スープの味
砂漠だった。
焼けるような暑さと、乾いた風だけがある。
ここがどこなのか、わからない。
ただ、人がいる。
人々は列を作っていた。
誰も言葉を発さず、ただ静かに並んでいる。
腹が減っていた。
理由もわからないまま、俺もその列に加わった。
やがて、鍋の前にたどり着く。
差し出された器に、スープが注がれる。
肉が多い。
野菜は、ほとんど見当たらない。
一口すする。
少し癖はあるが、悪くない味だった。
だが——
周りの人間は、皆、暗い顔でそれを食べていた。
悲しそうに。
何かを噛みしめるように。
戦争でもあったのだろうか。
誰かを失ったのかもしれない。
よく見ると、老人が多い。
女もいるが、どれも痩せこけ、目だけが異様にぎょろついている。
そして——
子供が、いない。
学校か、どこかに集められているのか。
そう思ったが、妙な違和感が胸に残った。
夜が近づく。
寝る場所を探そうと辺りを見回したが、
さっきまでいた人々が、誰一人いなくなっていた。
砂漠の中に、取り残される。
風の音だけが響く中、
どこからか、かすかな声が聞こえた。
近づくと、建物があった。
その前に、女たちが並んでいる。
四人か五人。
それぞれが、子供を抱いていた。
皆、泣いている。
声を押し殺しながら、
それでも溢れるものを止められないように。
なぜ並んでいるのか。
その先に何があるのか。
扉が、開いた。
中から男が出てくる。
無言で、子供を引きはがした。
「やめて!」
女が叫ぶ。
名前を呼ぶ声が、砂漠に響く。
だが男は、何も言わない。
次の女も。
その次も。
すべて同じように、引きはがされていく。
子供たちは、建物の中へ連れていかれた。
女たちは、その場に崩れ落ちる。
そこへ、別の男たちが近づいた。
女の腕を掴み、どこかへ連れていく。
誰も逆らわない。
逆らえない。
ただ、消えていく。
建物の中から、音がした。
ドン。
ドンドン。
叩く音。
強く。
必死に。
気づけば、足が動いていた。
中で何が起きているのか。
確かめなければならない気がした。
その時——
「近づかないほうがいい」
後ろから声がした。
振り返ると、男が立っていた。
「あそこは肉屋だ」
淡々とした声だった。
「子供は、働いてるだけだよ。
あの子たちにしかできない仕事がある」
意味が、わからなかった。
「……終わったら、帰ってくるんですよね?」
男は、少しだけ笑った。
「もちろんだ」
それ以上は、何も言わなかった。
翌日。
また、列ができていた。
俺も並ぶ。
同じように、スープを受け取る。
肉が多い。
やはり、野菜は少ない。
一口、口に運ぶ。
うまい。
昨日と同じ味だ。
ふと、隣を見る。
昨日、子供を奪われた女がいた。
目が、ぎょろぎょろと動いている。
何かを探すように。
いや——
何かを、思い出さないようにしているようにも見えた。
スープの中の肉を、もう一口。
やわらかい。
よく煮込まれている。
……不思議と、食べやすい。
今日は、昨日よりも
少しだけ、多く入っている気がした。
今回見た夢は少し前の物で、メモ書きだけしていた内容です。
なかなかに面白い夢でした。
もしよければ評価頂けると幸いです。




