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刻限ゼロの復讐者(ゼロ・アベンジャー):0.5秒の壁を破壊し、裏切りの魔法社会を焼き尽くす  作者: S&Y


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第四章:宣戦布告、虚飾の牙城を穿つ

魔法庁本庁舎、地下深部にある「術式中央管理室」。ここは、全国の術式連環の認証データ、ダンジョン座標、そして国家が保有する全ての魔法技術情報が集中管理されている、現代魔法社会の心臓部だ。厳重な多重結界と、五体のSランク魔術師による二十四時間体制の警護が敷かれていた。


しかし、その厳重な防壁は、悠人にとって何の障害にもならなかった。


悠人は、拠点としている雑居ビルの屋上から、わずかに目視できる魔法庁舎に向かい、魔力を集中させた。彼の狙いは、物理的な破壊ではない。システムを、その根幹から書き換えることだ。


「ターゲット:術式中央管理室。イメージ:『虚飾の解除デ・ファンタジー』」


0.0秒。


悠人の体から放たれた魔力は、光の速度を超えて夜の闇を突き進み、魔法庁の多重結界を、まるで空気のようにすり抜けた。結界の術式は、リング認証の0.5秒の隙を突かれることしか想定していない。ゼロ秒で、術式そのものの定義を否定する悠人の魔力の前には、無力だった。


中央管理室の内部で、警報システムが狂ったように鳴り響いた。


「なにが起こった!? 外部からの魔力介入を確認! 結界が、結界が停止した!」


警護についていたSランク魔術師の一人が叫ぶ。彼は、慌てて術式連環に魔力を流し始めた。


「0.5秒! あと0.5秒で《防御壁ウォール》を構築する!」


だが、その0.5秒は、悠人の世界では永遠にも等しい時間だ。


悠人の魔力はすでに管理室内部に到達し、中央制御システムに深く潜り込んでいた。


—術式:『虚飾の解除』。


悠人のイメージは、魔法庁が長年隠蔽してきた情報を、国民全体に公開すること。そして、その情報こそが、悠人が手に入れた閲覧禁止図書に書かれていた、リング不要の根源的な魔法の存在だった。


中央制御システムのマスターAIが、抗おうと絶叫する。


「エラー! 不正な術式! 現代魔法の根幹を揺るがすデータが、外部へ流出しています!」


悠人は、遠隔操作で「閲覧禁止図書」に記されていた、術式の核心となる数行の文章と、それを裏付ける古代の文書データを、全情報網へと強制的にアップロードした。


『術式連環は、魔力を制限し、制御するための枷である。真の術者は、意思を定義とし、時間を無とす』


この情報が世界へ放たれた瞬間、魔法庁の庁舎全体が、激しい光の点滅と共に機能不全に陥った。それは、長年信じられてきた「魔法の常識」が、根底から否定された瞬間の、世界的な衝撃だった。


警報を聞きつけ、Sランク魔術師の最高責任者である、"閃光"の異名を持つ老練な女性魔術師、神宮寺ジングウジサクヤが、管理室に駆けつけた。


「状況を報告しろ! 何が流出した!?」


「か、神宮寺様! 術式連環の真の性質、そして古代のリング不要の術式理論のデータが……全国へ、完全に公開されました!」


神宮寺サクヤは、顔色一つ変えなかったが、その身から放たれる魔力が、室内の空気を凍らせた。


「ゼロ・インベイド……小僧が。我々の牙城を、遊びで崩してくれるとはな」


彼女は、腰に巻かれた術式連環に触れることなく、ただ掌を宙に突き出した。彼女もまた、Sランクの極致に至り、体内の魔力制御を極めた稀有な存在だ。リング認証の0.5秒の壁は破れないが、0.5秒での術式構築速度は、他の追随を許さない。


「全Sランクに緊急招集! ターゲットは魔法庁外、情報流出の起点となった魔力痕跡の特定エリア!」


神宮寺は、悠人が今いるであろうビル群の方向を見据えた。


「ただし、戦闘は全面禁止。奴の力は、我々の常識を超えている。我々の行動の0.5秒を、奴は幾重にも利用するだろう。まずは、接触し、その力の定義を理解する」


その判断の早さこそが、Sランクの頂点に立つ者の証だった。しかし、その時、神宮寺の目の前の巨大な制御モニターに、悠人からのメッセージが直接、表示された。


それは、悠人の魔力によって、たった一瞬で書き換えられた魔法庁の公式ホームページのトップ画面だった。


『——この世界は、クズをのさばらせるルールで回っている。だから、変える。お前たちが「閲覧禁止」にした真実を、今こそ世に放つ』


悠人の魔力は、そのメッセージと共に、一つの強烈なイメージを神宮寺サクヤの意識に直接叩き込んだ。


それは、自分を奈落に突き落としたハヤトとアオイの顔、そして冷酷に彼を見殺しにした瞬間だった。


(これは……個人的な恨み!?)


一瞬の動揺。神宮寺サクヤは、これが単なるテロ行為ではなく、個人的な復讐から始まったこと、そしてその復讐心が世界を揺るがしている事実を察知した。


「全Sランク、目標の確保を急げ! 奴の動機は個人的だ。接触すれば、必ず綻びが出る!」


しかし、悠人はすでに、その場にはいなかった。


魔法庁への攻撃を終えた悠人は、都市のネオンサインを反射するビルの壁を、重力操作の魔法で自在に駆け降りていた。彼の目的は、情報公開による社会の動揺と、魔法庁の最高戦力であるSランク魔術師たちの注意を、自分自身に引きつけることだった。


(これで、世界は目覚める。次は、この力を本当に試す場が必要だ)


悠人は、夜の雑踏の中へ消えていった。彼の復讐のロードマップは、個人への制裁、社会への宣戦布告を経て、いよいよSランク魔術師との直接対決という最終局面に突入しようとしていた。

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次の章もお楽しみに

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