていたならば。その首筋に音も無く当てられていた刃が寸分違わず首と胴を分けていたであろう。


 ひやり、と首筋に触れる硬質な刃の感触は久しく忘れていたものの一つ。

 まるでアトリエ内だけが、周囲から切り離されたかのような静寂に沈んでいた。

 空に上がっていた陽光が、月明かりと混じり合う束の間の淡い光の中で向かい合う彼ら。

 不純物を凡て削ぎ落した後に、残ったような。

 色の無い目で、互いを見合う。



「先程の―――輿入れの話を、冗談だと思ったか?」

「……彼女は王女です。何れは、そういった話も……」

「ふ、君も大概愚かしい……さて。眼先しか見えない男の性は種族の差程度では変わらないか?」



 その言葉に、王太子が“彼”の本来の姿を把握している事は窺える。

 しかし今は、そんなことは瑣末さまつだった。



「目の前のことだと――――そう、仰っているのですか?」

「妹は、“聖樹”の異変にとうに気付いている。その上で、一つの選択を選ばざるを得なかった。其処まで言えば、今向けられている殺意の理由に思い至るか……愚かな竜の血族よ」



 おそらく“彼女”ですら、一度も見たことが無いであろう“彼”の表情にようやくその刃を引いた王太子は。

 声を失ったままの彼を一瞥し、冷ややかな眼光のまま言い置いた。



「今回の訪問を無駄にするようであれば……万一にも“次”を残すとは思うな。私は弟妹たちを不幸にする存在に何時までも目を瞑っていられるほど、気は長くないのだから」



 月明かりの差し込むアトリエで、王太子が去った後。

 未だ言葉の戻らぬ“彼”が何を思っていたのか――――それは、二刻ほどが過ぎてようやく零れ落ちた言葉が全て物語る。



「僕は――――間違っていた。例え数百年の時を経ても、全く学び取っていなかった」



 たったそれだけを、囁いた後。

 徐に立ち上がった彼は、アトリエを背にして向かう。

 その先に、出来る事があるとしたら。

 “彼”はそれに思い至ればこそ、もはや欠片の眠気も感じてはいないのだ。






 ***



 豊穣祭の準備期間中に、王の許しなく木彫り師のアトリエに立ち入ることは禁じられている。

 それでも昨年までは、食料の供給を口実に赦されていた立ち入りも今年に限って認められなかった。



「いったい父上様は……何を考えているんだろうね。このままだと、ルルが飢え死にしてしまう」



 今日もまた、昨日同様に食料配達権しょくりょうはいたつけんを勝ち取れなかった黒蜜の王女。

 彼女は山のように積み上げたパンやチーズ、トマト云々の素材そのままが乗せられた器を持ったまま私室へと戻って来たのである。

 それをいつもの通りに迎えたレージュは、トレーを受け取って苦笑する。



「カレン様、これらの食材の選別せんべつはどういった観点から行っているのでしょう?」

「うん? 勿論、栄養学的に満遍まんべんなくだよ。料理して持って行くには……王女的立場から苦言を呈されたので生で食べられるものに限るが」

「カレン様……王女的、ではなく。貴女は紛れも無い王女でいらっしゃいますよ」



 フルフルと肩がふるえている辺り、何かしらレージュの琴線きんせんに触れる部分があったのだろうと此方も苦笑で返すことにした。

 どうしても苦みが含まれてしまうのは、現状からして危急と判断せざるを得ない日数の間ルルがアトリエで作業を続けている事を知っているからだ。

 音が、絶えず響いてくる。

 扉を前に、それを聞いている事しか出来ない自分の不甲斐無さに―――ずっと唇を噛み締めていたからだろう。



 トレーをテーブルに置いたレージュに促されるまま椅子に座るや否や。

 唇の端を、布で抑えられた。

 染み込んでいく血の味が、苦くて。

 同時に腹立たしく、哀しい。

 こうした場合、王女の身分など何一つ役には立たないのだと思い知らされる毎日の繰り返しに。

 心が、きしむ。

 そして、何よりも……ルルが飢えてはいないかと。

 こうしている今も、餓死寸前ではなかろうかと。

 過る度に、より一層噛み締めてしまう。



「レージュ、私は無力だな……」

「………カレン様」



 うつむいた顔に、レースのように視界を奪う黒蜜の色。

 厭わしくて、どうしようもない。

 一番大変な時に、何一つ支えになれない自分の有様。

 日を重ねるごとに、扉の向こう側の音が止んで欲しいとも―――続いていて欲しいとも定まらぬ自己の心境も。

 そうして、ずっと目を逸らしていた事を突き付けられた日々。



「レージュ、私は言葉で言うばかりで……実際はルルに必要な力を弱らせていたんじゃないだろうか。今までの自分の行動はまるで……雛鳥の巣立ちを促さないような、そんな無責任な行為だったのではなかっただろうか……? 考えれば考える程にね、もう、よく、分からなくなっていくんだ……」



 まるで身をぎ落す様に、淡々と紡がれる声をじっと静かに聞き終えたレージュ。

 その傍らに膝をついた彼女は徐に一礼して言う。



「カレン様、不敬を承知で失礼いたします」

「……レージュ? ………っ、」



 パチン、と高い音が自分の頬から響いた理由を……暫くの間理解できずにいた。

 両頬を挟まれた状態で、今まで見たことが無いほどに静かな眼差しを合わせてくるレージュ。

 間近に見合うその瞳は、彼女がこれまで見てきたどんな色よりも優しく、泣きそうな色を湛えていた。



「カレン様。過去のご自身の行動をかえりみるのは、けして過ちではありません。けれども、それをする時は必ず、今から言う言葉を胸に刻んで行う様にして下さい。

 “省みる事で、傷つく誰かがいるのなら。それは安易に切り捨ててはならないものなのだ”と。

 人が行動を起こす時、それはおよそ周囲に少なからず関わりを持たざるを得ないのです。完璧でない人間が、完璧な行動をとり続けるなど到底無理な話でしょう。過ちを犯して、人は日々成長を積み重ねていくのですから。

 もし―――カレン様が何らかの失言をしたと思い、それを省みたとします。

 その時、当人の思いを聞く前から全てを切り捨ててしまっては―――いずれ、どうあっても気持ちはすれ違ってしまうでしょう。

 もし、それが当人にとって大切なモノであった時。

 それを他ならぬ本人に否定されれば、場合によっては生涯に渡る傷にもなりかねません。

 省みる優しさも、大切にしなければなりません。

 けれどもそこに、相手が存在しないのであれば……それは時に過ちとなり得るのです。

 カレン様、どうかご自身の思いだけでなく。辛い時こそ、周囲に目を向けて頂けることを……このレージュ、それが何よりの望みで御座います」



 言い終えるや、床に平伏して「どうぞ厳正な処分を」と。

 ただ、真っ直ぐな思いを手向けてくれた彼女。

 かけがえの無い侍女であり、友人でもある彼女に。

 ―――どうあれば、処分など下せようか。いやはや、考える事すら馬鹿馬鹿しい話だ。



「ふ、ふ、……知っているか、レージュ? 生まれてこの方、この頬に平手を打ったのはレージュが初めてだよ。記念すべき今日の日を、私はきっと死ぬまで忘れることはないだろうね」

「……あの、カレン様? それは下手に処分を受けるよりかずっと……」

「君が言ったことだよ、レージュ。 君にとっては“過ち”であるかもしれないそれも相手からしたら、大切なものであるかも知れないと……これはまさに、真理だ」



 微笑んでそう告げれば、若干青ざめて涙目のレージュと見合う。

 いつもこうして支え続けてくれる人の為にも、これ以上無様な姿はさらせない。


 そう、決意して。

 黒蜜の王女は、テーブルに置かれたトレーを再びその手に取る。



「考えてみれば……これ以上無いくらいにスマートな解決方法が残っていたのを忘れていたよ」



 そう呟くや、決然とした表情で私室を後にする王女の背へ掛かる言葉。



「カレン様、笑顔の凱旋がいせんをお待ちしております」



 その一言に、背を向けたまま王女が返す言葉は。



「この頬に残る熱が私に力をくれる……レージュ、安心して待っていてくれ」

「……カレン様、それを告げられる度の私の心境が如何いかほどのものか……それを分かって仰っているのでしたら相当です……―――――行ってらっしゃいませ」



 ここまでで、既に致命傷に近い精神的なダメージを負いつつも。

 健気で誠実な侍女は、今にも血を吐きそうな口元をはがねの精神で支えつつ笑って見送るのだった。



 ***



 夜半の警備を潜り抜ける術は、現王族であると同時に木彫り師としても勤める弟から聞き出した。

 カシミールは非常に渋い顔をしながらも、めげずに根気強く正当性も加味して説得に当たれば、大抵の場合は折れてくれる。

 その判断は、少なからぬ弟からの信頼があってこそのものだと解釈する彼女は。

 今宵を最後に、聞き出した方法論を全て記憶のかなたへ封印することだろう。

 万が一にも、弟を巻き込むつもりはないだけに。

 そう何度も危い橋に挑めるほど、無謀な性格は元よりしていないのだ。

 こう見えて、意外だと思われるかもしれない。けれども根底には慎重さが多大な比重を占めている。

 割合にして示せるものなら、機会があれば一度示してみたいものだ。



「………さてと、取り敢えずここまでは来れた。昼間の二の舞は踏むまい」



 ルルのアトリエの扉。

 それを前にして、夜半に仁王立ちする王女が一人。

 巡回は二刻半に、一度。

 猶予は実際のところ、あまり無い。



 それでもその口元に浮かぶ笑みは、どのような心境によるものか。

 それほど間を開けずに、その所以は判明することとなる。



 今宵が過ぎれば、豊穣祭まであと一日。

 実に、一週間近く籠り切りになっている彼のアトリエの中からは――――こうしている今も、響いてくる。



 それを確認し、徐に息を吸い込んだ彼女。

 ヒュルヒュルと、喉を震わせた後――――ほぼ、間は無かった。

 内側から開かれた扉の先で、普段以上に血色を失った“彼”の顔を見上げた瞬間。



 言い表しようの無い、衝動のように込み上げてきた感覚と眩暈のような情動。

 しかし、である。

 現実はそれを言葉にするよりも先――――アトリエの中に引き摺り込まれる方が早かった。



「……ごめん、色々聞きたいことが多過ぎて……逆に言葉にならない」



 そんな彼の呟きは尤もで。

 それに頷くくらいの気持ちでいることも、本当はこの時点で伝えておくべきだったのだろう。

 けれども。

 その囁きが耳元で落とされたもので。

 まして、ここ数年で初めて“彼”の体温に触れている現状は―――如何せん、思考が追い付かない。

 グルグルと回る視界で、辛うじて彼女の思考を冷静に立ち返らせたのは。

 やはりその、尋常では無い肌の青白さ。

 ―――栄養失調だ。

 それに思い至るや否や、一瞬にして普段の空気を引っ張り出して来た辺りは年季と言える部分だろうか。



「ルル、何はともあれ君……食料だよ」

「うん……」



 流石に、これには異議も無いらしい。

 トレーに山積みにされていた穀物、野菜類、果実、その他諸々はまさに詰め込まれるといった様子で彼の口に瞬く間に消えていく。

 この食べっぷりは、逆に身体に悪いのではないかと何時だったか訪ねた折。

 その際には「特に問題はないと思うけど……」と。

 その一言が返っただけで終わったものである。

 だから今晩についても、恐らくそう問題にはならないだろう。

 そう結論付けて、見守っていた訳ではあるが。



「……君が食材を味わって食べているのか、時々ふと疑問に思うよ」



 そんな呟きを余所に、トレーの上の食料をすべて胃のに収めた彼。

 溜息を一つ零してから、トレーを横に置いた彼の様子を見ていると。

 何時に無いことに、その視線が真っ直ぐに向けられる。

 言葉も無く見合うこと、暫し。

 それは静かな問い掛けから、始まった。



「あのうたは、誰から?」

「扉の前の、あれだね? 一応母から聞いた旋律を思い起こして、一節だけ試してみた。母曰く、過去には皇国で唄われていたらしいよ。詳しくは知らない」

「詳しくは、知らないって………偶然の一致にも程があるよ」



 何故かその返答に、これ以上無いほどに脱力する。その様はまるで………



「マタタビをいだ後の猫みたいだとか……思ってない?」

「ルル、たまに君は無駄に鋭いな……ふ。でも、その様子だと取り敢えず餓死だけは免れたみたいだね?」

「……うん、それはカレンのお陰だ。でも、僕は一言言わないといけない」

「何をだね?」

「……君は、国王の承認を得ずにアトリエ塔に忍び込んで来た。仮にも王女である君ならば、その意味は言われずとも分かるね?」



 ――――どうして、禁を犯した?



 月明かりに、青く染まった双眸の美しさは我知らず身を震わせるほどだった。

 けして偽りを許さないその色に、半ば諦めた様な心境で黒蜜の王女は答えた。



「君が、大切だからだ」

「……それは、木彫り師としての僕の存在を大事にしなければという義理心ぎりごころ?」

「怒るよ、ルル」



 怒るよ、と言いつつ既に彼女は全身を静かな怒りに染めている。

 思わず目を瞠った彼に、その低めた声とは対照的な―――今にも泣きそうな顔をして彼女は告げる。

 それは黒蜜の王女と呼ばれる、彼女としてではない。

 それはカレン・シトラ―ル・ロウの三つ名を持って生まれた、一人の少女としての感情だった。



「初めは興味本位だった。それは否定しない。風聞で聞く君の様子に、眉をひそめた事もある……。今となっては昔の話になるが。きっと君はもう、覚えていないのだろうね。私が初めて君に会ったのは七年前の誕生会の最中さなかだ。君は、意図せずに私を掬いあげてくれたんだよ。掌に残らないことに、諦観しつつあった私に―――とても眩しい夢をくれた。だから、あの日からずっと君は私にとって大切な人であり続けた。君にとって、そうでなくても。私はあれからずっと……君の支えになりたかった」



 独白した少女と、その間ずっとうつむいたままの彼。

 向かい合わせに座りながら、けして詰まらないその距離は―――変わらぬあの日のまま。



「ルル、私は……いや。私が、今までして来たことは君にとってどうであったかは想像するしかない。今回のことも、突き詰めれば私の独断だ。我儘わがままだよ。……だからね、君だけには裁く権利があると思っている。これが私の正直な気持ちだ。後は、君の裁量さいりょうに任せるよ」



 言い終えた少女は、正直なところすっきりしていた。そんな心境にあったのは言うまでも無い。

 久方ぶりにその生死が確かめられただけで、彼女にとってはまぎれも無い成果であった。

 そう――――端から、黒蜜の王女の望みはその一点だけであったのだから。


 彼女は、結局のところ告げていない。

 それは、隣国への輿入れの件然しかり。

 それは、先程までの心境の吐露とろに透けて窺える想いの存在然り。


 しかし、それはけして隠している訳ではない。まして、胸の内に秘めているというのともやや違う。

 今の時点で、彼女の望みは自身のこれからや現状云々よりも。

 “彼”が無事でいるという其方が優先されているという、ただそれだけの話なのだ。



 そして、それを知った上で――――“彼”がどのように裁量を下すかなど、正直な話これほどに考える事が無駄な答えもないだろう――――その彼が出す答えは、その表情を見れば明らかである。



「カレン、君に頼みたい事がある―――……聞いて、くれるかい?」



 どこか諦めたように笑った“彼”に、“彼女”が返す言葉など決まっていた。




 ***




 紺碧の空は、雲一つなく澄み渡っていた。

 豊穣祭当日。

 周辺の国々からも、主賓しゅひんが招かれて盛大に祝われる宴の中盤。

 “木彫り師たちによる作品展覧”が刻々と迫る最中――――。



「……彫長様、あの前例の無い大きさのおおまくは一体どこから……」

「うん、あれを用意するのが実は一番大変だった。さすが、カシミール。目の付けどころが的確だな」

「……あまり嬉しくも無い評価、ありがとうございます」



 そのあからさまに、周囲から浮いた大きさの幕。

 作品ごとに掛けられた布地の面積からして、相当の大作を期待させるそれも―――造り手が、くだんのエヴィ・ルル・エレマスとなれば――――途端に抱いていた期待感が、多いなる不安に入れ替わる不思議。

 それは何も、木彫り師たちだけの視線を奪うだけの影響に留まらない。



 徐々に運び込まれる、木彫りの数は総勢十三。

 中には、この日の為に二つの木彫りを仕上げてくる実力派もいる。相応に高まる期待感の最中、周囲の視線を一点集中に成し遂げた異例の大きさ。

 それに対し、王家の面々ならびに周辺国の主賓たちが目を留めぬ筈も無く。



「――――ねぇ、あの巨大なのも作品の一つだよね? 普通この半月で、あの大きさの木彫りって完成まで至るものでしたか?」



 そんな声が、周囲の囁き声をまるで代弁するかの如く響いたのも予想されることではあった。

 しかし、その声の主を辿って行った先で“その人物”が誰であるかを確認した者たちは。

 一様に、その痛烈に皮肉気な口調と同時に納得もする。



 濃紺のうこん輿こしにゆったりと寝寛ねくつろぐその様は、まるで毛並みの上質なペルシャ猫が如し。

 歴国の王弟 シャメル・マトロ・タンジール。

 彼は、その歯に衣着せぬ物言いから自国において“硝子がらす貴人きじん”とも称されているらしい。

 因みに、この貴人を奇人と言い換える者も後を絶たないとか。

 全くもって笑えない話である。



 そんな人物が、ここで口を開くのも必定かと。

 さざなみのように広がってゆく周囲の声を拾っていけば、つまりそういう見方らしい。



「―――通常は考えにくいね。まず以て、困難だ。……だが、あれの作り手は所謂(いわゆる)“規格外”の木彫り師。あの幕が上がってから、判断して頂いた方が良いと思いますね。―――歴の王弟殿」

「へぇ……瑠璃の太子殿下よりの言葉をこの時点で頂けるとは思いもしませんでしたよ。気に掛けて頂けている様で、こちらとしては非常に嬉しいことですよ―――義兄殿?」



 互いに微笑みを張りつけながらも、歴の王弟が最後にひっそりと呟いた一言に場の空気は完全に凍りついたと言っても過言では無く。



「―――……随分と先走っておられる様子。まだ酒精に踊らされるには早いと思ったが?」」

「ふ、面白い冗談を仰る。……私は、素面ですよ義兄(あに)(うえ)殿」



 互いに、非常に冷めた口調を隠さぬその様子。

 それは正に、相性の悪さを表だって宣伝しているのと同様。

 これを見て内心頭を抱えているのは、カシミールを始めとする周囲の面々であり。



「無駄に刺々しい会話は、この場には似合わない。―――自重してくれたまえ、兄。王弟殿」



 このタイミングで、彼らの間に踏み入ることが出来た“彼女”の優美な立ち姿。

 その雄姿に、自他ともに姉馬鹿を宣言してはばからぬカシミール。

 彼はいつに無く、そわそわとした様子を隠さない。



「久方ぶりだね、黒蜜の王女殿。暫く見ない間に、その美しい髪も随分長くなったものだね」

「……久方ぶりだね、歴の王弟殿。暫く見ない間に、また一段と怠惰たいだになったのではないかな?」

「………君は変わらなくて、良いね。安心するよ。ところで日取りはいつにする?」

「―――それについては、この“作品展覧”が終わった後に話をしたいと思っているよ」



 正午の鐘が、大広間に鳴り響く。

 広間の奥、きざはしの上の王が立ち上がり――――宣言した。



「これより、本年の豊穣祭における木彫り師たちによる作品展覧を開幕する」



 ―――――幕を、上げよ。



 王の言葉を皮切りに、次々と作品に掛けられていた覆い幕が外されていく。



「―――あれは、一体……」



 誰ともなく、呟かれたその声は徐々に大広間全体へと広がって行った。

 彼らの視線の先に、明らかとなった全貌。



「はは、これは……どういった趣向で作り上げられたものか、是非聞いてみたいものだね」



 歴の王弟がそう評した。

 招かれている多くの人々が、困惑の色を浮かべる中。

 王は喧騒に満ちた広間を一通り見渡した後に、徐にその口を開き――――



「木彫り師 エヴィ・ルル・エレマス。あの木彫りの意図を述べよ」



 一転して静まり返った大広間に、響いた声の主――――それは、かの眠たげなそれではなく。



「父上様、おそれながら……それに関しては私から補足させて頂きたいことがあります」



 真白の手を高く上げ、広間の中心まで歩み来て。王を見上げる唯一人。

 大広間の開け放たれた天窓から、ふわりふわりと舞い上がる風は予兆の如く。

 丁度その真下で、黒蜜の王女は父王に告げた。



「それはまだ、未完成の木彫りです」

「未完………と、お前はそう言ったか?」



 周囲のざわめきが、もはや騒音と言い換えて間違いではない大音声へと高まった。

 それも無理はない。この場が、言い換えれば豊穣祭で最も神聖な祭典と位置付けられていることは国の誰もが知る事実。

 その祭典に―――未完の木彫りが出展されたとあっては。

 まさにそれは、前代未聞の宣言であり―――もはや、広間全体が収拾は望めない空気へと染まりつつあった。

 しかし。



 文字通りそれは、風向きが変化することで終息する。

 終息、せざるを得なくなる。



 祭典の中断を求める声が、上がりかけた刹那。

 “何か”の羽音が耳朶を打つ。


 初めは、いぶかしげに。そして徐々に、茫然とした様子に切り替わってゆく様は。

 それはもう見事なものであり。

 ただ一人、黒蜜の王女だけが微笑んで“それ”が降りてくるのを見守っている。



 天窓から差し込むのは、光を遮るほどの巨大な翼。

 まるで奇跡のように、見事な色調の木葉色(フォイーユモルト)

 精緻(せいち)で、曲線の美しい“古の竜”を象った―――――“彼”の聖樹像。



「今、ようやく彫り上げた模様ですね。“彼”からの伝言は以上です。―――父上様、どうぞ退室の許可を。“彼”に食事を運ばなければなりません」



 彼女、黒蜜の王女ことカレン・シトラ―ル・ロウはそのように締めくくって優雅に膝をつく。

 そんな彼女を玉座から苦笑を隠さずに見下ろした王は、一言だけ言い添える。



「よい、行ってやれ。ただし―――黒蜜よ、一つだけ確認する時間を赦せ」

「御意。―――何なりと承りましょう、父上様」

「あれは“聖樹像”と見える。しかし、黒蜜よ。そなたも知るとおり、木彫り師だけで“聖樹像”を成すことは叶わぬ。して、あの竜の彩色師の名は?」

「改めてお伝えする必要はありません。御前に居りますれば――――それだけで、十分かと思いますが如何いかがでしょう?」



 漣のようにあった喧騒は、いつしか嘘のように静寂へと変わっていた。

 その静寂の中で、笑み交わした父子。



よろしい。よく―――分かった。しいては、黒蜜よ。以前挙がった話はこちらで破棄して構わぬな?」

「御心労をお掛けして申し訳ありませんでした。それでは、私はこれで失礼いたします」

「うん、よくつとめた。―――私に代わって、“あれ”に同じ言葉を伝えてくれ」



 王の言葉を受け、改めて正式な挨拶を交わした後。

 いまだ状況を飲み込めていない様子の周囲を横目で見渡しながら、視線を留めた先。



 薄らと、笑み零したペルシャ猫のような人。

 彼は声に出さずに、口の形だけで伝えてくる。



 “おみごと”



 それに、分からない程度の苦笑を返して。

 振り返ることなく、大広間を後にした王女だったが。

 ややあって、足早に戻ってきた。若干気まずそうだ。

 周囲が何事かと顔を見合わせる中。

 カシミールにひそひそと何事かを耳打ちし――――何事も無かったかのように、再び大広間を去っていった。



「カレンは何と言っていた?」

「……あの“竜”の呼び方を伝えていきました。僕はあれの作り手では無いんですが……」

「ふふ。不機嫌そうだね、我が弟は。―――輿入れが白紙に戻っただけ、喜んで然るべきと思うがね」



 意図的に潜められた声に、不本意そうな横顔のまま沈黙する弟。

 その様子に恐らく内心の声はこんなところだろうと、声の調子は変えぬままに告げれば。



「察するに、相手が“誰”に代わろうが……カシミール、君が納得する日は来ないのだろうな」

推論すいろんをさも事実のように脚色きゃくしょくする癖は、早々に直した方が良いですよ……王太子殿下殿」

「ふぅ、怖い怖い。でもね、カシミール一つ付け加えるなら………万が一にも、黒蜜が歴へとつぐ日など来ない筈だった。そう―――今となっては、余分な血を流さずに済んで良かったよ」



 瑠璃色の双眸が、全くもって笑っていなかった。

 それを間近で見ることとなった弟は、余計に笑える筈も無い。

 薄ら寒い何かを感じながら、ようやく絞り出した言葉は。



「……あんまりやり過ぎると、いつか本当に嫌われるよ」

「ふふ、誰かにも似たような言葉を貰ったな……まぁ、程々に気に留めておこうか」



 最後の方は、囁くようにして言い置いて。

 元いた席へと戻っていくその背を、おそれを多分に含ませた目で見送ったカシミール。



「……僕も、程々にしておこう」



 半ば無意識に、そう呟きながら笛を吹く。

 笛と言うのは、姉が先程戻った折にひそかに手に握らされた代物である。


 恐らく、あの“竜”を作り上げた聖樹と同じ枝から作られたものだろう。

 澄んだその音が天窓へ届くと、翼を広げて広間を見渡していた位置から耳を(そばだ)てて降りてくる。

 そのあまりの風圧に、広間にいる人間が吹き上げられるかと思ったが―――まるで、奇術の如く体積を小さくして降り立ったそれは―――最終的には大鷲(おおわし)ほどのスケールにまで収まった。



「――――木の葉色、か」



 あの二人らしい、優しい色合いだ。

 ぽつりと出た呟き。その口元に、薄らと浮かんだそれは周囲には分からないほどに微かなものだった。



 *




 肩口から、とん、とん、とカシミールの腕を伝って移動した竜。

 その指先が指し示す“聖樹像の籠”にぐるりととぐろを巻いて一際大きな欠伸(あくび)をした。

 聖樹の“加護”を象徴する“籠”のなかで、うつらうつらとまどろみ始める“新たな聖樹像”。


 薄緑色の木漏れ日を浴びて、大広間はこうして新たな時代を迎えることとなったのだ。







 *






「ルル、君はまた………もし私が来れない様なことがあれば、本当に餓死してしまうな君」

「うん? ………それは心配してないよ」


 穏やかな日差しを浴びつつ、モグモグと頬張ほおばる様子を呆れた様子で見守る王女。

 いつも通りの、限りなく平穏な一幕だ。


「どういう意味かね?」

「うん? ………改めて伝えるまでも無いと思うけど」

「言葉少なにも程度があるよ、ルル」


 暫くモグモグを続けていた彼が、やおら何かを諦めた様子で横目を合わせる。



「君は、僕の彩色師だからね」

「……うん? それは数日前にお願いされたのを受けただろう?」

「鈍い………」




 とうとうトレーを脇にやり、静かに問い掛けたその先で黒蜜の王女は丸々と目をみはる。



「この先、君はずっと僕の傍らにいてくれる―――そう信じて、僕はそれを願ったんだ」



 さらさらと、彼の白藍しらあいの髪が揺れる。

 その髪の間から覗く、青の双眸は――――何度となく見返しても、言い表せる言葉が見付からない。


 それは初めて出会った頃から、変わらずに美しい。

 黒蜜の王女にとって弱点と言うべきものがあるとしたら―――きっとこれだ。



「………ふぅ。仕方もあるまいね。君は私がいないときっと飢え死にしてしまうから」

「……うん、僕もそう思うよ」



 囁き合う。

 柔らかな風が吹く、バド歴八つの月の一日。

 空は青く澄み渡り、薄緑の日差しが燦々と差し込んでくる窓辺より。


 さらさらと白藍の髪を揺らして、寝起きの猫の如き伸びをするのは一人の少年。

 そしてその傍らには、黒蜜の髪を靡かせる王女。


 これは一人の木彫り師と三番目の王女。

 そして彼らのうんめいを繋いだ木彫りの竜の物語。


 *fin*



ここまで読んで頂いた方々へ、感謝の気持ちを込めて今作を贈ります。


気が付いた時には、とんでもない長さに…。

ジャンルを間違えたかもしれないと思いながらも、当初から“童話”として書き進めてきた物語でしたので、思い切って蔵出しを致しました(*´ー`*)


気になった範囲には、予めルビを振っております(^-^;

もし、ご意見……ジャンル変更の勧めなどありましたら是非お気軽にコメントを頂ければと思います。

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