表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された俺、神々に拾われ最強へ──気づけば世界一の美女たちに囲まれていました  作者: 妙原奇天
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/45

第二部・第2話「王律の国〈サリド〉——“内輪”の軍歌」

一 南境の門


 ルゼアで“影を宿す文字歌”を芽吹かせた俺たちは、南境へ向かった。

 そこには〈サリド〉。豊かな平野と鉄を産する山を抱え、古来より戦に強い国。


 だが今、道を行く商人たちは皆、同じ歌を口にしていた。

 旋律は単純。

 《王に従え 輪を乱すな 我らひとつ》

 同じ節回しで、同じ速度で、同じ声色で。


 セレスティアが眉を寄せた。

「これが“王律”……」


 イリスが灯籠を翳すと、秤の針は揺れることなく一方向に釘付けられた。

「個々の拍が消えている。国全体が“一律”に従っている証」


 レイナが苦く笑う。

「軍律そのまま。隊長が一度命じれば、兵千人が一糸乱れずに動く。……強いけど、脆い」


二 城下の歌


 サリドの城下町は、まるで軍営だった。

 広場では子どもまでが木剣を握り、同じ掛け声を上げていた。

 《王に従え 輪を乱すな 我らひとつ》


 パンを売る老婆も同じ歌を口ずさみ、旅宿の娘も同じ歌で客を迎える。

 声の調子は違えど、節と速度は寸分たがわぬ。


 カイルが顔をしかめた。

「太鼓が“自由に叩けない”のと同じだ。……全部、王律のリズムに縛られてる」


 ミュナは芽吹きを覗き込み、小さく首を振った。

「芽が息できてない……全部、同じ花にされてる」


三 王律の仕組み


 評議庁に招かれた俺たちを迎えたのは、壮年の武将——軍律官ダランだった。

 胸には鎖の紋章。


 ダランは朗々と歌うように言葉を発した。

「〈サリド〉の秩序は王律なり! 一国は一歌、一歌は一律! 混乱は無用、和は統一の中に在る!」


 イリスが問う。

「個々の祈りは、どこに?」

 ダランは即答した。

「祈りは王に集め、王が律を以て歌う! 臣民は従うのみ! それが最大の和なり!」


 セレスティアは冷ややかに視線を返す。

「それは和ではなく、“服従”」


 空気が一瞬で張り詰めた。


四 市井のひび割れ


 その夜、俺たちは宿でひっそりと話を聞いた。

 娘が小声で囁く。

「……本当は、みんな自分の歌を持ってるんです。でも“律違い”を口にすると、捕まるから」


 レイナが目を細める。

「律違い?」


「はい。“律違いの歌”を口にしたら、軍律官が来て……」

 娘の声は震え、そこで途切れた。


 ミュナが握った芽吹きが、静かに震えた。

「芽が、泣いてる……」


五 内輪の軍歌


 翌朝。

 広場で軍律官たちが隊を率い、声を合わせて歌っていた。

 《王に従え 輪を乱すな 我らひとつ》


 千の声がひとつに重なり、街を覆う。

 その和は荘厳だが、耳を澄ませば、どの声も苦しげに震えていた。


 カイルが拳を握る。

「みんな、本当は違う拍を持ってる。……でも、無理やり合わせられてる」


 俺は王鈴を握りしめた。

「この国には、この国の和がある。

 だが“内輪の軍歌”だけでは、必ず割れる」


 セレスティアが頷いた。

「なら——“異律の和”を示すしかない」


六 影のささやき


 その夜。

 宿の裏庭で、少年が俺に近づき、唇を震わせた。

「……ぼくの歌、聴いてくれませんか」


 声は小さく、王律とは違う旋律。

 震え、拙く、でも確かに“自分の歌”だった。


 俺は静かに頷き、王鈴を鳴らさずに胸で拍を刻んだ。

 イリスが灯籠に書き、レイナが剣で影を護り、カイルが指でリズムを示し、ミュナが芽吹きで匂いを残す。

 少年の歌は、初めて“形”になった。


「これが……ぼくの、拍……」


 彼の瞳に涙が宿った。


七 迫る軍律


 だがすぐに、軍律官の足音が近づいてきた。

 「律違いの歌を発した者がいる!」


 レイナが剣を抜き、カイルが拳を固める。

 イリスが灯籠を抱え、ミュナが少年を庇った。

 セレスティアは一歩前に出て、堂々と告げた。

「これは“律違い”ではない。“新しい和”だ!」


 軍律官の目に怒りの火が宿った。


 ——ここから、この国の和を巡る戦いが始まる。


――――

次回:第二部・第3話「律違いの歌、夜の反乱」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ