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拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする!〜  作者: 泉花
Black Lily 1999〜2022

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Black Lily 7

***



「またいつものやつですって。工芸体験用の小さいやつ」


「最近、本格的な器を作ってないのぉ。 うちだって絵付け体験やおーだぁめいんど?をしても全然人が来ないじゃないか」


「オーダーメイドですよ。集客だとか、人付き合いが貴利さんは苦手ですからねぇ」


「由利くんは明るくていい子だからもっと上手くやると思ってたけど、なかなかねぇ。頑張ってるのはわかるんだけど」


「ワシらは言われたことだけやればいい。器作りの職人なんか求められてないんだ」


「はぁ……由利くんにSNSの発信をお願いされたけど、こういうの専門じゃないのよね」




***



貴利が由利を連れて役所へと向かう。


役所のイベント担当に顔合わせというわけだ。


応接スペースで担当の人に挨拶……と思ったが、中年の担当者は一度も由利と目を合わせようとしなかった。



「というわけで、息子ともどもよろしくお願いします」


「あー、はいはい。 今度ともよろしくお願いしますねー」


「それでぜひ今度、工芸品フェアに出展出来ればと思いご相談を……」


「あー、出展ですね。ホームページで受け付けてますのでそちらからお願いします。出展料などはこちらの資料に記載されてますので」


「あ、はい。ありがとうございます」


「ありがとうございますっ……」



それから担当者が去り、役所を出た由利たちはスマートフォンでイベントの出展者用のサイトを確認する。




「……出展料か。なかなか厳しいなぁ」


「でも人目に触れるようになるのはいいことだし……」



渋い顔をする貴利を見て由利は焦りながらも意見を主張する。


由利の気持ちを組んだのか、貴利はため息をついたあとぎこちなく微笑んだ。



「そうだな。ちょっと大変だけどみんなで頑張ろう」


「……うん」



何故だか、その時由利は貴利の背中を見て「こんなに小さかっただろうか」と考えてしまう。


すぐにそんな考えは振り払い、拳を握りしめて貴利を追いかけていくのであった。



***



「早く寝ないと。全然、勉強も出来てないな……」



仕事を終え、疲労の溜まった身体がベッドにうつ伏せに倒れ込む。


真っ暗な部屋でスマートフォンの電源を入れると、液晶越しの光が顔を青白く照らす。


メッセージのやりとりは、以前はグループで活発だったが徐々に減った。


個別に連絡がくることはあっても、由利には返事をする余裕もなかった。



「えっと……彼女出来たんだけどクリスマス何あげればいいかって。オレに聞かれても……」



(みんな遊んでるんだ)



「……アクセサリーとか? アクセサリーは重い? えー、わっかんねー……」



(ドロドロした黒さが湧き上がってくる)




「アクセサリーで重かったらオレなんてめちゃくちゃ重いことしようとしてたんじゃん。うわ、恥ずかしい……。漆器をプレゼントとかバカかよー。時森よく笑ってくれてたよなぁ……」



ふと、窓から見える月が目に入る。




「……元気かな? でも連絡……出来ないよなぁ……」



たった一つの送信ボタンを押す。


それだけのことが出来なかった。


女々しさにスマートフォンを放り投げ、枕に顔を埋める。



「寝よ。明日は工芸品フェアなんだから」



夜は長いようで短い。


目をつむれば朝が来る。



そう思っていつまでも夜が明けない。


時計の針の音がカチコチと耳に入ってくる。


この音に気を取られるようになってどれだけ経過しただろうか。


身体は重たいのに、頭の中は雑念ばかり。


でも目を開けば寝ることを諦めてしまう。



「……っ……!」




いつ落ちたのかもわからず、日が差して目を覚ましてもまだ早朝だった。


中途半端さに、無気力に息を吐いてまた目だけを閉じていた。


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