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刻限ゼロの復讐者(ゼロ・アベンジャー):0.5秒の壁を破壊し、裏切りの魔法社会を焼き尽くす  作者: S&Y


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最終章:未来の定義、そして始まりへ

海辺を吹き荒れる魔力の奔流は、黒崎悠人の命そのものを燃やし尽くそうとしていた。世界の定義と、彼自身の絶対的な『0.0秒』の定義が衝突し、その反作用が悠人の全身を貫く。


「悠人! やめなさい! その魔力は、君自身を否定する!」


神宮寺サクヤの叫びは、もはや悠人の耳には届かない。彼の瞳には、ただ、憎悪と、裏切り者の顔だけが映っていた。


その時、脳裏に、あの『閲覧禁止図書』の一節が蘇った。


『究極の魔術とは、世界の定義の改変にあらず。己自身の精神、魂、そして肉体を、いかなる矛盾も許さぬ純粋な意思によって再定義することである。世界は、その後を追うに過ぎない』


悠人は理解した。自分が、この一年間で、どれほど傲慢になっていたかを。


彼は、世界が彼の力を裏切ったと定義したがっていた。しかし、神宮寺の言葉が真実なら、世界の枷は、彼の規格外の才能が、過度な憎悪によって自壊するのを防ぐための、最後の防衛線だった。


復讐のために世界を否定することは、結果的に自分自身を破壊する行為に繋がる。そして、ハヤトとアオイの仕掛けた『ノイズ』は、その自壊への速度を最大化するための、憎悪の増幅装置だったのだ。


悠人は、激痛の中で、ニヤリと笑った。


(そうか。俺の復讐の目的は、こいつらを殺すことじゃない。こいつらの存在が、俺の『未来』を汚し、俺の『定義』を蝕むこと、そのものを終わらせることだ)


彼は、己の命の炎が消える寸前で、究極の選択を下した。


悠人の魔力が、一瞬にして収束する。その圧倒的な静寂は、直前の大嵐よりも恐ろしいものだった。


彼が放った術式は、『存在否定』ではない。


術式:『過去の定義変更ディフィニション・リライト』。


それは、世界の物理法則ではなく、特定の個人の記憶と感情の定義のみに作用する、極めて限定的で、しかし絶対的な魔法だった。


「裏切り者、光瀬ハヤト、鈴宮アオイ。お前たちの魂の定義から、俺と、俺たち三人が共有した過去の全ての感情を消去する」


「お前たちが、俺を憎悪したという事実。そして、俺が、お前たちを憎悪したという感情。その全ての定義を、**『無意味な、他人との、取るに足らない、昔の出来事』**へと上書きする」


悠人の魔力が、ハヤトとアオイの全身を、優しく、しかし強制的に覆い尽くした。


ハヤトは、絶叫していたはずの口が閉じ、恐怖に歪んでいた顔から、表情が消えた。アオイは、狂気に満ちた笑みを浮かべていたが、その目から光が失われ、ただの虚ろな人形のようになった。


彼らの瞳の中にあった、悠人への強烈な感情(憎悪、嫉妬、執着)が、まるで砂のようにサラサラと崩れ落ちていく。


彼らの記憶から、黒崎悠人は消えない。だが、その記憶に付随する、彼らを動かし、悠人の命を削る原因となった『感情』の定義だけが、完全に洗い流されたのだ。


魔力の奔流が止まり、海辺に再び波の音だけが響く。


神宮寺サクヤは、唖然として、目の前の光景を見ていた。悠人の魔力が暴走したのではなく、悠人が、復讐の相手を『殺す』のではなく、『無意味化する』という、予想外の結末を選んだのだ。


ハヤトとアオイは、立ち尽くしている。彼らは、なぜ自分がここにいるのか、なぜ悠人に向かって憎しみを向けていたのか、その理由を、もう思い出せない。彼らの人生の、大きな目標であった『悠人への復讐』という定義が、一瞬で『どうでもいいこと』に書き換えられてしまったのだ。


「……悠人君。君は、自分の命を削って、何をしたの?」神宮寺は、震える声で尋ねた。


悠人は、大量の魔力を消費したことで、かろうじて立っている状態だった。しかし、彼の表情には、今までにない、清々しい静けさが宿っていた。


「俺は、俺の未来の定義を守っただけだ、神宮寺」


彼は、自らの魔力によって、最後に一つの定義を世界へと強制した。


術式:『絶対制御の定義アブソルート・コントロール』。


「世界の魔術師が自壊を防ぐための『0.5秒の認証』という枷は、維持される。しかし、俺、黒崎悠人だけは、自分の魔力、己の魂を完全に制御しきれる唯一の例外として定義される」


悠人は、世界の法則を破壊するのではなく、自分という存在を、法則の例外として『再定義』したのだ。これによって、彼は力を失うことなく、自滅の脅威からも解放された。


「俺の復讐は、終わった。彼らは、もはや俺にとって、何の意味も持たない。彼らを殺すことは、彼らに執着し続けることであり、それは俺自身の敗北を意味する」


彼は、二度とハヤトとアオイを見ようとはしなかった。


「彼らは、もう君の敵ではない。君の復讐が、彼らを無力化し、無意味な存在にしたのだから」神宮寺は、静かに言った。


「ああ。これからは、君たちの仕事だ。彼らを社会的に裁くか、隔離するか。俺はもう、関わらない」


悠人は、砂浜に落ちていた、打ち砕かれた『星屑のチャーム』の破片を拾い上げ、握りしめた。


「俺は、俺の定義を守る。そして、この世界が持つ、絶対的な定義を守り、世界を脅かす、真のノイズを排除する」


彼は、神宮寺に背を向け、夜明けの水平線に向かって、ゆっくりと歩き出した。


「君は、世界を救うために、孤独な守護者になる道を選んだのね」神宮寺は、その背中に問いかけた。


「違う。俺は、俺自身を救う道を選んだ」


黒崎悠人が背負っていた『復讐者』という定義は、海辺の夜風に吹き飛ばされた。彼の心に新たに刻まれたのは、いかなる感情の波にも揺らがない、『絶対的な制御者』としての新たな定義だった。


そして、その日を境に、世界は変わらなかったが、世界を定義する『最強の魔術師』は、復讐の鎖を断ち切って、その始まりを静かに踏み出した。


(完)

一日でシリーズ書き終わっちゃいましたが読者さんはどうですかね、人気があったらこのシリーズをまた書かせていただきます。

だいぶね、このなろう系では短い作品なのかなと思いますが読んでくださりありがとうございました。


コメントや応援があるとうれしいです!

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