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追放された俺、神々に拾われ最強へ──気づけば世界一の美女たちに囲まれていました  作者: 妙原奇天
第一章

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第21話「未来を迎える拍、星降る試練」

 夜空が割れたようだった。

 星はただ瞬くだけの存在ではない。無数の光が時間を抱えたまま落ち、王都の広場を覆った。

 声が一斉に押し寄せる。泣き声、笑い声、祈り、叫び。どれも遅れて届いたか、未来から先に滑り込んだか、境目は分からなかった。


「……重なりすぎている」

 イリスの灯籠は次々と炎を二重三重に分け、記録の秤は悲鳴を上げていた。

「一つの祈りが三つに裂けて届いています! “過去の願い”と“現在の声”と“未来の叫び”が同じ名を呼んでいる!」


 ミュナは揺枝を抱き、胸を震わせた。

「芽が一度に三つ育つ……土が持たない……!」

 レイナは剣を地に突き立て、息を吐く。

「斬り捨てるわけにはいかない。でも、このままでは誰も立っていられなくなる」

 カイルが太鼓を必死に叩いた。

「“いち・に・とまる!”」

 だが星の祈りは止まらない。未来からの声が「さん」と叫び、過去の声が「し」で泣き、現在の声は「ご」で息を詰まらせる。拍が三つに裂け、輪は軋んだ。


 アストレイアが夜空の中央に立つ。

『見ろ、整律官。届かぬ祈りは積もり、未来と過去を飲み込む。……お前の輪は、時間の重さに耐えられるか?』


 胸の刻印が熱を帯び、息が乱れそうになる。

 けれど俺は王鈴を握り、声を張った。

「祈りを拒まない。だが、重ねるだけでは潰れる。……“順番”を置く!」


 イリスが素早く札を走らせる。

「『過去』『現在』『未来』――三色に分けます!」

 灯籠が赤・白・青の三つに染まり、それぞれの祈りを分類し始めた。


 レイナが剣を横に振り、祈りの流れを切り分ける。

「過去は右、未来は左、現在は正面! 混ざるな!」

 カイルは太鼓を三面に置き、それぞれ別の節を叩く。

「《過去の太鼓》――低く遅く!

 《未来の太鼓》――軽く速く!

 《今の太鼓》――真ん中で揺るがない!」

 ミュナは揺枝を三度振り、祈りを芽吹きの光に包み分ける。


 星の声が少しずつ整理され、広場に三つの輪ができた。

 赤い輪には、叶わなかった祈り。

 青い輪には、まだ起きていない願い。

 白い輪には、いまの叫び。


 だが整理しただけでは終わらなかった。

 赤の輪は「戻らぬ痛み」を孕み、青の輪は「まだ来ない約束」に痺れ、白の輪は「同時の混乱」で軋む。

 星々がさらに降り注ぎ、輪は揺れ、再び潰れそうになる。


「……“迎える拍”を重ねる!」

 俺は王鈴を掲げた。

「《十で迎える》!」

 鈴が鳴り、三つの輪が互いに触れ合う“迎え”の音を得る。

 過去は未来に迎えられ、未来は現在に迎えられ、現在は過去に迎えられる。

 輪は交差し、星の声が互いに受け合う形になった。


 セレスティアが声を張る。

「布告! 王都に“迎え札”を置く! 祈りが遅れても早すぎても、札に触れた者は次の“迎えの拍”で輪に戻れる!」

 人々が札を掲げ、息を吐いた。


 アストレイアは夜空からその様子を見下ろし、瞳を細める。

『……未来を迎えるか。過去を迎えるか。迎えは優しい。だが、迎えの重みを誰が支える?』

 俺は息を吸い、答えた。

「“迎え”は分け持つ。俺ひとりの拍ではない」

 セレスティアが隣に立ち、肩を並べる。

 レイナが剣を下ろし、支えに変える。

 カイルが太鼓を抱え、基盤の音を打つ。

 イリスが灯籠を掲げ、記録に残す。

 ミュナが揺枝を光らせ、人々の肩に芽吹きを置く。


 皆の拍が重なり、迎えは一人ではなく“街の仕組み”として置かれた。


 星々がひときわ強く瞬き、やがて夜空に戻っていった。

 残されたのは三つの輪の跡と、人々の肩に染みついた“迎えの拍”だった。


 静けさが訪れる。

 祠の火は赤・白・青の三色を残したまま、穏やかに揺れていた。

 アストレイアの声が遠くから響く。

『よくやった、整律官。……だが、星の試練はここからだ。遠拍は輪を超えて広がる。王都の外、他の国々へ。

 届かぬ祈りを、どう受ける? 迎えの拍は、果たして境を越えられるのか?』


 胸の刻印が熱を放ち、俺は夜空を見上げた。

 遠い未来と、遠い過去と、いまを繋ぐために。

 次なる試練は、きっと王都の外で始まる。


――――

次回:第22話「国境を越える遠拍、迎えの行方」

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