第27話 決戦② 〜百年越しの終焉〜
――魔宮の闇の祭壇。
世界滅亡の切り札である暗黒竜を失い、激昂したヴェルザドールの闇が戦場を血の色に染める!
魔宮の天井が崩れ、無数の闇の触手が地面から這い出し、連合軍を襲う。
「貴様らの希望、余の闇で永遠に葬る!」
ヴェルザドールが宝玉を振り、哄笑を轟かせる。
「使えぬ手駒どもよ、我が不滅の王座を支える礎として、その無価値な命を捧げる栄誉を与えてやる!」
突然、紅鱗蛇刃の剣士たちが断末魔の悲鳴を上げる。
「があああッ! か、体が……燃える……!」
彼らの体には、紅鱗の呪紋が刺青のように刻まれている。
ヴェルザドールが宝玉から黒い霧を放ち、剣士たちの体が膨張。
鱗が全身を覆い、牙が突き出し、目が血のように赤く輝く!
「グ……ウォォオオオッ――!」
獣のような咆哮を上げ、化け物たちが、連合軍に襲いかかる!
「おい、ヴェルザドール! こいつら仲間じゃねえのか!?」
俺、拳を握り締め、歯を食いしばって叫ぶ。
「自分の部下を化け物に変えるとか、どんだけ腐ってんだ! 人の命を弄んで楽しいかよ!」
ヴェルザドール、冷笑を浮かべ、嘲る。
「笑止。無能な塵どもを使い途のある傀儡に作り替えただけだ。こやつらも余に仕えられる悦びに浴しておろう!」
セーラが氷塊を放ち、化け物と化した蛇刃の剣士を凍らせるが、涙目で叫ぶ。
「ま、まだ意識が残ってる! 苦しみながら……こんな姿に……!」
クロエが闇魔法を放ちながら、唇を震わせる。
「こんなクズが……私の先祖と同門だったなんて……虫酸が走る……!」
ウビが槍を振り上げ、怒りを込めて叫ぶ。
「ヴェルザドール! 戦士の尊厳を踏みにじる貴様を、カリムシャールの名にかけて討つ!」
ルナティア族の族長ミュラードも静かな怒りで呟く。
「月光の魔力を恐れ、我が一族を奴隷の鎖で縛ったお前が、今度は自らの配下の魂すら穢すのか……!」
化け物たちの咆哮が戦場に響く。
連合軍が後退を余儀なくされる。
「ヴェルザドールの宝玉はまだ力を溜め込んでる……! 私が……月の力を呼び覚ますわ!」
ミオが一歩踏み出す。
瑠璃色の瞳を燃えるように光らせ、両手を天に掲げる。
「ルナティアの月よ! 歴史が紡いだ絆の力で、闇を貫け!」
ミオは歯を食いしばって光を呼び覚ます。
青白い月光が戦場を包み、ミオを中心に巨大な光の渦が巻き起こる。
三日月型の光の刃が闇の触手と化け物たちを切り裂き、光の粒子に変える!
さらにルナティア族が祈りを重ねる。
ミオの月魔法が増幅し、混血の限界を超える力を与える。
宝玉がオーロラのように輝き、戦場を聖なる光で満たす!
ヴェルザドール、顔を歪めて叫ぶ。
「その程度の微光で余の無窮の闇を打ち消せるとでも!? ルナティアの薄汚れた血め!」
ミオ、汗を滲ませながらも鋭く言い返す。
「薄汚れているのはあなたの心よ、ヴェルザドール……! その非道な行為、私は絶対に許さない!」
「愚かな、『魂噬の劫火』で灼かれて尚も歯向かうか! 混血の偽りの光など、余の至高なる闇の前では無意味!」
「無意味なんかじゃない! タケルの魂、みんなの絆が、私に力をくれる! あなたが踏みにじってきた全てを、必ず取り戻す!」
元蛇刃の異形の一体が、苦しげに呻きながらミオに手を伸ばす。
「タス……ケテ……!」
「くっ! ミオに手を出すんじゃねえ!」
俺、咄嗟にミオを庇う。
ミオの目が涙で揺れ、宝玉を握り締める。
「ごめんなさい……でも、あなた達の魂だけでも救うわ……!」
光の刃が蛇刃の剣士を包み、化け物の姿が浄化され、静かに光の粒子となって天に昇る。
それを見たヴェルザドールが冷たく嘲笑う。
「フンッ、哀れな祈りで彼奴らの魂を救ったつもりか?」
その声は、氷より冷たく、毒より粘つく。
「ルナティアの血など、元来より穢れの塊。人間にも獣にもなりきれぬ半端な欠陥種族。貴様はさらにその雑種!」
ミオの肩がビクッと震える。
「月の女神の名すら穢す忌子に、余の闇の前に跪く以外の価値などない!」
顔が一瞬曇り、瑠璃色の瞳が揺れる。
「何ィ……!?」
俺の血が沸騰する。
「てめえ、今の言葉、一生後悔させてやる……!」
俺、剣を構え、過去最高にブチ切れて叫ぶ。
「俺を百年待ち続け、何度も命を繋いでくれたミオの気高い魂を……! 歪んだストーカー野郎がディスってんじゃねえ!!」
ヴェルザドール、キモい笑みを受かべ吐き捨てる。
「何をほざこうと、下等な虫のさえずりなど塵以下! 神を超え、全ての頂点に君臨する余には微塵も響かぬ!」
「タケル……大丈夫。私は平気よ」
ミオは一瞬の傷を振り払い、毅然と立ち上がる。
鋭い瞳でヴェルザドールを冷ややかに見据える。
「……四百年もの時を生き、たった一つの愛すら見つけられなかったあなたが『全て』を語るなんて、滑稽を通り越して惨めね」
ミオ、軽く微笑み、言葉の刃をさらに鋭く突き刺す。
「心の貧しさを闇で塗り潰し、孤独を覇業と偽る哀れな亡魂が『神を超えた』? どういう冗談かしら? さあ、その無様な傲慢、私たちの絆の前で貫いてみなさい!」
ヴェルザドール、顔を真っ赤を通り越して紫色に染め、血管が浮き上がる勢いで絶叫。
「このッ、小娘がぁぁぁァァァ! 余の偉大なる偉業を……! 余の絶対なる存在を嘲るかァ!」
いやお前、「微塵も響かぬ!」って何!?
クリティカルヒットじゃねえか!
ミオの本領発揮、最強すぎる!
俺、ミオの肩にそっと手を置き、ウビから受け取った勇者の剣を握り締める。
「ミオ、最高。ヴェルザドール……てめえの腐った闇、俺たちの絆で叩き潰す!」
「ほざけ! 絆などと喚く浅はかな魂、余の魔力で永遠に塵と化せ!」
「ミオ、ルナティアの力、貸してくれ!」
「ええ、全部キミに預けるわ! 行きましょう、タケル!」
ミオが俺の手を握り、宝玉を掲げる。
宝玉とミオの尻尾が青白く輝き、剣に聖なる光が流れ込む。
シルバーフレイムが金色に燃え上がる。
ステータス画面が点灯!
【スキル】
『ゴールデンシルバーフレイム』
攻撃力+999%
主人公補正、ガチでチート全開!
「ヴェルザドール、確かに『カタリーナ姫』は激カワだった――」
「カタリーナ……!? 貴様が何を知る!!」
「――俺もフラれるどころか“秒で斬首”されたけど、恨むなんてダサいマネはしない。仲間と絆で運命を切り開いた。それが俺とお前の違いだ!」
「貴様ごときが余と同じ目線で語るな! 余の崇高さを見抜けなかった愚かな女の名で動揺を誘ったつもりか!? その低俗な知能で!」
ヴェルザドール、めっちゃ動揺しながら激昂。
「お前がルナティア族を苦しめた罪、ミオを侮辱した罪を償え!」
「傲慢にも余を裁くとは……万死に値する! 皆殺しだ!」
ヴェルザドールが巨大な黒い魔法陣を展開。
闇の波動が津波の如く押し寄せる。
だが、ミオが瞳を燃やし、宝玉を掲げる。
「ルナティアの月よ、絆の光で仲間を護って!」
ミオの魔法が戦場に光のドームを形成。
闇の波動を弾き返し、連合軍を守る!
ミオの決意と光が戦場を鼓舞!
――でも……汗だくで震えてる……!
やっぱキツいんだ……!
急がねえと!
「ナイスだ、ミオ! 真のヒロインは伊達じゃねえ! ――メル、頼む!」
「うん! タケル、任せて!」
俺はメルの転移魔法で一瞬にしてヴェルザドールの背後にワープ!
「ヴェルザドーールッ!!」
俺の叫びにヴェルザドールが振り返り、宝玉を握りしめながら口を開く。
「貴様! 穢れた血に守られた哀れな虫が侮りおって!」
闇のオーラが爆発。
ヴェルザドールの体が筋肉質に膨れ上がる。
漆黒のローブが弾け飛び、禍々しい闇の鎧が全身を覆い、巨大な大剣がその手に具現化。
「フハハ、貴様もあの小娘を灼き尽くした我が絶技を味わうがよい! 」
黒い霧が戦場を呑み込み、圧倒的な魔力が渦巻く!
「――魂噬の劫火・極!」
黒い炎が空間を歪ませながら俺に襲いかかる。
「タケル!」
ミオが叫び、セーラたちが息をのむ。
――バシュンッ!
金炎の一振りが「魂噬の劫火」を直撃。
黒い炎を光の粒子に変える。
ヴェルザドールが目を剥く。
「ば、馬鹿な!? 余の究極呪術が……!? 貴様のその力は何だ……!」
「俺の力じゃねえ! この炎はな……どんな苦しみの前でも、どんな絶望の中でも、決して闇に飲まれなかったミオの熱い魂が込められてんだ!」
俺は剣をヴェルザドールに向けて一喝!
「簡単に闇堕ちしたてめえのショボい『究極』なんざ、ミオの光の前じゃゴミ以下の以下の以下だ、バーカ!」
ミオが涙を拭い、微笑む。
「タケル……ありがとう……」
ヴェルザドールが激昂。
トチ狂った長演説を開始。
「戯けが! 余の暗黒魔法は完全無欠! ルナティアの薄汚れた月光など塵芥! 全てを支配し、かつて余を蔑んだ者の選択を後悔させ、貴様ら下等な愚民が這う世界を我が覇業で尽くす! 神を超越した力を全存在に刻み胸つける! ハハハ、永遠の闇で――」
「うっせえ! 長え! カリスマゼロの拗らせ野郎!」
「ぐっ、貴様……!」
「“ペラペラ喋るラスボスは弱い”――コレ定番! 覚悟しな!」
俺は勇者の剣を天に掲げる。
――その瞬間。
空に浮かぶルナティアの月が剣に力を注ぎ、九つの世界の絆が一斉に共鳴。
さらに眩い金色の炎が剣に収束!
剣が震える。
世界が震える。
俺の魂が震える。
ステータス画面がバチバチ弾ける。
【最終スキル解放】
『ゴールデンシルバーフレイム・レクイエム』
攻撃力+∞ 絆補正+∞
「――これが、俺たちの絆の力!!」
戦場の全軍が一斉に叫び、赤ドラゴンが天を切り裂く咆哮を上げる。
「タケル! 今だッ!!」
その声が重なり合い、金炎が銀河を貫く一閃となる。
「てめえの闇! 愛と絆の炎で全て焼き尽くす!!」
――ドカァァァァァァンッ!
光が戦場を貫き、闇の魔法陣を木っ端微塵に粉砕!
ヴェルザドールに直撃!
魔宮が天変地異の如く崩れ落ちる!
「ぬおおおォォォッ!!」
ヴェルザドール、塵と化しながら最後の呻き。
「おのれ……ルナティアの……月……! 余の、覇業が……!」
「終わりだ、ヴェルザドール……いや、“ヴェザル”!」
金色の炎が優しく包み込み、四百年の怨念が光の粒子となって天に昇る。
「余は……俺は……ただ……」
最後に、ヴェルザドールの声が風に乗って届く。
「カタ……リーナ……」
戦場に勝利の雄叫びが響き合い、ルナティアの月が世界を清らかに照らす。
空には無数の光が舞い、まるで星々が祝福するかのような光景が広がる。
――こうして俺たちは、因縁の戦いに終止符を打った。
そして、世界中から集まった仲間たちの絆と共に、新たな夜明けを迎えた!




