第4話 炎魔法でヒロインゲット!②
俺とセリィナは森の奥に進むと、苔むした洞窟の入り口へ。
「おお、めっちゃダンジョン感! セリィナ、絶対守るから!」
「うん。ありがとう、タケル」
セリィナが微笑みながら水晶の杖を振ると、水色の光がパッと周りを照らす。
「少し狭い道もあるから気をつけてね」
その瞬間、セリィナが一歩近づいてきて、ふわっと何か……めっちゃいい香りが鼻をくすぐった!
まるで森の朝露とラベンダーが混ざった、透明で優しい香りが俺の鼻をくすぐる。
近くにいるだけで心臓がドクンって跳ねる!
くっ、セリィナのヒロインオーラ、ウブな俺にはあまりにも強すぎる……!
セリィナ、首かしげてキラキラした水色の瞳で俺を見つめる。
「ん? タケル、どうかしたの?」
彼女の何気ない全ての仕草が俺の心臓を撃ち抜く!
「あ、い、いや、なんでも! セリィナってめっちゃいい匂い……じゃなくてッ! 水色の洞窟ってめっちゃ神秘的だなって!」
「ふふ、タケルって面白いよね。ここにはね、王国が守ってる大切な宝玉があるの。今回の任務は、それを守る結界が弱まってないかのチェックだよ。さ、行こっか」
おお、結界チェックとか重要ミッションっぽい!
……でも王様のプレッシャーの割にはちょっと地味じゃね?
ぶっちゃけ点検作業だろ?
洞窟の中はひんやりした空気。
セリィナのいい香りに心を揺さぶられつつ、特に何事もなく普通に奥へ――
すると石の祭壇にキラキラ輝く青白い宝玉が!
めっちゃ神秘的!
周りにチラチラ浮かぶ光の粒子が、まるでRPGのイベントアイテム!
「ねえ、セリィナ、これ絶対レアアイテムだよね!」
「これには“月の魔力”が宿ってて、魔法を扱う国には必ず祀られているの。この宝玉のおかげで、私たちは魔法を使うことができるんだよ」
「すげえ、ガチレアじゃん! ねえねえ、触っていい?」
「うーん、結界の魔法を乱さないようにそっと、かざす程度にね? タケル、慎重に、だよ?」
セリィナ、ちょっと心配そうな顔。
俺、ワクワクしながら宝玉に手を近づける。
その瞬間、宝玉からドーンとキラキラのオーラが噴き出して――
俺の手にチロチロ燃えてた炎が……
銀色っぽくメラッと変化!?
「おお! 強化イベ、キター!」
俺、ガッツポーズ!
これ絶対、主人公覚醒イベント!
すると目の前に念願のステータス画面が一瞬だけチラッと出現!
【名前】竹仲タケル
【職業】勇者見習い
【スキル】炎魔法Lv.2→ シル……
なんか文字が浮かんだ……
気がしたけど、一秒でパッと消滅!
「はや!? ちょ、もう一回出してよ! 見えねえって!」
俺、空中に手を振るも何も起こらず。
セリィナ、クスクス笑ってる。
「ねえ、タケル、なに叫んでるの? 宝玉のオーラ、すごかったね!」
「いや、セリィナ、ステータス画面見なかった!? 一瞬すぎて何も読めなかったんだけど!」
「ふふ、よく分からないけど、かっこよくなってたよ。タケルの炎」
セリィナのキラキラ輝く笑顔。
かっこよく……めっちゃ好感度アップ!
よし、この“銀炎”で無双して、セリィナのハートを完全攻略だ!
――俺たちは無事点検を終え、洞窟を出る。
するといきなりでっかいドラゴン登場!
赤い鱗、ぶっとい角、めっちゃ強そう!
「うお!? でっけぇ!」
――ほら、やっぱ出たじゃん!
森でモンスター出ない異世界なんて無いんだから!
……言っててもしょうがない。
俺の覚醒した炎魔法の出番だ!
「セリィナ、ここは俺に!」
「え、待って、タケル……! 魔王軍のドラゴンよ!?」
セリィナ、ちょっとビビってる?
だが任せておけ! セリィナは俺が守る!
――炎魔法フルパワー!
「ファイアーフレイム!!」
手からドーンと銀色ファイアボール!
ドラゴン、モロに直撃!
バチバチ燃えて……黒焦げに!
お、おお……これが銀炎の威力……! 俺、無敵!
『……なぜ……こんなことを……』
――ドラゴン、喋った!?
黒焦げでヨロヨロしながら、なんか悲しそうな目!
セリィナ、慌てて水魔法で消火。
「タケル、なんで攻撃したの!? ねぇ!」
「え、だって魔王軍だろ? ドラゴン=敵じゃん!」
セリィナ、涙目でドン引き。
「魔王軍と和平結んでるの! 予習してたのなら知ってたでしょ!?」
は!? いや知らねえよ!?
『ゴフッ……我々……不戦の誓いを……』
ドラゴン、咳き込みながら気絶。
セリィナ、ドラゴンを必死で治癒。
目ウルウルで俺をガン見。
「タケル……やっちゃったね……」
えぇ……俺、なんかやっちゃいました?
――セレンディア王城に緊急召喚。
ゼラ王、甲冑姿で玉座に座り、頬をこわばらせる。
背後の戦斧が松明に照らされて不気味に光る。
セリィナは俯き、肩を震わせてる。
超絶重い雰囲気! 殺気に質量感じる!
「タケル……貴様、魔王軍のドラゴンを攻撃したな」
「だ、だって、いきなりドラゴン出たら普通……えっ!?」
セリィナ、目をウルウルさせて俯いてる。
「タケルが……あんな野蛮なことするなんて……」
ゼラ王、目を閉じ、深く息を吐く。
声に怒りと悲しみが混じる。
「我が国はかねてより魔王軍と和平を結び、以来三十年間この斧に不戦の誓いを立てた。貴様は……セレンディアの礎を穢した!」
ゼラ王、やっぱガチの平和主義者!
絶対絶命――!
その時、セリィナが俺の前に出て、震える声で口を開いた。
「へ、陛下! 私が……私が事前にしっかり伝えておけば、こんなことには……! お願いです……タケルを許してあげられませんか……? 彼はただ“純粋な少年”なんです!」
セリィナ、めっちゃビビりながら俺のために抗議!
自分のせいだと感じてる!?
あんなに震えて……マジで心優しすぎる!
まあ、俺、“中身25”だけどね……。
ゼラ王、セリィナを一瞥し、目が一瞬揺れる。
「……セリィナ、そなたの優しさはセレンディアの宝。子を持たぬこのゼラに代わり、そなたを養女として『ミラノス=バルドリオン』の名を未来に託す」
「陛下……!」
セリィナ、急に姫ポジ!?
俺、置いてけぼりのモブ!
ゼラ王、世紀末の眼光で俺を見据える。
「タケルよ。魔王は今回の件、目を瞑ってくれるそうだ。幸い、和平は保たれた」
おお、魔王、めっちゃ寛大!
てことはコレ、セーフパターン……?
へ、平和主義者だもんな?
「え! じゃ、じゃあ……!」
「……だが、和平は我が国の命脈。“知らぬ”という言い訳が戦火を再燃させれば、民は血に染まる」
「つまり……?」
ゼラ王はゆっくりと玉座から立ち上がる。
背後の巨大戦斧へ手を伸ばし、柄を握ったまま、静かに語り始めた。
「――見よ、この斧を」
ゴオッ……
黒い魔力が斧に渦巻き、刃が血のような赤に染まる。
「四十年前、魔王は暴走し、世界を焼き尽くさんとした。我は十年にわたり刃を交え、幾度も死を覚悟した」
ゼラ王は静かに目を閉じた。
俺はビビって白目。
「だが戦いの果て、魔王は正気を取り戻し、自ら膝を折った。我々に頭を下げたのだ」
斧の刃に、かすかに光る誓いの紋様が浮かぶ。
「我は刃を収め、この斧に“もう血を流さぬ”と刻んだ」
ゼラ王は斧を肩に担ぎ、悲しげに俺を見据える。
「魔法は“平和の象徴”。それを穢した罪は、死をもって償わせねばならぬ。我が斧は、誓いを守るための最後の手段。セレンディアの“平和の証”」
――へ? 今、「死」って言った?
「処刑だ」
――やっぱり!
「は!? いやいや、待って待って!」
ゼラ王、なんか悲しそうな顔で「平和」連呼してるけど殺意マックス!
「うぬを憎んではおらん。その罪を恨むのだ。我は平和のために大勢の命を奪った。セレンディアの覇道は全て我が引き受ける。それが王の務めだ――」
な、なんかカッケェ!
……ってそうじゃねえ!
ローブ着た衛兵が魔法陣を展開。
光の槍みたいなのが飛んできて――
「おい、マジか! 平和主義者なのに処刑ってエグすぎぃ!」
セリィナ、ショックで口を押さえて目を覆う。
「タケル……!」
小さな叫び声が漏れる。
マジでいい子! 俺、こんないい子を悲しませちまったのか……!
ゼラ王も強面に涙が光る。
いや、どういう感情だよ! 泣きてえのはこっちだよ!
――俺は死んだ。
魔法の光に貫かれて終了。
魔法処刑って……オシャレだけどまあまあ痛え!
「魔法は平和の象徴」って言うなら斧使えよ!
あ、斧も「平和の証」か……。
って、どっちもやだよ!
ゼラ王、平和への執念が暴君レベル!
でも、セリィナの涙はマジで心残りだ……!
――白い空間。
ミオが腕組みで待ってる。呆れ顔レベルアップ。
「タケル、3回目の死。魔法処刑は初ね」
転生空間のスクリーンに俺の処刑シーンがリプレイで映し出される。
俺、光魔法に貫かれて星屑になって消滅。
うわぁ……めっちゃ神秘的。
「ちょ、ミオ! 平和ガチ勢の王がドラゴン攻撃でキレてきた! 誰も和平のこと教えてくれなかったぞ!」
「不運だとは思うけど、セリィナは攻撃してって言ったの……? 勝手に突っ走っただけなんじゃない?」
「うぅ、確かに……俺、良かれと思って勢いで攻撃しちまったかも」
――セリィナ、マジでごめん。
今回言葉は通じたけど、状況確認ミスったな。
あの時「予習済み」ってイキらず、セリィナの話、最後まで聞いとけば良かったな。
するとミオは珍しく優しい声で言った。
「でもね、今回は喋り方が全然違った。素直で、自然で……ちゃんと相手の目を見て話せてた。……頑張ったわね」
「マジで!? ミオが褒めてくれた!?」
思わずガッツポーズ。顔がニヤけちゃうのを止められない。
ミオも小さく頷いて、激レア微笑み。
「まあ、少しはしゃぎすぎだったけどね。セリィナの印象も悪くなかったと思うわ」
やった! 壺に水が一滴入ったぞ!
よし、いいぞ。この調子でコツコツ頑張っていけば……!
俺、両手を握りしめて叫んだ。
「ハーレム王も夢じゃねええええ!!!」
ミオの表情が、ピタリと凍った。
超真顔。
感情ゼロ。
氷点下100度。
「……残り7回。次は情報収集、状況確認、忘れずに。以上」
ぽん、と軽く手を叩く。
「うおっ、急に冷たっ!? なんか怒っちゃった!?」
光が爆発。
俺はミオの氷の真顔に送り出される。
で、でも褒めてくれたからセーフ!
次こそ、情報集めて、セリィナみたいな優しい子と仲良くなるぞ!
言葉通じる平和な世界頼む!
――光の中、俺の絶叫だけが虚しく響いて消えていった。




