第26話 決戦① 〜因縁の激突〜
ルナティアの聖なる輝きに導かれ、かつての仲間たちの想いを胸に、俺とミオはヴェルザドールの闇が世界を呑み込むその刹那へ――。
赤い月の呪いが俺たちを塵に変え、暗黒竜が咆哮を上げる運命の瞬間を打ち砕くため、俺たちは次元の狭間を雷鳴の如く突き進む!
突然、光の回廊の果てに禍々しい赤い光が炸裂――!
血のような輝きが空間を歪ませ、闇の咆哮が響く。
「――見えた! あれだ! 俺たちが初めてヴェルザドールに挑んだ時代!」
俺の叫びに、ミオが鋭く頷く。
「今度は負けない……! 私たちの絆で、運命をねじ伏せるわ!」
「ああ、必ずケリつけてやる! 待ってろよ、ヴェルザドール!」
――月耀暦403年三の月。
魔宮、闇の祭壇――召喚の広場。
ミオを焼き尽くした「魂噬の劫火」が、祭壇の中心でゆらめきながら薄れていく。
漆黒のローブをはためかす魔皇帝ヴェルザドールが、冷酷な高笑いを轟かせる。
「グハハハハハ! 愚かな勇者よ! ルナティアの血よ! 永遠の闇に沈め!」
暗黒騎士団の重装兵が鋼鉄の鎧をガシャガシャと鳴らす。
「さあ、皆殺しよ♡」
蛇の魔女グリメラの声で、紅鱗蛇刃の剣士が血に飢えた刃を振り上げる。
帝国軍は三万を超える兵力で宮殿の周囲を埋め尽くし、その圧倒的な軍勢がセレンディア軍を押し潰す。
セレンディア軍は激しい戦闘で疲弊し、陣形が乱れながら後退を余儀なくされている。
負傷者が続出し、盾を構えた兵士たちが必死に防衛線を維持するが、帝国軍の猛攻に押され気味だ。
兵士たちは折れた槍を握り、喘ぎながら後退。
矢が空を切り裂き、盾が金属音を立ててひび割れ、負傷兵たちの喘ぎ声が戦場に響く。
赤い月光の下、ヴェルザドールの宝玉が不気味に脈動し、闇の魔力が大気を歪ませる。
セレンディア軍、無念の後退――
ヴェルザドールが宝玉を掲げ、傲慢に宣言。
「全ての希望は消えた! 古代魔法は滅び、余を阻む者なし! 今宵、世界を闇の深淵に叩き込む! 出でよ、暗黒――」
――ガシャアアアアンッ!
次元が砕け散る。
爆音とともに、俺とミオが白銀の光を纏い、戦場に降臨!
「待たせたな、ヴェルザドール! 地獄の底からカムバックだ!」
ヴェルザドール、超唖然。
「――何!? 余の呪術で地獄に叩き落としたと確信していたが……貴様ら、何者!?」
俺、拳を握り締める。
史上最高のドヤ顔で一喝。
「“主人公”だ、バカ野郎!! てめえ、俺のヒロインたちを泣かせやがって! 絶対ぶっ潰す!」
ミオ、モフキュン尻尾をピクピクさせ、鋭くツッコむ。
「タケル? ヒロインって……私だけでいいよね?」
「ミ、ミオ、もちろん! でも……みんな俺の仲間だ!」
「下らぬ戯言を。何度這い戻ろうと無駄だ!」
ヴェルザドールが顔を歪め、嘲笑を響かせる。
赤い月の光を宝玉に注ぎ、呪いを解き放つ!
「ぐおっ!?」
体が鉛のように重い……!
ニャルの首輪と同じ感覚!
ミオが青ざめて叫ぶ。
「タ、タケル! 何か対策はあるの!?」
俺、歯を食いしばってニヤリ。
「……考えてない!」
ミオの目が見開く。
「うそ! そんな!」
グリメラが蛇のような笑いを響かせ、赤い唇を歪めて嘲る。
「あらあら、二度もやられに戻るなんてバカみたい♡ 今度はじっくり八つ裂きよ♡」
周囲の闇が迫る中、胸の奥で熱いものが込み上げる。
「ミオ、大丈夫だ……。感じる――」
ミオが息を飲む。
「え……?」
俺の目が、銀色の炎を宿して輝く。
「正直……俺も、何が起こるかは分かんねえ。でも、必ず起こる。奇跡が……!」
ミオの胸元の宝玉が眩い光を放つ。
まるで月の女神の息吹のように脈動する。
「……変わるんだ。歴史が……!!」
――キィンッ!
ミオが驚きの声を上げる。
「こ、この光……! タケル、宝玉が!」
スキル、『主人公補正』Lv99――発動!!
「おお、これだ! ゼノスが言ってた『世界の理を超え、定められた物語を書き換える力』!」
俺の主人公補正とルナティアの月の光が、
今、まさに共鳴した。
――瞬間、呪いの重圧が霧のように消滅!
体がめっちゃ軽くなる!
「よっしゃ、呪い消えた! ラッキー!」
ヴェルザドール、顔面蒼白で歯ぎしり。
「何だと……何が起こった……!」
すると、神秘的な声が戦場に響く。
『――月の女神、イオネラよ。我らに力を』
赤い月光が青白い輝きに変わり始める。
ヴェルザドールが動揺し、咆哮。
「赤き月が……! 余が宝玉を握るというのに……!?」
ミオが震える両手で口を塞ぐ。
「タケル……あれは……!」
俺たちの背後から百人余りの人影――
ケモ耳のルナティア族が荘厳に登場!
族長が一歩踏み出し、月光を背に名乗りを上げる。
「我はルナティア族族長、ミュラード・ノクタリス――」
ヴェルザドールが目を剥き、憤怒と驚愕の声を上げる。
「あり得ぬ……純血のルナティア族は仔獣一匹を除き、全て滅した……! なぜだ!」
族長ミュラードが静かな威厳を放ち、声を轟かせる。
「三百年前、『勇者ニャル』が奴隷の鎖を断ち切り、我らの先祖を解放した。彼女が晩年残した預言に従い参った! 今宵、ルナティアの月が再び輝く!」
「――ニャル……!」
声が震えた。
俺が首輪ぶっ壊して死んだ後、
俺の分まで生きて、俺の分まで戦って、
俺の分まで、みんなを救ってくれたんだな。
「すげえよ、ニャル……!」
涙が頬を伝う。
ミオが、俺の袖をそっと引いて、小さく微笑む。
「……彼女はキミのことを、ずっと待ってたみたいね」
俺は拳を握りしめ、月に向かって叫ぶ。
「見ててくれ、ニャル! 今度は俺たちが、その預言を叶える番だ!!」
ルナティア族が一斉に手を掲げ、月の女神の祈りを唱える。
「ルナティアの月よ、勇者を守り、闇を祓え!」
ヴェルザドール、ブチ切れ絶叫!
「おのれ、下等な獣ども! 月の力が余を愚弄するか! 全軍、殲滅せよ! 血の海に沈め、骨すら残すな!」
暗黒魔術師たちが黒い炎と雷を放つが、月魔法の光の結界が全てを弾き返す!
――その瞬間。
戦場中央にキラッキラの魔法陣が炸裂!
魔法馬が星屑を散らし、光と共に駆け上がる!
セレンディア王国の魔法騎士団、颯爽と降臨!
「ミラノス魔法騎士団、勇者を援護する!」
イケおじ騎士団長ガルフレッドを先頭に、統率された動きで戦場を席巻!
後方には金髪ツインテのセーラ、ポニテのオリビア、メガネのエスター、ゴスのクロエ、地味かわ癒しのリリが銀鎧に身を包み、新米騎士団員として参戦!
青春ハーレムパーティ、フルメンバー揃い踏み!
その輝き、マジで目が眩む!
セーラが青いマントを翻し、両手を掲げる。
巨大な氷塊が敵集団に隕石の如く炸裂!
その衝撃波で周囲の敵も氷漬け!
オリビアの業火の嵐、エスターの暴風の螺旋、クロエの漆黒の剣嵐も負けじと猛威を振るう!
みんな、半年で強くなりすぎ!
さらに、三聖女エルフィナの杖の継承者となったリリ含むヒーラー部隊が素早く動き、負傷兵に聖光の癒しを施す。
淡い緑の魔法が戦場に舞い、倒れていた兵士たちが次々と立ち上がり、戦意を取り戻す!
「まだ戦える……!」
「剣を握れ!」
ヴェルザドール、歯ぎしりでピキピキ。
「地に這わせたはずの虫けらが! グリメラ、貴様何をしておる! このハエどもを即刻屠れ! ……グリメラ!」
蛇刃の一人が震え声で報告。
「グ、グリメラ様は……半年前『ミラノス・アカデミア』にて氷結封印! 宝玉も奪還されました!」
「半年前だと!? ぬかせ! つい今しがたそこにいたではないか!」
あ! そういや闇の試験でセーラがバッキバキに凍らせたんだった!
「あのドSスパイ教授、今ごろ氷の棺でおやすみ中だぜ!」
「ぬぅ、使えぬ蛇め! 力を求め、余に媚びへつらった見窄らしい平民女が! 己の野心のために闇の力を欲し、忠誠を誓っておきながらこのザマか!」
「運がなかったな、ヴェルザドール! 覚悟しろ!」
「フン! 貴様こそ、素手で余に挑むつもりか!」
「え!?」
俺、ポケットを探って冷や汗オロオロ。
「げっ! ホントだ! 剣、持ってねえ!」
転生空間に置いてきちゃった!?
やばいぞ!
――フォンッ!
空間が光り、メルが転移魔法でピョコッと登場!
「タケル! ミオ! 絶対戻ってくるって信じてた! 応援、いっぱい呼んだよ!」
メル、モフキュン耳をピクピク。
ノエルのひいおばあちゃん!
その隣には金ピカの鎧を纏ったデカい異国風イケメン青年が、圧倒的な威圧感で槍を構える。
「カリムシャール国王女『リン=ソラヤ=シャハラ』の命により参上! 王国騎兵団団長『リュ・ウビ』と申す! 勇者どの、この剣を!」
――リュ・ウビ!?
あの三国志風ワールドのガキンチョ!?
めっちゃ逞しくなってる!
ウビが俺に勇者の剣を差し出す。
「これは22年前、我が故郷『涿楼村』でとある剣士に託された剣! 同じ『タケル』の名を持つ貴殿なら、使いこなせましょう!」
「お、おう! ありがとな!」
俺がケツ毒死した後、ちゃんとリンを送り届けてくれてたんだな……。
しかも金ピカ騎兵団の夢まで叶えて……。
「カリムシャール軍! 突撃せよ!」
ウビが槍を天に掲げ、戦場に雷鳴のような号令を轟かせる。
「おおおおお!!」
金ピカ鎧を纏った屈強な戦士たちが雄叫びを上げる。
「アニキの仇討ちだ! 蛇刃ども、覚悟しやがれ!」
アイツら……!
まさか、あの村のゴロツキたち!?
元ゴロツキ、カン・ウーサーらを筆頭に、カリムシャールの騎兵団が金色の旗を掲げ、突撃!
ウビが堂々たる声で宣言し、戦場を見渡す。
「我らも参戦いたす! 同盟国にも援軍を要請、すぐ到着します!」
ドドドドドド……!
地平線の彼方から土煙が舞い上がる。
無数の刃が月光にギラギラ反射する。
天地を揺るがす地響きと共に、多国籍の騎士や傭兵の大軍勢が押し寄せる。
エルフの弓兵が空を覆う矢の嵐を放ち、ドワーフの重戦士が咆哮と共に巨大な戦斧を振り回し、戦場を震撼させる!
「インペリオ・ミリタス・デストラーレ! ヴァレーラ・プロテガーレ!(帝国軍を打ち破れ! 勇者を援護しろ!)」
うっ、エラディス語……!
ギルドホールでのトラウマが……!
でも、マジ助かる!
さらに反対側からは「魔王ゼルドラス」のオーク兵や赤ドラゴンも援軍に駆けつけ帝国軍を挟撃!
オークたちの咆哮が続き、ゼルドラスの軍勢が帝国軍を蹴散らす!
赤ドラゴン、巨躯を天に掲げる。
その瞳が怒りに燃え、ヴェルザドールを睨みつける。
『貴様が宝玉を盗み、ゼルドラス様を暴走させた。あの望まぬ戦争で多く同胞や人間が血を流した。その罪――今宵償わせてやる!』
ゴオオッ!
ドラゴンの口から迸る真紅の火柱が暗黒騎士団を直撃!
ドガァァアンッ!
炎が戦場を焼き尽くし、地面を焦土に変える。
熱波が空気を歪め、敵の叫びは轟音に掻き消される。
『三聖女、ゼラ王、セリィナ王女の誓いを守り、貴様の闇、この炎で清算する!』
咆哮が戦場を震撼させ、月光すら霞む炎が帝国軍を蹂躙!
ヴェルザドール、拳を震わせ、憤怒の叫び。
「おのれ、ゼルドラスの汚らわしい火トカゲ!」
数多の戦士たちの雄叫びが戦場にこだまし、まるで世界中の国、種族が一丸となって立ち上がったかのようだ!
ルナティア族の祈りによる青白い月光が降り注ぎ、魔法騎士団が放つ魔法が交錯し、戦場は銀河の中心のような眩い光景に!
爆音、閃光、轟く叫び声――
全てが一つになり、圧倒的なスケールの戦いが繰り広げられる!
ウビが再び槍を振り上げ、叫ぶ。
「全軍、勇者タケル殿を死守せよ! 魔皇帝ヴェルザドールを討ち、世界に光を取り戻せ!」
「お前、マジでカッコいいな! ガチ英雄! 恩に着るぜ、ガキンチョ!」
呪いを封じられた帝国軍は陣形が崩壊し、混乱の極みに。
ヴェルザドールが絶叫。
「無能な手駒どもが! ならば貴様ら全員、闇に沈むがいい! 出でよ『暗黒竜』! 世界を毒と闇で覆い尽くせ!」
暗黒竜……!
アイツだけはヤバい!
俺が倒したのは未来の暗黒竜……
この時代にはまだ存在してるんだ!
「おい、バカやめろ! お前も巻き添えだぞ!」
「フハハ! 貴様ごとき凡愚に余を止める術なし! 全ての希望は余の掌で潰え、闇だけが永遠に君臨する!」
クソ!
俺がせっかく命懸けで倒したのに……また!
ゴゴゴゴゴ……!
巨大な魔法陣から禍々しい闇が溢れ、戦場の空気が凍てつく。
皆が戦慄し、身構える。
――カランカランッ!
??????
全員、ポカン。
魔法陣から転がり出たのは……
六本足の小さなトカゲの骨!?
ヴェルザドール、顔面蒼白で絶叫。
「な、何だ、この骸は!?」
六本足……?
一瞬、脳裏にゼノスの言葉が浮かんだ――
『シルバーフレイムはな、イオネラ世界の古代勇者タケルティオンが暗黒竜を“原始の世界”へと封印した魔法――お前の魂に宿る力じゃ――』
原始の世界……?
まさか!
原始時代の「キモトカゲ」!?
アレ、暗黒竜の封印体だった!?
「……ああ、多分それ、食っちまったわ……」
ヴェルザドール、頭を抱え、身を震わせて唸る。
「食った……だと!? 世界を滅ぼす暗黒竜を!? あり得ん……!」
「『キモトカゲの銀炎太古焼き』、めっちゃ美味かったぜ! “死ぬほど”な!」
ヴェルザドール、怒りに髪を逆立て、咆哮。
「黙れ、下郎! 暗黒竜などなくとも、余の魔力は無尽蔵! この魔宮を墓場に変え、貴様らを血と絶望で染め上げる!」
ヴェルザドールが両手を広げると、魔宮の天井が崩れ落ちる!
無数の闇の触手が地面から這い出し、連合軍を飲み込まんとする!
「ぐっ! なんだこの力!?」
ミオが瑠璃色の瞳を鋭く光らせ、俺の手を握る。
「タケル、ルナティアの月が私たちに力をくれる! まだ終わらないわ!」
戦場の光と闇が激しくぶつかり合う中、俺たちの絆は試される。
闇の猛威を打破し、必ずこの因縁に終止符を打つ!




