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My soul,Your Beats 6

「頑張ってることの意味を壊すのはいつだってっ──ごほっ、ゴホッゴホッ!!」



興奮が喉に亀裂をはしらせ、ピリッとした痛みが走る。


たまらず咳き込み、私は腰を曲げ喉を抑えた。



「時森、大丈夫か? ほら、水……」


「あ、りがと……喉痛いや……」



ペットボトルの水を受け取り、一口飲むと私はヘラっと笑った。


暴走グセって何歳になっても治らないものだ。


でも後悔はない。


これは守りたい人を守るための戦う手段だったから。


器用な守り方なんて、私はまだ知らない。


大人って、言うほど大人じゃないからーー。




「蒲田さん」



黒咲くんが雅箔に緊張した面持ちで向き合っている。


しかし先程よりも落ち着いていて、自分の気持ちを一つ一つ丁寧に伝えだした。



「オレは諦めてないんだ。じいちゃんが……作ってきた場所だから。じいちゃんの世界はあの時終わってしまったけど、オレたちはまだ生きてるから」



空を見上げると大きな月と、キラキラ輝く星。


何度も見上げて探した一つの星はまだ見つからない。


望遠鏡で覗き込み、それを探し続けていた。


その輝く瞳をみて、雅箔は懐かしさを観る。


遠い昔、無鉄砲に祭りをやりたいと言い出したバカがいたと思い出す。


そしてそのバカは惚れた女のために必死になってたことがあり、キラキラと圧倒的希望を瞳に宿らせていた。



「……あんたは輝利さんそっくりだな」


「え?」


「ふんっ、もう夢の時代は終わったんだよ」



誰も知らない過去の物語。


表に出ることなく、消えてしまうものもある。


あれは……何のために名前だけが有名になったのだろうか。


情熱がいつか落ち着いて、何を見たのだろう。



ーーこれは雅箔の心での独白。


血が濃くとも、これは違う人間なのだ。




「あ……」



雅箔はため息をつき、背を向け会場から離れていく。


その後ろ姿を黒咲くんは悲しそうに見送るしかなかった。



「蒲田のじいちゃん……」


「……黒咲くん、スタートさせよ?」



私は黒咲くんの手を掴み、反対の手を空に掲げる。


星を掴む勢いで背伸びをし、目に光を映していた。



「こうなったら大大大成功にしよう!!」


「……ああ!」



諦めなんて必要ない。


まだ終わってない。


だって時は終わらなかった。


私たちはここで魔の大王に襲われることなく生きているのだから。


風がふき、河川敷の草がそよそよと揺れ、川がせせらいでいた。




「……時森、年越ししたらちょっと時間ちょうだい」


「え?」


「話したいことあるんだ」



(なんだろ? まぁ、今は楽しもう)



「ん、わかった。またその時ね」




ーーさぁ、星祭りの年越し開幕だ!!


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