第24話 これが真の主人公の力だ!
――俺の意識が白く溶ける。
次の瞬間。
白い空間。
いつもの転生空間だ。
でも、なんか空気が柔らかい。
――バシィンッ!
「――ッ!?」
ミオの平手が飛んでくる。
ガチのやつ。
「タケル……9回目の死。暗黒竜と自爆って……バカすぎる……! 何で……!」
ミオ号泣。
怒ってるけど震えてる。
「また戻ってくるなんて! もう1回しかチャンスないのよ!? 10回目の死でキミの魂、完全消滅なの! なんで……なんで分かってくれないの!?」
ミオの涙に胸が張り裂けそうになる。
「ミオ……俺……」
目から涙がドバドバ溢れる。
「俺、全部思い出した」
膝をついて、ミオの手をギュッと握る。
「ミオとヴェルザドールに挑んだこと。ルナティア族を救おうとしたこと。ミオが俺のために命を懸けたこと……全部――」
ミオの指が、俺の手の中で震える。
「ミオ、ごめん……! 俺、ずっとバカだった! ミオの気持ち、全然気づかなかった! ハーレムだなんだって浮かれて……ミオがどれだけ苦しんでたか、考えもしなかった……!」
ミオ、目を丸くして、ポロポロ涙をこぼしながら首を振る。
「……バカ、私が選んだのよ! キミを幸せにしたかったから、転生案内人になったの! なのに、自爆なんて無茶して……! 私、またキミを救えなかった……!」
俺、号泣しながら頭を下げる。
「違う! ミオは俺をずっと導いてくれた! 絶対見捨てなかった!」
ルナティアの宝玉がポケットで熱く脈打つ。
「俺の幸せは……ミオだ! 全部、ミオにつながってたんだ!」
ミオ、顔を真っ赤にして目を逸らす。
「だから……次元が違うって言ったでしょ……! 私、キミと一緒にいられない……!」
涙がポタポタ落ちる。
「もう次が最後なのに! キミが消滅したら、私……!」
俺、立ち上がってミオの手を両手で包む。
「最後……そんなルール、“もうない”」
涙でぐしゃぐしゃだけど、なんか心が燃えてる。
「“転生空間”だろうが“次元”だろうが、俺が今から全部ぶっ壊す!」
ミオの瞳が、驚きに見開かれる。
「俺が……ミオと一緒にいる未来を掴む!」
「キミ、ほんとバカね……」
ミオが泣き笑い。
「でも、だから好きだったのかも……」
涙を拭いながら、そっと微笑む。
「ありがとう、ミオ……」
声が震える。
返しきれない感謝の想いが、喉の奥で熱を持って詰まる。
「ずっと……俺のこと、忘れずに、見守っててくれて……」
ミオの指先が、俺の手の中で小さく震えた。
「……でも、俺……これだけは、どんなに死んでも、忘れてなかった」
一歩、踏み出す。
ミオの瞳が、揺れる。
俺は全てを込めて、魂の底から絞り出すように、告げた。
「俺が――真の『主人公』だったこと!」
その時、バイト仲間のソムナン君の言葉が頭を過ぎる。
『母国のことわざ――「水の一滴一滴が壺を満たす」ってあるんです』
『毎日コツコツやってたら、いつか大きな成果になる、みたいな意味です』
『穴が空いてるんじゃなくて……タケナカさんの壺、大きすぎるのかもしれませんね』
ソムナン君、やっとわかったかも。
こういうことだったんだね。
9回分の死。
100年分の涙。
無数の笑顔と別れと約束。
ポタリ、ポタリ、ポタリ……。
俺の心の壺に水が溜まっていった。
――もう限界だ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓が鳴るたびに、壺の縁がビクッと震える。
水面が、
ゆっくり、ゆっくり、
ギリギリまで、ギリギリまで、
今、俺の中の『壺』が完全に満たされた感覚を覚える。
そして――
ザバァァァァァァァァッ!!!
水が溢れた。
――瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
ドンッ!って、心臓が爆発したみたいに熱い!
ポケットの宝玉の光が俺を包むと……なんか体が軽い!
俺の姿……
銀の目がキラッとして、炎のような真っ赤な髪がサラッと長め!
「フリーター・竹仲タケル」から「レオン=アークブレイド」……
いや、百年前の「勇者タケル」、初転生時の姿復活!
視界がチカチカ光って、ステータス画面がバチーンと目の前に浮かぶ。
【名前】竹仲タケル
【職業】真・勇者
【ステータス】
攻撃99、防御85、素早さ98
武力99、知略12、政治5、統率11
うおお! 知略12にアップ!
伸び率やべえ!!
【スキル】
『シルバーフレイム』
(古代魔法、竜属性特攻+100%、炎攻撃+50%)
『剣術S』
『主人公補正Lv99』
「よっしゃ! 前世のスキル『主人公補正』完全復活ッ! しかもLv20から99に爆上がり!」
ポケットの宝玉を取り出し、ミオの首にそっとかける。
パッと青白い光が弾け、ミオの全身を月光みたいに包む。
体がフワッと軽くなり、転生空間がキラキラ揺れる。
「タケル……!」
ミオの声が温かく響く。
光の中、銀髪がサラッと紺色に変わる。
紫の瞳が夜空のような瑠璃色にキラッとシフト。
青いローブが消え、ふんわり白と青のチュニックに、白いケープマントがフワッと現れる。
スラリとした体にめっちゃ映える!
転生案内人の黒い手袋やブーツの重厚感が、白に変わって清らかさ&軽やかさアップ!
そして――
ピョコン!
モフモフの白い尻尾が飛び出す!
青い光がチラチラ光る、ルナティア族の混血の証!
案内人姿も最高だけど、モフキュン要素が加わり反則級の可愛さに!
「150点! いや……500点!!」
「ふふ、やっぱりバカね」
転生空間が揺れた。
ガラスのように透明な壁にヒビが入り、キンキン割れる音が響く。
宝玉が青白く輝き、ルナティアの力が俺の魂にガチッと噛み合う。
体から銀色の炎がドカーンと噴き出す。
まるで星が爆発したみたいだ!
「これだ……これが俺の本当の力! どんな絶望も、どんな次元も、ぶち破る『主人公』の力だ!!」
「タケル……!? ホントに次元を破る気!?」
「当たり前だ! 主人公補正ってのは、『ご都合主義』なんかじゃねえ。俺が真のハッピーエンドを掴むための『魂の炎』なんだ!」
「何を言ってるの!?」
シルバーフレイムが完全覚醒――!
青白い炎が宝玉の光と混ざり、まるで銀河をぶち抜くレーザーみたいに空間を貫く。
「ミオ、ここから出るぞ! ヴェルザドールとの決戦、やり直して、一緒にハッピーエンドだ!」
転生空間がガラガラと崩れ、ガラスの破片がキラキラ舞う中、俺とミオは光に飲み込まれる。
「キミ……本当に主人公だったのね……」
ミオの声が、泣き笑いで響く。
「最初っからずーっと言ってたでしょ? ま、俺も今、ぶっちゃけビビってる!」
ドカァアアアンッ!!
光が爆発し、俺たちは新しい物語のページに飛び込む――!




