表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された俺、神々に拾われ最強へ──気づけば世界一の美女たちに囲まれていました  作者: 妙原奇天
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/45

第二部・第8話「共作の輪——二つの世界で編む歌」

一 外と内の挨拶


 裂け目は、もう脅威ではなかった。

 摩滅の粒度も、翻訳不能の輪も、名を得た星砂も、すべてが街に「客拍」として迎えられていた。

 だが——その先に進むなら、ただ受け入れるだけでは足りない。


「次は“共作”。」

 セレスティアの言葉は、評議庁の壁を震わせた。

「客人を客として留めるのではなく、客と共に“拍を編む”」


 イリスは灯籠に指を滑らせ、数列を示した。

外数そとすうの動きが安定してきた。偏差も最小値に収束している。……往還に次の段階を置ける」


 カイルは太鼓を抱きしめて頷いた。

「“打ち合わせ”だな。こっちが一拍、向こうが一拍。交互に叩いて、リズムをひとつにする」


 レイナは剣を腰に戻し、静かに言った。

「剣はもう使わない。今度は“間”を守るだけ」


 ミュナは芽吹きを掌で撫でる。

「花と風が交わるように。……違う季の音を並べて、一緒に育てる」


二 外からの返事


 夕刻、裂け目の縫い橋の縫い目がふっと揺れた。

 外から返ってきたのは——声にならない拍。

 だが、はっきり「こちらを待っている」ように思えた。


「……応答を求めてる」

 イリスの言葉に、胸の刻印が熱を帯びた。

 俺は王鈴を掲げ、声を投げた。

《いち》


 その直後、裂け目の向こうから粒度の束が返った。

 音ではなく、ざらめのような震え。

 それが確かに「に」の位置に重なった。


「合わせてきた!」カイルが驚きの声を上げる。

「交互に……俺たちと同じリズムで」


 セレスティアが短く告げた。

「“共作”の始まりだ」


三 共作の試み


 俺たちは交互に拍を置いた。

 俺が「いち」と王鈴を鳴らし、向こうが「に」と粒度を返す。

 カイルが太鼓で「さん」を打ち、向こうが「し」とざわめきを送る。

 ミュナが「ご」を花の香で示し、向こうが「ろく」を冷たい風で返す。


 こうして八拍が輪になったとき、初めて“共作の拍”が生まれた。


 イリスが秤を見つめる。

「偏差ゼロ。……完全に同期してる」

 レイナは微笑んだ。

「剣を抜かなくても、ここまで戦えるんだな」


 街の人々も広場で手を合わせ、外の粒と交互に拍を刻んだ。

 子どもたちが星砂を投げ、外から影露が返る。

 老婆が歌を口ずさみ、外から風の粒が震える。

 鍛冶屋が槌を振り、外から冷たい響きが答える。


四 不協の芽


 だが、全てが順調ではなかった。

 交互の拍を嫌い、ずっと自分の声だけを出そうとする者がいた。

 「外なんかに合わせるな!」

 「異界は危険だ!」

 彼らが同時に拍を打ち、共作のリズムを崩す。


 裂け目が軋み、縫い橋の縫い目がひび割れる。

 外の拍も荒れ、星砂が鋭い刃のように散り始めた。


 セレスティアが立ち上がり、布告を放つ。

「布告。“輪の律”! 共作の拍を崩す声は、すべて“外数”として扱う!」


 イリスが札を重ねる。

「内であっても、共作を拒んだ拍は“外扱い”。——街を壊さない限り、排除はしない。ただ、共作からは切り離す」


 レイナが剣を抜き、守りの構えを取る。

「輪を崩させない」


 荒れた拍は縫い目に吸い込まれ、向こうで“無”に消えた。

 裂け目は再び静かになり、共作のリズムが戻った。


五 新しい和


 共作の拍は次第に長く、複雑になった。

 交互に置かれた八拍は十六拍へ、十六拍は三十二拍へ。

 やがて、外と内の違いが消え、ただ“ひとつの歌”として街に流れた。


 子どもたちは笑い、老人は涙を流し、兵士は槍を下ろした。

 祠の火が外の風に揺れ、芽吹きが星砂を受けて咲いた。

 太鼓も剣も、灯も香も、すべてが共に鳴り、共に沈黙し、共に和を作った。


 ルミナの声が胸に届いた。

『よくやった、整律官。

 内と外の拍を共に編んだ。

 ——だが、次はさらに先。“共作を超えた合奏”が待つ』


 俺は王鈴を高く掲げ、仲間たちと共に呼吸した。

 夜空の裂け目は細い糸となり、そこから新しい音が滴り落ちていた。


結び


 こうして、外なる拍は敵ではなく“共作者”となった。

 だが、次に現れるのは——

 外と内が区別できないほどの“巨大な合奏”。


――――

次回:第二部・第9話「合奏の海——拍の境界を超えて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ