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Black Lily 2

昔ながらの一軒家に穏やかさを兼ね備えた凛々しい顔立ちの老人と、艶やかな黒髪と瞳が美しい小さな男の子がいた。


二人は仲が良く、休みの日はいつも男の子は祖父のもとへ行き遊んでもらっていた。


今日は特に楽しいかくれんぼ。


男の子、由利は倉庫の裏側で丸まり息を潜めていた。



「みーつけた」


「えっ!? もう!?」


「由利のことならじいちゃんなんでもわかるぞ」



祖父・輝利に手を引かれ陽の下へ踏み出す。


隠れてそうそうに見つかり、最初は不貞腐れるもすぐに破顔して輝利に抱きついていた。




「あは、次はもっとしっかり隠れないと。 いつか絶対にじいちゃんに勝ってやる」


「バッカじゃねーの? もうすぐ地球滅びるんだぜ?」



そこに家の前を通りかかった男の子が声をかけてきた。


小学校は異なるものの、町の復興会関係で顔見知りの男の子だ。


小さな身長でよく悪態をついてくることから、由利はよく吠え返していた。



「よ、予言なんか信じるものか! なんの根拠があるんだよ!」


「みんな言ってるぜ? 7の月に恐怖の大王がやってきて、世界は滅亡するんだ」


「そんなこと……」


「お前、怖がってるんだろ? どうせみんな一緒なんだ、美味いものでも食って楽しむが勝ちだぞー!」



由利は幼い頃からホラーやオカルト話が苦手だった。


聞きたくないというのに虎箔は怖がる由利をからかい、よく嫌な発言をぶつけてきた。


その度に輝利の足にしがみつき、ムスッとした顔つきで睨み返すのが精一杯である。


ケラケラと笑い有頂天になる虎箔の後ろに、一人の女が近づき頭にゲンコツを食らわす。



「アンタって子はまた由利くんに嫌味ばっか言って! ごめんなさいねぇ、輝利さん、由利くん」


「いえいえ、大丈夫ですよ」


「ほら、行くよ!」



母親に手を引っ張られながら涙目に虎箔は腹から力いっぱいに叫ぶ。



「なんだよっ! どうせみんな死んじまうんだ! どんなにすごい奴だって死んじゃうんだからな!!」



去っていく虎箔を見て、由利は小さくなって輝利の手を握る。


輝利はフッと笑い、由利の頭をわしゃわしゃと撫でた。



「……じいちゃん」


「大丈夫、大丈夫。 大予言なんてメディアが騒いでるだけだ。 恐怖の大王なんて現れないから大丈夫」



輝利がそう言うだけで勇気と自信が湧いてくる。


このしわくちゃの大きな手が大好きだった。


職人らしい硬く厚い皮膚。


髪を撫でるとささくれが引っかかる荒さ。


この世界にはこんなにもカッコよくて、自慢したくなる人がいる。


それが自分の祖父であることに由利は誇りを持っていた。



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