表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻限ゼロの復讐者(ゼロ・アベンジャー):0.5秒の壁を破壊し、裏切りの魔法社会を焼き尽くす  作者: S&Y


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

第八章:定義の檻と、精神の摩耗

東京グランドダンジョンの停止は、一週間が経過しても解除されず、現代魔法社会の根幹を揺るがし続けていた。各国政府は日本へ介入を試み、世界経済は魔法関連市場を中心に大混乱に陥っている。


悠人は、その混乱の中心で、自らの内に生じたわずかなノイズに苛立っていた。


(あの写真一枚で、俺のイメージが揺らぐだと? 馬鹿馬鹿しい。感傷に浸るつもりはない。失われた友情や希望など、復讐の炎の前では一縷の煙に過ぎない)


彼は、精神的な動揺を力ずくで押し殺すため、より強大で、より絶対的な「世界の定義」の書き換えを行うことを決めた。彼の次の標的は、魔法庁の「絶対的な公正」という虚飾そのものだった。


「ターゲット:最高裁判所管轄の、魔法庁倫理委員会の審理公開」


悠人は、情報インフラを掌握するだけでなく、過去の記録の定義に干渉する、高度な術式を準備した。


魔法庁の緊急対策本部。神宮寺サクヤは、悠人の次の行動を予測していた。


「ゼロ・インベイドの次の行動は、必ず『真実の顕現』だ。ダンジョン停止で社会基盤を揺るがし、次は権威そのものを崩壊させる」


神宮寺は、巨大な都市の三次元ホログラムを前に、冷静に指示を出した。


「彼の魔法は、魔力の純粋な『意思とイメージ』による世界定義の上書きだ。我々は速度(0.0秒)では勝てないが、定義の質量で抵抗する」


彼女の計画は、悠人の魔法の絶対性に疑問を投げかけるものだった。


「全Sランク、総力を結集し、彼の次の顕現が起こるであろうエリアに、《定義強制場フィールド・アンカー》を展開せよ。これは攻撃術式ではない。エリア内の魔力に、『全ての魔法は、術式連環による0.5秒の認証を要する』という世界の既存ルールを強制的に定義し直すための、超広域の支援術式だ」


それは、悠人の魔法を無効化するものではない。しかし、悠人の『リング不要』という定義と、『0.5秒認証必須』という世界のルールを、空間内で衝突させ、悠人に過剰な負荷を与えることを狙っていた。


悠人が選んだ場所は、東京で最も権威ある裁判所の屋上だった。


彼は、魔法庁が極秘裏に隠蔽していた、最高位の権力者による不正行為、賄賂、そしてダンジョンで失踪した一般魔術師たちの人身売買疑惑に関する、膨大な機密文書を、全情報網に一斉に公開する準備をしていた。


「イメージ:『絶対の真実アブソルート・トゥルース』。貴様らの虚飾を、世界に焼き付けろ」


悠人が術式を発動した、その瞬間。


彼の周りの空間が、わずかに重くなった。


(これは……物理的な重力操作ではない。魔力の、反発?)


情報流出の術式は、0.0秒で発動し、瞬く間に世界を駆け巡った。魔法庁倫理委員会の委員長をはじめとする幹部たちの、黒い裏の顔が白日の下に晒され、社会は再びパニックに陥った。


しかし、悠人の体には、今まで感じたことのない反作用が生じていた。


「うっ……」


彼の体内のマナコアに、巨大な負荷がかかる。それは、彼が放った『絶対の真実』という新たな定義と、周囲に展開された神宮寺サクヤたちの《定義強制場》が、激しく衝突している証拠だった。


『リング認証の0.5秒を要する』という既存の定義が、悠人の『0.0秒で発動する』という新しい定義を、空間そのものが拒絶するように、必死に抵抗していたのだ。


—イメージ:『空間固定スタシス』。


悠人は、すぐに周囲の空間を固定し、外部魔力の干渉を遮断しようとした。魔法は発動した。しかし、魔力の出力は、前回のSランク戦の時よりも、明らかに低下している。


その時、神宮寺サクヤ率いる三体のSランク魔術師と、術式防御に特化した十体のAランク魔術師たちが、屋上へと駆け上がってきた。


神宮寺サクヤは、悠人のわずかに青ざめた顔を見て、確信した。


「《定義強制場》の効果だ! ゼロ・インベイド、君の魔法は絶対ではない。世界が定めた長年の定義は、君一人の『イメージ』では、容易には上書きできん!」


悠人は、激しい頭痛と、マナコアの悲鳴に耐えながら、感情のない瞳で神宮寺を見返した。


「無駄だ。君たちの抵抗は、単なる慣性に過ぎない。君たちが術式を組む0.5秒の間に、俺は君たちの抵抗を、再び定義で否定する」


—イメージ:『大気振動バイブレート』。


0.0秒。


悠人が放った高周波の振動が、周囲のSランクやAランクの術式防御を、分子レベルで揺るがし、彼らの肉体に激しい衝撃を与えた。魔術師たちは防御する間もなく吹き飛ばされる。


しかし、悠人は彼らを追撃しなかった。彼の目的は、情報公開の完遂だ。


悠人は、再び重力操作で夜空へと飛び立った。彼の背中を追う神宮寺サクヤの冷徹な声が、夜の闇に響き渡る。


「逃がすな! 奴の魔力は、今、摩耗している! 奴の定義が揺らいでいる証拠だ! そして、彼の心に、誰かが仕掛けたノイズがある!」


悠人は、飛び去りながらも、心の中で憎悪の炎を燃やした。憎悪こそが、彼の力を支える絶対的な定義だ。


(ノイズ……ハヤト、アオイ。お前たちの卑劣な真似が、俺の足を引っ張るというのか。ならば、お前たちを、二度と戻れない、最底辺の泥沼に突き落とす。それが、ノイズを打ち消す、新たな定義だ)


悠人の復讐の目標は、世界への制裁から、再び裏切り者たちへの、より個人的で、より残虐な「完全なる破滅」へと方向転換し始めていた。彼の魔法が揺らぐ時、復讐の螺旋は、さらに深く、暗い闇へと引きずり込まれていくのだった。

コメントや応援があるとうれしいです!

次の章もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ