表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/85

Eternal First Love 6

***



それから慌ただしく精密検査をし、私はあっさりと退院した。



しかし由利くんは腕や足の状態など、色々と健康に異常をきたしていたのでリハビリと称し、しばらく入院した。



2022年12月31日、外泊の許可をもらい由利くんには時森家に遊びにきてもらった。


今は百々の子どもたちが家でバタバタと駆け回り、騒がしい場所である。


私の部屋はとっくに片付けられていて、新しい子供部屋になっていた。


由利くんが「星投げをしたい」と言ったので、私たちはすっかり静かになった河川敷に行き、年越しの瞬間に光る石を投げた。


どこか切なそうに、けれども憑き物が落ちたように苦い感情を噛みしめていた。




ーー新しい未来、2023年が始まった。


家に帰ってからは由利くんと居間に敷布団を敷いて、赤面しながら手を繋ぐ。


甘さに崩壊した顔面を見られることがなくて良かったと安堵し、眠りにつく。


朝になると百々の子どもとの激しいバトルと同時に目が覚めた。


こんなに騒がしい朝ははじめてだと由利くんは笑っていた。



それからまたリハビリを繰り返し、体調も安定して由利くんは退院することとなる。



入院中には色んな人が由利くんのところへ訪れる。


だが、その人たちとの交流で由利くんの表情は曇りっぱなしであった。



退院し、手を繋いで田んぼに囲まれた道を歩いていると、ふと足を止め、由利くんは空を見上げた。




「……お墓参り、行きたいな」







***




「じいちゃん、親父。来るの遅くなってごめんな」



たくさんの墓石が並ぶ山奥の墓地。


長年来ていなかった割に綺麗な墓石を見て、由利くんは影をつくる。


墓石の前にしゃがみ込み、じっと無表情に見つめた。




(お墓参り……久しぶりだな)



目を閉じ、目を合わせだした由利くんを見て私もまた同じ動作をする。


由利くんの心境を思うと胸が痛む。


ふと、脳裏に幼い頃の思い出が蘇る。


写真を見ないと思い出すことも出来ない祖母。


手を繋いで歩いた。


それ以外、何も覚えていない遠い遠い過去のこと。



(おばあちゃんのお墓、ちゃんと掃除されてるのかなぁ? おねーちゃん、雑だし……)



「じいちゃん、親父」



ハッと顔を上げ、由利くんに目を向けると真っ直ぐに墓石を見つめる横顔があった。


綺麗な佇まいに、吸い込まれるように魅入る。



「ずっと昔から好きだった人と、お付き合いをすることになりました。これから新しい道へ、二人で進もうと思います」



その言葉に、溢れ出す喜びが笑顔を作った。


迷い、仮面を被り、言葉を飲み込み、義務感に動き、自分が消えていく。


そうやって自分を殺した由利くんが、黒く咲いた百合と決別した。



終わりとはじまり。


ようやくノストラダムスの大予言、恐怖の大王は去っていった。




「時森 芽々です。やっと由利くんを捕まえました。お揃いの器、受け取っちゃったんで由利くんのことはいただいていきます」


「ちょっ、芽々!?」


「私の嫁……じゃなくてお婿さん」



想像しただけでヨダレが垂れそうだ。



「嫁……」


「これからはスーパーハニー、時森 芽々さんが一緒に幸せになりますのでご安心ください!」


「……ふはっ! なんだよ、スーパーハニーって」


「ダメ?」


「ダメじゃない。さすがは芽々だよ。最高に面白い」


「ぴゃああああ!!!?」



キラキラ眩しい笑顔が向けられ、目を焼かれる。



( 溶ける! キュン死にはまだいやだー!)





「さて、あとは時森家に挨拶だね。行こっか」



立ち上がり、差し出された手から光が差し込んできた。



「うん!」




もう失うことがないように。


この奇跡を、一生離さないと誓い手を握り返すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ