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プロローグ:旅立ち
星船の帆が祠の屋根を突き破り、雲海の上に浮かんだ。ユウトは船の縁に立ち、短槍を握る。ボロい帆と歪んだパネル。「このままじゃ輝晶の浮島まで持たねえな」
ネクシーが頷く。「帆を補強し、パネルを整える必要がある。雲木なら祠の床に」
雲木を拾い集め、星船を村の納屋へ向けた。母ちゃんが寝る小屋の近く、傾いた納屋の扉を開ける。埃まみれの木箱から工具と厚い布を取り出し、祠へ戻る。帆に布を巻きつけ、雲木を骨組みに嵌め、叩いて整えた。星晶が「キーン」と鳴り、光が強まる。ボロ船が息を吹き返した。
「おじさん、俺、旅立つよ。星の彼方に行くから、見ててくれ」短槍を床に突き立て呟く。幼い頃、おじさんが星空を指さし笑った顔が蘇る。祠の外で風が吹き抜け、まるでおじさんの答えのよう。
星船が雲海を滑るように進み、星見の村が遠ざかる。輝晶の浮島を目指し、星空が広がる。ネクシーがそばで微笑む。「ユウイチに届いたよ、きっと」
短槍を握り直し、前を見据えた。おじさんの夢が、自分の手で動き出した。