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ふるさと振興課(仮)  作者: 堺大和
31/48

0031そのあと

ホタルの配信を終えた翌朝

役場はいつも通りの月曜だった

電話は鳴らない

窓口が混むこともない

それでも

菫のパソコンの受信箱には

少しずつ通知が溜まっていた


昨夜の配信 拝見しました

音があって 落ち着きました

現地に行かずに見られてありがたいです

派手な言葉はない

絵文字も少ない


「ちょうどええな」


思わず声に出る

旅館の女将からも 短い連絡が入っていた

宿泊のお客さん 来てよかった って言うてました

それだけ

だが それが一番欲しかった反応だった


私はオンライン会議を二つ抱えていた


一つは県

一つは国


何方も

「確認」と「すり合わせ」の為の会議だ

画面の向こうで

県の担当者が言う

「基本設計 拝見しました」

「ありがとうございます」

「かなり抑えた計画ですね」

「はい 運営が先に立つようにしています」

「正直に言いますと」

担当者は 言葉を選ぶ

「この規模であれば

採択後の大きな修正は求めない方向です」

それは

遠回しな評価だった

「ただ」

次のスライドが映る

「事業効果の書き方 少し整理しましょう」

「数値を盛る必要はありません」

「ですが 何かが変わるか は明確にした方がいい」

私は直ぐに頷いた

「人を増やす ではなく」

「止まる人が増える」

「戻る理由が一つ増える」

「その程度で 書き直します」

担当者は小さく笑った

「それで十分です」


昼前

一本だけ電話が入る

「昨日の配信 もう一度見れますか?」

「はい アーカイブ残しています」

「ありがとうございます

今回は行けなかったけど

来年は泊りに行こうかなって」

菫は

「ありがとうございます」とだけ答えた

電話を切った後

深く息を吐く

増えてへん

でも 届いている

昼休み

私は声をかけた

「反応は どうですか」

「静かです」

「それは成功ですね」

菫は笑った

「来すぎない って こういうことかもしれません」


次は国側

「最終要件として 問題ありません」

淡々とした声

「防災拠点として記載 この表現で行きましょう」

「分かりました」

「一点だけ」

「開業後の赤字想定 ちゃんと書いてますね」

「はい」

「覚悟 ありますね」

「あります」

それ以上 何も聞かれなかった

会議が終わり

画面が暗くなる


私はしばらく動かなかった

派手さは要らん

でも 逃げてもあかん

メモ帳に 短く書く

数字は正直に

期待は煽らない

続けられる理由を書く

窓の外では

夕方の光が田んぼに落ちている

役場の掲示板に小さな紙が貼られる


ホタル配信について

ご協力ありがとうございました


それを見て私は足を止める

ホタルの季節は まだ続いている

静かな反響と 静かな調整

この二つが

同時に進んでいることを

私は少しだけ誇らしく思った


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