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第2話 ギルドで冒険者デビュー!

 ――光に包まれて、意識が次の異世界へ。



 目を開けると、石畳の街。


 馬車がガタゴト、ガタイのいい冒険者っぽい連中が闊歩してる。


 目の前の建物を見上げると、看板に謎の文字と剣と盾の絵――


 たぶんギルドだな。


 ギルドで冒険者デビューからの成り上がり、そしてハーレムは基本中の基本。

 

 おそらく多くの主人公は様々な事情はあれど、突き詰めていけばハーレムのために冒険者を目指してると言っても過言ではないだろう。


 今回もフリーター時代に習得した知識をフル活用だ!



 一応確認。


「ステータスオープン!」


 ――叫んでみたものの、ステータス画面……

 やっぱりない。


 だが主人公にそんなものは不要。

 別に悔しくない。


 どちらかと言えば叫んだ姿を町民にチラ見された方がキツイ。


 腰には……

 

 え、剣がない!?

 ガチャ外れた!?


 ま、まあ……ギルドでレンタル、できるよね?


 正直前回の斬首、結構トラウマ。

 ミオにタメ口が原因って言われたし、今回は慎重にいくか。



 一度深呼吸して、

 さっそくギルドホールに突撃――!



 受付には金髪ポニテ美少女――アンナ。


 青灰色の大きな目、そばかすが少しある白い肌。白のフリルブラウスに革ベスト、膝丈スカート。メインヒロインのポテンシャルあり。


 よし、行こう。

 タメ口は控えめに……。


「えっと、お、おね、受付さん。冒険者になりたいんで、登録お願いします!」


 アンナ、キョトンとした顔。


「ティ、クウェ・ファラス・アクイ?」


 ん? 何その言葉?

 カタカナっぽいけど、英語でも日本語でもない。

 マジ分からん。


 でも、基本ギルドって……

 ノリでいけるよな?

 

 なんかそんなイメージだった気がする。


「俺は竹仲タケル! 英雄目指すんで、ギルドに参加したいです!」


 ――よし、頑張ったぞ、俺!


 でもアンナ、ちょっと怪訝な顔。


「タケル? ドン・ビエナス?(どこから来たの?)」


 うーん、またなんか聞かれたけど、さっぱり!


 ソムナン君が留学したてのときもこんな気持ちだったのか?

 

 ミオに「主人公の魅力は言葉を超える!」ってイキったばっかなのに、ソッコー壁じゃねえか!


 でもここは冷静に。

 

 ――思考を巡らせろ、俺。


 何となく「ドウシマス?」って聞こえた気がする。


 たしかギルドっていえば履歴書的な登録用紙が必要なんだよな……?

 

 ――あっ!

 もしかして、どんな感じに書くか聞かれてるのか!

 

 んー、せっかくならSSランクパーティに引き抜いてもらいたいし……。

 とはいえフリーターの経歴じゃサマにならないし……。


「えと、じゃあ……“インパクト”ある感じで! 適度に盛ってくれれば目立つかなぁって」


「“インペリオ”!?(帝国!?)」

 

 え、何か驚いてる?


 こ、ここはユーモアで和ませるか?

 ついでに彼女の好感度も上げておこう。


 ――居酒屋バイト時代。

 先輩が、いつも違う女の子を連れて歩いてたのを思い出す。


 正直、チャラくて苦手な人だったけど、背に腹は変えられない。

 今こそ、その力を借りる時だ。

 

 いざ、勝負……!



「チャラ男モード」憑依!



 俺、カウンターに肘ついてニヤリ。


「プ、プロフ用の証明写真持ってないんだけど、似顔絵でも、いいかなぁ? き、君が描いちゃってよ。イ、イケメンにね、な、なんて! フヒヒッ」


 アンナ、引き気味で目を細めて真顔。


「エストラニャ(変なやつ)……」


 おっと、なんか警戒されてる!?

 アンナが奥にチラッと目配せ。


「オイガ、インヴェスティガ・ウン・ツェラ、ポルファ?(ねえ、ちょっと彼のこと調べてくれない?)」


 お! これはもしや、仲間紹介してくれる流れ?

 よーし、ミオの忠告通り慎重にいかなきゃ!


 すると奥からギルドメンバーがゾロゾロ登場。



 むさ苦しいドワーフ、

 杖持った爺さん魔術師、

 そんで……

 うおおお! 金髪ロングの美少女エルフ!

 

 最強の王道ファンタジーパーティ!


 アンナが何か説明して、俺はギルドメンバーのテーブルに案内される。

 

 パーティメンバーその1。

 ドワーフの「グラド」――髭モサモサ、暑苦しい。


 パーティメンバーその2。

 魔術師の「ゾルン」――白髪ボサボサ、顔シワシワ。


 パーティメンバーその3。

 エルフの「リリア」――その名はまるで星々の囁きが形を成したかのような響き。その瞳は深遠なエメラルドに銀河の星屑を溶かし込んだ宝石。長い金色の髪は陽光を捕らえては虹色の輝きを放つ。尖ったエルフ耳は優美な曲線で心を惑わす。長い睫毛は、夜蝶の羽がそっと閉じたかのように優雅で、瞬きのたびに時間の流れを忘れさせる。身を包む半透明の緑ローブは、彼女の動きに合わせて水面のように揺れ、神秘のヴェールを纏う。そして、しなやかな長い脚――そこには、透明な花の装飾が咲き乱れるブーツが、まるで春の野に舞う花弁を閉じ込めたように、歩むたびに光を散らす。彼女は、まるでこの世界の美を一身に集め、神々が嫉妬するほどの完璧さでそこに佇む。


 その美しさを一言で表すとすれば、


 そう――

 

【エルフちゃん、マジ最高】

 

 彼女こそ、俺の冒険を彩る女神だ!


「お、俺、竹仲タケル! み、皆さん、一緒に冒険しましょう!」


 グラド、激太眉毛をひそめる。


「アンナ、クウェ・エス・ウン・ツェラ?(この男は何だ?)」


 ゾルン、杖をコツコツしながら怪しげに。


「スビト・ビエナ・イ・ファラス・ムチョ。ムイ・ソスピカーダ(突然現れてペラペラと、怪しいのお)……」


 リリア、ちょっと怯えた目で俺を見る。


「エス……セグーラ?(だ、大丈夫なの?)」


 な、なんか不穏な空気?

 やっぱ言葉通じないのキツい!


 慎重に行かないと……。


 でも、エルフちゃん可愛すぎる……。

 くっ、ちょっぴりアピールしときたい!


 意外と神秘的なタイプに限って軽薄系「チャラ男モード」が有効だったりするんだよな……?


 知らんけど。


「リ、リリア、すごい綺麗だね! お、俺、魔王倒す予定なんで、一緒にどう、かな?」


 俺、キメ顔ウインク。

 頬がツりそう。


 リリア、ビクッとしてグラドにくっつく。


「グラド、プロテガメ(守って)……」


 え!? 君たち、そういう関係!?

 リリアのタイプ、チャラ男の対極!?


 グラド、リリアを抱き寄せバチくそピキる。


「カブラー! クウェ・インテンタス・ファラル!?(キサマぁ! 何のつもりだぁ!?)」


「え!? ちょ、ご、誤解でしょ?  俺、仲良くしたかっただけって!」


 ゾルン、杖を振り上げる。


「ウン・ツェラ、エス・ウン・エスピラ! パーラス・ソスピカーダス!(こやつ、スパイか! 怪しい喋り方じゃぞ!)」


 グラド、床に斧をガチン。


「エスピラ!?(スパイだとぉ!?)」


 ヒッ! めっちゃ怖え!

 

 ――待て、なんかグラドが“エスピラ”って吠えたぞ?


 エスピラ……?


 あ、もしかしてこの世界の「勇者」とか「英雄」って意味!?

 

 よしよし、今回の俺、冴えてるぞ。


「そ、そうそう、俺エスピラっす、エスピラ! 魔王ぶっ倒すエスピラ!」


 ゾルン、目をカッと見開いて杖を振り上げる。


「ヤ・サビオ! ウン・ツェラ、エス・ウン・エスピラ!(やはり! スパイじゃったか!)」


 グラド、斧を振りかざす。


「エネミガ・デル・レルノ!?(王国の敵か!?)」


「レシエンテ、アルグノス・カナリアス・エスタン・ブスカンド・エル・テソロ・デル・レルノ、ラ・ジェマ・サグラーダ(最近、王国の至宝、聖なる宝玉を狙う輩がいるそうじゃ)……」


「ノー・プエデ・セル! シン・エサ・ジェマ、ラ・マヒア・デサパレセラ!(そんな! あれがなければ魔法が使えなくなるわ!)」


「いやいや、みんな待って! 謎言語でしゃべりすぎ! 状況がつかめん!」


 気づいたら衛兵がドカドカ入ってくる。


「エスピラ! カプターレ!!(スパイを捕えろー!!)」


「待ってよ! 俺、仲間だよ! ねえ、リリア、助けてくれよー!」


 リリア、グラドにしがみついたまま目を逸らす。


「ノ・メ・トカス(触らないで)……」


 グラド、野太く吠える。


「ムエラ! エスピラ・デル・ザルド!(くたばれ! ザルドのスパイめ!)」


 衛兵の剣が振り下ろされる。


「おい、マジか! 言葉通じない世界とか反則!」



 ――二連続斬首はマジで無理!


 竹仲タケル、同じ過ちは繰り返さない!

 前世の俺とは違うぜ!


 俺、咄嗟に体をひねり、衛兵の剣をスレスレで回避!


 カウンターの隙をゴロリと転がり、ギルドホールの扉をブチ開ける!


 

 バーン!

 

 石畳の街へ飛び出し、ギルドの方をチラッと振り返る。

 

「へへ、無事逃げき――」


 ヒヒィィィンッ!


 前を向いた瞬間――

 

 目の前に樽いっぱい積んだ馬車!

 

「え、ちょ――!?」




 ドゴーン!

 


 

 ――俺は死んだ。


 

 せっかく斬首回避したのに馬車に轢かれた!

 

 マジかよ!

 街中で出すスピードじゃねえだろ!

 異世界来てまで交通事故死とか最悪!


 俺、ギルドで仲間になる流れじゃなかったのか!?

 登録までたどり着けなかったぞ!


 俺、ただ冒険したかっただけなのに!


 


 ――ふわっと体が浮く。


 目を開けると真っ白な転生空間。


 銀髪、紫の瞳、クールなローブ姿の超絶美少女、案内人のミオが腕組みで待ってる。


「ああ、相変わらず可愛いなぁ……」


 ミオ、俺の呟きを聞いて眉をピクッと動かし、ジト目全開。


「タケル、前方不注意、事故死。キミ……学習しないの?」


「いや、なんで言葉通じないの!? 絶対俺のこと殺しにきてるよね!? 可愛いエルフちゃん、ドワーフに取られたし!」


 ミオ、深いため息。銀髪がサラリと揺れる。

 

「……だから言ったでしょ、転生はランダム。私にも予見不可能なの」


「言葉もランダム!? なに、あの謎言語!」

 

「あの言葉は『エラディス語』。多種族が集まるモリスゴール王国の言語よ。キミは帝国のスパイだと思われたみたいね」


「エラディス語!? 知らねえ!」


「キミ……モリスゴールの関所の時から何も変わってないのね……」

 

「ん、関所? 何の話?」

 

 ミオ、紫の瞳を一瞬泳がせて、慌てたように首を振る。

 

「――っ! ご、ごめんなさい。他の転生者の話だったわ」

 

「お、おう? まあいいや。なんで俺、スパイ扱い!? めっちゃ敬語、頑張ったのに!」


 ミオ、指をパチンと鳴らす。

 空中にスクリーン出現。

 俺のギルドでの受付シーンがリプレイ。


 噛み噛みナンパ口調の俺が受付嬢にドン引きされるシーンがスロー再生。

 目を覆いたくなるような惨状に俺もドン引き。


「見て。カウンターに肘ついて謎言語ペラペラ喋って、エルフに絡んだ挙句に『スパイ』連呼。キミ、普通に怪しいから」

 

「『エスピラ』って『スパイ』かよ!」


「それに……何なの? あの喋り方」


「えと……『チャラ男モード』のこと?」


「あれ、ほんと最悪。無理してるのがバレバレだし、ハッキリ言って気持ち悪い。言葉の壁以前の問題よ」


「ちょ、辛辣すぎ! 俺だってわからないなりに頑張ったんだからちょっとは褒めてよ!」


 ミオ、紫の瞳を細めて一瞬黙る。


「……そうね。何事も挑戦することは悪いことじゃない」


 おおっ!? 論破しちゃった!?


「でもキミは、そういう軽薄な『主人公』に憧れてるの? 前回の尊大な口調とは随分違うように感じたけど」


「うぐっ……」


 ……確かに、チャラ先輩見て「すげー!」と思ったことはあるけど、決して理想像じゃない。

 俺が憧れるのは「レオン=アークブレイド」だ。


 だけど、それもダメだったし……。


 どうすりゃいいんだよ、一体……。


 ミオ、俺の沈黙を見て、静かに続ける。

 

「本当のキミはもっと自然に人と話せるはずでしょ?」


 俺、ちょっとドキッとして目を逸らす。


「う……中学までは、確かに女子とも普通に話してた……。けど、いつの間にか、なんか、気まずくなって。女子と喋るより、アニメやゲームの方が楽でさ……気づいたら、話しかけ方忘れちゃったんだ……」


 ミオ、ジト目を少し緩める。


「じゃあ今みたいに、素直に、ありのままに振る舞えばいいじゃない。無理して変に大きく見せなくても、キミなら仲間くらい作れるわよ。……多分ね」


「ありのまま……って言われても、言葉通じないんじゃどうしようもないよ……」


「それなら尚更、慎重にいくべきだったわね」


「くっ……昔、専門学校の先輩に海外旅行はノリと勢いでいけって言われたことあるんだけど、異世界では通用しないのか……」


 ミオ、腕組みのまま声を低く忠告モード。

 

「転生は旅行じゃなくて、人生そのもの。前回も今回も、変な欲を出さなきゃ死ななかった。キミのいうハーレムだって夢じゃ……それは無理か」

 

「む、無理って言うな! 絶対叶えてみせる! 俺のこと少しは信じてよ!」


 今回ミオ、めっちゃ言うじゃん!


 でも学習した!

 次は言葉確認してから喋ろう!

 ソムナン君が言ってた「俺の壺」にどんどん水溜めてくぞ!


「ミオ、次こそ上手くやる! でも、できたら言葉通じる世界で頼む!」


 ミオ、微妙に微笑む。


「ランダムって言ってるでしょ。……でも、死なないでね? 残り8回、無駄遣いしないで。ちょっと心配」


 お、ミオ、優しい? デレ?


「OK! 今度は絶対ヘマしないから!」


 光に包まれ、俺の意識は次の異世界へ。



 次こそ、言葉通じる世界でエルフちゃんゲットだ!

 チャラ男モードも封印だ!

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