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第9話 孤高の異世界グルメ!

 目を開けると、ムワッと蒸し暑いジャングル。



 シダ植物がうっそうと生い茂り、遠くで火山がゴゴゴと赤い煙を吐いてる。



 手にはカッコいい勇者の剣!


 シルバーフレイムもチロチロ燃えてる。


 よし、能力は健在!



 川にダッシュして顔面チェック。

 

 サラッとキマった金髪。

 シュッとした顎。

 キリッとした目。


 完璧イケメン! 多分過去イチ!

 てか「レオン=アークブレイド」超えまである!


 さらに、目の前に光るパネルがポップアップ。


 やった!

 ステータス画面、今回はしっかり見えるぞ!


 やっぱコレがなきゃ始まらないよな。


 

【名前】竹仲タケル

【職業】勇者

【スキル】シルバーフレイム(古代魔法、竜属性特攻+100%、炎攻撃+50%)、剣術S

【ステータス】攻撃99、防御75、素早さ95


 

 うおお、めっちゃいい感じ!


 今回こそ(ハーレム)イケる!

 



 ――でも、待て。


 誰もいない?

 


 町は?

 仲間どこ?

 かわいい女の子は?

 計画立てたくても人がいない!


 ジャングルをガサガサ進むと、でっかい恐竜みたいのがガオガオ歩いてる。



 

 ん?


 これってもしかして……



 原始時代?

 


 

 おい!

 ランダム転生!



 せめて褐色ケモ耳美少女出せ!




 ――数時間後。

 


「ハァ、ハァ……」

 

 シダをかき分け、何時間もぶっ続けで探し回るが……誰もいねえ。


 これ、ガチでハズレ世界。


 原始だけど終わってる。

 チェンジしたい。


 てか、折り返しなのに悪ふざけがすぎるぞ!


 


 グーッ


 

 そうしているうちに、俺は――



 腹が減った。

 


「このままじゃハーレムどころか飢え死にだ!」


 ジャングルをキョロキョロ見回す。

 

 なんか食えそうなものないか?


 甘そうな果実とか、ジューシーなベリーとか!


 異世界ならでっかいマンゴーみたいなの転がってるはずだろ、普通!


 

 シダをかき分け、茂みをガサガサ漁るが……なんもねえ!

 

 あるのはシダ、シダ、ソテツ、シダ!

 緑の葉っぱだらけで、食ったら苦そう!



 ブーンって不気味な羽音。


 見ると、でっかいトンボみたいな虫がブンブン飛んでる。


 ……焼いたらサクサクかも。


 だが、異世界グルメの一発目が虫とかマジ勘弁!

 俺が原始人でもこの選択はない!

 


 遠くでドスンドスンって地面揺れる音。


 見上げると、でっかい恐竜っぽいのがノソノソ歩いてる。

 マジか、こいつ食ったら何日分だよってレベル!


 シルバーフレイムの「竜属性特攻」ってもしやこのため?


 でもこんな大量の肉、俺の胃のキャパ余裕で超えてる。

 俺のフードロス精神に反する。

 

 ハァ……手頃なサイズのやつはいないのか?



 ――ガサッ


 

 するとトカゲっぽい小動物が草むらに。


 お! もうあれでいいや。



 緑の鱗。

 ピンポン玉みたいな目。

 なんか足も6本ある。

 


 うーん。


 微妙にグロいけど……


 まあ食えなくはないだろう。


 

「よし、太古のグルメタイムだ! シルバーフレイムで焼き肉いくぜ!」


 俺、岩に腰掛けて、トカゲを剣で突き刺す。


 シルバーフレイムをシュッと集中。

 炎の加減はバッチリだ。

 

「シルバーフレイム!」

 

 銀の炎でトカゲをジュウジュウ焼き上げる。


 火山の熱気と混ざった香ばしい匂いが俺の鼻をくすぐる。


 外側はカリッと焦げ目がつき、鱗がパリパリに弾ける。

 おお、いい焼き色だ!



 トカゲを岩の上に置いて、じっくり観察。



 見た目は……


 ぶっちゃけキモい。


 焦げた緑の鱗。

 飛び出した目玉。

 六本足と細い尻尾がチリチリに縮こまってる。



 ――だが、このワイルドなビジュアル。


 逆にそそる。



 原始時代のB級グルメ、俺の舌でじっくり味わってやるか!


 

〜【Gourmet No.01】キモトカゲの銀炎太古焼き〜


 

「さて……いただきます!」

 

 ナイフ代わりに勇者の剣の先で切り込み入れる。


 ――パリッ


 皮が割れ、中から白い肉が顔を出す。


 ほんのりピンクの生っぽい部分もあるが、これはこれで太古っぽい。


 肉汁がジュワッと滴り、シダの葉にポタポタ落ちる。


 うーん、この香り、たまらん!



 一口かぶりつく。

 

 うっ……!


 んん、なんだこの食感!?

 

 外のパリパリ鱗が、まるでスナック菓子みたいにサクサクだ。


 いいぞぉ、コレ。

 

 噛むほどに、肉の繊維がホロッとほぐれる。


 中はホクホク、ジューシーで、ほのかに土っぽい風味。


 生っぽい部分は、まるでレアステーキのような弾力!


 火が通ってないとこ、ちょっとヌメッとしてるが……


 これぞワイルド!



 原始時代の肉汁、めっちゃ濃厚! クセになる。



 む、待てよ……


 この旨味、なんだ!?


 噛むたびに、トカゲの脂が舌に広がる。


 ほのかな甘みと、火山のミネラルみたいな塩気が混ざり合う。



 ――そうか!


 シルバーフレイムの銀炎が、普通の火じゃ出せない香ばしさを引き出したんだ!!


 これは……俺のチート能力、料理でも無双してる!?


 シルバーフレイム、なかなか良い仕事してるじゃないか。



 よし、もう一口。

 ガツガツいこう。


 鱗のサクサク感、肉のホクホク感、時折のヌメッと感が三位一体。


 くぅー! 太古のグルメ、最高だ。


 ハーレムなくても、この肉があれば生きていける。


 いま俺に必要なのは白米、それだけだ。



 よーし、今度はこのシダの葉で包んでいただくとするか。

 原始の魂、骨の髄まで味わい尽くしてやる。


 脂の乗ったトカゲ肉を、シダでクルッと巻いて――


 

 ガブリ。



 

 うん……


 普通に不味い。


 

 気を取り直し、肉を食い進める。

 トカゲの尻尾までバリバリ食う。


 骨までしゃぶりつくしたい衝動!


 こんなワンパクな食い方、フリーター時代にはできなかった。



 原始時代、ありがとう。

 

 異世界転生、ありがとう!



 全部平らげて、ゲップ。

 腹パンパン、満足度MAX!



「ごちそうさまでした」


 ふぅ……


 シルバーフレイム、バーベキューでもスタイリッシュだな。


 次はどんな食材が俺の胃袋を満足させてくれるかな?


 


 火山の熱気と銀炎の余韻で体はポカポカだ。


 俺はシダの上にゴロンと横になり、空を見上げた。

 

 星が……すげえ、めっちゃ近い。


 

「俺、転生して5回も死んだんだな……」


 

 ふと、ソムナン君の顔が頭をよぎる。

 

「なあ、ソムナン君……俺の壺の水、いつ溜まるんだよ……」


 5回も死んでるのに、全然溜まる気しねえ。


 残り4回で溢れるのか?

 溢れたらどうなるんだ?


 俺、少し体を起こす。


 

 ――ルナティア族……


 絶対どっかで聞いたことある。

 アニメとか小説の話じゃない。


 ニャルの首輪、呪いの「塵になる感覚」……


 なんかデジャヴだ。


 シルバーフレイムだってそう。


 何で毎回使えるんだ?

 スキルはランダムじゃないのか?


 あのミオの涙も。


 絶対ホコリなわけない。嘘ヘタか。


 あの時、帝国魔術師の名前が出た瞬間、まるで殺意を堪えてるみたいな顔してた。

 

 ミオは、俺に何かを隠してる?

 

 俺ってほんとにただの竹仲タケルか?

 

 俺がニャルを助けたこと、ルナティア族のこと、シルバーフレイムのこと、全部繋がってる。


 

 でも、俺にはまだ分からない。


 

 ――だから、せめて。

 


 俺はゆっくり立ち上がった。

 

 満腹で体が重い。


 だけど火山の向こうに、誰かがいるかもしれない。


 集落があるかもしれない。


 ニャルみたいな子が待ってるかもしれない。


 

「よし、行くぞ!」

 

 勇者の剣を肩に担ぎ、シルバーフレイムをチロチロ灯らす。

 

 原始の暖かい夜風が頬を撫でる。


 

 このハイスペック転生、無駄にはしない。


 絶対に。

 


 

 ――ギュルッ!




「グエッ!?」


 腹がキリキリ、視界がグルグル!


 

 うお、なんだ!?


 体がガクガク、シダの上に崩れ落ちる。

 胃が焼けるみたいに熱い!



 ――あのキモトカゲ、もしかして毒だった!?



 いや、そりゃ、一瞬「毒かも」って考えたよ!?


 でも異世界グルメの食材って大体見た目キモいし、案外平気だと思うじゃん!


 レオンだって作中、カエルのモンスター焼いて食うシーンあったし!


 くっ、食材攻めすぎた……!


 大人しくトンボいっとくべきだったか……!?




 ぐおおぉ!


 や、やべぇ! 腹いてぇ!!


 めっちゃ希望溢れるシーンだったのに!




 

 ――俺は死んだ。


 

 原始時代……マジハズレ……!

 

 ハイスペック、マジ意味ねぇ!!

 



 白い空間。

 

 ミオ、腕組みで待ってる。


 いつもならジト目全開なのに……


 今日はガッツリ目逸らしてる!

 

「タケル、6回目の死。食中毒って……。前回褒めたのがバカみたい」


「いや、ランダム転生が悪意ありすぎだろ! 原始時代に飛ばして、仲間ゼロ、ヒロインゼロ! 恐竜とハーレムつくれってか!?」


 ミオ、珍しくクスクス笑う。

 

「私が謝る立場じゃないけど……確かにハズレだったかもね。でも、トカゲ焼いてドヤってたの、ちょっと面白かったわ」


「面白くねえ! 俺、孤独にグルメ楽しんでただけなのに!」


 ミオ、苦笑いながら、指先で宙に小さな光のパネルを呼び出す。

 

 そこには今回の転生ログが淡く浮かび上がっていた。

 

「今回の覚醒、遅延ラグはほぼなかったみたいよ。転生して即座にタケルの意識が目覚めたみたい。良かったわね」


 パネルには確かに【覚醒ラグ:0.8秒】と表示されている。

 

「フォローになってねえ! 0.8秒だろうが30日だろうが原始時代がクソには変わりねえ!」


「まあ、そう言うと思った」


 

 俺、ふと気になったことを尋ねてみる。

 

「そういや、ミオ……前回泣いてたよな? ルナティア族のこと、なんか知ってるよな?」


 ミオ、バッと目を逸らす。

 

「だからあれはホコリだって! ルナティア族は……ただ、昔の転生者が関わった種族よ。キミがニャルを助けたみたいに、命懸けで戦ったバカがいたの。ちょっと……似てるなって」


「ミオ、絶対なんか隠してるだろ! なんか教えてよ!」


 俺は声を上げるとミオの銀髪が揺れ、いつもより落ち着かない。


「シルバーフレイム、なんで毎回使えるんだ? 洞窟の宝玉の時からずっとだ!」


 ミオは目を逸らし、銀髪を指で巻く。


「……シルバーフレイムは『キミの魂』に刻まれたスキル。あの宝玉のオーラで復活し、定着したの」


「魂に刻まれた!? 俺、ただのフリーターだよ!? そんな力知らねえ!」


 俺が身を乗り出すとミオは困り顔。


「てか、この世界繋がってるよね? 宝玉とか寛容な魔王とか! 色んな世界にランダム転生するんじゃなかったの?」


 ミオは首をかしげ、宙に浮いた光るパネルをチラ見。


「……確かに。本来、『12の世界』のいずれかに飛ぶはずが、キミは『1つの世界』に固定。確率的に無くはないけど……シルバーフレイムの共鳴が原因かも」


「共鳴? 俺、なんか重大な使命背負ってる感じ!?」


 ミオ、目を閉じ、静かに微笑む。


「……多分、キミの魂があの宝玉――『ルナティアの秘宝』に選ばれてるから……かも知れないわね」


「秘宝!? もう、ムズイって! 選ばれてるってことはやっぱり使命――」

 

「キミは自分が幸せになることだけ考えて」

 

 ミオが遮る。

 でもその声が少し震えてる。

 

「で、でもこの世界固定じゃ俺の幸せハーレム計画に影響するんじゃないの!?」


 ミオ、光るパネルを消して優しく笑う。


「この世界に固定されてるなら……それもキミの運命。ハーレムだけが幸せじゃないって、今回気づいたんじゃない?」


「いや、分からん! ミオの言う『幸せ』って、結局何だよ? なあ、他の転生者ってみんなハーレム作って幸せになるんじゃないの?」


 ミオ、ふっと笑って首を振る。


「幸せなんて人それぞれ。昔、私が関わった転生者で、極寒の無人島に飛ばされた人がいたの。氷と雪しかない島で、魚釣って、雪で家作って、『これぞ俺の楽園!』って幸せそうに生きてたわ」


「いや、ドMすぎるだろ、そいつ!」


 俺は思わずツッコむ。


「極寒の無人島で幸せって、マジ何!? 俺なら即チェンジだよ!」


 ミオ、小さく笑いながら肩をすくめる。


「でもね、その人は『自分だけの世界を築くのが幸せ』って言ってた。派手じゃなくても、ちゃんと自分の幸せを見つけたの。キミもトカゲ焼いてた瞬間、ちょっと楽しそうだったじゃない」


「まあ……確かにあのサクサク感はちょっとハマったけど……それとこれとは別! 結局死んだしな! ハーレムこそ俺の至高なる幸せだ!」


「キミ、ほんとバカね」


 ミオ、呆れたようにため息。

 でも唇の端が少し震えてる。

 


「自分に見合わない幸福を追い続けるのは不幸なことよ。もう残り4回、早く自分なりの幸せ見つけてね……」



 俺は光に包まれ、次の世界へ。



 ハーレムも捨てがたいけど……

 シルバーフレイムでこの世界の謎、解き明かしてやる!

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