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Eternal First Love 7

***



ふたご町の入り口となるバス停で、私は百々の強烈な手刀を頭に食らっていた。


「まったく、本当になんでも唐突なんだから! もっと計画性持てっての!」


「ぴゃあああ! ごめんなさいぃ!!」



私と由利くんは話し合い、ふたご町を去ることに決めた。


お互いすっかり意固地になっていたものをなくし、あらためてどうしたいかを考え、「心機一転したい」という結論にいきついた。


そのためにまず、過去を過去に変える時間が必要だった。


少し離れ、ゆっくりと二人で生きよう。


それでまた、ふたご町に戻りたくなったら戻ればいいと、そう話した。



「下心丸出しだもんね。 仕方ないのか」



ニヤニヤしながらおでこを弾いてくる百々に私は泣きっ面で吠えた。



「下心じゃないもん! めちゃくちゃピュアだもん!」


「嘘ついてんじゃないわよ!」


「ぴゃあああっ!! 麻理子様なにを!?」



ふたご町を去る私たちを見送りに、麻理子と奏、拓司が来ていた。


鼻息を荒くしながら細い腰に手を当て、麻理子は目くじらを立てる。



「言っておくけど、男なんてクズだからね! いくら黒咲くんとはいえ、男だからね!」



その発言にゾッと背筋が震えた。



(なんとなく麻理子様の人生見えてきたー! 発言の重みやばああ!)



麻理子はぶすっとしたまま、ぱっちり二重の目でじろりと私を上から下まで眺める。



「……女の子なら静夜の嫁候補になっても許す」



ツンデレが激しい麻理子に笑みがこぼれた。



「女王様の許可待ちってことで」


「頭が高い! 本っっっ当にめめりんはなんかムカつく!」



おとなしく見ていた奏であったが、限界に達したのか百々に続けて頭にチョップを落とした。



「奏ちゃんひどい……」




そうしてなんだかんだで笑っている私たちを、由利くんと拓司が苦笑いをして眺めていた。



「……女ってわかんねー」


「本当になぁ。人間不信になんよ」


「お前が言うな」


「ちょっ、由利くんひどない!?」


「はは、お互い様だって」



あり方が変わっていく。


友達の形も変化する。


ここにはいないが、倉田からたまに連絡があったようで由利くんが穏やかな表情で返事をしていたのを思い出す。



二人の仲はよくわからないが、あの倉田の性格を考えると彼なりの友情の示し方なのかもしれないと思った。



「なんで男って見栄ばかり張るかな? お前何様よって感じ」


(麻理子様の毒が男性に移ってる! ぴぃぃ、こわ~!)



「めめりん、バス来たよ」



奏が音に気づき、背伸びをして道の向こう側を見る。


エンジン音が大きくなっていき、地方都市行きのバスがやってきて目の前で停車した。


荷物を手に、見送りにきてくれた友人たちを一人ずつ眺める。


胸の痛みは気付かないふりをした。



「そういえば里穂ちん、見送りに来なくてよかったの? 静夜を預かってもらっちゃったけど」



麻理子の疑問に目を丸くし、首を傾げる。



「うーん? 昔から里穂ってそうだからなぁ。 進学の時も放置されたし」


「……それくらいがいいかもね」



昔よりもずっと大人びた表情で奏が微笑む。


高校生のときと変わらないように見えて、やはり相応の年月を過ごした哀愁を秘めていた。


長年離れていたくせに、また再会して、また離れて。


またね、になるとわかっていても寂しさは誤魔化せない。


だからそっと気持ちを共有するように、繋がれた手が握り返されると泣きそうになった。


バスの扉が開き、二人で大地から足を上げる。



「それじゃ、みんなまたな」


「落ち着いたら連絡しまーす」




また、帰ってきます。


それまでさようなら。


ありがとう。


たくさんありがとうございました。




***



バスが出発し、手を振り離れていく二人を見送る。


奏が苦笑いをして腰に手を当てた。



「ノリ軽っ」


「ま、一途さの勝利というやつね」



優しい目をした麻理子と奏が、そよそよと吹く風を浴びて微笑みあった。




「ところでコイツ、黒咲くんと何かあったの? ずっと泣いてんじゃん」



ベソベソと泣く拓司。



「我ながら静夜が出来た息子で怖い。 ちょっと甘えベタだからお菓子でも買ってってあーげよって」



まったく興味を示さず、スマホに保存された我が子の写真を見てニヤニヤする麻理子。



「あ、お菓子なら一緒に作る?」


「やったー! あたしケーキ食べたい!」




なんだかんだで、二人は仲の良いままで、高校生の時よりもずっとたくましいのだった。




***



バスの中、後部座席で私は由利くんと会話を弾ませる。




「この辺はどう? 隣の県なら気楽じゃない?」


「温泉街近い場所だね。芽々って温泉好きなの?」


「……もおお! やだぁ! まだちょっと早いよお!!」



ーーバシバシッ。




「いたっ!?」


「そうだ、これ」


「光る石……?」


「これ、器と一緒にしてたでしょ? せっかくだからアクセサリーにしようよ」


「……重くてごめん」


「なにが?」


「なんでもない!」



唇を尖らせ、肩に寄りかかってくる。



(ぴゃあああ!? なになに!? 由利くんってめちゃくちゃ甘えん坊!!)




「ふへへ、良いですなぁ。キュンですよ、キュン。好きってこういうことだよぅ」


「……おっさんかよ」


「由利くんもおっさんだよ! 私の自慢のだーいすきなおっさんです!」



歳をとっても一緒にいたい。


そんなことを考えながら私たちは笑った。


色んなことがあったけど、拗らせた日々も悪くなかったと思う今日だった。









(運転しづらい。乗客はいなくても俺はいるっつーの)



バスの運転手、元・ちびっ子のガキんちょが口角をヒクヒクさせながら後部座席の写るバックミラーにチラリと目を向ける。


そこに写った光景に、怖いものなんてなかった。



「今日もいい日だなぁ」




拗らせファーストラブ


【完】

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