プロローグ:星晶の欠片
朝陽が雲海の上に昇り、星見の丘を淡い光で染めていた。
ユウトは小屋の裏に座り、ポケットから星晶の欠片を取り出した。青白い石は親指ほどの大きさで、夕陽に透かすと内側に星屑が揺れる。おじさん——ユウイチが輝晶の浮島で採ったものだ。手に持つと、微かに温かい。
遠くで母ちゃんの声が響く。「ユウト!水汲み手伝いな!」
星晶を仕舞い、鍬を手に母ちゃんの隣に並んだ。星晶石で動く水汲み装置が細い水流を畑に引く。
「これ、もっと強かったら星船みたいに飛べるかな」
母ちゃんが苦笑いして頭を軽く叩く。「星船は晶工師が作るもんだよ。おじさんも夢見てたけど、現実を選んだ。お前も足元見な」
唇を尖らせたユウトの耳に、村の子供——トウタとアヤカの声が届く。「星航士なんて無理だろ」「畑仕事の方がマシ!」
拳を握ったが言葉が出ない。確かに、星見の丘には星船も金もない。でも、星晶を握ると疼く何かがあった。
昼が過ぎ、丘のてっぺんで雲海の向こうに輝晶の浮島を眺めた。おじさんの言葉が蘇る。「この丘のどこかに秘密があるんだ」
夜が近づき、星晶を手に持つと微かに震えた。すると、一筋の流れ星が丘の奥に落ちるように光る。好奇心が疼き、ユウトは草をかき分けて歩き出した。