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ふるさと振興課(仮)  作者: 堺大和
37/48

0037工事開始

秋の空気は柔らかかった

小学校跡地に隣接する集会所では

村のミーティングが始まっていた

黒板には

「道の駅整備・工事関係前ミーティング」と

書かれている

出席者は村の顔ぶれが揃っていた

「それでは始めます」

私が立った

「まずは

設計 補助金採択を踏まえた

工事開始に至るまでの流れを確認します」

黒板の図や資料を指しながら

私は静かに説明する

「夏の終わりに補助金満額が

採択されたことは 御承知の通りです」

一同が頷く

「これを受けて 秋から工事を始めます

ただし

冬期間の雨雪対策

設計に沿った手順

地元ボランティアの安全確保

などはしっかり準備しました」


説明は淡々としているが

決して簡単ではない現実を噛み締めながら語られる

菫は横でプロジェクター操作をしつつ

小さく要点を補う

「工事は部分ごとの進行になります

まずは基礎と排水 休憩所部分から着手します」

「完成は来春を目指します」

場内に静かな空気が流れる

その後 参加者から質問が次々と出た

「夜間作業はあるんか?」

「安全確保はどうなってる?」

「仕上がり時に 地域ボランティアは

何か手伝えるんですか?」

一つずつ

設計担当者・役場が答えていく

最後に

女将さんが立ち上がった

「よそで見た大きな道の駅とは違うけど

地域みんなで進めるって意味では

こっちの方が心強いです」

拍手が自然と起きる

若い男性がささやく

「なんか

本当に始まるんだなって感じしますね」

その隣でも笑う

「祭りから一気に現実やね」

私は黒板から目を離し

みんなの顔を見渡す


この村で一緒に作っていくんやな

小さな決意が

胸の奥で少し強くなる

そして

「では 作業開始へ向けて 宜しくお願いします」


朝の光は未だ柔らかい

少し冷たい空気が 草むらの上を滑るように

流れている


旧小学校跡地に隣接する工事現場は

既に朝の準備が始まっていた

什器のエンジン音はまだ小さく

ラジオの音が遠くで流れている

「おはようございます!」

作業員が 軽トラック荷台から工具箱を下しながら

元気よく挨拶してくる

「おはようございます」

私も

現場監督と一緒に軽く会釈を交わす

「寒うなってきましたけど 頼みますよ」

「はい よろしくお願いします」

秋の気配は 紅葉はまだ来ない

空気は澄んでいるのに どこか緊張感が漂う


現場の朝の風景は

作業員たちは防寒を兼ねた作業着

重機は既に朝イチの点検完了

黒板にはその日の作業指示が書かれている


8:00 基礎ケミチェック

8:30 排水溝位置確認

9:00 土壌改良層の施工


それぞれが

順序だてて手元の工事を始める

トントンと工具の音

水平器の電子音が静かに響く

「ここはしっかり 水はけを考えないといけません」

設計担当の声と 工事担当者の確認の声が

淡々と響いていく


私は 現場の一角に立って人々を見ていた

目の前に並ぶ機械や重機

足元に敷かれた保護マット


昨年から

道の駅を作ると言い出した時から

住民投票前の数度にわたる説明会

そして住民投票

東京での国交省との打ち合わせ

県 国との会議

クラウドファンディングの準備

そのすべてが

この瞬間へと流れ込んでくる


この村も ここまで来たんやな


胸の奥で 静かな感動が広がる


「山中さん」


傍らで菫が声をかける

菫も 現場用の黄色いヘルメットを被り

少し緊張した笑顔を見せていた

「順調ですよ

みなさん 朝が早いですね」

「ええ

現場は時間が勝負ですから」

私は空を見上げる

まだ雲は低く

光がゆっくり地面に差し込んでいく

この空気が この土地が 

この工事の始まりを

静かに祝福しているようだった


現場の一角で

作業員同士の小さな会話が聞こえる

「前の現場とは違いますね」

「うん こっちは住民との距離が近い」

「地域の人たち ちゃんと見に来てくれるよ」

「終わったら

祭りみたいに やったなあ って感じかな」

そんな声が どこか嬉しそうに 自然に交わされる

それは

「工事」ではなく

「村の未来を刻む時間」への呼吸だった


8時になり

全員が整列して朝礼を始める

安全確認

今日の工程

設計担当から補足の指示

そして最後に

私の一言

「今日もよろしくお願いします ご安全に!」

その声は

確かな決意が込められていた


みんなが

「ご安全に!」

と答える


その掛け声が揃った瞬間

道の駅の建設は

村の仕事 として

本格的に動きだしていた


ここまで感想がありましたら宜しくお願いします

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