0029帰り道
公民館の灯りが消える頃
住民たちは三々五々 外へ出て行った
夜の空気は少し湿っている
梅雨が近い匂いだった
「思ってたより こじんまりしとったな」
最初に口を開いたのは
直売に野菜を出してる農家だった
「派手なの建つ思ってた?」
隣の男性が笑う
「テレビで見る道の駅は もっと大きいやろ
「まあな」
少し沈黙
「でも」
年配の女性が言う
「掃除出来る大きさでええ」
その言葉に 何人かが頷いた
「昔な」
別の男性が続ける
「スーパー出来た時 便利になると思ったんや」
「なったやろ?」
「なった」
「でも 消えた」
笑いでもなく
溜息でもない空気が流れる
「続くかどうかやな」
誰かがぽつりと言う
「続く形にしようとしてるのは 分かった」
「山中君 正直やったな」
「うん」
「無理せん ってちゃんと言うた」
公民館の階段を降りながら 誰かが言う
「小さいのは 不安やけど」
「大きすぎるのは もっと不安や」
夜風が
草の匂いを運ぶ
「まあ」
農家の男性が帽子を被り直す
「始まらんことには 終わりもせん」
それだけ言って皆それぞれの家へ歩いていった
翌日
公民館のロビーには
説明会で使われた画面が
しばらく掲示されたままだった
放課後
村の高校生が数人 足を止める
「これ 道の駅のやつやんな」
「そうらしい」
図面を覗き込む
「思っていたより 普通の建物やな」
「普通でええやろ」
笑いながら
指で配置図をなぞる
「ここ 休憩所って書いてある」
「観光客が座るとこ?」
「地元の人もやろ」
その時
一人の女子生徒が言った
「ここで バイトとか出来るんかな」
「ありそう」
「直売とか?」
「カフェ出来たら 働きたいわ」
別の男子が 少し離れた場所を見る
「防災スペースもあるんや」
「災害の時 ここ集まるんかな」
「そうちゃう?」
図面を見つめる時間が 少し長くなる
「俺さ」
男子生徒が ぽつりと言う
「卒業したら 村出ると思う」
誰も驚かない
「でも」
「帰って来た時に
こういう場所あるのは ちょっとええな」
女子生徒が頷く
「分かる」
「何も無かったら 帰りにくいしな」
もう一人が図面を見ながら言う
「まだ 線だけやのにな」
「な」
公民館の窓から
夕方の光が差し込む
図面の白い部分が
少しだけ眩しく見えた
「出来たらどうなるんやろな」
誰かが言う
答えは出ない
それでも
誰もその場を直ぐには離れなかった
まだ形もない未来を
少しだけ 想像していた
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