第12話 青春☆魔法学院!①
――ミオにフラれた。
ちゃんと告白する前に。
冷たく突き放された。
まだ胸が痛い。
でも、ミオの声は震えてた。
俺にはその理由がわからなかった。
――俺、こんな気持ちなのに、新しい世界でやってけるのか?
動揺しながら、静かに目を開けた。
瞬間――
うおおおお! すげえ光景!
ここはセレンディア王国にある長い歴史を誇る名門――ミラノス・アカデミア。
キラキラ輝く石の壁、宙に浮かぶ燭台!
壁には青みがかった白髪を優雅に束ねた気品ある貴婦人――創設者「セリィナ=ミラノス=バルドリオン」の肖像画!
セ、セリィナ?
あのセリィナ?
魔法学院の創設者って……マジで夢叶えてる!
ネームプレートの下見る。
『生没年:月耀暦13年―104年』
……出たぞ“月耀暦”!
でも……さすがに故人か。
もう一度会って、ちゃんと謝りたかったな……。
気を取り直し、周りを見渡すと――
うわあああ!
色とりどりのローブを着た美少女だらけの教室!
まあ普通に男子もいるけど、目に入らねえ!
っしゃあ! 念願の魔法学院キター!
――俺はどうやら10日前に転入してきたらしい。
そしてここは魔法騎士団を目指す特進クラス。
俺は「ガルフレッド」なる人物の推薦でこのクラスに入れたそうだ。
ミオの冷たい言葉が頭よぎるけど……
こうなったら全力ではっちゃけてやる!
中1のときの「お調子者モード」全開で、女子たちと飾らず自然に話しまくってやるぜ!
「全員俺の嫁ッ!」
そう叫ぶと、教室の視線が俺に集中。
メガネの男子もなんかドキッとして振り返る。
「バカ! 黙れ!」
その時、金髪ツインテの激カワ美少女が氷のつららをブッ放してきた。
――ガキン!
危ねえ! ギリ避けた!
「ちょ、ツインテ! 凶暴すぎんだろ!」
彼女は俺と同じ班の班長――セーラ・ミラノス。
創設者セリィナの子孫らしくプライド高めの委員長タイプ。
近年ではあまり見ない教科書レベルのツンデレガール。
キラキラ金髪のツインテールで毛先がソーダみたいな青に染まってる。
動くたびに魔法っぽく揺れてすげえ目立つ。
ハーレムリーダー候補!
セーラの周りには――
黄緑髪をおさげに結び、ウソみたいに分厚い瓶底メガネが光る中流貴族出身――エスター・ウィンドフェル。
メガネ外したら激かわいいのが約束されてるパターンのやつ。
「まったく、タケル君は懲りないですね」
赤髪ポニテを高く結び、三連金色ピアスと大きな瞳が眩しいモデル体型の長身ギャル――オリビア・フレアハート。
ほんのり焼けた素肌がちょっぴり色っぽい。
「キャハハ! 相変わらずだね〜、タケルっち」
紫髪を長く伸ばし、ゴス風の黒いリボンでまとめた華奢でちっちゃいクール女子――クロエ・ブラックウッド。
常にジト目だけど泣きぼくろが超チャーミング。
「バカが……」
水色ふんわりヘアに素朴な地味かわ癒しオーラ全開、薄いピンクの瞳が愛らしい平民出身――リリ・ルミエール。
笑うと出来るえくぼが天使みたいでキュキュンとくる。
「タケルくん、いきなり大声でびっくりだよぉ……」
うっひょー!
五人全員美少女!
すでにハーレムパーティ完成してやがる!
手を見ると、シルバーフレイムがチロ燃え。
魔力バッチリ!
こりゃ今回も無双確定!
よし、情報収集も忘れずに。
「ねえ、セーラ。今年って何年だっけ? あとさ、魔王って悪いやつ?」
「何よ急に。今は月耀暦402年。『ゼルドラス様』は名君で有名でしょ。そんなことも知らないの?」
なるほど。
ニセ三国志ワールドが381年だったから……
ここは20年後ぐらいの世界か。
月耀暦13年生まれのセリィナって、めっちゃ過去の人だったんだな……。
そして、やっぱりここでも魔王は敵じゃない。
――おっと!
“最重要確認事項”、忘れるとこだった!
「ち、ちなみに俺の顔、どう? イ、イケメン?」
ニチャッと尋ねるとセーラが顔真っ赤で叫ぶ。
「はぁ!? あんたなんてそれくらいしか取り柄ないでしょ! 私のタイプじゃないけどね!」
――おっ、顔が取り柄!?
さっきセーラが放った氷のつららに俺の顔面が反射してる。
今回の俺の顔――
ブラウンメッシュのスタイリッシュヘアにパッチリ二重の凛々しい瞳。
ちょっぴりベビーフェイスな爽やか美少年!
「やった! めっちゃイケメン! ハーレム王への第一歩!」
ここに来てまた“オークフェイス”だったら青春終わってたからマジ安心!
オリビア、クロエ、エスターが総ツッコミ。
「タケルっち、顔良いのにキモいから惜しいよねー!」
「勘違い野郎。とっとと追放されろ」
「魔力高いのに頭悪すぎです!」
リリだけはニコニコと優しい笑み。
「タケルくん、今日も面白いね」
リリ、ガチ天使!
カツン、カツン――
すると誰かがヒールを鳴らし教室に入ってくる。
妖艶な美女、グリム教授――
長い黒髪に真っ赤な口紅、タイトな黒ローブのドSな雰囲気ちょっとエロい。
「明日はいよいよ闇の試験、『幻影迷宮』よ。失敗したら『魔力ゼロ』♡ 気を引き締めてね♡」
え、「魔力ゼロ」って廃人エンド!?
青春キラキラな雰囲気で試験ハードすぎ!
でも、これを乗り越えたら俺の夢が待ってる!
「みんなで成功させて、青春ハーレムな!」
「夢見んな!」
セーラが氷魔法で俺の足元を凍らせやがった。
――って、お前、顔赤すぎ!
鬼デレ確認!
セーラ、氷の視線でガン詰め。
「とにかく、タケル! 試験の準備しなさい、バカ!」
フッ、「知略8」なめんな――
「俺のシルバーフレイムでスタイリッシュにドンッ! それで完璧じゃん!」
「ありえません! タケル君、制御ゼロなんだから! 今から猛勉強ですよ!」
エスター、瓶底メガネキラーンで図書室に連行……
しようとすると、扉に頭ガンッ!
「キャッ! いたた……」
おいメガネっ娘、強引にドジっ子属性ぶっ込んできたな!
てか、今メガネずらすチャンスだろ!
そこは綺麗なお顔、見せてくれよ!
オリビアは火花パチパチさせて背中バン!
「タケルっち、落第ギリだよ。がんば!」
クロエはちっちゃい体で闇魔法の本投げつけてくる。
「バカタケル、さっさと読め」
リリは水色髪をフワッと、素朴な地味かわ笑顔でニコニコ。
「私も魔力低いから一緒に頑張ろうね、タケルくん」
ぜ、全員……かわいすぎる!
――図書室。みんなで勉強中。
分厚い魔法書のページをめくるペラリ音が響く。
お、ちょっと読めるぞ!
けど『第三階位術式』とか『魔法応用理論』とかムズイし面白くない!
俺が頭カリカリしてるとオリビアが陽気に声かけてくる。
「タケルっち、苦戦してるね〜。私もさー、この班じゃ一番頭悪いから大変なんだよね〜!」
オリビアが赤いポニテを弾ませ、ケラケラと笑う。
「お、おお! オリビア!」
確かにギャルっぽいし勉強は苦手そうだ!
俺の学生時代の成績は大体“下の上”あたり。
壊滅的にバカってわけじゃないが……
ようやく俺の仲間発見!
ハーレムパーティに「炎の脳筋コンビ」――爆誕だ!
だが、エスターがメガネをクイッと押し上げ、冷静に口を開く。
「オリビアさん、ちょっと待ってください。あなた『この班で一番下』と言っても、学院全体の成績は5位ですよね?」
……は? 5位?
学院5位?
オリビアは肩をすくめ、悪びれず笑う。
「ま、この班が天才揃いだから私なんて全然! 筆記より実践派だし!」
「マジかよ、オリビア……仲間だと思ったのに……」
クロエが紫髪を揺らし、頬杖でニヤリと笑う。
「バカタケル、絶望してる? オリビアは炎魔法の応用理論なら私より上よ」
リリが水色髪をフワッと優しく微笑む。
「タケルくん、落ち込まないでね」
その声は癒しだったが、裏切られた俺の心の傷には届かない。
「てか何で学院1位から5位が同じ班!? 班分け偏りすぎじゃない!? 嬉しいけど!」
セーラがツインテールを振り、呆れたように言う。
「成績の平均で割り振られるの! ぶっちぎり最下位のあんたでバランス取ってんでしょ。……まったく、オリビアが仲間だなんて百年早いわよ! ほら、呪文! 今すぐ!」
オリビアが俺の肩をバンバン叩き、陽気な声で叫ぶ。
「キャハハ! タケルっち、めっちゃ凹んでる〜! 期待させちゃってごめんね!」
くそっ、この陽キャめ……!
可愛いし憎めないのがズルい!
だが、その挑発が僅かに俺の闘志を灯した――
「…………」
けど……やっぱムズすぎ!
せっかく青春取り戻してんのに、勉強シーンで尺使いたくねえ!
テスト勉強なんて「十代に戻れてもやりたくないことランキング」堂々の1位だろ!
俺、退屈すぎて、ノートに落書き。
『ハーレムパーティ♡ セーラ&オリビア&エスター&クロエ&リリ』
セーラの金ツインテ、オリビアの赤ポニテ、リリのふわっと水色髪、エスターの――
うむ! 我ながらいいデキ!
ニヤニヤしてたら、横からオリビアが覗き込む。
「うわ! タケルっち、マジキモ! 私、胸ないのに盛りすぎ! 最低〜! 変態〜!」
「バカ! 真面目にしなさい!」
セーラ、氷のビンタ。
痛え!
でも、これも青春!
とりあえずなんか適当に古い本めくったら、「ルナティア族」って文字発見。
ルナティア……
ニャル!?
『月の神秘を司る一族。帝国の苛烈な迫害を被る。「ルナティアの秘宝」は、天より降した月片と一族の祈祷により創られし秘晶。世界に宝玉として分散し、他種族も魔術行使が可能に――』
って書いてある。
「セーラ、『ルナティアの秘宝』って何?」
「そんなのも知らないの? 私たちの魔力の根源でしょ!」
セーラが一蹴。
リリが横からニコッ。
「この学院にもあるらしいよ。昔は洞窟にあったらしいけど……今は学院長しか知らないみたい」
マジか! 超重要アイテム!
エスター、分厚いメガネをクイッ。
「この著者、『大賢者アルヴィン』の……タケル君、また古い本見つけてきましたね」
アルヴィン?
ニャルの時の癒し系おっさん?
クロエはやれやれ顔。
黒リボンを指で弾く。
「バカタケル、今そんなのどうでもいい。勉強しろ」
オリビア興味津々に大きな瞳を輝かせる。
「秘宝かぁ、キラキラなら欲しいかも!」
お前、ホント陽キャだな!
ルナティアの秘宝……めっちゃ気になる!
その時だった――
ガチャリ!
図書室の扉が重厚に開く。
現れたのは堂々としたイケおじ――ガルフレッド。
アッシュグレーの髪に整った口髭、銀鎧に騎士団長のマントを翻す、俺の推薦人。
「おっと、失礼。揃って勉強会か。熱心だな」
「ガルフレッド団長!」
セーラが立ち上がる。
「おお、俺の推薦人、ヒゲかっけえ……!」
俺が小声で呟くと、セーラが俺を指差す。
「団長! このバ……彼を推薦したのは間違いです! 試験前日まで落書き、制御ゼロの魔法……騎士団の汚点になるのでは!?」
「お、汚点ってひどくね!? そういやセリィナって『魔法は平和のため』って言ってたけど、なんで“魔法騎士団”なんてあるんすか?」
ガルフレッドは静かに目を細め、図書室の棚を見回しながら答える。
「……セリィナ王女やその先代ゼラ王の信念に反するのは承知だ。だが、近年のザルド帝国の動き、ルナティア族への迫害再燃……世界は再び不安定だ」
――ザルド帝国……まだあんのかよ。
もういいって!
クロエの表情が少し曇る。
「……」
ガルフレッドが俺を見つめる。
「タケル。“シルバーフレイム”は、古の勇者が使ったとされる伝説の古代魔法だ。有事の切り札として、騎士団は君を必要としている」
「……マジすか」
「私とて戦争は望まぬ。だが、平和を守るためなら、剣を握る覚悟が必要だ。セーラ・ミラノス、君のリーダーシップに期待している」
セーラ、姿勢正して頷く。
「……わかりました。タケルのことは私が責任を持ちます!」
「おお! セーラ、ハーレムリーダー決定!」
「うるさい、バカ!」
セーラの氷の視線が飛ぶ。
俺、気になってもう一つ質問。
「ところでグリム教授の言う『魔力ゼロ』って、ガチなんすか? 魔法学ぶ学校なのにペナルティえぐすぎでしょ!」
ガルフレッドが苦笑し、静かに答える。
「教授は『そういう心意気で挑んでくれ』という意味で言ったのだろう。覚悟を試すための言葉だ」
「な、なーんだ」
俺、ちょっとホッとする。
「――では失礼。私は古文書の確認でな。試験結果、楽しみにしているぞ」
だが、扉に手をかける直前……
ふと足を止め、振り返った。
「……それと、セーラ・ミラノス。試験前で申し訳ないが、この後、学院長の部屋へ来てくれ」
セーラが少し驚いた顔で立ち上がり、ぺこりと頭を下げる。
「は、はい」
ガルフレッドは軽く頷くと、無言で奥の書架の影に消えていった。
――その後。
俺はセーラたちにスパルタで詰め込まれつつ、勉強会終了。
勉強しんどいけど、なんだかんだ青春してる感!
あと俺……何気にまだ“生きてる”!
この調子でハーレムハッピーエンドまで突っ走ってやるぜ!




