0038クラウドファンディング
役場の片隅で 菫はノートパソコンの前に座っていた
ふと横のモニターを見ると
クラウドファンディングの公開ページが
静かに表示されている
「…公開しました」
彼女は小さく呟き お茶を一口飲んだ
カチッ…
そこへスキマの通知が鳴る
ピロリロリ~
最初の通知だ
誰やろ?
菫が画面を開くと
最初の支援者からのメッセージが届いていた
初めての支援コメント
北海道 支援者Aさん
「遠くからですが 応援しています!
道の駅が完成したら必ず行きます」
その下には
関東 支援者Bさん
「ホタル配信がきっかけでこの村を知りました
ほんの気持ちですが支援します」
小さなメッセージが ゆっくりと並んでいく
「嬉しい」
菫の声は静かだが
その胸は確かに熱くなっていた
ある日の夕方
役場の入り口には一枚の掲示が貼られた
クラウドファンディング公開中 目標まであと…%
直売所に集まっている村の人たちも
それをちらりと見て言葉を交わしている
「もう公開したんやな」
「どれどれ…」
一人の婦人がスマホを取り出して
進捗画面を見てみる
「まあ
遠くからも応援してくれてるみたいやね」
「うん
絶対達成して欲しい って書いてあるわ」
祭りの時の余韻がまだ残る村で
村人たちは穏やかな反応を見せていた
「これなら ええ感じやと思うで」
「支援額は まだまだやけどな」
「まあ 初日やからな」
そう言いながらも どこか笑みがこぼれている
夕飯を終えた頃
学生寮の高校生たちが集まってSNSを覗いている
葵がスマホを持ちながら言う
「ねえねえ
支援してくれた人のコメント見た?」
「うん 見たよ
景色だけで癒される って人もおる」
さくらも画面を覗き込みながら
ふふっと笑っている
「これって
村のことを知ってもらえる機会なんやな」
「うん
遠いところからでも応援してくれるのは
なんかいいなあ」
高校生たちの反応は自然で
村の外側で支援してくれる人へ素直に嬉しさを感じている
夜も更けて
菫の自宅ではライトが一つ点いている
改めて支援画面を見ていた
支援額はまだまだだけど
コメントは静かに温かい
スマホが鳴った
女将さんからだ
「見てきたよ…やって良かった?」
菫は笑う
「思っていたよりずっと 温かいです」
「村のこと
他人事 と思わんで見てくれてる人もいるんやね」
女将さんは優しく笑った
「応援してくれる人がおるんは
それだけで心強いで」
菫はスマホの画面を見つめ
ゆっくり頷いた
「みんなが見守ってくれてる気がする」
その夜の風は
秋を感じさせるほど澄んでいた
遠くからも
静かに支援の光が灯っていく
空気がひんやりと感じられるある日の昼下がり
役場の小さな会議室に集まっていた
黒板にはクラウドファンディング中間広告 の文字
近日の支援推移が書かれている
「思ったより 支援が伸びていません」
菫は 資料を静かに見せながら切り出した
「応援コメントは温かいのですが
支援額としてはまだ目標に達していません」
村の皆の顔には
どこか沈静とした表情が漂う
「初日の反応は良かったのに」
ひとりの農家が小さく呟く
「やっぱり現実は甘ないな」
別の若い住民が言う
「応援はしてるけど
実際に金額を出すのは ってことかもな」
菫は 深呼吸してから続けた
「住民の方の中でも
支援したい気持ちはあるみたいです」
「だけど
どう使われるか が具体的に見えないと
踏み切れないって声があります」
その言葉に 役場の職員が頷く
「もっと
使い道の具体例 を見せた方が
って意見もあります」
女将さんは静かに立ち上がり
みんなを見渡した
「応援するって気持ちはある
でも 村のこと って言われても
まだ漠然としてるんやと思う」
その言葉に 皆が少しずつ現実を受け止め始める
菫はノートパソコンを開いた
「支援者のコメントを集めて
SNSに載せるのはどうでしょう」
「それと
リターンの品目や説明を
もう少し具体的な写真付きで公開してみては」
その案に皆が少し顔を上げる
「うん
俺もそれなら
友達に紹介しやすいかもな」
「何なら
道の駅予定地の現地の写真も動画で流したら?」
女将さんが続ける
「作業進捗とか
ここに休憩所が出来ますよ って感じで」
祭りの片付けや稲刈り体験が
写真や動画で残っている
「そうですね!
その流れなら
応援したい って気持ちも伝わるかも」
菫の目が 少しだけ輝く
「じゃあ
見える化プロジェクト 始めましょう」
私は静かに頷いた
「計画動いているとこ
ちゃんと見せてやるべきやな」
その瞬間
会議室に小さな前向きな空気が戻った
まだ支援金額は伸び悩んでいる
でも
みんなが「何とかしたい」と思っていた
そして気付いた
「応援される状況を作ることが これからの鍵なんや」
その夜
菫は一人でスマホを見た
農家と映る稲の動画
祭りの笑顔
ホタルの配信の空気を感じる映像
工事着工前の現場の様子
少しずつ
小さな 見える化 の素材を集め始めていた
そしてパソコンに向かう
支援してくれる人が この村の空気を感じられるように
菫の指先は
静かだが力強く
キーボードを叩いていった




