第14話 青春☆魔法学院!③
荘厳な祭壇にはキラキラの宝玉が浮かぶ!
「これって……セリィナと洞窟で見た……」
触った瞬間……
頭がズキーン!
「ぐぉ……なんか見える……!」
――悲鳴と鎖の音が響く中、帝国の兵士に追われ、呪いの首輪をはめられるルナティア族たち。
――森の奥、黄金の兵士に守られた国王と少し幼いリンが、ルナティア族の族長と手を結ぶ光景。
――そして……
白い尾の紺色髪美少女の涙が、静かに頰を伝う姿――
だ、誰だ?
何これ!
リンが言ってた宝玉の記憶!?
「タケル!? 大丈夫!?」
セーラが心配そうに駆け寄る。
――カツン、カツン。
ヒールの音が、静まり返った迷宮に不気味に響く。
グリム教授の妖艶なシルエットが、ゆっくりと現れる。
黒髪が妖しく揺れ、赤い唇が艶やかに弧を描く。
「よくやったわ……さすが学院一の才女、セーラ・ミラノス率いるエリート班♡」
セーラが息を整え、胸を張る。
「ありがとうございます、グリム教授!」
グリムの視線が、祭壇の宝玉に注がれる。
「これで……魔法騎士団への道が、近づいたわね♡」
「おお! やったぜ!」
俺がガッツポーズをキメるとグリムが柔らかく命じる。
「さあ、そこにある宝玉を……渡してちょうだい♡」
「あ、うす……」
俺が手を伸ばしかけた瞬間――
「タケル、待って!」
セーラの声が、鋭く空気を裂く。
「はへ?」
グリムの眉がピクリと動く。
声に、苛立ちの色が滲む。
「何してるの……? 学院長の指示なの。早くしなさい♡」
「タケル、絶対ダメ! リリに!」
セーラの叫びが響く。
「え、りょ、了解! リリ、パス!」
俺、宝玉を少し離れた場所にいたリリに投げる!
「うん!」
宝玉が宙を舞い、リリの両手に収まる。
グリムの目が、大きく見開かれる。
「な……!?」
空気が、一瞬凍りつく。
「セ、セラっちょ……?」
「どういう……ことですか?」
みんなの視線が、セーラに集中する。
セーラが、冷徹な視線をグリムに突き刺す。
「昨日の夜……学院長から言われたの。もし私たちが偶然『ルナティアの秘宝』を見つけて、あなたが要求してきた時は――“裏切り者”だってね」
グリムの唇が、ゆっくりと歪む。
クスクスと、低い笑いが漏れる。
「ふーん……バレてたの? まあ、いいわ」
彼女の瞳が、蛇のように冷たく輝く。
「リリ・ルミエール、大人しく従いなさい♡ それはザルド帝国にふさわしいもの。平民が触れていいものじゃない」
セーラとリリ以外、全員が息を飲む。
「エロ教授! あんた、帝国の人間だったのかよ!」
俺の叫びに、クロエが闇魔法をゆらゆらと構え、声を低く抑えて唸る。
「……最近、帝国の動きがきな臭いって聞いてたけど……ついにここまで……」
リリ、静かに目を閉じて、宝玉にそっと触れる。
「……ごめんね、グリム先生」
瞬間――
リリの胸元の小さな銀のエンブレム――騎士団から預かった“代理紋章”が金色に輝き、彼女の全身から眩い光が爆発!
ドバァァァァッ!!
ガルフレッド直伝の『黄金の聖盾』がリリの周囲に展開!
超強度結界が完成!!
「えっ!? リリたん、それ……!?」
オリビアが目を丸くする。
グリム、完全に凍りつく。
「あの『盾魔法』……ガルフレッドの第八階位術式……!? なんで低魔力のお前が!? お前は第二階位の光魔法しか使えないはず……!」
セーラ、ツインテをビシッと振って冷笑。
「そう。あなたはいつもリリのこと『魔法の才がない平民』って見下してたわよね?」
グリムの瞳が震えた。
「何……?」
「あなたが絶対に警戒を解く相手。だからこそ団長は、リリに自分の代理紋章を預けた――」
セーラはさらに言葉を重ねる。
「“全属性の素質を持つ”リリなら、紋章さえあれば盾魔法だって発動できるって」
――え!?
リリ、めっちゃ主人公級スキルの持ち主!?
エスターの瓶底メガネが、驚愕にキラリと光る。
「全属性!? リリさん、隠してたんですか!?」
リリは宝玉を胸に抱き、静かに微笑んだ。
「ううん。私、本当に魔力低いし、強い媒体がなきゃ初級魔法しか使えないよ……。でも、団長さんやセーラちゃんが信じてくれたから――」
グリムの顔が、初めて醜く歪む。
「私を出し抜いたつもりか? みすぼらしい平民風情がッ!」
「はぁ!? ふざけんな! リリは大天使だぞ!」
グリムが黒い魔法陣を広げ、唇を舐め回すように笑う。
「ふん……なら全員仲良く、この幻影迷宮で……一生、朽ち果てなさい♡ 私の“可愛いペット”と一緒にね♡」
黒い魔法陣から巨大な影――
ドス黒い鱗が禍々しく光る『シャドウドラゴン』登場!
でけえ!
「くっ……こんな……!」
「ど、どうしましょう!?」
全員がその禍々しい姿に固まるしかなかった。
そうだ――みんなはまだ15歳……ビビって当然だ!
こんな時に、25歳の俺が“置物王”なんてやってる場合じゃねえ!
シャドウドラゴンがブレス攻撃のため、首を高く持ち上げる。
「――俺がみんなを守るッ!」
俺、短剣持って叫びながら突撃!
「シルバーフレイム・青春の輝き!」
ズバァァァァン!
ドラゴンの首の付け根に直撃!
黒いブレスが暴発し、迷宮の天井を破壊!
ガラガラと崩れ落ちる!
しかし――
「……マジか! 俺の渾身の一撃……かすり傷かよ!」
セーラの目がキリッと変わる。
「――でも隙はできた! タケル、一度下がって! クロエ!」
彼女が叫ぶと同時にクロエが小さい体を躊躇なく滑り込ませる。
「バカドラゴン、動くな――冥鎖幽幕……!」
紫髪がサッと揺れて、地面から闇の鎖が何本も飛び出す!
ガキン! ガキン!
ドラゴンの四肢をガッチリ拘束!
でも鱗が硬すぎて、鎖がジリジリ削れていく!
「チッ……オリビア、頼んだ!」
「了解、クーちん!」
オリビアが赤いポニテを弾ませ、両手にバチバチ火花を散らして跳躍!
「キモいドラゴン、燃え尽きろ! 烈焰新星!」
ズガンッ!
赤い火球がドラゴンの首に直撃!
俺が与えた小傷から黒い鱗がパキパキとはがれ始める!
「効いてる! でも、まだ……! エッシー!」
エスターが瓶底メガネをキラッと光らせる。
「オリビアさん! 風を送り込みます!」
黄緑おさげをなびかせタクトダガーで空中に魔方陣を描く。
「天風の裂刃!」
――ヒュオオオオ!
緑がかった風が渦を巻いて鱗の隙間と傷口に流れ込み、オリビアの炎を一気に膨張させる!
ドゴオオオオオン!
ドラゴンが苦悶の咆哮を上げて暴れまわる!
「大人しくしてなさい――」
セーラが金髪ツインテを輝かせ、氷のオーラを全身に纏わせて叫ぶ。
「氷華嵐槍!」
バキィィィィン!
巨大な氷槍がドラゴンの傷口から内部へ一直線!
次の瞬間、黒い巨体が内側から凍結し、粉々に砕け散った!
氷の破片が舞い落ちる中、俺はポカンと口を開けたまま固まる。
みんな強え!
俺のハーレムパーティ、無敵すぎ!
「ガキどもが……!」
怒ったグリムが半身ヘビの化け物に変身。
うわっ、めっちゃベタ展開!
赤い鱗が不気味にテカッてめっちゃキモい!
「帝国に歯向かったこと、後悔しなさい!」
ドゴォン!
ヘビグリムの尻尾が振り下ろされ、黒い呪いの波動が広がる!
仲間たちが悲鳴を上げ、膝をつく!
「ぐっ……魔力が……弱まって……!」
オリビアが火花を散らしながら倒れ込み、クロエの闇魔法が揺らぐ。
エスターの風が消え、リリのバリアがひび割れる。
セーラも唇を噛んで片膝をつきながら、それでも震えながら立ち上がろうとする。
「くぅっ……この……程度……!」
――その瞳は、絶対零度の闘志で燃えていた。
「ウフフ、エリート見習いとは言え、所詮は第五階位程度しか使えない雑魚ね♡」
くそ、魔力ゼロってガチだったのか!?
絶体絶命の大ピンチ!
――その瞬間、キラキラの魔法陣が出現!
黄金の光が炸裂し、盾魔法が全員をガード!
「すまない、遅くなった!」
ガルフレッド団長と魔法騎士団が駆けつける!
アッシュグレーの髪をなびかせ、口髭が凛々しく揺れる! ガチかっけえ!
「ヒゲさん!」
俺が叫ぶと、ヘビグリムが舌なめずりして嘲笑う。
「つけ回すなんて趣味悪いわね、ガルフレッド♡」
「その姿の君に言われたくはない」
ガルフレッドが剣を構え、静かに応じる。
「帝国魔術師が皇帝の座について以降、君は呼応するかのように怪しい動きを取るようになった。ついに尻尾を出したな」
「ふふ、さすがね♡ でも――」
グリムの胸元で黒い蛇の紋章が血の色に染まる。
瞬間、迷宮の空気が底冷えするほど重くなる。
「下がれ!!」
ガルフレッドが黄金の盾を展開。
騎士団も咄嗟に高位結界を重ねる。
ズズズズズズズッ……
光が歪み、黄金の盾が音もなく砕け散る。
ガルフレッド、騎士団全員が膝を突き、床に片手をつく。
「かかったわね♡」
「こ、これは……暗黒魔法……!」
「『深淵の代償紋』……高位魔法を紡いだ者の魔力を喰らい、根こそぎ深淵へ沈める禁呪♡」
「くっ、私と……したことが……」
「発動条件は“術者の寿命を削る”こと……。一生使いたくはなかったけど……王国最強のあなたとまともにやり合うのは得策じゃないのよね♡」
「……そこまでして宝玉を欲するとは……帝国の執念も相当なものだな……」
「宝玉さえ手に入れば、皇帝陛下は私を“不死”にしてくれるって約束してくださったの♡」
グリムはガルフレッドを見下し、舌をチロリと出す。
「ガルフレッド、魔法騎士団引退おめでとう♡」
ブォン!
巨大なヘビの尾が振り回され、ガルフレッドを壁に叩きつける!
「がっ!」
「団長!」
セーラが叫ぶ。
グリムが赤い瞳を輝かせ、冷たく宣告する。
「あとで皆殺しね♡ 残りは見習いのガキどもだけ。大人しく渡せば、“死なずに済む”くらいの慈悲を施してあげてもいいわよ♡」
俺、ガクブルで短剣をグリムに向ける。
「う、うっせえ! 帝国なんかに……俺たちのハーレムの結晶、渡さねえ!」
すると宝玉のオーラが俺の体に流れ込む!
シルバーフレイムが銀色の嵐となって爆発的にパワーアップ!
「シルバーフレイム……! お前の古代魔法は目障りよ。ここで死ね!」
ヘビグリムの顔が歪み、変な呪いぶっかけてきた!
「うぐ……!」
やべ、身体が重い!
これ……ニャルの時と同じ感覚……!
――けど、俺のハーレム魂は負けねえ!
みんなは、足手まといの俺を見捨てることなく、ここまで連れてきてくれた。
勉強も戦闘も、俺の分までカバーしてくれて……。
セーラのリーダーシップ、
オリビアの明るい支え、
クロエの冷静な闇魔法、
エスターの的確な計算、
リリの優しい癒し――
迷宮で置物だった俺を、誰も責めず、受け止めてくれた。
この世界で、ようやく見つけた本物の絆だ。
絶対に、守ってみせる!
――心の奥底で、ポタ……ポタ……と音がする。
俺の壺に、みんなの絆が温かい水となって、少しずつ溜まっていく。
魔力全開!!
「シルバーフレイム・恋爆萌嵐!」
銀色の炎が爆嵐となって炸裂!
ドカァン!
――グリムの後ろの壁が崩れる。
「あ」
やべ、外した……!
「ガキが、どこを狙ってる!」
ヘビグリムの赤い鱗が不気味に光り、毒々しい呪いのオーラが俺の体を締め付ける。
シルバーフレイムがチロチロと弱まる中、視界がぼやけてくる。
ヘビグリムが叫ぶ。
「お前はここで終わりだ!」
くそっ!
こんなところで青春ハーレムが終わるのか!?
嫌だ! ありえねえ――!
――シュリィィィン!
「蒼滅の神罰氷冠!」
セーラのキレッキレの声が迷宮に響く。
バキバキバキッ――!
巨大な氷の王冠がヘビグリムの頭上に落下!
一瞬でキラキラ輝く氷像に変える!
動きがピタッと止まり、迷宮に氷の結晶が舞い散る。
セーラは凍りついたグリムを一瞥し、静かに、でも絶対零度より冷たい声で呟いた。
「私の大切なものを傷つけた罪――永遠の氷の檻で償いなさい」
俺、鳥肌立った。
「セ、セーラ! マジでサンキュー!」
「……べ、別に、あんたのためじゃないんだからね!」
セーラ、顔背けて顔真っ赤!
ツンデレの極致!
でもその瞳、めっちゃ強くて、めっちゃ優しくて、めっちゃかっこいい!
もう完全に惚れた。
もう完全に主人公。
セーラ、マジで最強のリーダーだよ……!!
俺たちは息を切らし、魔力を奪われたガルフレッドと魔法騎士団に駆け寄る。
ガルフレッドが口髭を震わせ、弱々しく微笑む。
「“第九階位氷結術式”……見事だったぞ、セーラ。グリムは、代償紋を使う相手を誤ったようだな……」
「ありがとうございます……! 初めてだったけど、上手くできました!」
――マジ?
セーラ、見習いでそんなイカつい魔法使えんの!?
「……そして、タケル。君を推薦してよかった。おかげで王国の平和が守られた……ありがとう」
「ヒゲさん! でも魔力……大丈夫すか!?」
慌てて聞くと、ガルフレッドが静かに頷く。
「心配無用だ。宝玉の力が帝国の手に渡らなかった今、時間が経てば自然と戻る……。みな、よくやったぞ」
他の団員たちも「見習いとは思えんな……!」と称賛。
みんなから褒められ、胸が熱くなる。
無事、試験クリア! みんなでハイタッチ!
よっしゃあ!! 今回生き残れたぞ!!
8度目の正直、キメたぜ!!




